ハウルの動く城
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「あ、すみませんでした間違えました」
「おいおいおい、帰るなよ」
びっくりした。
てっきり家を間違えたと思って扉を閉めようとすると暖炉から声が上がる。
暖炉が喋る家なんて、あたしはひとつしかしらない。
と、言う事は、やっぱりここはハウルの家なんだ。
「あんまり綺麗だからびっくりしちゃった。前来た時は歩くのも怖いくらい物が積み上がってて、埃っぽいし、汚いしで、息もできないくらいだったのにどうしちゃったわけ」
「引越ししたのさ」
「まぁ、間取り変わってるしね。可愛らしいご趣味になりましたこと。」
カーテンやテーブルクロスなど花柄で明るい色の物達を珍しげに見つめるあたしにカルシファーが苦笑を返す。
「ナマエは久しぶりに来たから知らないけどいろいろあったんだぞ、いろいろ」
「へぇ?あ、あの終戦と何か関係あるの?」
キラキラとした瞳をこっちに向けて悪戯っぽく笑うナマエにカルは少し炎をオレンジ色に染めて「大有りさ」と意味深に答える。
ちなみにこのオレンジの炎は照れたときの色だ。
「ところでお前無事だったのか?戦争に駆り出され―…」
「あぁら、あたしは自分のしたくない事は徹底的にしない主義なのよ」
きゃらきゃらと独特の笑い声を上げて、近くの椅子を暖炉の前まで引っ張ってくるとどっかりと座り込み、目線をカルシファーに合わせる。
突然の急接近にまたしてもオレンジ色になりながら「じゃあ戦争には行かなかったのか?」と問うカルシファーに「行ったわ」とけろりと答え、机の上のビスケットに目をやると、ひょい、と指を動かした。
ビスケットは空を舞い、ナマエの手の中に落ちた。
「どういう意味だよ??」
「戦争なんかクソ食らえでも参加しないとお目玉食らうでしょ?だから参加するふりして戦火の上空のそのまた上空をふらふら飛んで、見つかりそうになったら適当にミサイルのそば飛んで、またふらふらと空中散歩していたの。そしたらいつの間にか終わってたの、戦争。」
ぱりっとビスケットを食べながらなんでもないように言う彼女に「ハウルがあんな目にあってたときに良く…」と小さく零す炎の悪魔。
当のナマエは「美味しいわね」とかマイペースに呟きながらテーブルから二枚目を引き寄せていた。
「あんまり食べるなよ、ソフィーのお手製なんだ、マルクルが怒るぞ。あとハウルも。」
「…ソフィー?」
首をかしげる彼女に、ああそうか知らないんだ、と一人合点し、驚かせてやろうと口角を上げる。
「ハウルの恋人。結婚するんだぜ、もうじき!」
「ふーん」
思った以上に適当な返事に拍子抜けしつつ、試しに「荒地の魔女も一緒に住んでるんだぜ」と言ってみれば椅子がひっくり返るかというオーバーリアクションで目を剥きながら「あれっち?!」と意味のわからない事を口走り、ごほごほとむせた。
ハウル結婚というネタに対してこの反応をして欲しかったのに、とむくれるカルを尻目に気管にビスケットを入れてしまったらしい彼女は涙目になって咳き込んでいる。
「どうしたのカルシファー騒がしくして…まぁ大変!」
階段の上から声がしたと思うと銀髪の可愛らしい女の人が駆け下りて来て、慌てて水をナマエに差し出した。ナマエはそれを一気飲みすると荒い息のまま、飲み干したはずのコップの中に何故かある水を思いっきりカルシファーにぶっかけた。
「?! 何するの貴女!」
「大丈夫よ、怒りをぶつけただけ。水じゃないわ魔法よ。あんたのせいで死ぬかと思ったわ!」
「それはこっちの台詞だ、本気で死ぬかと思っただろナマエ!驚かすなよ!!」
にらみ合ったままの2人に現在状況を飲み込めないソフィーがおろおろしていると外からマルクルが帰ってきた。
「あれっナマエ!久しぶり!どうしたの?!」
荷物を放り投げ、腰の辺りにぎゅっと抱きつく小さな魔法使いに柔らかな笑みを向けるナマエ。
そのやりとりを見て、さらに混乱するソフィーにカルが声をかける。
「ナマエはハウルの幼馴染?みたいな奴でさ。ハウル並みの魔力と技術を持ってるけどハウル並みにマイペースなんだ」
「ちょっと、あいつと一緒にしないでくれる?」
不機嫌オーラを撒き散らしカルを睨むナマエに思わず小さくなり「ホントの事だろ」と呟くカル。もう一度言ってみなさいよ、と掌から溢れる水をちらつかせながら凄むナマエの腕を柔らかく諌める腕が伸びた。
「僕の友人をあんまり虐めないでくれるかい?」
後ろからソフィーを抱きしめ、空いたほうの手でナマエの腕を掴んだ人物。
この城の主、ハウルその人だ。
「久しぶり、ナマエ、よくここがわかったね」
「カルの魔力を辿れば簡単よ」
「へぇ、カルシファーがこの城を隠しているはずなんだけどな」
そう言ってカルシファーを見れば「こいつにはわかっちまうんだ、昔からだろ」と口を尖らせた。
「で、何の御用かな?」
「あ、結婚するんだってね、その子がソフィー?綺麗な髪ね、あたし好きだわ」
ハウルをスルーしてソフィーの髪に触れるナマエ。面白くなさそうな顔をしたハウルを押しのけ、ビスケットも美味しかったわ、と言えば皿の上の数の減ったビスケットを見つけたマルクルから非難の声が上がる。
マイペース軍団のせいで慣れているはずのソフィーも、ナマエのあまりのマイペースぶりに困ったように微笑む事しかできず、調子に乗ってべらべらと喋り捲るナマエのマシンガン攻撃をかわせずにハウルに助けを求めれば彼はすでに遠い目をして悟りの境地に入っていた。
「というわけで、あたしも参加するわ、ウェディング!」
「…何処がどう繋がって「というわけ」になったのかわかんないんだけどナマエ」
一通り喋り終わったラストにそう言い放ったナマエにようやく突っ込めたハウル。
「参加するのよ」という返事になっていない返事を貰い、ああそう、と疲れたようにソファに身体を沈めた。
「ウェディングドレスはもうあるの?」
「いいえ、まだ…別に普段の服でも良いかなって私は…」
「じゃあこんなのはどう?!」
ソフィーが全部言い終わる前にぱちんと指を鳴らしてしまったナマエ。
コミカルな音とともに煙が上がり、その煙が晴れた中に立っていたのは純白のドレスに身を包むソフィーだった。
シンプルながらにあちこちにセンスが光るドレスを纏い、花と星屑を散りばめられた星色の髪を可愛らしくアップにし、薄化粧をされた顔には薄くベールがかかっている。
ソファに沈んでいたハウルは黒ひげ危機一髪のように飛び上がり、ソフィーの周りを、見ているこっちが目が回るよ、というスピードでぐるぐる歩いた末に抱き上げて「ブラボーナマエ!」と歓声を上げた。
残された面々も見事なまでにソフィーに似合うドレスを一瞬で形にしてしまったナマエに感心している。
「え、えっと、ありがとうナマエ、私、こんな…」
「すっごく綺麗よソフィー!ブーケはあたしに投げてね!」
満面の笑みで笑うナマエに、いつの間にか手にしていたブーケを予行演習とばかりに後手で投げる。弧を描いてナマエの元に飛んできたブーケ…のはずが、その花束は別の人物の腕の中に落ちた。
「えーと、こんにちは?」
パステルイエローのスーツに身を包んだ青年が今しがた飛んできたわっさりと咲き誇る花を持って困ったようにドア口に突っ立っていた。
「あーーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!!あたしの!あたしの!!」
指先を突きつけられただけで吹っ飛ばされ、なんとも哀れなこの隣の国の王子様とマイペース女王の魔女ちゃんが恋に落ちるだなんてこの場の誰が予想できたであろうか。
「おいおいおい、帰るなよ」
びっくりした。
てっきり家を間違えたと思って扉を閉めようとすると暖炉から声が上がる。
暖炉が喋る家なんて、あたしはひとつしかしらない。
と、言う事は、やっぱりここはハウルの家なんだ。
「あんまり綺麗だからびっくりしちゃった。前来た時は歩くのも怖いくらい物が積み上がってて、埃っぽいし、汚いしで、息もできないくらいだったのにどうしちゃったわけ」
「引越ししたのさ」
「まぁ、間取り変わってるしね。可愛らしいご趣味になりましたこと。」
カーテンやテーブルクロスなど花柄で明るい色の物達を珍しげに見つめるあたしにカルシファーが苦笑を返す。
「ナマエは久しぶりに来たから知らないけどいろいろあったんだぞ、いろいろ」
「へぇ?あ、あの終戦と何か関係あるの?」
キラキラとした瞳をこっちに向けて悪戯っぽく笑うナマエにカルは少し炎をオレンジ色に染めて「大有りさ」と意味深に答える。
ちなみにこのオレンジの炎は照れたときの色だ。
「ところでお前無事だったのか?戦争に駆り出され―…」
「あぁら、あたしは自分のしたくない事は徹底的にしない主義なのよ」
きゃらきゃらと独特の笑い声を上げて、近くの椅子を暖炉の前まで引っ張ってくるとどっかりと座り込み、目線をカルシファーに合わせる。
突然の急接近にまたしてもオレンジ色になりながら「じゃあ戦争には行かなかったのか?」と問うカルシファーに「行ったわ」とけろりと答え、机の上のビスケットに目をやると、ひょい、と指を動かした。
ビスケットは空を舞い、ナマエの手の中に落ちた。
「どういう意味だよ??」
「戦争なんかクソ食らえでも参加しないとお目玉食らうでしょ?だから参加するふりして戦火の上空のそのまた上空をふらふら飛んで、見つかりそうになったら適当にミサイルのそば飛んで、またふらふらと空中散歩していたの。そしたらいつの間にか終わってたの、戦争。」
ぱりっとビスケットを食べながらなんでもないように言う彼女に「ハウルがあんな目にあってたときに良く…」と小さく零す炎の悪魔。
当のナマエは「美味しいわね」とかマイペースに呟きながらテーブルから二枚目を引き寄せていた。
「あんまり食べるなよ、ソフィーのお手製なんだ、マルクルが怒るぞ。あとハウルも。」
「…ソフィー?」
首をかしげる彼女に、ああそうか知らないんだ、と一人合点し、驚かせてやろうと口角を上げる。
「ハウルの恋人。結婚するんだぜ、もうじき!」
「ふーん」
思った以上に適当な返事に拍子抜けしつつ、試しに「荒地の魔女も一緒に住んでるんだぜ」と言ってみれば椅子がひっくり返るかというオーバーリアクションで目を剥きながら「あれっち?!」と意味のわからない事を口走り、ごほごほとむせた。
ハウル結婚というネタに対してこの反応をして欲しかったのに、とむくれるカルを尻目に気管にビスケットを入れてしまったらしい彼女は涙目になって咳き込んでいる。
「どうしたのカルシファー騒がしくして…まぁ大変!」
階段の上から声がしたと思うと銀髪の可愛らしい女の人が駆け下りて来て、慌てて水をナマエに差し出した。ナマエはそれを一気飲みすると荒い息のまま、飲み干したはずのコップの中に何故かある水を思いっきりカルシファーにぶっかけた。
「?! 何するの貴女!」
「大丈夫よ、怒りをぶつけただけ。水じゃないわ魔法よ。あんたのせいで死ぬかと思ったわ!」
「それはこっちの台詞だ、本気で死ぬかと思っただろナマエ!驚かすなよ!!」
にらみ合ったままの2人に現在状況を飲み込めないソフィーがおろおろしていると外からマルクルが帰ってきた。
「あれっナマエ!久しぶり!どうしたの?!」
荷物を放り投げ、腰の辺りにぎゅっと抱きつく小さな魔法使いに柔らかな笑みを向けるナマエ。
そのやりとりを見て、さらに混乱するソフィーにカルが声をかける。
「ナマエはハウルの幼馴染?みたいな奴でさ。ハウル並みの魔力と技術を持ってるけどハウル並みにマイペースなんだ」
「ちょっと、あいつと一緒にしないでくれる?」
不機嫌オーラを撒き散らしカルを睨むナマエに思わず小さくなり「ホントの事だろ」と呟くカル。もう一度言ってみなさいよ、と掌から溢れる水をちらつかせながら凄むナマエの腕を柔らかく諌める腕が伸びた。
「僕の友人をあんまり虐めないでくれるかい?」
後ろからソフィーを抱きしめ、空いたほうの手でナマエの腕を掴んだ人物。
この城の主、ハウルその人だ。
「久しぶり、ナマエ、よくここがわかったね」
「カルの魔力を辿れば簡単よ」
「へぇ、カルシファーがこの城を隠しているはずなんだけどな」
そう言ってカルシファーを見れば「こいつにはわかっちまうんだ、昔からだろ」と口を尖らせた。
「で、何の御用かな?」
「あ、結婚するんだってね、その子がソフィー?綺麗な髪ね、あたし好きだわ」
ハウルをスルーしてソフィーの髪に触れるナマエ。面白くなさそうな顔をしたハウルを押しのけ、ビスケットも美味しかったわ、と言えば皿の上の数の減ったビスケットを見つけたマルクルから非難の声が上がる。
マイペース軍団のせいで慣れているはずのソフィーも、ナマエのあまりのマイペースぶりに困ったように微笑む事しかできず、調子に乗ってべらべらと喋り捲るナマエのマシンガン攻撃をかわせずにハウルに助けを求めれば彼はすでに遠い目をして悟りの境地に入っていた。
「というわけで、あたしも参加するわ、ウェディング!」
「…何処がどう繋がって「というわけ」になったのかわかんないんだけどナマエ」
一通り喋り終わったラストにそう言い放ったナマエにようやく突っ込めたハウル。
「参加するのよ」という返事になっていない返事を貰い、ああそう、と疲れたようにソファに身体を沈めた。
「ウェディングドレスはもうあるの?」
「いいえ、まだ…別に普段の服でも良いかなって私は…」
「じゃあこんなのはどう?!」
ソフィーが全部言い終わる前にぱちんと指を鳴らしてしまったナマエ。
コミカルな音とともに煙が上がり、その煙が晴れた中に立っていたのは純白のドレスに身を包むソフィーだった。
シンプルながらにあちこちにセンスが光るドレスを纏い、花と星屑を散りばめられた星色の髪を可愛らしくアップにし、薄化粧をされた顔には薄くベールがかかっている。
ソファに沈んでいたハウルは黒ひげ危機一髪のように飛び上がり、ソフィーの周りを、見ているこっちが目が回るよ、というスピードでぐるぐる歩いた末に抱き上げて「ブラボーナマエ!」と歓声を上げた。
残された面々も見事なまでにソフィーに似合うドレスを一瞬で形にしてしまったナマエに感心している。
「え、えっと、ありがとうナマエ、私、こんな…」
「すっごく綺麗よソフィー!ブーケはあたしに投げてね!」
満面の笑みで笑うナマエに、いつの間にか手にしていたブーケを予行演習とばかりに後手で投げる。弧を描いてナマエの元に飛んできたブーケ…のはずが、その花束は別の人物の腕の中に落ちた。
「えーと、こんにちは?」
パステルイエローのスーツに身を包んだ青年が今しがた飛んできたわっさりと咲き誇る花を持って困ったようにドア口に突っ立っていた。
「あーーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!!あたしの!あたしの!!」
指先を突きつけられただけで吹っ飛ばされ、なんとも哀れなこの隣の国の王子様とマイペース女王の魔女ちゃんが恋に落ちるだなんてこの場の誰が予想できたであろうか。
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