おお振り
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最近どうも寒くて空も暗くて忘れがちだったけれど、夏なんですよね。
夏休みが始まっても実感できなかったのに、何故今日言うかというと、夏期講習が始まったんです。
暑い。
電車から降りて、思ったこと。暑い。
傘を持つ汗ばむ手に嫌気をさしながら切符を自動改札に通す。
前来た時は人通りも少なかったのに今日は若者でいっぱいだ。
この人達のほとんどが予備校に吸い込まれていくのだから恐ろしい。遊びに来た人はいないのか。
私も例に漏れず、予備校に吸い込まれる1人なわけだが、普段塾に行っていない為凄く困る。(去年の秋冬とかは塾に引き篭もってたけどさ)
なんか皆賢そうだし、真面目そうだし、壁に貼ってある「現役合格」の字が自分を脅かす。
ついこないだまで受験生だったって言うのにまた受験か。
しかも、今度はもっと人生に響いてくるものだ。
大学受験。
へらへらしている馬鹿っぽい大学生をよく目にするが、あの人達が学校や予備校でのプレッシャーや勉強やその他もろもろに打ち勝ってきたというのだから馬鹿にはできない。
私は、学校のテストで悲惨な結果を連続更新して通知表も悲惨だった為、親に無理やり的な形で夏期講習に来さされたのだが、「医学系」の文字を掲げる階に消えていく自分とそんなに歳の変わらない人達を見て、泣きたくなる。
まだやりたい事も学びたい事も決まってなくて、ましてや、勉強がこの上なく嫌いで、大学に入ってまで学ぶという事が果たして自分にとって良いのかとまで考え出す始末。(高校には絶対行きたかったんだ、だから頑張れたんだよ)
それでも、やっぱり大学には入りたいな、と夏期講習に来てみたものの、未来を映す瞳を持つ人達の中で場違いだ、と帰ってしまいたい気持ちになる。
自分の受講表に書かれた番号の教室に入れば、がらんと白く大きな壁と大きな黒板が出迎え、人がまばらに座っている。
またしても「現役合格」が自分を見下ろし、胃が縮む想いだ。(何でそんな2メートル間隔くらいで貼ってあるんだよもう!)
この静かな空気も重たい。私は図書館の静けさが苦手なタイプだ。
とりあえず自由席っぽいので適当に後ろの方に座り、鞄からテキストを出す。
全くといって良いほど予習してなく、その上まぁ大丈夫だよね、とか軽く考えていたのだが、部屋に入った時に辞書片手に予習している子がいて、ひやり、としたので一応訳すだけでもしておこうと思ったからだ。
ちなみに私はがっこうの英語の授業も古典の授業も予習などした事がなく、当てられるな、と思ってから慌てて電子辞書を叩くタイプで、予習の仕方がはっきり言ってわからない。
本音を言えば、テスト勉強の仕方も良くわかっていない。(だからテストも悲惨なんだよね)(よくこれで高校受かったな)
テキストを開いてノートを出し、一文目から読んでみる。
読める。読めるんだけど、いざ訳せと言われたらどう訳して良いのかわからない。
文型がわかれば訳せる、といわれた事があるが、「文型って何?」な私は今までフィーリングで訳してきた。(そりゃ点も悪いよな)(何でここまで文法用語が身についてないんだろう)(勉強しないからだよね、わかってます)
単語を繋げていって、意味の通る日本語にしようと躍起になっていると声をかけられた。
「隣、空いてますか?」
顔を上げれば、ニット坊(この時期だしリネンかも知れない)を被り、額縁眼鏡をした長身の男の子が私の隣の席(思いっきり私の鞄が乗っている)を指差して聞いていた。
気が付けば周りはほとんど人で埋まっていて、空いているのはここと向こうの方にちらほらだけだ。
「ごめんなさい」と鞄を避けつつ、どこかで見たかな?と首を捻ると隣に座ったその子がにこやかに話しかけてきた。
「苗字もここなんだ?」
え?!と顔を見れば一瞬きょとん、とされ、苦笑しながら眼鏡をはずす。
眼鏡をはずした瞬間、何故自分がわからなかったのか疑問に思うほどその人物は見知った人だった。
「花井君!」
「眼鏡変えたしな、でもわかれよな!」
軽く頭を小突かれ、ごめんーと軽く謝れば、楽しそうにけらけら笑われた。
眼鏡姿に慣れていないのと、こんなに近くで見たこと無かったのと、いつもユニフォームか制服もどき姿しか見たこと無かったので、Tシャツにジーパンな彼(しかもnew眼鏡)を認識できなかったのだ。
「え、でも、なんで?暇なの?」
「どういう意味だよ」
「花井君も高校生、っつかタメだけどさ、勉強しなきゃいけないのは同じだけどさ、夏って忙しいんじゃないの?」
「そりゃ忙しいけど、お袋に行っとけって言われてさ。監督も勉強しとけって言うし、一週間詰め込みコースじゃなくて日を選べるのにしたから」
だから野球重視で進める夏休みだけど、9月からの勉強についていける程度の予復習をサポートさせる為に来たんだよ、と言われ、言葉に詰まってしまう。
凄い。大変なはずなのに、野球だけでいっぱいいっぱいな筈なのに。
それでも勉強するんだ、ああ、もうホント帰りたい。隣に座っててすみません。ホント申し訳ない。
俯いた私に何を思ったか「水飲むか?」とか聞いてきて、花井君らしいなぁと噴出しちゃって、私も勉強頑張んなきゃなぁと漠然と思った。
「今日からよろしくな!」
そう言ってにっこり笑った顔が太陽みたいに眩しくて、ああ、夏だなぁなんて思ったりした。
夏休みが始まっても実感できなかったのに、何故今日言うかというと、夏期講習が始まったんです。
暑い。
電車から降りて、思ったこと。暑い。
傘を持つ汗ばむ手に嫌気をさしながら切符を自動改札に通す。
前来た時は人通りも少なかったのに今日は若者でいっぱいだ。
この人達のほとんどが予備校に吸い込まれていくのだから恐ろしい。遊びに来た人はいないのか。
私も例に漏れず、予備校に吸い込まれる1人なわけだが、普段塾に行っていない為凄く困る。(去年の秋冬とかは塾に引き篭もってたけどさ)
なんか皆賢そうだし、真面目そうだし、壁に貼ってある「現役合格」の字が自分を脅かす。
ついこないだまで受験生だったって言うのにまた受験か。
しかも、今度はもっと人生に響いてくるものだ。
大学受験。
へらへらしている馬鹿っぽい大学生をよく目にするが、あの人達が学校や予備校でのプレッシャーや勉強やその他もろもろに打ち勝ってきたというのだから馬鹿にはできない。
私は、学校のテストで悲惨な結果を連続更新して通知表も悲惨だった為、親に無理やり的な形で夏期講習に来さされたのだが、「医学系」の文字を掲げる階に消えていく自分とそんなに歳の変わらない人達を見て、泣きたくなる。
まだやりたい事も学びたい事も決まってなくて、ましてや、勉強がこの上なく嫌いで、大学に入ってまで学ぶという事が果たして自分にとって良いのかとまで考え出す始末。(高校には絶対行きたかったんだ、だから頑張れたんだよ)
それでも、やっぱり大学には入りたいな、と夏期講習に来てみたものの、未来を映す瞳を持つ人達の中で場違いだ、と帰ってしまいたい気持ちになる。
自分の受講表に書かれた番号の教室に入れば、がらんと白く大きな壁と大きな黒板が出迎え、人がまばらに座っている。
またしても「現役合格」が自分を見下ろし、胃が縮む想いだ。(何でそんな2メートル間隔くらいで貼ってあるんだよもう!)
この静かな空気も重たい。私は図書館の静けさが苦手なタイプだ。
とりあえず自由席っぽいので適当に後ろの方に座り、鞄からテキストを出す。
全くといって良いほど予習してなく、その上まぁ大丈夫だよね、とか軽く考えていたのだが、部屋に入った時に辞書片手に予習している子がいて、ひやり、としたので一応訳すだけでもしておこうと思ったからだ。
ちなみに私はがっこうの英語の授業も古典の授業も予習などした事がなく、当てられるな、と思ってから慌てて電子辞書を叩くタイプで、予習の仕方がはっきり言ってわからない。
本音を言えば、テスト勉強の仕方も良くわかっていない。(だからテストも悲惨なんだよね)(よくこれで高校受かったな)
テキストを開いてノートを出し、一文目から読んでみる。
読める。読めるんだけど、いざ訳せと言われたらどう訳して良いのかわからない。
文型がわかれば訳せる、といわれた事があるが、「文型って何?」な私は今までフィーリングで訳してきた。(そりゃ点も悪いよな)(何でここまで文法用語が身についてないんだろう)(勉強しないからだよね、わかってます)
単語を繋げていって、意味の通る日本語にしようと躍起になっていると声をかけられた。
「隣、空いてますか?」
顔を上げれば、ニット坊(この時期だしリネンかも知れない)を被り、額縁眼鏡をした長身の男の子が私の隣の席(思いっきり私の鞄が乗っている)を指差して聞いていた。
気が付けば周りはほとんど人で埋まっていて、空いているのはここと向こうの方にちらほらだけだ。
「ごめんなさい」と鞄を避けつつ、どこかで見たかな?と首を捻ると隣に座ったその子がにこやかに話しかけてきた。
「苗字もここなんだ?」
え?!と顔を見れば一瞬きょとん、とされ、苦笑しながら眼鏡をはずす。
眼鏡をはずした瞬間、何故自分がわからなかったのか疑問に思うほどその人物は見知った人だった。
「花井君!」
「眼鏡変えたしな、でもわかれよな!」
軽く頭を小突かれ、ごめんーと軽く謝れば、楽しそうにけらけら笑われた。
眼鏡姿に慣れていないのと、こんなに近くで見たこと無かったのと、いつもユニフォームか制服もどき姿しか見たこと無かったので、Tシャツにジーパンな彼(しかもnew眼鏡)を認識できなかったのだ。
「え、でも、なんで?暇なの?」
「どういう意味だよ」
「花井君も高校生、っつかタメだけどさ、勉強しなきゃいけないのは同じだけどさ、夏って忙しいんじゃないの?」
「そりゃ忙しいけど、お袋に行っとけって言われてさ。監督も勉強しとけって言うし、一週間詰め込みコースじゃなくて日を選べるのにしたから」
だから野球重視で進める夏休みだけど、9月からの勉強についていける程度の予復習をサポートさせる為に来たんだよ、と言われ、言葉に詰まってしまう。
凄い。大変なはずなのに、野球だけでいっぱいいっぱいな筈なのに。
それでも勉強するんだ、ああ、もうホント帰りたい。隣に座っててすみません。ホント申し訳ない。
俯いた私に何を思ったか「水飲むか?」とか聞いてきて、花井君らしいなぁと噴出しちゃって、私も勉強頑張んなきゃなぁと漠然と思った。
「今日からよろしくな!」
そう言ってにっこり笑った顔が太陽みたいに眩しくて、ああ、夏だなぁなんて思ったりした。
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