紅の王子様
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「………はあ…」
なんだか無性に早起きをしてしまい、一人で部室でみんなを待っていた。
今日は男装のことをみんなに打ち明ける。
まだ、怖い。
でも言わなければ。そんな思いがグルグル頭を巡って、昨日は眠れなかった。
ガラガラッ
「凌、早いじゃねえか珍しく」
「おはようさん。」
「凌先輩おはようございます。」
「え、あ、おはよう…」
跡部と忍足と宍戸とちょたがいっぺんに来た。
忍足が通りすがりに頭ポンってしてくれてちょっと気持ちが楽になった。(跡部はキレてたけど)
「他のみんなは?」
「ジローは二時間目から、岳人も寝坊でミーティングは間に合わないってさ」
またこういうタイミングでどうして寝坊とかするんだろうか。朝一番でぶち殺していいのだろうか。
詩菜も来てくれると思ってたのに…一人でも大丈夫だよってそんな保障はないのに。
詩菜がいうんだから大丈夫なのかもしれないけど。そんなに詩菜にばっかり頼るわけにもいかないしな。
でもやっぱり一人で言うのは…放課後にしようかな…
「…凌なんか言いたいことあるなら今言え」
…跡部に確信を突かれた。
宍戸はなんだ?とか言ってるしちょたも心配してる。言わないわけにいかない。
「えっ…とね、あのー…跡部と忍足はもう知ってるんだけど…」
「………は?」
「おい、お前…」
「…女、なんだ、あたし」
途中跡部と忍足が微妙に止めに入ったが気にしてられない。
こうなったらもうヤケだ!
「ちょっと…理由があって男として入学して…学校側にも隠してるの。跡部と忍足と滝にはバレちゃったんだけど…」
「…なんでお前この場で言っちまったんだよ」
「なんか隠してるのが辛くなったから…みんなに嘘つきたくないから」
ちょたは心配そうにこちらを見てるけど、宍戸はそっぽ向いてる。
やっぱり怒ってるか…まあそれが普通だけどさ
「じゃあそういうことだから」と一言告げて部室を出ようと試みた。
跡部と忍足は追いかけてこようとしてたけど無視。いいだろ、どうせ教室同じなんだからさ。
「…俺、別に気にしませんよ」
その一言が聞こえて、自分は部室から出るのをやめて振り返った。
「男でも女でも凌先輩は凌先輩ですし、俺が尊敬してることには変わりはないですから…」
「………」
「宍戸さんだって怒ってるわけじゃないです。ただびっくりしたのと、多分…照れてるだけで」
そう言ってにこっとしたちょたは後ろから宍戸に殴られた。
宍戸もちょたもいつもの、普段通りの、二人だった。
怒られもしなくて、シカトされたりするわけでもなくて、いつもみたいにしてくれてる。
そう考えると視界が潤んできた。やばい、久しぶりの嬉し泣きだ…
「ちょっ凌泣くな!俺は気にしてねえって言っただろ!」
「凌先輩泣かないでくださいよー」
「…綾香」
唯一本名で呼んだ跡部に抱きしめられた。
別に悲しいわけじゃないから離せってじたばたしても離してくれない。
「こいつの本名は綾香だ。凌は偽名。」
「そうなんですか…じゃあ綾香先輩ですね」
「わかったから跡部、はよ綾香離せや」
忍足と宍戸とちょたが普通に話してるのを見て、自分も安心した。
いつの間にか跡部も自分のことを離してて、前を見れば跡部がいるだけ。
ふいに目が合い、跡部が優しく微笑んだ。つられてにこっとしてしまったが、跡部にあんな優しい表情出来るんだ…
少しドキッとしてしまった。仮にも男と女だ。少しくらい意識してもおかしくない。
その後部室にきた詩菜が、自分の涙を見て跡部に泣かされたと勘違いして跡部をボコボコにしたのは言うまでもない。