異世界の介入者
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チュートリアルが長い。
ツイステッドワンダーランドというゲームアプリの最初の感想はそれだった。
最近流行っているのは知っていたし、元々ディズニーは好きだから元ネタとなった映画たちも全部見たことがあるし、中にはソラで歌ってセリフが言えるくらいお気に入りの作品もある。
それでも流行りに乗って始めなかったのは、原作が好きすぎて実写化とかをなかなか受け入れられないっていう厄介オタク気質と今更はじめてもなあ…という気持ちがあったから。
…ということを、ランド帰りの駅で動く歩道に乗っている際に見た大きな広告の前で漏らしてしまったのがいけなかった。
一日中ハードに遊び倒した友人達が一斉にこちらを向いた。さっきまで光る広告を一心不乱に撮影していたというのに。
あ、しまった、やばい、と思うも遅く、狭い動く歩道の中で取り囲まれた私は先手必勝とばかりに「いや、興味ない!他のソシャゲで忙しいし!スマホの容量も足りないし!」と意思表明をしたが、そんなことで沼に引きずり込まんと目をギラつかせるオタクたちを止められるはずもなく。
「いやいやいや、絶対好きだから」
「ディズニーも好きだしこの人の絵も好きだよね?執事の、全巻持ってるもんね?」
「あんたの好みはこの人かこの人…あとこの人はcv.あの人で〜」
「こことここはクソデカ感情、ありがとうございます」
「チュートリアルだけ!チュートリアルだけ!」
その場で落とさないと離してくれないんじゃないかというくらい縋り付かれ、しぶしぶダウンロードしたアプリ。
帰りの電車でも両隣に引っ付かれ、全然わからないままとりあえず声と見た目が好みなキャラを選んでゲームを始める。
チュートリアルだけ。
それでやっぱり興味なかった、と明日の朝にでも言えばいいや。
両隣の友人が見守る(見張る、のが正しい)中、チュートリアルを進めていく。フルボイスすごいな…ねこちゃんかわいいな…
キリのいいところまで進めたくて、帰宅してからもリビングでプレイし続けてしまい、アニメのオープニングのような映像までたどり着いたのはもうすぐ0時になる頃だった。
「やぁ〜っと終わった!!なっげーわ!!」
でも悔しいかな、面白かった。
1章?くらいなら読んでみてもいいかも。確かアリスの話なんだよね?チュートリアルの二人の寮の…グリムも可愛かったし…ネコチャンは正義…それに最初に選んだ?手を取った?キャラもまだ出てこないし。あれ、よくわからないまま選んだけど後々本編で何か変わるんだろうか?
とりあえずシャワー浴びて寝よ…今日早起きだったし一日中遊んで疲れたし…
そう思って立ち上がる。
スマホをソファに置いたままふらふらと廊下へ出て、大きな鏡前を通り過ぎた時、視界の端で鏡の中に黒い馬車が見えた。ハッと振り返るも、そこにはいつも通りの姿見があるだけで、その中には自宅の廊下で浮かれたキャラクターのTシャツを着た、いかにもテーマパーク帰りですといった自分が見つめ返してくるだけ。はーやめてよね、びっくりした、おばけとか苦手だし…ゲームに引っ張られすぎ。早く寝よう。
頭を振ってさっきの幻覚を振り払い、脱衣所のドアを押し開ける。
真っ暗な脱衣所の電気をつければ洗面所の鏡に自分が映る、多分疲れた顔してるからさっさと洗顔してお風呂入って…そんなことを考えながら左手でドアを押しつつ右手で近くの壁にある電気のスイッチを押した。はずだった。
「うっ、眩し…!?」
普通の電球色であるはずの脱衣所の電気をつけたのになんだこのキラキラした光は。
電気のスイッチから反射的に手を離し、目を守るように片手で顔を覆う。
かたい扉についたままだった左手が何かふかふかの布のような手触りに変わった。は…?
そのまま扉を押し開け一歩踏み出し、片手で光を遮りながら目を細めて前を確認する。
同じポーズを反転された自分と鏡の中で目が合うはずだった。
でも、目が合ったのは心底驚いた顔をした見知らぬ人間だった。
「「えっ誰」」
目が合ったまま同じ事を言った。
何故見知らぬ人が我が家の脱衣所に。不審者?通報しないと…あっスマホリビングに置いてきた…!
慌てて扉を閉めようとするもドアノブがない。代わりにふかふかと中に綿でも入ってそうな感触のサテンみたいな布が扉全体を覆っていた。は?なにこれ。
とりあえず逃げようと後退したら同じ感触の壁に背中が当たった。え!?なに!?なんで!?振り返って見ると廊下はなくふかふかの布が待ち構えるばかり。ていうか天井低っ!?両側も肘が当たるくらい狭っ!?
狭く暗い場所で挙動不審になる私を困惑の表情で見つめたまま、目の前の見知らぬ人が「サムさん、自分エースを頼んだつもりだったんですけど」と言った。エース。ついさっきまで聞いていた名に顔を上げる。目の前の人の格好はさっきまでスマホ画面のキャラクターが着ていた制服にそっくり。
あー私、疲れ果てて脱衣所にたどり着く前に寝落ちたんだな。それでこんな変な夢を。
「ウーン…なんでもIN STOCKしているけど流石に仕入れてないものが混ざってるのは…ちょっと手に負えないね?」
狭い視界の死角から褐色肌が現れたかと思うと外側から扉を閉められる。
「えっ!ちょっと」
「転移魔法使う間少し眠っててね小鬼ちゃん」
ドアを押し返すも虚しく、狭いところに閉じ込められるように暗闇に包まれた。
ツイステッドワンダーランドというゲームアプリの最初の感想はそれだった。
最近流行っているのは知っていたし、元々ディズニーは好きだから元ネタとなった映画たちも全部見たことがあるし、中にはソラで歌ってセリフが言えるくらいお気に入りの作品もある。
それでも流行りに乗って始めなかったのは、原作が好きすぎて実写化とかをなかなか受け入れられないっていう厄介オタク気質と今更はじめてもなあ…という気持ちがあったから。
…ということを、ランド帰りの駅で動く歩道に乗っている際に見た大きな広告の前で漏らしてしまったのがいけなかった。
一日中ハードに遊び倒した友人達が一斉にこちらを向いた。さっきまで光る広告を一心不乱に撮影していたというのに。
あ、しまった、やばい、と思うも遅く、狭い動く歩道の中で取り囲まれた私は先手必勝とばかりに「いや、興味ない!他のソシャゲで忙しいし!スマホの容量も足りないし!」と意思表明をしたが、そんなことで沼に引きずり込まんと目をギラつかせるオタクたちを止められるはずもなく。
「いやいやいや、絶対好きだから」
「ディズニーも好きだしこの人の絵も好きだよね?執事の、全巻持ってるもんね?」
「あんたの好みはこの人かこの人…あとこの人はcv.あの人で〜」
「こことここはクソデカ感情、ありがとうございます」
「チュートリアルだけ!チュートリアルだけ!」
その場で落とさないと離してくれないんじゃないかというくらい縋り付かれ、しぶしぶダウンロードしたアプリ。
帰りの電車でも両隣に引っ付かれ、全然わからないままとりあえず声と見た目が好みなキャラを選んでゲームを始める。
チュートリアルだけ。
それでやっぱり興味なかった、と明日の朝にでも言えばいいや。
両隣の友人が見守る(見張る、のが正しい)中、チュートリアルを進めていく。フルボイスすごいな…ねこちゃんかわいいな…
キリのいいところまで進めたくて、帰宅してからもリビングでプレイし続けてしまい、アニメのオープニングのような映像までたどり着いたのはもうすぐ0時になる頃だった。
「やぁ〜っと終わった!!なっげーわ!!」
でも悔しいかな、面白かった。
1章?くらいなら読んでみてもいいかも。確かアリスの話なんだよね?チュートリアルの二人の寮の…グリムも可愛かったし…ネコチャンは正義…それに最初に選んだ?手を取った?キャラもまだ出てこないし。あれ、よくわからないまま選んだけど後々本編で何か変わるんだろうか?
とりあえずシャワー浴びて寝よ…今日早起きだったし一日中遊んで疲れたし…
そう思って立ち上がる。
スマホをソファに置いたままふらふらと廊下へ出て、大きな鏡前を通り過ぎた時、視界の端で鏡の中に黒い馬車が見えた。ハッと振り返るも、そこにはいつも通りの姿見があるだけで、その中には自宅の廊下で浮かれたキャラクターのTシャツを着た、いかにもテーマパーク帰りですといった自分が見つめ返してくるだけ。はーやめてよね、びっくりした、おばけとか苦手だし…ゲームに引っ張られすぎ。早く寝よう。
頭を振ってさっきの幻覚を振り払い、脱衣所のドアを押し開ける。
真っ暗な脱衣所の電気をつければ洗面所の鏡に自分が映る、多分疲れた顔してるからさっさと洗顔してお風呂入って…そんなことを考えながら左手でドアを押しつつ右手で近くの壁にある電気のスイッチを押した。はずだった。
「うっ、眩し…!?」
普通の電球色であるはずの脱衣所の電気をつけたのになんだこのキラキラした光は。
電気のスイッチから反射的に手を離し、目を守るように片手で顔を覆う。
かたい扉についたままだった左手が何かふかふかの布のような手触りに変わった。は…?
そのまま扉を押し開け一歩踏み出し、片手で光を遮りながら目を細めて前を確認する。
同じポーズを反転された自分と鏡の中で目が合うはずだった。
でも、目が合ったのは心底驚いた顔をした見知らぬ人間だった。
「「えっ誰」」
目が合ったまま同じ事を言った。
何故見知らぬ人が我が家の脱衣所に。不審者?通報しないと…あっスマホリビングに置いてきた…!
慌てて扉を閉めようとするもドアノブがない。代わりにふかふかと中に綿でも入ってそうな感触のサテンみたいな布が扉全体を覆っていた。は?なにこれ。
とりあえず逃げようと後退したら同じ感触の壁に背中が当たった。え!?なに!?なんで!?振り返って見ると廊下はなくふかふかの布が待ち構えるばかり。ていうか天井低っ!?両側も肘が当たるくらい狭っ!?
狭く暗い場所で挙動不審になる私を困惑の表情で見つめたまま、目の前の見知らぬ人が「サムさん、自分エースを頼んだつもりだったんですけど」と言った。エース。ついさっきまで聞いていた名に顔を上げる。目の前の人の格好はさっきまでスマホ画面のキャラクターが着ていた制服にそっくり。
あー私、疲れ果てて脱衣所にたどり着く前に寝落ちたんだな。それでこんな変な夢を。
「ウーン…なんでもIN STOCKしているけど流石に仕入れてないものが混ざってるのは…ちょっと手に負えないね?」
狭い視界の死角から褐色肌が現れたかと思うと外側から扉を閉められる。
「えっ!ちょっと」
「転移魔法使う間少し眠っててね小鬼ちゃん」
ドアを押し返すも虚しく、狭いところに閉じ込められるように暗闇に包まれた。
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