短編
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殴られる、と思い目を瞑ったけれど、痛みと衝撃は襲ってこず、
でも、確かにした、肉体をヒットした鈍い音
不思議に思い、恐る恐る目を開ける前に聞こえた澄んだ癖のあるアルト
まさか、そんなわけない、だって
「申し訳ないですけど、この人にさわらないでもらえますか」
口元に朱がにじんで、それは本来あたしの口元にあったはずなのに
なんで、日吉が、そこに、いるの?
「なんだ!お前!」
「女共々病院に送ってやるよ!」
「心配すんな救急車は呼んでやるよ!」
やめて、逃げて
そんな大勢に1人で立ち向かわないで
しゃがみこんでしまった私を守るように前に立ちはだかる日吉の足が浮いたところで怖くなって目をぎゅっと閉じた
殴る音、蹴る音、風を切って振り下ろされる金属音、罵声、いろんなものがまざって耳を襲う
ダメだ、ほっといて逃げてって、言いたいのに、声が出ない、口が開かない、目も開かない、立てない
「なんで泣いてるんですか?」
静かに呟かれた、弾んだ息のまざった落ち着いた声
ゆっくり目を開ければ、痣や血痕はあるものの、平気そうな日吉の顔
私の前にしゃがんで、覗き込んでる
日吉の背後を見れば、ごろごろと転がった男達
「っキノコが喧嘩するからよ!」
「…先輩、怪我はしてませんか?」
「して、ない…」
私より、日吉のが心配だよ
私はほとんど無傷なんだから
「日吉、血まみれ…」
「少し腕を切っただけです」
シャツの袖がざっくり切れて、綺麗な朱の線が腕を伝う
慌ててハンカチで腕を縛ると「あんまりきつくやると痛いです」と笑われて
なんで笑っていられるの
なんで日吉がここにいるの
「ひとりで、倒したの?」
「…無駄な動きが多すぎます。ただぶんぶん振り回してりゃいいってもんじゃないんです」
鉄パイプやナイフを持った男達は少し血が付いてはいるもののほとんど無傷で転がっていた
「死んでる、の?」
「まさか。的確に急所を突けば黙らせることなんて簡単です。」
どうやら気絶させただけらしく、立ち上がるとスマホで律儀に救急車を呼ぶ日吉をぼんやりと眺めた
「立てますか?」
差し出された手
普段、キノコキノコと馬鹿にしていた後輩がこんなに頼もしい手をしていたなんて
手につかまり、立ち上がったもののよろよろと日吉にもたれかかってしまう
ああダサいな 腰抜けてる
「日吉」
「はい?」
「ありがとう」
いつまでも手を握っててくれてる後輩のほうを見ずにぶっきらぼうに言えば、ぎゅ、と握る力が強くなり、ふっと笑う気配がした
日吉の手はあたたかかった
2006年リクエスト「日吉で喧嘩シチュエーション」
でも、確かにした、肉体をヒットした鈍い音
不思議に思い、恐る恐る目を開ける前に聞こえた澄んだ癖のあるアルト
まさか、そんなわけない、だって
「申し訳ないですけど、この人にさわらないでもらえますか」
口元に朱がにじんで、それは本来あたしの口元にあったはずなのに
なんで、日吉が、そこに、いるの?
「なんだ!お前!」
「女共々病院に送ってやるよ!」
「心配すんな救急車は呼んでやるよ!」
やめて、逃げて
そんな大勢に1人で立ち向かわないで
しゃがみこんでしまった私を守るように前に立ちはだかる日吉の足が浮いたところで怖くなって目をぎゅっと閉じた
殴る音、蹴る音、風を切って振り下ろされる金属音、罵声、いろんなものがまざって耳を襲う
ダメだ、ほっといて逃げてって、言いたいのに、声が出ない、口が開かない、目も開かない、立てない
「なんで泣いてるんですか?」
静かに呟かれた、弾んだ息のまざった落ち着いた声
ゆっくり目を開ければ、痣や血痕はあるものの、平気そうな日吉の顔
私の前にしゃがんで、覗き込んでる
日吉の背後を見れば、ごろごろと転がった男達
「っキノコが喧嘩するからよ!」
「…先輩、怪我はしてませんか?」
「して、ない…」
私より、日吉のが心配だよ
私はほとんど無傷なんだから
「日吉、血まみれ…」
「少し腕を切っただけです」
シャツの袖がざっくり切れて、綺麗な朱の線が腕を伝う
慌ててハンカチで腕を縛ると「あんまりきつくやると痛いです」と笑われて
なんで笑っていられるの
なんで日吉がここにいるの
「ひとりで、倒したの?」
「…無駄な動きが多すぎます。ただぶんぶん振り回してりゃいいってもんじゃないんです」
鉄パイプやナイフを持った男達は少し血が付いてはいるもののほとんど無傷で転がっていた
「死んでる、の?」
「まさか。的確に急所を突けば黙らせることなんて簡単です。」
どうやら気絶させただけらしく、立ち上がるとスマホで律儀に救急車を呼ぶ日吉をぼんやりと眺めた
「立てますか?」
差し出された手
普段、キノコキノコと馬鹿にしていた後輩がこんなに頼もしい手をしていたなんて
手につかまり、立ち上がったもののよろよろと日吉にもたれかかってしまう
ああダサいな 腰抜けてる
「日吉」
「はい?」
「ありがとう」
いつまでも手を握っててくれてる後輩のほうを見ずにぶっきらぼうに言えば、ぎゅ、と握る力が強くなり、ふっと笑う気配がした
日吉の手はあたたかかった
2006年リクエスト「日吉で喧嘩シチュエーション」