紅の王子様
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「え、凌のヤツが風邪?」
「はい、朝一人で自主練してたみたいで…監督が倒れてたの見つけて運んだらしいです」
「今あいつ一人?」
「いや詩菜先輩がついて看病してるって」
「風邪っぽかったわけじゃなかったみたいなのに。」
「どうしたんやろなあ」
…最悪だ。
こんなタイミングで熱を出すなんて…練習に出られないじゃないか。
自分でもわかる。これは風邪の熱じゃない。
きっとストレス…精神面からきてるんだと思う。
ホント、弱くて笑っちまうよな。
「…で、何悩んでんの?」
そして隣で看病してくれてるこいつにはなんでもバレてしまう。
隠し通せるほど器用じゃない…全部話すしかない。
「えーっと…」
自分は全てをこいつに話した。
跡部と事故ってキスしたこと、滝にバレたこと、全て崩れるのが怖いこと。
詩菜は黙って聞いててくれた。聞き上手ってこういうこと言うんだろうな。
「…って感じです。はい」
「だから跡部と最近しゃべってないのね。なんか気まずそうだなって思った」
「まあーそうだね。」
「滝は…口堅いし、大丈夫だと思う。」
「そっか…」
コンコン
「はいー?」
部屋のドアがノックされて、詩菜が自分の代わりに返事をした。
ドアを開けてはいってきたのは忍足で、気抜いて髪の毛結ぶの忘れてたこと思い出して慌てて結んだ。
「忍足…」
「いや、熱大丈夫なんかなって。悪い、凌と話あるから外してくれへん?」
「……手出したら焼くよ」
そう言って詩菜は部屋を出て行った。
手なんか出すわけねえよ、仮にもこいつの前では男なんだしさ。
「熱、大丈夫なん?」
「平気…風邪じゃないし。それより話って何?」
「ん…もう本題に入るんかいな」
誰が話しにきたんだよ。早く話せ、身体がだるくてたまらない。
「昨日な、跡部と喧嘩してん」
「…珍しいね。」
「俺は恋愛に性別なんか関係ないと思うんよ」
「へー」
「…めっさ反応薄いな」
「だって関係ないもん」
「関係あるよ?」
そう言って忍足は、いきなり近付いて額にキスしてきた。
どうしたらいいかわからなくて呆然としていたら唐突に耳元でこう言い放った。
「凌が女の子やったら跡部とこんな喧嘩はせえへん。」
耳元で低音で囁かれ、身体がびくっとしてしまった。
忍足はそれを察したらしく自分から離れて行った。
「じゃあ俺練習戻るわ。それだけやから」
振り向きもせずに背中だけ見せて出て行ってしまった。
どういう意味で言われたのかよくわからないし、
忍足に囁かれた耳はまだ少しゾクゾクしているし、
本当は女の子なのにという罪悪感が残った。
忍足は、何を考えて動いているんだろう。
そんなことを考えながら、眠りに落ちた。