紅の王子様
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
………笑えない。
なんだこれ、何が起きた!?
忍足に「2人は付きおうてるん?」とかマジで爆笑もんな疑問をぶつけられた次の授業は体育だった。
男女別々の授業なのに、同じ体育館でやっているもんだから凌・跡部・忍足の3連コンボに女子の目もくぎづけで。
どうしようもないので男子は外で、ってことになって移動した。
マイハニー詩菜に別れを告げたら岳人に殴られた。
……ちびおかっぱめ。
今日の授業はバスケ。テニスほど得意じゃないけれど、プリンス達はやっぱり上手い。
岳人はあまりの飛びすぎにレッドカードが出たものの、凌は何やらせても上手だし、跡部も動きが早いし、忍足は身長を活かしてたくさんゴールするしで、体育館の窓から見てる女生徒の黄色い悲鳴は一時間止まなかった。
体育が終わる直前女子の方の体育教師(女28歳独身)にどうにかしてくれと言われたので、とりあえず口説いて逃げた。(だって怒られるのうぜえじゃん?)
「礼!」
「「「「ありがとうございました!」」」」
跡部による先生への礼も終わらせ、この日の体育はこれで終了。だったはずが…
「大石!跡部!」
先生に呼ばれた。それも跡部も一緒に。
やだなー何任されんのかなーだるいなー早く終わらせよーとか思いながら先生のもとへ小走りで向かった。
「なんスかー」
「いや大したことじゃないんだが、これ運んどいてくれないか?」
先生が指さした先にはバスケットボールが大量に入ったカゴみたいなやつ。
2つある。
「どこに運べばいいですか?」
「体育館の倉庫。」
体育館倉庫。たしか氷帝の体育館は4階建てで倉庫は一番上ではなかったか。
…オイオイ、このカゴ持って4階まで上がれってか。
男性教師に色仕掛けは通用しないので、口答えもなく運ぶことにした。
もちろん跡部も一つ、自分も一つ。
………ちょっと持ってみたが、果てしなく重い。
なのに跡部は軽々持ち上げてる。悔しいけど、これが男女の筋力の差なのかな。
そんなことを考えてボーっとしてると、跡部が近付いてきて声かけてきた。
「お前のカゴに入ってるボール、いくつか俺の方に移せ。」
「え!?いやいいよそんなん、別に運べるし」
「いいから移せよ。そんな細腕じゃ怪我するぜ?」
嫌味にニヤリと笑われちょっとむかついた。
でも真実なのだからしょうがない。とりあえず4つほど跡部の方に移してみた。
「…ありがと」
「礼なんかいらねえよ。さっさと運ぶぞ」
ぶっきらぼうで嫌味ばっかだけど、多分気遣ってくれたんだと思う。
跡部の背中見て、もっかいありがとって呟いといた(聞こえてなかったみたいだけど)
倉庫のドア開けてカゴを置いた。
はあ…ボール移して少し軽くなったけど、それでも重かった。
腕と手がジンジンする。保健室いって氷もらおうか…
またボーっとしてた。気が緩むと反射神経も鈍る。
「お前腕平気だったか?」
気付いたら跡部に腕掴まれて少し引き寄せられていた。びっくりしてものすごい勢いで跡部の手を振り払った。
「…ゼンゼンダイジョウブデス」
「なんで片言なんだよ。つーかお前、俺様のこと避けてるだろ?」
「さ、避けてねーし」
「この際だから言わしてもらうけどよ、お前俺らになんか隠してんだろ。」
「…なんかってなんだよ…」
「身体に触るとすげー嫌がるし、なんか隠してる。」
「なっなんも隠してな――っ………」
「!? 危ねえっ…!」
物凄い物音がして素早く目を閉じてしまった。大きい音には未だに慣れない。
そっと目を開けてみるとそこには跡部の顔。
「…大丈夫か?」
気付けば跡部の上には無数の体育用具。
何かがなだれになって落ちてきたんだと思う。跡部がかばってくれたんだ。
「大丈夫…」
その後協力して落ちてきたものをどかして、跡部と自分は無事助かった。
跡部にお礼を言わなくちゃ、って思ってても言葉が出てこない。
どうしようどうしようと思っていたら、跡部が口を開いた。
「…………悪い。」
どうにもできずその場から逃げ出してしまった。
走って走って屋上まで逃げた。
どうして跡部が謝ったのか、どうして自分は逃げ出したのか、どうして跡部の顔が見れないのか…………
跡部がかばってくれた瞬間、唇同士が触れ合ってしまった。
今日の部活もこれから残ってる午後の授業も、跡部の顔が見れない。
なんだこれ、
なんだこれ、何が起きた!?
どうしよう……
綾香が思い悩んでいる頃。
「……俺様が男とキス…」
女っぽいし、顔立ちはむしろ女なヤツとはいえ、俺はその場で頭を抱えざるを得なかった。
下手に意識してしまう自分がうぜえ。相手は男だぞ。
「…チッ」