紅の王子様
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「え、何これ」
「校内雑誌『THE氷帝』の毎年恒例大人気特集『全校生徒のプロフィール&ランキング!』の解答用紙だよ☆」
HRで配られた分厚い冊子。
それらをぺらぺらめくりながらあちこちでお喋りが始まる。
前の席の詩菜に小声で問えば、楽しそうに返される。
『THE氷帝』を購買で見かけたり、女子が集まって読んでいたりと、存在は知っていたが、何だこれは。
聞く所によると、この雑誌は「雑誌部」とやらが製作していて、毎月発刊されるらしい。
そして毎年この時期に『全校生徒のプロフィール&ランキング!』という特集が組まれるという事で、三年生の皆は慣れた様に冊子に書き込んでいく。
冊子は、「一、あなたのお名前は?」から始まり、誕生日、身長体重、血液型、所属クラブなどのプロフィールから、「学校辞めろよ!と思う教師は?」やら「結婚できなさそうな人は?」など、かなりきわどい質問までざっと200問。
今は男装中である自分にとって「抱かれたい男は?」などという質問はかなり答えにくい。(名前出すんだもんな…超個人情報だよな…)(ていうかコレを一般男子はどう答えるんだ…?)
20分のHRで答え終われというのだから適当に答えようかとも思ったのだが、意外に皆真剣で、さっきまできゃあきゃあ騒いでいたくせに、今じゃ試験中よりも静かでシャーペンの走る音しか聞こえない。
つくづくおかしな学校だと思いながらも真面目に答える事にした。
次の日。
HRで、あろうことか今月の『THE氷帝』が配られた。(料金は今月分学費に含まれているらしい)(いらない人は可哀想だな…)(と、こぼしたら「そんな人いないよ!」と詩菜に怒られた)
編集早すぎるだろ。
全校生徒総勢何人だと思っているんだ。
雑誌部は物凄く有能な、それこそジェバンニのような連中で構成されているに違いない。(間に合う!が合言葉なんだきっと)(「この世に一晩でできない事は無い」が標語なんだ)
くだらないことを考えながらページを捲った自分は椅子から落ちるかと思った。
だって目次の次のページにいきなり見開きでデカデカと自分のドアップがありゃ誰でもビビるだろう。
思わず一度雑誌を閉じて、心の準備をしてからもう一度開いてみた。
ドアップな自分とこんにちは。ハローハローこれはこれはご機嫌いかがですか自分。
ミラクル待遇な自分のページを読みながら「このあおり誰が考えたんだろう」(『我等が愛しの王子様♡そのマル秘プロフを特別公開!』)(別にマル秘にした覚えはないし、マル秘である男装についてや編入の動機については全く触れていないのに…)とか、「この写真、いつ撮ったんだろう」とかいろいろツッコミを入れたい思いをぐっと堪え、次のページを捲ろうとすると「去年はここ跡部のページだったのに!」とニコニコしながら詩菜が教えてくれて、跡部を見れば雑誌を鞄に乱雑に突っ込み、机に突っ伏していた。ショックだったのだろうか。別に君の地位を奪うつもりは無かったんだ。ごめんよ。と後で言っておこう。
そんなことを思いながら次のページを開いてぶったまげた。
自分と同じ扱いで、今度は見開きで詩菜だった。
ちらり、と詩菜を見やれば楽しそうに日吉のプロフ(流石テニス部準レギュトップ、他の生徒よりはスペースが大きいものの、小さく簡潔にその他大勢の中に詰め込まれている)(勿論写真なし)を読んでいた。
彼女はアイドルだった、という事を再確認し、次のページを開くと右ページに跡部、左ページに忍足が写真集のようなポーズと目線でこっちを見つめていた。
ちなみに見開きを使われているのは自分と詩菜、一ページ独占しているのは跡部と忍足のみである。彼らもそれなりに人気はあるわけだ。
去年は忍足も跡部同様見開き特集だったなんて編入生の自分が知る筈は無い。
なんだか疲れてろくに読まずに閉じてしまい(雑誌部=ジェバンニ思考に囚われていて配られた時に表紙が自分なのに気が付かず、今更無駄に驚いてしまった)跡部同様机に突っ伏した。
昼休みに聞いた話によると、「留年してまで同じクラスになりたい人ランキング」でも「キスされたいランキング」でも「抱かれたい男ランキング」でも自分がダントツ1位だったらしい。
「女装して欲しい人」1位も自分だったのにぎょっとしたのはこの際置いておこう。(女装も何も今が男装だっての!)
自分に人気があるらしい事は気が付いてきていたものの、こうも明らかにされるとドン引きどうして良いかわからない。
しかも「好きなタイプ:秘密」にした事でいろんな意味で妄想が広がったらしく、女子の視線がこれまたいろんな意味で痛かった。
跡部のご機嫌(ついでに言うと忍足のご機嫌も)が史上最悪なので、部活は自主練となり、学校に残っていると何かと恐ろしいのでさっさと帰って部屋で腹筋でもする事にした。
つくづくおかしな学校に入ってしまったと思う。