おお振り
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「ねー水谷ー教科書貸して?」
英語の、とにっこり笑って手を差し出されて、びっくりして暫く見つめてしまった。
苗字はよくうちの教室に来て仲良い子達と喋ってチャイムが鳴るギリギリ前に帰ってく。
お昼休みは勿論、短い休み時間にもよく来るから、顔見知りになって、話すようになって、今じゃ結構仲良い、なんて自称してるわけで。
今日も二時間目の終わり、3時間目が始まるまで後7分くらいの時にガラリとドアを開けて入ってきた。
きょろきょろして窓際の方に歩いてきた苗字を目で追ってたんだけど、いつも話す女の子グループとは挨拶をしただけで、どんどんこっちに歩いてくる。
あれ、なんて思っているうちに、目の前にいて、教科書貸して、だ。
「水谷?さっき英語だったでしょ?それとも忘れたとか?」
机の上に筆箱しか乗っていないのに気付いてそう尋ねてくる。俺は慌てて机の中に仕舞ったばっかりの教科書を引っ張り出して手渡した。
ちょっとだけ触れた指先に顔の温度がぐんと上がって、ありがとうと笑まれてただ教室を出て行く背中を目で追うだけで。
あーやばいやばい。
返しに来てくれる時も喋れるかと思うと顔がやにさがる。
…あれ?
なんで俺は早々と教科書を机に仕舞ったりなんかしてたんだろう。普段なら次の授業が始まる直前まで机に出しっぱなしだ。
首を傾げて記憶を辿っていると、さっと顔色が変わったのが自分でもわかった。
さっきから少し遠くでちらちらにやにやと俺を見ていた苗字の友達たちに何か言ってやろうと思っていたことも吹っ飛んだ。
やばい。
さっきと違う意味でヤバい。
俺は勢い良く立ち上がるといろんな人にぶつかりながら戸まで行き、ドアをけたたましい音を立てて開け、廊下を猛ダッシュした。
「苗字!」
バァン!と壊れそうなでかい音を立ててドアが開き、顔を真っ赤にして肩で息をする俺を吃驚した顔で迎えた苗字の元へ、視線が突き刺さるのも気にせずずかずかと歩み寄る。
「ど、どうしたの?」
「教科書、返して」
「なんで?」
「いいから」
教科書を開いていた苗字にぎょっとしたが、応答が普段通りなので少し安心した。
大きく息を吸ってからもう一度返して、と言ってみるが、不信そうにこっちを一瞥し、嫌だ、と口を尖らせた。
「ほら、チャイム鳴るよ、もう今からじゃ他のクラスに借りにいけないもん、水谷も戻りなよ」
「お願いだから返して」
「なんでよ、さっきは無言で差し出してくれたくせに」
「いいから!」
「なんなの?私は今日EXERCISE4の(6)が当たるんだから」
だから必要なの、と言ってページをめくって固まってしまった彼女を見て、終わった、と思った。
「…水谷」
「……」
「…水谷?」
「…はい、」
「『水谷文貴』!」
心なしか頬が赤い苗字が教科書を俺に押し付けてそんなことを言うもんだから、理解できなくて、暫く突っ立っていたけれど、チャイムが鳴ったのと、ピンと来たのと、顔が爆発するくらい熱くなったのは、ほぼ同時たった。
EXERCISE4 次の文を和訳しなさい。
(6)Who is the person whom you have a crush on?
あなたが首ったけである人は、誰ですか?
その下には「苗字名前」と濃く(何度もなぞったから)書かれていた。
英語の、とにっこり笑って手を差し出されて、びっくりして暫く見つめてしまった。
苗字はよくうちの教室に来て仲良い子達と喋ってチャイムが鳴るギリギリ前に帰ってく。
お昼休みは勿論、短い休み時間にもよく来るから、顔見知りになって、話すようになって、今じゃ結構仲良い、なんて自称してるわけで。
今日も二時間目の終わり、3時間目が始まるまで後7分くらいの時にガラリとドアを開けて入ってきた。
きょろきょろして窓際の方に歩いてきた苗字を目で追ってたんだけど、いつも話す女の子グループとは挨拶をしただけで、どんどんこっちに歩いてくる。
あれ、なんて思っているうちに、目の前にいて、教科書貸して、だ。
「水谷?さっき英語だったでしょ?それとも忘れたとか?」
机の上に筆箱しか乗っていないのに気付いてそう尋ねてくる。俺は慌てて机の中に仕舞ったばっかりの教科書を引っ張り出して手渡した。
ちょっとだけ触れた指先に顔の温度がぐんと上がって、ありがとうと笑まれてただ教室を出て行く背中を目で追うだけで。
あーやばいやばい。
返しに来てくれる時も喋れるかと思うと顔がやにさがる。
…あれ?
なんで俺は早々と教科書を机に仕舞ったりなんかしてたんだろう。普段なら次の授業が始まる直前まで机に出しっぱなしだ。
首を傾げて記憶を辿っていると、さっと顔色が変わったのが自分でもわかった。
さっきから少し遠くでちらちらにやにやと俺を見ていた苗字の友達たちに何か言ってやろうと思っていたことも吹っ飛んだ。
やばい。
さっきと違う意味でヤバい。
俺は勢い良く立ち上がるといろんな人にぶつかりながら戸まで行き、ドアをけたたましい音を立てて開け、廊下を猛ダッシュした。
「苗字!」
バァン!と壊れそうなでかい音を立ててドアが開き、顔を真っ赤にして肩で息をする俺を吃驚した顔で迎えた苗字の元へ、視線が突き刺さるのも気にせずずかずかと歩み寄る。
「ど、どうしたの?」
「教科書、返して」
「なんで?」
「いいから」
教科書を開いていた苗字にぎょっとしたが、応答が普段通りなので少し安心した。
大きく息を吸ってからもう一度返して、と言ってみるが、不信そうにこっちを一瞥し、嫌だ、と口を尖らせた。
「ほら、チャイム鳴るよ、もう今からじゃ他のクラスに借りにいけないもん、水谷も戻りなよ」
「お願いだから返して」
「なんでよ、さっきは無言で差し出してくれたくせに」
「いいから!」
「なんなの?私は今日EXERCISE4の(6)が当たるんだから」
だから必要なの、と言ってページをめくって固まってしまった彼女を見て、終わった、と思った。
「…水谷」
「……」
「…水谷?」
「…はい、」
「『水谷文貴』!」
心なしか頬が赤い苗字が教科書を俺に押し付けてそんなことを言うもんだから、理解できなくて、暫く突っ立っていたけれど、チャイムが鳴ったのと、ピンと来たのと、顔が爆発するくらい熱くなったのは、ほぼ同時たった。
EXERCISE4 次の文を和訳しなさい。
(6)Who is the person whom you have a crush on?
あなたが首ったけである人は、誰ですか?
その下には「苗字名前」と濃く(何度もなぞったから)書かれていた。