短編
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「…自分のじゃ、ないんですか、願い事」
「だって、」
昇降口に置かれた大きな笹
毎年置かれるこの笹の傍に小さなテーブルがあって、その上に細長い色とりどりの紙がペンと共に箱に入っておいてある
生徒はお昼休みや放課後に友達と騒ぎながら、または1人で、短冊に願いを込め、思い思いのところにつるすのだ
俺は委員会帰り、もう人の少ない校舎で、一般下校時刻寸前だけど、せっかくだからと名前さんと短冊を書いていた
委員会が一緒の一つ上のこの先輩は、三年生だし、「絶対合格!」とか、そういうことを書くんだろうと思っていた(「彼氏ができますように」だったら立候補しようと思っていたのに、)
「全国制覇」と書かれた俺の短冊の少し下につるされたその細長い紙には、
「織姫と彦星がちゃんと会えますように」
と書かれていた
「ダイエット成功しますように」とか「成績上がりますように」とかばっかりの短冊の中で明らかに浮いたそれは、誰かがバカにしようとも構わない、俺には凄く愛しく見えたんだ
「心配ですか?」
本来なら綺麗な星々が輝いているべき空はどんよりと暗く、一面見渡す限り空一つない雲で、晴れていたら見えるであろう天の川は見えるはずもなく(まぁ都会の空じゃ晴れても良く見えないけれど)
確かに、雨よりはマシだろうけれど、逢えなさそうだ、と思った
「台風来てるみたいだし、」
急に現実的なことを言う先輩に噴出しそうになったけれど、あまりに声が切なくて、思わず鞄の紐を強く握る
「一年に一度なのに、かわいそうじゃない、やじゃんか、逢えないなんて」
噛み締めるように言って、外に出て、空を見上げる名前さんが儚くて、消えてしまいそうで、綺麗で
曇り空とどんよりした空気が重くのしかかっているとは思えなくて
雨はまだ降ってないのに傘を差して、その中に自分と名前さんが入るように、2人だけの空間を作った
見つめていた空を傘に遮られ、奇行を起こした俺を訝しげに見つめてくる名前さんに口付けを落とすなんて真似ができるほど冷静ではなくて
ただ、彼女に笑って欲しくて、ううん、嘘だ、
妬いたんだ、空に、彦星に、
俺じゃなくて上ばかり見るから、昨日まで気にも留めてなかったくせに、(俺を、見て、お願い)
傘を差し向けたまま、動かない俺を横目で見て、傘から出て行きそうになって、慌てて引き止めたはいいけど、かける言葉を用意してなくて、
気が付けばとんでもない事を口走っていた
例え彼らが逢えなかったとしても代わりに僕らが愛を誓えば良いんじゃないですか
(きょとんとした貴女も愛しくて)(くさいと思うけど本音なんです、よ)(そんな弁解ができるほど冷静でもなくて、ああ、激ダサですね、俺)
「だって、」
昇降口に置かれた大きな笹
毎年置かれるこの笹の傍に小さなテーブルがあって、その上に細長い色とりどりの紙がペンと共に箱に入っておいてある
生徒はお昼休みや放課後に友達と騒ぎながら、または1人で、短冊に願いを込め、思い思いのところにつるすのだ
俺は委員会帰り、もう人の少ない校舎で、一般下校時刻寸前だけど、せっかくだからと名前さんと短冊を書いていた
委員会が一緒の一つ上のこの先輩は、三年生だし、「絶対合格!」とか、そういうことを書くんだろうと思っていた(「彼氏ができますように」だったら立候補しようと思っていたのに、)
「全国制覇」と書かれた俺の短冊の少し下につるされたその細長い紙には、
「織姫と彦星がちゃんと会えますように」
と書かれていた
「ダイエット成功しますように」とか「成績上がりますように」とかばっかりの短冊の中で明らかに浮いたそれは、誰かがバカにしようとも構わない、俺には凄く愛しく見えたんだ
「心配ですか?」
本来なら綺麗な星々が輝いているべき空はどんよりと暗く、一面見渡す限り空一つない雲で、晴れていたら見えるであろう天の川は見えるはずもなく(まぁ都会の空じゃ晴れても良く見えないけれど)
確かに、雨よりはマシだろうけれど、逢えなさそうだ、と思った
「台風来てるみたいだし、」
急に現実的なことを言う先輩に噴出しそうになったけれど、あまりに声が切なくて、思わず鞄の紐を強く握る
「一年に一度なのに、かわいそうじゃない、やじゃんか、逢えないなんて」
噛み締めるように言って、外に出て、空を見上げる名前さんが儚くて、消えてしまいそうで、綺麗で
曇り空とどんよりした空気が重くのしかかっているとは思えなくて
雨はまだ降ってないのに傘を差して、その中に自分と名前さんが入るように、2人だけの空間を作った
見つめていた空を傘に遮られ、奇行を起こした俺を訝しげに見つめてくる名前さんに口付けを落とすなんて真似ができるほど冷静ではなくて
ただ、彼女に笑って欲しくて、ううん、嘘だ、
妬いたんだ、空に、彦星に、
俺じゃなくて上ばかり見るから、昨日まで気にも留めてなかったくせに、(俺を、見て、お願い)
傘を差し向けたまま、動かない俺を横目で見て、傘から出て行きそうになって、慌てて引き止めたはいいけど、かける言葉を用意してなくて、
気が付けばとんでもない事を口走っていた
例え彼らが逢えなかったとしても代わりに僕らが愛を誓えば良いんじゃないですか
(きょとんとした貴女も愛しくて)(くさいと思うけど本音なんです、よ)(そんな弁解ができるほど冷静でもなくて、ああ、激ダサですね、俺)