紅の王子様
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「…俺も長太郎も忍足もジローも岳人も滝も、…きっと跡部のヤツだって、お前と仲良くなりたいって思ってるよ」
こいつらとなら、やっていけるかも。
綾香がそう思ってから2週間が過ぎた。
前言撤回やっぱ無理だ俺は孤独を愛してる、とコート脇のベンチに座り頭を抱えぶつくさ言う凌。
それを慰めるように頭を撫でる詩菜。
「おいこら凌何してやがる今から俺様と試合だ、し・あ・い!!」
「凌ー、跡部とがやなら俺とやろ!」
「クソクソ凌!詩菜から離れろよ!!」
「アップつきおうてや凌ー」
「ああもうほっといてくれよ…!」
一見すると冷たそうな彼らだが実は物凄く人懐っこい連中で2週間もたてば凌の迷惑声もどこ吹く風、顔を見れば凌、凌、と構って来る。
性別がバレるとヤバい綾香は友達になれたと最初は喜んでいたが、必要以上に構って来るので軽くヒステリーになっていた。
加えてクラスでは跡部のファン、忍足のファン、そして自分のファンと休み時間ごとに見たこともない女子が押しかけて来ては「これ作ったの」やら「彼女はいるの?」やら「お誕生日はいつ?」やら耐えずに話しかけてくるので最近はずっと便所に篭っている。(でも女子は「凌様はトイレになんか行かないのよ」って現実逃避してる)(男子便で個室に篭ってりゃう●こみたいだもんねそりゃ逃避するよね)
綾香は昔から女の子好きだったけど、(同姓にモテるんだよね綾香って)(もちろん異性にもモテてたけど本人無自覚だからさ!)どうもブリっ子が嫌いらしく、いかにもミーハーな子達に対しては本当に冷たい態度だった。
それは今も変わってないみたいで男子の前では超可愛い声(アレだよ、電話に出た時の声だよ)で喋ってやたらくねくねしてる子は総シカトで、少し緊張してる風の子にはにこやかに対応している。
綾香は元々顔もスタイルも声もいいからそんな態度で喋ったら勘違いさせちゃうだろうに、にこにこと女の子達に囲まれて、クッキーとか貰ったりしている。
私は跡部と綾香の間の机だから、(出席番号順だからさ)いるところがなくて(人口密度が高すぎるよあそこ)少し離れたがっくんの席で机に座り、椅子に座ったがっくんと談笑していた。
「だから詩菜も「向日」になればあの過密地帯から抜け出せるぜー?」
「またその話ー?しょうがないでしょ、私は乾家に引き取られたんだから」
「なんで従兄の俺ん家じゃないんだよー」
「知りませーん」
「でもホント、「向日」になればー」
「だからしつこいって…」
「違くて!ほら、お、俺と詩菜が結婚すれば向日詩菜になんじゃん!?」
「結婚!あははっ」
「なんだよ従兄はできんだぞ!!」
「しないし!」笑
あ、そう、とがっくんは机に突っ伏してしまった。眠いのかな。
チャイムが鳴るとばらばらと帰っていく女子達。
やっと自分の席に戻れてほっとしていると綾香の盛大なため息が聞こえる。
「どしたの」
「疲れた」
「あははお疲れ」
跡部や忍足のおかげで慣れてた(去年も同じクラスだったからね)私はいつもの光景だけど、綾香は前の学校では普通に女の子やってたんだし、こんなファンアタックは初めてだったんだろう。
貰ったらしいクッキーの箱を無言で差し出され、私が食べたら怒るんじゃない?と返すとこんなに食べたら太る、とむくれるのでしょうがなく一枚貰う。
少しくらい太った方がいいのに、と溢すと頬を抓られる。
痛いよ!と反撃で頭を軽く叩いたら、綾香の後ろの席の忍足と目が合った。
「なに、忍足」
「いや、な、ずっと気になっててんけど」
「うん?」
「2人は付きおうてるん?」
2人仲良く思わず噴き出す。
盛大に笑ったあと、綾香が笑いながら答えた。
「そう見える?」
「だってめっちゃラブラブやん」
「もっとわかりやすく接した方が女共に示しが付くぜ」
いつから聞いていたのかいつの間にか会話に加わっている跡部に今度は詩菜が返す。
「ていうかそれ、凌のファンを減らしたい+自分のファンを取り戻したいだけでしょ?」
「あー跡部相当とられたもんなぁ凌に」
忍足も追い討ちをかけ、かわいそうな跡部ーと三人で笑ったので当然気分を害した跡部はそっぽを向いてしまい。
それがおかしくて授業が始まってもずっとくすくす笑っていて先生に注意されたり。
先ほどの会話を聞いて、凌と詩菜が付き合ってないんだ、とクラスの男子も女子もがほっとしたのを当の本人たちはこれっぽっちも気付かなかった。