夢だけど夢じゃない
はじめにお名前変換してください
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ザアアア…という雨の音も聞こえなくなって、無音の世界の中、彼だけが浮かび上がって見えた。
ずっとずっと好きだった人が目の前にいる。生きている。呼吸に合わせて緩く上下するその身体。気だるげにラフな姿勢で座り込む、少し体格の良い身体。サラサラの髪の毛。まあるい横顔。
ズズッ…と再び鼻をすする音が聞こえて、ヒュッと息を吸う。私今息してなかったわ。ザアアア…という雨音も戻ってきて、我に返った私は反対側の入り口に座る彼になにか話しかけなければ…と焦って、四つん這いになって彼の方に乗り出した。とそこでまたズズッ…と鼻をすする音とウックッ…と息を殺す声がしてハッとする。暗がりの中目を凝らせば、彼は包帯まみれだった。時期的にハロウィンか?と一瞬よぎったが、彼がまたズズ…と鼻をすすったことでピンとくる。
今日、カラ松事変の日か…
となれば、復讐のために海に行ったりなんだりで忙しかったチビ太が屋台を出してなかったことも頷けるし、昨日私がもらわなかったあの薬は今日ニャンコに注入されたはず。めちゃくちゃすぐ使われたな!貰わなくて良かったわ!
冷静に思い起こしながら改めて彼を見れば、包帯にギブス、地面に松葉杖が転がっていて、なんとも痛々しい。しかし目に見える怪我よりも、彼が体を震わせて泣いているのが辛くて、一瞬迷ったものの意を決して話しかけた。
「あの、大丈夫ですか、」
もっとマシなセリフがあったろうに。
どう見ても大丈夫ではない。
狭い遊具の中で声をかけられ、彼がビクッと震えた。どうやら私に気付いていなかったらしい。鼻を真っ赤にして鼻水をだらだら垂らし、目も真っ赤に腫らして大きな瞳からぼろぼろと涙を零す彼と目が合い、流れるような自然さで口走っていた。
「うちに、きませんか」
お前んちじゃないだろう、と自分にツッコミつつ、今日はハタ坊が帰ってきてくれるはずだから連れ帰っても彼の友人だし大丈夫だろう。
後付けでそう弁解しつつ、からの返事も待たずにピロピロ笛を吹いた。
プピーと間抜けな音を出してストローから紙がぴろーんと伸びる。本当にこれで車が来るのか?と思っていたらキキーッと耳障りな音がして、遊具の外側から思い切り水しぶきをかけられた。えええ。まだ笛をくわえたままぴろーと伸びた紙もそのままに振り返ればピカピカの黒塗り高級車のタイヤが見えた。マジかよ。早すぎ。どこで待機してたの?ネコ○スもびっくり。
唖然と遊具の外を眺めていたらにゅっと旗の刺さったイケメン(めちゃくちゃ顰めっ面)がフレームインしてきた。
「お迎えにあがりました」
そこからは早くて、心底嫌そうな顔をしたイケメンフラッグに私とカラ松くんは車内に投げ入れられ、雨に濡れずにフラッグコーポレーションまでつき、そのまま私の部屋のお風呂で彼を洗ってもらって(執事さんが洗ってくれたけどめちゃくちゃ文句言われた)、私のベッドに彼を寝かせた。
「包帯、取り替えますね」
泥で汚れていたため入浴の際外されていた腕の包帯を綺麗なものに巻き直す。されるがままにされていた彼がおもむろに私の頰を反対側の手で撫でた。思わずビクッとして彼を見ると「そっちも怪我してるのか」と頰を確かめるように撫でられる。
昨日デカパンの家に突っ込んだ時の怪我が治っていなくて、頰に大きなガーゼを当てていたのだ。おまけに頰とは反対側の目には眼帯もしていて大袈裟なくらい大層な顔ぶりになっていた。ギャグ漫画だから寝て起きたら治ると思っていたのだけど。
何度か確かめるように触った後、くしゃり、と辛そうに顔を歪めて「痛そうだな」と笑った。その彼の顔が痛々しくて、怪我の程度も私のよりずっと酷いのだけど、何より心が酷い怪我を負っているというのが痛いほど伝わってきて、思わず私は彼を抱きしめてしまった。何も言えずただ抱きしめてしまった私に一瞬驚いたように身体を硬くした彼だったが、ぐっと額を私の肩に押し付けた後、押し殺すように泣いた。
彼の震えが止まるまで、私はずっと抱きしめたままだった。
ずっとずっと好きだった人が目の前にいる。生きている。呼吸に合わせて緩く上下するその身体。気だるげにラフな姿勢で座り込む、少し体格の良い身体。サラサラの髪の毛。まあるい横顔。
ズズッ…と再び鼻をすする音が聞こえて、ヒュッと息を吸う。私今息してなかったわ。ザアアア…という雨音も戻ってきて、我に返った私は反対側の入り口に座る彼になにか話しかけなければ…と焦って、四つん這いになって彼の方に乗り出した。とそこでまたズズッ…と鼻をすする音とウックッ…と息を殺す声がしてハッとする。暗がりの中目を凝らせば、彼は包帯まみれだった。時期的にハロウィンか?と一瞬よぎったが、彼がまたズズ…と鼻をすすったことでピンとくる。
今日、カラ松事変の日か…
となれば、復讐のために海に行ったりなんだりで忙しかったチビ太が屋台を出してなかったことも頷けるし、昨日私がもらわなかったあの薬は今日ニャンコに注入されたはず。めちゃくちゃすぐ使われたな!貰わなくて良かったわ!
冷静に思い起こしながら改めて彼を見れば、包帯にギブス、地面に松葉杖が転がっていて、なんとも痛々しい。しかし目に見える怪我よりも、彼が体を震わせて泣いているのが辛くて、一瞬迷ったものの意を決して話しかけた。
「あの、大丈夫ですか、」
もっとマシなセリフがあったろうに。
どう見ても大丈夫ではない。
狭い遊具の中で声をかけられ、彼がビクッと震えた。どうやら私に気付いていなかったらしい。鼻を真っ赤にして鼻水をだらだら垂らし、目も真っ赤に腫らして大きな瞳からぼろぼろと涙を零す彼と目が合い、流れるような自然さで口走っていた。
「うちに、きませんか」
お前んちじゃないだろう、と自分にツッコミつつ、今日はハタ坊が帰ってきてくれるはずだから連れ帰っても彼の友人だし大丈夫だろう。
後付けでそう弁解しつつ、からの返事も待たずにピロピロ笛を吹いた。
プピーと間抜けな音を出してストローから紙がぴろーんと伸びる。本当にこれで車が来るのか?と思っていたらキキーッと耳障りな音がして、遊具の外側から思い切り水しぶきをかけられた。えええ。まだ笛をくわえたままぴろーと伸びた紙もそのままに振り返ればピカピカの黒塗り高級車のタイヤが見えた。マジかよ。早すぎ。どこで待機してたの?ネコ○スもびっくり。
唖然と遊具の外を眺めていたらにゅっと旗の刺さったイケメン(めちゃくちゃ顰めっ面)がフレームインしてきた。
「お迎えにあがりました」
そこからは早くて、心底嫌そうな顔をしたイケメンフラッグに私とカラ松くんは車内に投げ入れられ、雨に濡れずにフラッグコーポレーションまでつき、そのまま私の部屋のお風呂で彼を洗ってもらって(執事さんが洗ってくれたけどめちゃくちゃ文句言われた)、私のベッドに彼を寝かせた。
「包帯、取り替えますね」
泥で汚れていたため入浴の際外されていた腕の包帯を綺麗なものに巻き直す。されるがままにされていた彼がおもむろに私の頰を反対側の手で撫でた。思わずビクッとして彼を見ると「そっちも怪我してるのか」と頰を確かめるように撫でられる。
昨日デカパンの家に突っ込んだ時の怪我が治っていなくて、頰に大きなガーゼを当てていたのだ。おまけに頰とは反対側の目には眼帯もしていて大袈裟なくらい大層な顔ぶりになっていた。ギャグ漫画だから寝て起きたら治ると思っていたのだけど。
何度か確かめるように触った後、くしゃり、と辛そうに顔を歪めて「痛そうだな」と笑った。その彼の顔が痛々しくて、怪我の程度も私のよりずっと酷いのだけど、何より心が酷い怪我を負っているというのが痛いほど伝わってきて、思わず私は彼を抱きしめてしまった。何も言えずただ抱きしめてしまった私に一瞬驚いたように身体を硬くした彼だったが、ぐっと額を私の肩に押し付けた後、押し殺すように泣いた。
彼の震えが止まるまで、私はずっと抱きしめたままだった。