紅プリ短編
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「宍戸ってさ、いつから日吉のこと名前呼びなの?」
「あ?いつ…?覚えてねぇな、幼稚舎から一緒だからなぁ…」
「そっか…そっかーーー」
「な、なんだよ」
中学2年の秋。
夏休みも終わり、波乱の全国大会も終わり。
また来年に向けてテニス部は今日も練習に励んでいる。
今日は火曜日だからレギュラーもそれ以外も入り乱れた全体練だ。
ランニングを終え、宍戸が日吉を軽快に名前呼びしてタオルを渡していたことにムズムズしてついつい寄って行ってしまった。(別に日吉だけを呼んでいたわけじゃない、岳人、長太郎、若、ほらよ(タオル)みたいな感じだったけどさあ〜)
基礎練前に喉を潤すべく、皆がドリンクの置いてある方へ駆け出して宍戸から離れた隙を見計らって冒頭の質問だ。
あんまり他の人に聞かれたくないから宍戸がみんなのとこに行かないようにドリンクを紙コップに入れて差し入れし、足止めする。
急に気を利かせて今己の欲している物を差し出してきて奇怪な質問を投げつけ顔を顰めている同級生に訝しげな顔をしながらも、ちゃんと受け答えをしてくれるコイツはいい奴だ。
「幼稚舎から一緒ってことは…今7年目の仲ってこと…?」
「ん…一年の最初からずっとってわけじゃねーけど、単純計算ならそうだな」
「はぁあぁあ…」
「なんなんだよ」
埋められない転校生と幼稚舎組の年月。
仕方ないとはわかっていてもずるいなって思っちゃう。
「…私も若って呼びたい」
「呼べばいいだろ」
「呼べないよ!7年目の宍戸と違ってまだ半年の仲だよ!」
「? ジローとか長太郎のことは名前で呼んでんじゃねーか」
「そ、そうだけどぉ」
それはなんか違うじゃん?
みんな名前で呼んでるし、なんかあの2人はマスコット的なアレだし…違うじゃん?
「…どうにか自然に呼べないものか」
「そんなに気負うことか?」
「お前にはわかんねーよ」
「それが話聞いてやってる奴に対する態度か?…おい、若!こいつがお前のこと「ギャーッ!?!?」
宍戸とのトークに夢中になっていて、すぐ近くまで日吉が来ていることに全然気づかなかった!
慌てて宍戸の口を両手で塞ぐ。油断も隙もありゃしない!
「…俺がなんです」
いつもより随分不機嫌そうな声にビクッとする。日吉なんで不機嫌?休憩中とはいえベラベラお喋りしてたから?日吉はストイックだもんね。
「な、何でもないよ〜どうしたの?さっきまであっちいたのに…」
「…俺がこっち来たら何か問題でも?」
「いや、そんなことないけど…なぁ宍戸!?」
「もがもが」
あ、ごめんごめん、手を離すとわざとらしく息を大きく吸った宍戸がこっちをジト目で見下ろしながら「ああ、若の話してたからな」と言った。口!!押さえた!!!意味!!!!
「…俺の話?」
「あああああいや違、わ、わか、和菓子!そう!和菓子!食べたいなって!ね!!!!!たまにはいいよねって、ね!!!!!!!!」
「は?」
「あぁ!?!?!!!!」
は?じゃねーよ空気読め話合わせろバカ!
私と宍戸が睨み合っているとさらに不機嫌そうになった声が割って入る。
「……それで?部活後一緒に買いにでも行くんですか?随分と仲良さそうですし」
「…えっ?いや別に…てか部活後は日吉と帰ろうと思ってた…けど…迷惑だった…かな?一人で帰りたかった…?」
「え、え?…エッ?あ、いや、全然…え、俺と?」
「あっ約束とかしてたわけじゃないけど…ご、ごめんね急に…この前も一緒に帰れて嬉しかったから…嫌じゃなかったら…」
「嫌なわけ!!!!…ごほん、嫌じゃないです、えっと…贔屓にしてる老舗の和菓子屋があるんですが、寄って行きますか?」
「!!ほんと?行きたい!日吉のおすすめ…えへへ、嬉しいな、私和菓子大好きなの!」
「…ッッ、そ、そう…ですか…じゃあ…部活後…この前と同じとこで待ち合わせで…」
「…詩菜も若も顔赤いけど大丈夫か?」
「余韻に浸ってるんで名前呼ばないでもらえますか」
「えっ…」
そうだそうだ、気安く呼ぶな!
私が呼べるようになるまで名前呼び禁止令出そうかな、この男…。
何故か日吉のご機嫌も直ってるし、部活後の楽しみも出来たし、ハッピーハッピー!
「さ、残りの練習もがんばろ〜!」
るんるんと軽い足取りで休憩時間終了の笛を吹いた。
今はまだ、
(……本当になんだったんだ?)(宍戸さん、お人好しもほどほどにしないと馬に蹴られてなんとやらですよっ)(うおっ、長太郎いつからいた…馬?馬って跡部んとこのか?)(あはは、宍戸さんはずっとそのままでいてくださいね)(???)