紅の王子様
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今年の梅雨はやけに長く、7月に入った今でもほとんど毎日と言っていいほど雨が降っている。
部活はよく潰れるし、最近ではミーティングと自主練習しかやっていない。
自主練習といっても使えるのはコートではなく校内設備のジム。(しかもテニス部専用)
雨でもやるとかいってるねぼすけ(※芥川さん家のじろーくん)もいるが、自分はそれに同意はできない。
「あーあ…なんでこうも毎日雨なんだろ…」
自分は窓側の席で外の雨を眺めていた。
「なあ凌、お前勉強してるか?」
いきなり岳人に話しかけられてびびった。
岳人の方へ振り向けば、詩菜と岳人は仲良く参考書とノートを広げ勉強していた。(なんかむかついた)
「勉強って…何のだよ?」
「期末テストの。あと一週間だよー」
「あっそ」
「あっそじゃねえんだよ!お前そんな余裕ぶっこいてて赤点取ってもしらねーからなばーか!」
「誰が馬鹿だこのチビ」
足で岳人の椅子をひっくり返してやった。俺の詩菜と仲良く勉強なんかしてるからだ。(そこ?)
自分は生まれつき頭が良いのか、勉強なんかまともにしたことは一度もない。
テスト直前にチラッとノートなんかを見れば大体出来る。
「詩菜だって言語系しか勉強してねーじゃん」
「だって他は落としても平気だけどこれ落としたら退学モノだもん」
「つーかお前氷帝のテストは難しいんだぞ。勉強しなきゃ赤点決定したようなもんだ!」
なんか自慢げに岳人語ってるけどめんどくさいからシカトしとこ。
それより終わらない梅雨の方が自分には大問題だ。
「お前らテスト前なのにやけに気抜けてんじゃねえか」
「岳人はちゃんと勉強せなあかんやろ?」
周りの生徒は受験前かのような勉強オーラを放っているのに(岳人が)ギャーギャー騒いでいたから目立っていたのか。
跡部と忍足も会話に混ざってきた。ま、こいつらはテストも余裕なんだろうな。
「凌は勉強しないのか?」
「だってこの子勉強する必要ないもの」
雨を見つめながらボーっとしている自分の変わりに詩菜が答えてくれた。
みんなが話している内容は耳には入っているが、反対側の耳にスーッと抜けていってしまう。
自分の頭にあることは一つだけ。
"雨、やまないかな"
「ほな今日の放課後勉強会でもしよか」
また今日も部活つぶれるのか…自然現象ってのは強いなあ。
…………え、勉強会?
「いいよー私別にヒマだし。日吉呼んでいいなら行く」
「構へんやろ、テスト期間は同じやし」
「二年も呼ぶのかよ」
「まあ宍戸を呼んだら鳳だって来るだろうしな」
「凌も来るやろ?」
勉強しないって今さっき言ったよな?聞いてなかったんですか?
「…お前は勉強するんじゃなくて勉強教えるんだよ」
気持ちを察したのか跡部が声をかけた。いや、そっちの方がめんどくさいんですけど。
それでも詩菜達が盛り上がってるから(帰りマックよろーとかって)断るわけにもいかず、放課後の勉強会が決定した。
トントンと軽く肩を叩かれた。
「…何」とだるそうに答えれば、うさんくさい笑みを浮かべてノートの端っこを指差す忍足の姿が目に入った。
そこには『雨、みんなで帰れば怖くないやろ?』の文字。
びっくりして顔を上げたら、忍足はもう詩菜達の会話に混ざっていた。
こいつ、ホントするどいんだな。
それでも自分が女だと気付かないのは、男だと信じきっているからなんだろうか?
小さく「ありがとう」と呟いてまた窓を見つめ続けた。