紅の王子様
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「それでは青春学園と氷帝学園の試合を始めます 第一試合、ダブルス2前へ」
始まった。
もう、都大会のようなミスは許されない。
氷帝コールが会場を包み、青学は圧倒されているようだ。それでいい。
向日忍足VS桃城菊丸。
…ちょっと待て、兄貴は?
「ゴールデンペアは?」
詩菜が不思議そうに呟いた。
そうだ、青学の誇るゴールデンペアは?何故菊丸と桃城が組んでいる?
青学ベンチの方に目を凝らすけれど、兄貴の姿は見当たらない。
「0-15!」
兄貴は何処へ。
敵校のダブルスが急造というのはこっちに有利だけど、兄貴はどうした。
そわそわしているうちにもう0-40。
兄貴はー…
「忍足侑士…奴がうちの天才だ」
跡部の声にハッと顔を上げる。
「え、なに」
「ダンクを返しただけだよ」
見てなかったね、と詩菜に言われ、言い訳しようと横を見たけど、詩菜もきょろきょろとゴールデンペアの片割れを探していたので口を噤んだ。
あ、ドロップショット。
「ゲーム氷帝 4-0」
青学はボロ負けだろうか。
うちのD2は強い。けど、なんだろう、青学、こんなに弱いのか?
「!」
15-30。
どうした。菊丸…?なんかさっきまでと…
「あーあ、ふっきれちゃったかぁ」
間延びした声が可笑しそうに笑い、この子はまた緊張感のない…と見下ろして、その表情が声と違って真剣なのに息を呑んだ。
英二くんテンション切り替えちゃったよーと忠告する詩菜につられて、気ィ抜くなよ勝てよーと叫ぼうとして、口を開けて、声が出なかった。
おいおいおいおい、ちょっと待てよ急造コンビじゃないのか?
オーストラリアンフォーメーションだって?中学生のテニスで?
菊丸が後衛ということに驚いて混乱しているうちに、ムーンボレーが決まった。ちょっ、それは兄貴の十八番…!
「あのオーストラリアンフォーメーションからコンビネーションが何故か格段に良くなっているぜ」
「…ああ、げ、ポーチ」
なんでだよ、ゴールデンペアは?桃城と菊丸、息ぴったりじゃんか。
「見ろ、奴らは2人じゃねぇ」
跡部の言葉に振り返れば、そこには…
「兄貴!」
はちまきを巻いた兄貴が拳を突き出していた。
なんでそんなとこにいるんだよ。あれ、隣にいるのって、詩菜?
横を見れば、そこにいたはずの詩菜は居らず、もう一度兄貴に視線を戻せば、詩菜となにやら話している。
なんで試合に出ていないのか気になって、自分は思わず駆け出した。