夢だけど夢じゃない
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一部上場有名大企業の一軍との合コン。
同じ事務所のグラドルがどっかで引っ掛けた一軍リーマンらしい。相手優良株だからこっちも顔良い女で揃えたい、私らより下だけど一般受けする顔の良い女知らない?とわかりやすい注文を受け、脳内リストをざっと思い浮かべる。
うーん、私 に聞いてきたってことは同じ事務所の他の女はNGってこと…自分らより可愛いのは勿論NG…となると、そもそも女友達の少ない私には片手で数えるくらいしか候補はいないわけで。
一瞬よぎった弱井トト子の顔をいやいやと掻き消し(アイツと飲むのが論外だっただけで別に私より可愛いからダメって理由じゃないから!)思いついた女友達に連絡するも全滅。どうしよう。まさかの弱井トト子?いやいやいや。
カフェでひとり百面相していたところを見覚えある女が通りががったので弾かれたように店を出た。
「ねぇあんた!」
「?…あっ!にゃーちゃん」
「よっ!ねぇ今週末ヒマ?」
「え?」
くりくりの大きな瞳が見開かれる。ちくしょう可愛いな。まぁ私の方が可愛いけどォ?
クリスマスのMrフラッグクルーズで出会ったMrフラッグの"オトモダチ"。
こんなところで再会できてラッキー。
顔は申し分ないし、性格も控えめっぽいし、ちゃんと私のこと覚えてたっぽいしもうこいつで良いや。
「相手まぁまぁ良い合コンがあるんだけど来てよ。Mrフラッグに比べたら月とスッポンだろうけどアンタ別にMsフラッグな訳じゃないんでしょ?」
「え、あ…違うけど…」
「じゃ良いよね!Mrフラッグと繋げてくれるって約束したのに二人で即高飛びしたの、チャラにしてあげるから」
クルーズでのブチギレ案件を手札に出せばウッ…と罪悪感に染まった顔が頷いた。よっしゃ。もし合コンが不発でもこの子と繋がっとけばMrフラッグとワンチャンあるし。我ながらツイてるぅ♪
……と思ったのが週初。
合コン当日、個室の襖を開ければグラドルのお手つき男とまぁまぁ好みの男、そして最奥に握手会で最低最悪だった忘れもしない双子の片割れがにこやかにこっちを見ていた。
思わず襖を閉める。
アッうん、帰ろう。無理。あいつ無理。最悪だった奴か普段ライブに来る奴か見分けつかないけどどちらにせよ無理。
踵を返そうとしたら慌てた様子の名前が「あの人、にゃーちゃんの思ってる人じゃないよ!その弟で、えっと、あっ!ハタ坊の友達だよ!」とか囁いてくるので、アイドルスマイルを貼り付けて入室した。何なの?あいつら双子じゃなくて三つ子だったの?まぁ何でも良いや、Mrフラッグの友達なら付け入って損は無い。もしかしたらMrフラッグとの飲み会呼んで貰えるかもしれないし!
そんな下心はあっても目の前に座る気にはなれず、真ん中にいたまぁまぁ好みの男の前に座る。うん、スーツも時計も3人の中で一番良いものしてるしこれは当たりの予感♡最大火力で媚び売ってこ♡
そう思っていたのに、自己紹介で隣から聞こえた爆弾発言に思わず素が出かけた。
「えーと、名前っていいます、あー…私も一応アイドルやってます…」
「えっ!?!?そうなの!?うさ耳アイドル!?」
「いやっ、バニーだったのはあの時だけだから…普段は甲殻類というか…まだ一回しかやってないけど…」
「は?コーカクルイ???」
はーーー!?!?聞いて無いんですけどォ!?!?同業者かよライバルかよ!?!?まぁMrフラッグのオトモダチなんだから顔の良い一般人じゃないとは思ってたけど!
「え〜〜名前ちゃんもアイドルって知らなかったぁ〜〜この子ね、あの!フラッグコーポレーションのクリスマスクルーズで一緒になってぇ〜。そこで仲良くなったんだにゃー!ねー?」
「うん」
「てっきりぃ〜〜フラッグコーポレーションで"雇われて"るのかと思ってたにゃー!まさかの同業者〜?言ってよもぉ〜!」
暗にMrフラッグのお手つきであることを匂わせるために意味深に言ったのに思わぬところから横槍が入った。
「……僕も『そう』思ってたよ」
「えっ?お知り合いにゃんですか?」
「知り合いって程でもないんだけど、ね?」
目の前のロックオンした一軍様からだ。は?嘘でしょ?
「……覚えてます?僕のこと。車で」
「あ、はい、覚えてます、その節はありがとうございました」
はああああああ??????
く?る?ま?でぇえええ????
何?車でなに???は?
良い加減にしろよこの女。
大人しそうに見せておいてまさかの一軍様にもお手つきかぁ?Mrフラッグのオトモダチのくせに?手広くやってんなぁオイオイ。
「アー…………社員といえば社員かな…?正社員ではないんですけどお仕事はしているので…雑用ですけど」
「へえ…オシゴトねえ」
おっといけない、思ったより低い声出ちゃった。慌ててアイドルモードに切り替えるとまたしても爆弾発言。
「あーでもフラッグコーポレーションでも働いてるんすよね!?彼もフラッグコーポレーションで働いてるんですよ!ね!」
えっ!?!?こいつが!?!?
ずっと視界に入れないようにしていた奥の男を見る。うん、握手会でのトラウマが蘇りそうなほど同じ顔してるけど一軍とあっては話は別。しかも名前の話によればMrフラッグにお目通り叶う一軍の中の一軍!えーなにこれ思わぬ掘り出し物じゃない!
「ええ〜〜すごいすごい!Mrフラッグと直接一緒にお仕事されてるんですね♡エリートさんだぁ」
「かっこいい〜♡にゃー、尊敬しちゃうにゃん♡」
目の色変えて乗り出してきたグラドルに被せるように甘ったれた声を出す。お前はお手つき男が目の前にいんだろうがよ、そっちも充分一軍なんだからこっちはよこせや。
満更でもなさそうにデレデレしだしたピンク色の男。こいつはチョロそうだ。
「名前ちゃ「あ〜〜、にゃー新しい飲み物頼んでも良いですかぁ?メニュー見たいから名前ちゃんちょっと席変わってにゃん♡」
させるかよ、と名前と無理やり座席チェンジ。真ん中の男、好みだったけど名前狙いっぽいし、この3人の中じゃフラッグコーポレーション在籍が一番当たりだもん。兄弟が私のファンだし簡単に落としてみせる。
ほーら、ちょーっと前屈みになるだけで胸元に視線が釘付けだもんね。チョロいチョロい。
「だめだろ!?!?!!!!?!?」
ひたい付き合わせて至近距離でメロメロ光線送って手まで握ってやったのが効きすぎたのかと思ったら、どうやら私にではなく隣の一軍に怒ったようだった。は?こっちに集中しろよ。
あまりの失礼さに気持ちがすごい勢いで萎んでいく。なにこいつ。しかも聞いてれば、あーハイハイ、お前まで名前狙いなわけ。何なの。そんなにこの女が良いわけ?どいつもこいつも…
「必死になってるとこ悪いけど名前ちゃん脈ナシだと思うよ〜」
ふふ、面白いほどこっちに注目が集中した。
「だって名前ちゃん、Mrフラッグのお気に入りだもんね?」
「!?!?ちょっとにゃーちゃん!!」
「え?どういうこと?バイトなんでしょ?」
「ハタ坊♡名前♡って呼び合う仲のバイトがいると思いますぅ?」
お前らが思ってるほど純真潔白じゃないと思うよこの子。
そう続けようと思ったのに目の前のピンク男がパニックになったように喚いた。
「名前ちゃんやっぱりそうなの!?!?」
「やっぱりってなに!?!?ハタ坊とはそんなんじゃないってトド松くん知ってるよね!?!?」
「………え?二人もしかして知り合いだったの?」
あつしクンのツッコミにハッとした様子のピンク男と名前はあからさまにしどろもどろになった。え?は?
ほんと良い加減にしろよこの女。
Mrフラッグのみならず一軍様と二人も知り合いなの?は?よりどりみどりか?は?
「………まぁ同じ会社に勤めてますし…実は顔見知り程度で…今日いるって知らなくて…言ったら気まずいかなぁと思って初対面のふりしちゃいました…ね、トド松くん?」
キョドりながらも笑顔を浮かべてそういう名前に泣きそうになりながら頷いたピンク男。
なんか怪しいけど、部屋着いた時にやらかし双子の兄弟って教えられたの、確かに知り合いじゃなかったら知らない情報よね、と納得する。
「え〜やだぁ、変に嘘つかないでよぉ〜もー!なーんだぁ、じゃあ名前ちゃん、今日のメンツ3人中2人も知り合いだったの〜?なんかごめんにゃー?つまんないよねぇ?」
「え、ううん、そんなに知り合いってほど知り合いじゃないから大丈夫…」
そこはつまんないって答えろよ、そんで帰れよ邪魔だなぁ空気読めや!
こめかみがヒクつくのを隠しながら「そう?なら良かったにゃー♡」と笑顔を作る。私ってば演技派。女優になろうかな。
「名前…!」
突如襖が開いて、ピンク男と同じ顔した青い男が現れた。
えっなに…?
急展開過ぎてついていけない。
私のファンかセクハラ男か見分けつかないけどとりあえず合コンで鉢合わっちゃいけないのは確かだから咄嗟に顔を隠す。もーなんなの今日は…!散々!
「カラ松くん…!?」
「カラ松兄さん…!?」
名前とピンクが同時に叫んだ。
「は!?なんでここがわかったの!?」
「トド松がめかし込んで上機嫌で出掛けたからどうせ女絡みだろうと後をつけた…」
「何してくれてんの!?」
「そしたら同じ店に名前も入っていって…でもトド松は男連れだったし名前は女連れだったし…別々に入っていったし…でも全然出てこないし…心配になって…」
「全然出てこないってまだ入って1時間も経ってないでしょ!?何してくれてんの!?」
先程までと打って変わって凄い形相で青い男に詰め寄るピンク色の男を全員で唖然と見遣る。
まぁ合コン会場に三つ子の兄弟が乱入してきたの見れば錯乱もするか…
「ま、まぁまぁ、落ち着いてマツノ…えーと、久しぶり、お兄さん」
「あ?誰だ?」
「あれ、覚えてない?同級生の…イチと仲良くしてたあつしだけど…」
「…???」
「あーわかんないか…えーと…?」
「カラ松だ」
「え!次男の?なんだか雰囲気変わったね…?」
あつしクンと青が会話しだすと隣の名前が「!?イチ!?!?」「同級生!?」と驚いている。
「まあ、そんなとこに立っててもアレだし…良かったら一緒に呑む?4対3になっちゃうけど…せっかくだし…」
「えっ?あつし、この人は…」
「あー、俺の同級生でマツノのお兄さんだよ、みんなも良いかな?」
人の良さそうな笑顔で勝手に招き入れたあつしクンに名前とピンク色が慌てたけれど、良いのか!と顔を明るくした青色はズンズン部屋に入ってくると私と名前の間に無理やり座った。
はぁ?なんでここ!?普通男側にいくだろ!?!?
私のファンだから…?と身構えたままメニューで顔を隠していると、挙動不審な私を気にもせず「ああ、ありがとう」と私の手からメニューを抜き去った。お前に渡すために持ってたんじゃねーよ!!!!
顔を見られて焦っている私が視界に入っていない様子の青色を信じられない目で見ているとようやく落ち着いてきたピンク色が「安心して…その人、きみのファンじゃないから…その兄だから…」と言ってきた。自分の兄弟が私のファンって知ってたのかよ!やりづらいな!しかもその情報、全く安心できない。私のファンじゃないってことは、握手会でセクハラかましてきた問題野郎ってことじゃん…!
思い切り仰け反って青色から離れた私を見て名前がアッ!という顔をした。
「違うよにゃーちゃん、この人は初めましてのはず…」
「は…?」
「松野家はむつごなの」
「はああ!?」
むつご!?何それ!?6人ってこと!?ええ!?目の前のピンク色と隣の青色、私のファン、やらかし男の他にこの顔あと2人いるってこと!?
「え、名前ちゃんなんで知ってるの?」
「え?アッ……いやその…」
「名前はカラ松ガールだからな!」
「???」
「カラ松兄さんはもう黙ってて!」
訝しげに聞いたあつしクンに自信満々に答える青色、叫ぶピンク色。
ふふん、と意味不明な回答をした青色は突然ハッとするとあつしクンに掴みかからん勢いで詰め寄った。
「お前!思い出したぞ!」
「ああ、やっと思い出してくれた…」
「こないだ名前を車に乗せてただろう!」
「…ああそっち」
ギラギラと睨み付けるように食ってかかる青色をフーン…と眺めるあつしクン。
慌てたように「あれは送って貰っただけだってば!」と青色の裾を引いて座らせようとする名前。
フーン…?
なるほどね、コレがあんたの本命かぁ…
クルーズ船でのやり取りを思い出す。
Mrフラッグを振ってまで優先したがってた下船理由がこの男か。ということはこいつもピンク色と一緒で一軍なのかしら。
もしかして、私のファンのあいつも、同じ顔のセクハラ野郎もみんな一軍の一軍兄弟なのかしら!?だったとしてもセクハラ野郎は許さないけど、次のライブにファンがいたら手厚くファンサしてやろっと。
それはともかく、この男がいれば名前狙いの2人がフリーになるのでは?
え〜ありがとう、乱入してきてくれて。
名前は好きなだけアンタにあげるわ。なんなら2人で帰って。
「ご注文は?」
「フッ…ウイスキーのロック…」
「じゃなくて、ロングアイランドアイスティーで」
「え?トド松、オレはクールにウイスキーを…」
「大丈夫、ロングアイランドアイスティーもクールだから!カラ松兄さんにお似合いだから!」
潰す気満々かよ…
通称女殺しのカクテルを注文するピンク色に手慣れてるなぁと感心する。お持ち帰り狙いの時に飲ませるやつじゃん。まぁ天下の一軍様、それなりに遊んでるよね、そうよねえ。
合コンに同じ顔した兄弟きたらとっとと潰れて黙って欲しいのはわかるし。
あまり酒に詳しくなさそうな青色はそれが何かわからないようで乗せられるがまま注文していた。
さっさと潰れて名前が連れ帰ってくれないかな。
シラフだろうに既に名前にべったりな青色から目を離して、改めて目の前のピンク色をロックオンした。
同じ事務所のグラドルがどっかで引っ掛けた一軍リーマンらしい。相手優良株だからこっちも顔良い女で揃えたい、私らより下だけど一般受けする顔の良い女知らない?とわかりやすい注文を受け、脳内リストをざっと思い浮かべる。
うーん、
一瞬よぎった弱井トト子の顔をいやいやと掻き消し(アイツと飲むのが論外だっただけで別に私より可愛いからダメって理由じゃないから!)思いついた女友達に連絡するも全滅。どうしよう。まさかの弱井トト子?いやいやいや。
カフェでひとり百面相していたところを見覚えある女が通りががったので弾かれたように店を出た。
「ねぇあんた!」
「?…あっ!にゃーちゃん」
「よっ!ねぇ今週末ヒマ?」
「え?」
くりくりの大きな瞳が見開かれる。ちくしょう可愛いな。まぁ私の方が可愛いけどォ?
クリスマスのMrフラッグクルーズで出会ったMrフラッグの"オトモダチ"。
こんなところで再会できてラッキー。
顔は申し分ないし、性格も控えめっぽいし、ちゃんと私のこと覚えてたっぽいしもうこいつで良いや。
「相手まぁまぁ良い合コンがあるんだけど来てよ。Mrフラッグに比べたら月とスッポンだろうけどアンタ別にMsフラッグな訳じゃないんでしょ?」
「え、あ…違うけど…」
「じゃ良いよね!Mrフラッグと繋げてくれるって約束したのに二人で即高飛びしたの、チャラにしてあげるから」
クルーズでのブチギレ案件を手札に出せばウッ…と罪悪感に染まった顔が頷いた。よっしゃ。もし合コンが不発でもこの子と繋がっとけばMrフラッグとワンチャンあるし。我ながらツイてるぅ♪
……と思ったのが週初。
合コン当日、個室の襖を開ければグラドルのお手つき男とまぁまぁ好みの男、そして最奥に握手会で最低最悪だった忘れもしない双子の片割れがにこやかにこっちを見ていた。
思わず襖を閉める。
アッうん、帰ろう。無理。あいつ無理。最悪だった奴か普段ライブに来る奴か見分けつかないけどどちらにせよ無理。
踵を返そうとしたら慌てた様子の名前が「あの人、にゃーちゃんの思ってる人じゃないよ!その弟で、えっと、あっ!ハタ坊の友達だよ!」とか囁いてくるので、アイドルスマイルを貼り付けて入室した。何なの?あいつら双子じゃなくて三つ子だったの?まぁ何でも良いや、Mrフラッグの友達なら付け入って損は無い。もしかしたらMrフラッグとの飲み会呼んで貰えるかもしれないし!
そんな下心はあっても目の前に座る気にはなれず、真ん中にいたまぁまぁ好みの男の前に座る。うん、スーツも時計も3人の中で一番良いものしてるしこれは当たりの予感♡最大火力で媚び売ってこ♡
そう思っていたのに、自己紹介で隣から聞こえた爆弾発言に思わず素が出かけた。
「えーと、名前っていいます、あー…私も一応アイドルやってます…」
「えっ!?!?そうなの!?うさ耳アイドル!?」
「いやっ、バニーだったのはあの時だけだから…普段は甲殻類というか…まだ一回しかやってないけど…」
「は?コーカクルイ???」
はーーー!?!?聞いて無いんですけどォ!?!?同業者かよライバルかよ!?!?まぁMrフラッグのオトモダチなんだから顔の良い一般人じゃないとは思ってたけど!
「え〜〜名前ちゃんもアイドルって知らなかったぁ〜〜この子ね、あの!フラッグコーポレーションのクリスマスクルーズで一緒になってぇ〜。そこで仲良くなったんだにゃー!ねー?」
「うん」
「てっきりぃ〜〜フラッグコーポレーションで"雇われて"るのかと思ってたにゃー!まさかの同業者〜?言ってよもぉ〜!」
暗にMrフラッグのお手つきであることを匂わせるために意味深に言ったのに思わぬところから横槍が入った。
「……僕も『そう』思ってたよ」
「えっ?お知り合いにゃんですか?」
「知り合いって程でもないんだけど、ね?」
目の前のロックオンした一軍様からだ。は?嘘でしょ?
「……覚えてます?僕のこと。車で」
「あ、はい、覚えてます、その節はありがとうございました」
はああああああ??????
く?る?ま?でぇえええ????
何?車でなに???は?
良い加減にしろよこの女。
大人しそうに見せておいてまさかの一軍様にもお手つきかぁ?Mrフラッグのオトモダチのくせに?手広くやってんなぁオイオイ。
「アー…………社員といえば社員かな…?正社員ではないんですけどお仕事はしているので…雑用ですけど」
「へえ…オシゴトねえ」
おっといけない、思ったより低い声出ちゃった。慌ててアイドルモードに切り替えるとまたしても爆弾発言。
「あーでもフラッグコーポレーションでも働いてるんすよね!?彼もフラッグコーポレーションで働いてるんですよ!ね!」
えっ!?!?こいつが!?!?
ずっと視界に入れないようにしていた奥の男を見る。うん、握手会でのトラウマが蘇りそうなほど同じ顔してるけど一軍とあっては話は別。しかも名前の話によればMrフラッグにお目通り叶う一軍の中の一軍!えーなにこれ思わぬ掘り出し物じゃない!
「ええ〜〜すごいすごい!Mrフラッグと直接一緒にお仕事されてるんですね♡エリートさんだぁ」
「かっこいい〜♡にゃー、尊敬しちゃうにゃん♡」
目の色変えて乗り出してきたグラドルに被せるように甘ったれた声を出す。お前はお手つき男が目の前にいんだろうがよ、そっちも充分一軍なんだからこっちはよこせや。
満更でもなさそうにデレデレしだしたピンク色の男。こいつはチョロそうだ。
「名前ちゃ「あ〜〜、にゃー新しい飲み物頼んでも良いですかぁ?メニュー見たいから名前ちゃんちょっと席変わってにゃん♡」
させるかよ、と名前と無理やり座席チェンジ。真ん中の男、好みだったけど名前狙いっぽいし、この3人の中じゃフラッグコーポレーション在籍が一番当たりだもん。兄弟が私のファンだし簡単に落としてみせる。
ほーら、ちょーっと前屈みになるだけで胸元に視線が釘付けだもんね。チョロいチョロい。
「だめだろ!?!?!!!!?!?」
ひたい付き合わせて至近距離でメロメロ光線送って手まで握ってやったのが効きすぎたのかと思ったら、どうやら私にではなく隣の一軍に怒ったようだった。は?こっちに集中しろよ。
あまりの失礼さに気持ちがすごい勢いで萎んでいく。なにこいつ。しかも聞いてれば、あーハイハイ、お前まで名前狙いなわけ。何なの。そんなにこの女が良いわけ?どいつもこいつも…
「必死になってるとこ悪いけど名前ちゃん脈ナシだと思うよ〜」
ふふ、面白いほどこっちに注目が集中した。
「だって名前ちゃん、Mrフラッグのお気に入りだもんね?」
「!?!?ちょっとにゃーちゃん!!」
「え?どういうこと?バイトなんでしょ?」
「ハタ坊♡名前♡って呼び合う仲のバイトがいると思いますぅ?」
お前らが思ってるほど純真潔白じゃないと思うよこの子。
そう続けようと思ったのに目の前のピンク男がパニックになったように喚いた。
「名前ちゃんやっぱりそうなの!?!?」
「やっぱりってなに!?!?ハタ坊とはそんなんじゃないってトド松くん知ってるよね!?!?」
「………え?二人もしかして知り合いだったの?」
あつしクンのツッコミにハッとした様子のピンク男と名前はあからさまにしどろもどろになった。え?は?
ほんと良い加減にしろよこの女。
Mrフラッグのみならず一軍様と二人も知り合いなの?は?よりどりみどりか?は?
「………まぁ同じ会社に勤めてますし…実は顔見知り程度で…今日いるって知らなくて…言ったら気まずいかなぁと思って初対面のふりしちゃいました…ね、トド松くん?」
キョドりながらも笑顔を浮かべてそういう名前に泣きそうになりながら頷いたピンク男。
なんか怪しいけど、部屋着いた時にやらかし双子の兄弟って教えられたの、確かに知り合いじゃなかったら知らない情報よね、と納得する。
「え〜やだぁ、変に嘘つかないでよぉ〜もー!なーんだぁ、じゃあ名前ちゃん、今日のメンツ3人中2人も知り合いだったの〜?なんかごめんにゃー?つまんないよねぇ?」
「え、ううん、そんなに知り合いってほど知り合いじゃないから大丈夫…」
そこはつまんないって答えろよ、そんで帰れよ邪魔だなぁ空気読めや!
こめかみがヒクつくのを隠しながら「そう?なら良かったにゃー♡」と笑顔を作る。私ってば演技派。女優になろうかな。
「名前…!」
突如襖が開いて、ピンク男と同じ顔した青い男が現れた。
えっなに…?
急展開過ぎてついていけない。
私のファンかセクハラ男か見分けつかないけどとりあえず合コンで鉢合わっちゃいけないのは確かだから咄嗟に顔を隠す。もーなんなの今日は…!散々!
「カラ松くん…!?」
「カラ松兄さん…!?」
名前とピンクが同時に叫んだ。
「は!?なんでここがわかったの!?」
「トド松がめかし込んで上機嫌で出掛けたからどうせ女絡みだろうと後をつけた…」
「何してくれてんの!?」
「そしたら同じ店に名前も入っていって…でもトド松は男連れだったし名前は女連れだったし…別々に入っていったし…でも全然出てこないし…心配になって…」
「全然出てこないってまだ入って1時間も経ってないでしょ!?何してくれてんの!?」
先程までと打って変わって凄い形相で青い男に詰め寄るピンク色の男を全員で唖然と見遣る。
まぁ合コン会場に三つ子の兄弟が乱入してきたの見れば錯乱もするか…
「ま、まぁまぁ、落ち着いてマツノ…えーと、久しぶり、お兄さん」
「あ?誰だ?」
「あれ、覚えてない?同級生の…イチと仲良くしてたあつしだけど…」
「…???」
「あーわかんないか…えーと…?」
「カラ松だ」
「え!次男の?なんだか雰囲気変わったね…?」
あつしクンと青が会話しだすと隣の名前が「!?イチ!?!?」「同級生!?」と驚いている。
「まあ、そんなとこに立っててもアレだし…良かったら一緒に呑む?4対3になっちゃうけど…せっかくだし…」
「えっ?あつし、この人は…」
「あー、俺の同級生でマツノのお兄さんだよ、みんなも良いかな?」
人の良さそうな笑顔で勝手に招き入れたあつしクンに名前とピンク色が慌てたけれど、良いのか!と顔を明るくした青色はズンズン部屋に入ってくると私と名前の間に無理やり座った。
はぁ?なんでここ!?普通男側にいくだろ!?!?
私のファンだから…?と身構えたままメニューで顔を隠していると、挙動不審な私を気にもせず「ああ、ありがとう」と私の手からメニューを抜き去った。お前に渡すために持ってたんじゃねーよ!!!!
顔を見られて焦っている私が視界に入っていない様子の青色を信じられない目で見ているとようやく落ち着いてきたピンク色が「安心して…その人、きみのファンじゃないから…その兄だから…」と言ってきた。自分の兄弟が私のファンって知ってたのかよ!やりづらいな!しかもその情報、全く安心できない。私のファンじゃないってことは、握手会でセクハラかましてきた問題野郎ってことじゃん…!
思い切り仰け反って青色から離れた私を見て名前がアッ!という顔をした。
「違うよにゃーちゃん、この人は初めましてのはず…」
「は…?」
「松野家はむつごなの」
「はああ!?」
むつご!?何それ!?6人ってこと!?ええ!?目の前のピンク色と隣の青色、私のファン、やらかし男の他にこの顔あと2人いるってこと!?
「え、名前ちゃんなんで知ってるの?」
「え?アッ……いやその…」
「名前はカラ松ガールだからな!」
「???」
「カラ松兄さんはもう黙ってて!」
訝しげに聞いたあつしクンに自信満々に答える青色、叫ぶピンク色。
ふふん、と意味不明な回答をした青色は突然ハッとするとあつしクンに掴みかからん勢いで詰め寄った。
「お前!思い出したぞ!」
「ああ、やっと思い出してくれた…」
「こないだ名前を車に乗せてただろう!」
「…ああそっち」
ギラギラと睨み付けるように食ってかかる青色をフーン…と眺めるあつしクン。
慌てたように「あれは送って貰っただけだってば!」と青色の裾を引いて座らせようとする名前。
フーン…?
なるほどね、コレがあんたの本命かぁ…
クルーズ船でのやり取りを思い出す。
Mrフラッグを振ってまで優先したがってた下船理由がこの男か。ということはこいつもピンク色と一緒で一軍なのかしら。
もしかして、私のファンのあいつも、同じ顔のセクハラ野郎もみんな一軍の一軍兄弟なのかしら!?だったとしてもセクハラ野郎は許さないけど、次のライブにファンがいたら手厚くファンサしてやろっと。
それはともかく、この男がいれば名前狙いの2人がフリーになるのでは?
え〜ありがとう、乱入してきてくれて。
名前は好きなだけアンタにあげるわ。なんなら2人で帰って。
「ご注文は?」
「フッ…ウイスキーのロック…」
「じゃなくて、ロングアイランドアイスティーで」
「え?トド松、オレはクールにウイスキーを…」
「大丈夫、ロングアイランドアイスティーもクールだから!カラ松兄さんにお似合いだから!」
潰す気満々かよ…
通称女殺しのカクテルを注文するピンク色に手慣れてるなぁと感心する。お持ち帰り狙いの時に飲ませるやつじゃん。まぁ天下の一軍様、それなりに遊んでるよね、そうよねえ。
合コンに同じ顔した兄弟きたらとっとと潰れて黙って欲しいのはわかるし。
あまり酒に詳しくなさそうな青色はそれが何かわからないようで乗せられるがまま注文していた。
さっさと潰れて名前が連れ帰ってくれないかな。
シラフだろうに既に名前にべったりな青色から目を離して、改めて目の前のピンク色をロックオンした。