「名前ちゃん名前ちゃん」
「何」
「今日の放課後、暇？」
「全然」
「なんで、なんか用事？」


せっかく駅前の美味しいケーキ屋さんのクーポン持ってるのに、これ今日までだからさ、一緒に行こうよ名前ちゃん
と、続こうとしていた俺の台詞は「忙しいから話しかけないで」という名前ちゃんの厳しい一言により、吐かれる事は無くて。
なんでそんなに眉間に皺寄せて教科書なんか読んでるの。
首を傾げる俺をぎろり、と睨むと、大声で「真田ァ！」と叫んだ。


「何で御座るか名前殿！」
「放課後、一緒に行こう」
「え、ちょっと待って、真田の旦那と名前ちゃんどっか行くの？」


慌てて問えばさっきより厳しい目付きで睨まれて。
何がなんだか、もしかしなくとも、真田の旦那とできてるだなんてことはないんだろうけど、


「猿飛」
「はい？」


黙って後ろの黒板を指差されて、そのまま視線をずらせば、連絡用に使われる小さめのその黒板に、赤いチョークで、「今日の放課後　東館二階の２－Ｄの教室にて数学追試」と書いてあった。
「あ、」と小さく声を漏らせば、痛いくらい視線が刺さってきて、とても「勉強みてあげようか」とか言える雰囲気でもなくて、ぎこちなく視線を戻して曖昧に笑いかけた俺は、思い切りノートですっぱたかれた。



補習常連組をナメんなよコラァ！

（追試なんて日常茶飯事だよ追試落ちて補習って流れが今から見えてますが何か！）（キレないで、落ち着いて、ね？名前ちゃん）（うるさい成績優秀猿飛佐助にはなーんにも言われたくない！）