紅の王子様
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なんで自分はまた跡部と喧嘩しているのか、誰に聞けば教えてくれるんだ?
コンソレの何日か後、自分は部活の帰りに詩菜と久しぶりに二人で帰った。
例のストリートテニス場を通った時、コートの近くに歩いていく滝の後姿がチラッと目に入った。
だから好奇心で、興味本心で、詩菜と覗いてみることにしたんだ。
「随分と楽しそうだな、桃城よ」
だからまさか跡部のこの現場にまた遭遇するなんて思ってもみなかったんだ。
コートには桃城、そしてあの時の子がいた。不動峰戦の時に名前聞いたが、たしか杏ちゃん、だったはず。
今回は跡部と樺地だけでなく、忍足も、岳人も、長太郎も滝もいた。
「杏ちゃんよ、都大会ではまんまと兄貴にやられたぜ」
杏ちゃんって呼ぶな。なんでてめーまでちゃんと名前知ってるんだ。つーかなんでまた絡んでるんだ。
自分は身体が動かず、詩菜は隣でコートを不安そうに見つめていた。
忍足や岳人もしゃべりだして、氷帝レギュラーはめちゃめちゃ喧嘩腰だ。
自分はこれ以上この場にいたくなくて、無言で立ち去った。詩菜はレギュラー達の側に駆け寄って行った。
その夜、携帯に跡部から電話がかかってきたけど自分は出なかった。
次の日からまた喧嘩になり、跡部とは口をきかなくなった。
「え、滝が負けた?」
なんとも奇怪なニュースが飛び込んできた。滝が負けたという。1-6で。
その相手がまた…宍戸だと言うのだ。
コートに走れば、監督が滝をレギュラー落ちさせている現場に遭遇してしまった。
でも、ここで宍戸がレギュラーに戻れるほど氷帝は甘くなかった。正レギュラーになるのは日吉だと、監督は告げた。
宍戸は情けなくも跡部に訴えた。なんで監督に言わない…この馬鹿。
「宍戸」
自分は宍戸の元へかけより、たまたま詩菜が持ってたハサミを宍戸に投げ渡した。
「根性見せろよ」
そう呟くと、宍戸はハサミを持って監督が歩いて行った方へ走り出した。
長太郎も後を続いて走り出す。
跡部は「…チッ」と言ってその後姿を歩いて追った。
自分もなんとなく心配になったので歩きだした。嫌な予感が的中しなければいいが。
自分は三人より先にコートに戻っていたので、何も見ていないように見えたかもしれないが影から見ていた。
だからあいつらが帰ってきたら宍戸は普通に迎えるけど、長太郎は一発殴ってやろうと思っていた。
「…おかえり」
「ああ…サンキューな」
宍戸がハサミを投げ渡してきたのでちゃんと受け止めた。
短くなった髪の毛の長さはバラバラで不恰好。
「…後で長さ揃えてやるよ」
と微笑めば宍戸はちょっとびっくりして耳を赤くして背を向けた。
髪の毛用のハサミ、詩菜に頼んでおこう。
すると走って帰ってきた宍戸とは違い、のろのろと長太郎が歩いて帰ってきた。
自分は長太郎の側に駆け寄り、頬を一発ひっぱたいた。
バチンッ!といい音がして、コート内のみんなが振り返る。
とても静まり返っていた。
長太郎はびっくりして、「え…凌先輩…?」と呟いた。
「この馬鹿!!!あのなあ、宍戸をレギュラーに復活させたいのはわかるけど、お前がレギュラー落ちしたら何の意味もないんだよ!
それが宍戸のためになるとでも思ってんのか?そこは反省しろ。なんでもかんでも自分を犠牲にすればいいってもんじゃねえんだよ。」
長太郎に向かってそう吐き捨てると周りの部員もびっくりして二人を見つめた。
長太郎自身、とてもびっくりしたようで目を見開いていた。
しばらくして長太郎は俯き、小さく「すみません…」と謝った。
「まあ、でも」
と話し始めるとすごい勢いでパッと顔が上がった。
「宍戸に付き合ってやったのは偉いよ。お前がいなきゃあいつはレギュラーには戻れなかったってことだ。ありがとう。今度宍戸にもお礼言わせなきゃな。」
「あ… はい!」
それはもう可愛らしい笑顔で長太郎は答えた。
周りの部員の空気も軽くなったのかコートはまたざわつき始め、みんなは練習を始めた。
滝や日吉には悪いが、やっぱりレギュラーはこのメンバーであって欲しい。
信頼した奴らなんだ。これから一緒にやっていけると確信したメンバーなんだ。
自分のわがままだけど、出来れば崩れて欲しくはないんだ。監督だって、根性があるとわかったから宍戸を復帰させたんだ。
詩菜に呼ばれてハサミを渡され、宍戸の元へ走って行った。
髪の毛を整えている間に二人が交わした会話は、誰も知らない。