紅の王子様
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「岳人お前体力ないんだからそれ考えて飛べよ!」
コンソレで負けるわけには絶対いかず、レギュラーの練習は日を増すごとにスパルタになっていった。
もちろん自分が部に貢献出来ていない気がして悔しくて必死になっている部分もあるものの、個人的に機嫌も悪い。
それもこれも跡部のせいだ。ストリートテニスでの出来事から、自分はずっと調子が悪かった。
「凌ー!俺と試合しYOー!」
「ん?いいよ」
ジローに呼ばれたのでコートに入り、早速サーブを打ち込む。さっきもいったが、自分はここのところ調子が悪かった。
ゴンッ「いった!」
「あ、悪い」
何を間違えたか草むらの方にボールが飛んで行ってしまった。
…草むらの方に飛んで行ったのに何故人の声がした?痛いって言った?なんで?
自分は謎を確かめるべくジローを放置して草むらの方へ向かって行った。
声がした辺りを覗けば、そこにはうねった髪の男が後頭部を抑えていた。そこにボールが当たったみたいだ。
着ている制服はどう見ても氷帝のものではない。…あれ、こいつ…見たことあるな…
「…どちら様ですか?」
「僕を知らないんですか?んふっそれならば教えて差し上げましょう…聖ルドルフ学園三年、泣く子も黙る優雅な男! 趣味は紅茶の葉を選ぶこと!四ヶ国語をマスターするテニス部きってのデータマネージャー!その名も…」
「ていうかスパイ?」
「最後まで聞きなさい!!!その名も…観月はじめ!んふっ僕をなめてると痛い目見ますよ?」
「監督〜、聖…なんとかからスパイ来てるよー」
「なっちょっ君黙りなさい!!!」
ああ、スパイなのね。ま、大事になると面倒だし話だけ聞いて追い出そう。
「つーかお前あれか、不二にボロクソにやられてた…」
「その印象は捨ててください!!」
「で、スパイなんだべ?五位決定戦のために」
「そうですが…君は出ないんですか?正レギュラーでしょう?」
「俺出られないから。つーかうちスパイしても無駄だよ、データ取られるような馬鹿じゃないし、みんな」
観月?とかいう奴は悔しそうに歯を食いしばった。自分は嘘をついたつもりはない。
データを簡単に取らせるようじゃダメだ。それはうちの選手、全員よくわかっている。それを観月もわかったらしい。
「だから早く帰って練習でもしな。うちの監督に見つかったら大変だよ」
余計悔しくなったのか、「くそっ!」と言って走っていなくなった。自分は正論を述べただけだ。何も悪くない。
ジローが後ろで呼んでいるので、観月が忘れて行ったボールペンを投げ捨ててコートに戻った。
「よーっし五位決定ー!」
「みんなお疲れー!」
観月のスパイの効果もなく、氷帝は聖ルドルフを倒し見事関東大会へ勝ち進んだ。
まあ当然と言えば当然だが。
それと変わったことが一つ。
「………宍戸…コンソレこなかったな……」
宍戸は橘に負けてから一度も部活に顔を出していない。なんとなく理由も聞き辛く、クラスも違うのでなぜかはわからないまま。
ついにはコンソレすら見に来なかった。何やってんだか………
「…凌」
後ろから突然呼ばれてびっくりした。振り返ると、…なんと跡部だった。
あの時以来、跡部とは一言もしゃべっていない。ずっと気まずい空気が流れたままで、それが重くてたまらなかった。
「何?」
ただそう答えただけなのに、跡部は心底びっくりしていた。
「…シカトされると思ってたぜ」
そう言いながら跡部はククッといつもの笑い方をした。この笑い顔を見るのも、笑い声を聞くのも、すごく久しぶりな気がする。
何か心地良い。やっぱ跡部は自分の中で、もう大切な友達なんだ。
「しないよシカトなんか」
「そうか。…悪かったな、この前は」
「ううん、私も悪かったから」
跡部と仲直りをした。
詩菜は最初苦笑いだったけど、そのうち普通の笑みになった。
これで自分の中の重荷はなくなったはずだった。心配すべきは宍戸だけ。
だったはずが…