夢だけど夢じゃない
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「あ〜〜〜〜面白かった!!!見た?あいつらの顔!」
一階に降りてきた途端、腹を抱えてゲラゲラと笑い出した長男をなんとも言えない気持ちで見やる。
半纏を返しコートを貰うため松野家に訪れた私は玄関先でおそ松兄さんと鉢合わせ、カラ松なら多分上にいるよーとの言葉に2階まで着いて行ったのだ。
まさか今日が一松事変の日だとは思わずめちゃくちゃ焦ったが、長男になんとかバレずファインプレーを出来たと思っていたのに。
「あいつらまじウケる!俺が気付かない訳なくない!?」
あひゃひゃと心底可笑しそうに笑って涙を拭っている松野おそ松に、そりゃあそうだよなぁと感心やら納得やら気付いていてあの茶番…可哀想な弟たち…と思ったり、複雑な心境で二階を見上げてしまう。
まぁ一松くんのメンタルは護られたはずだし良かったか…
「でも名前ちゃんも気付いてたよね?」
「えっ」
「いやいやいや、あの挙動不審っぷり、気付いてたでしょ」
「気付いてたってなにが…」
「またまたぁ〜名前ちゃんってすごいよねぇ、俺らと出会ってちょっとしか経ってないのに全員見分けついてるっしょ?」
「…色で覚えてるから…」
「全員同じ服着ててもわかるでしょ」
「どうかなあ〜あはは」
「まーわかってたと思うけどさっきの一松だからね、カラ松がガチで俺に告ってきたわけじゃないから嫉妬とかしないで?」
そういえばそんなくだりもあったな。
全然気にしてなかったのでキョトンとしているとおそ松もキョトンとした顔になった。
「………???嫉妬とかはしてないです…?」
「あ…そお…?ならいーんだけど…なーんも気にしてない?」
「…?はい」
「そお…」
それはそれで可哀想だな…と呟いてるおそ松に首をかしげる。誰が可哀想なの…?
「ま、いーや!ほら行こ!」
「えっ!?どこへ!?」
「ええっ!?競馬代くれるんじゃなかったの!?」
「あっ!?そうでした…どうぞ」
万札を渡そうとすると、その手ごと握られて驚いて顔を上げる。
「名前ちゃんも一緒に行こ」
満面の笑みの松野おそ松に勝てるわけがなかった。
「…競馬場って初めて来ました…」
「まじで?」
コートを貰えなかったし半纏も返してしまった薄着の私は行きにおそ松が着せてくれた彼の上着を羽織っていた。おかげでおそ松が薄着だが彼はいーっていーって軍資金くれるお礼!と笑って終わりにした。
ちなみに松野家までは旗の人に車を出して貰ったから上着がなくても大丈夫だったのだ。(それを言ったら「金持ちはやっぱ違うな〜」と羨ましがられた)
「ほら!名前ちゃんも馬券買お!」
「何をどうしたら良いのやらさっぱり」
「あんね、馬券ってのは10種類あって〜単勝、複勝、応援馬券、枠連、馬連、馬単、ワイド、3連複、3連単、WIN5…」
「!!うぃんふぁいぶ!(カラ松くんがドラマティックてアニメで言ってたやつ!)」
「!さっすがお目が高いね〜!WIN5は五連続で1着当てたら最高6億円な超スリリングなやつだよ!それにする!?」
「うん!」
「じゃあスマホ出して」
「えっ」
「WIN5はネット投票限定なんだよね」
「あ…じゃあダメだ、今スマホ持ってなくて…」
「ええ〜〜!?なんで!?」
「コートのポケットに入れっぱなしで…」
「えーーーやっぱり無理やりにでもコートどこだってカラ松に問い質せば良かった〜!!そっかー…じゃあ仕方ないな、はい」
そう言って手渡されたスマホに驚く。
「おそ松くんてスマホ持ってたの!?」
「んーん、トド松の」
「!?」
「こーゆーこともあろうかと競馬行く時は借りるの」
絶対無断で借りている。
人のスマホを勝手に使うのは抵抗がありまごまごしていると横から慣れた手つきでスマホを操作され、1着どれだと思う?などと聞かれ答える間にあれよあれよとおそ松に馬券を買われてしまった。しかもおそ松にあげた3万ではなく別途自腹で。
「絶対当たんないよこれ…」
馬がよく見える席へ案内され、呆然とトラックを見る。
まあ100円だから外れても良いんだけど、どうせならもっとハードルが低いの買ってビギナーズラックでちょっとだけ当たるとかの方が楽しいやつじゃん。しかも私をここに置いてきぼりにしておそ松はどこかへ行ってしまったのだ!おじさんだらけの寒空の下、そわそわきょろきょろ落ち着かない。意外と女の人もいるけれどあまりにアウェイで縮こまっていると間延びした声が隣に戻って来た。
「はぁ〜お待たせ〜〜」
「おそ松くん!一体どこ行っ」
「はい」
満面の笑みで差し出されたビールのコップと煮込みに目を丸くする。ほかほかと湯気を立てる煮込みのいい匂いが鼻腔をくすぐる。
思わぬ気遣いに驚いていると、へへっと鼻の下を擦った長男はいただきますと手を合わせて自分の分の割り箸を割った。
「競馬場の煮込みまじで美味いから!」
「えー…ありがとう…いただきます…」
「いえーい!競馬デビューおめでと〜かんぱーい」
「か、かんぱーい」
ビールのコップをぶつけてクッと煽り、ぷはー!と心底幸せそうにするおそ松につられてビールを飲む。久しぶりに飲んだ気がする。美味しい。煮込みもふぅふぅ息を吹きかけ一口。じわっと広がる味噌の味にくたっとしたモツが美味い。大根も人参もしみてこんにゃくの歯応えも良い。美味しい。
思わずにこにこして横を見れば、優しく笑ったおそ松とばっちり目があった。
「……なぁんかわかったわ」
「え?」
「いやあ…名前ちゃん可愛いね」
「え!?」
「あはは」
いつものデレデレ鼻の下を伸ばした感じでもなく自然にしみじみ言われて顔が熱くなる。
上着といい馬券の買い方指南といいビールと煮込みの差し入れといい、思わぬ頼り甲斐に驚いたのは失礼だろうか。
鼻をスンと鳴らしてまじまじおそ松を見れば、寒いと勘違いしたらしいおそ松が自身の巻いていたマフラーを外して私の首に回すとそのまま巻いてくれた。ますます薄着になったおそ松に慌てるもいーよいーよ女の子が身体冷やしちゃダメでしょと笑われて絶句する。松野おそ松、こんなに出来る奴だったの?
「ん?どした〜?あ!もしかして好きになっちゃったぁ?」
「…はぁーすげえ…好きな人はすんごい好きなんだろうなって思いました」
「えっなにそれ褒めてる?複雑ぅ〜」
ぷーっと頰を膨らます様すらあざとい。ハァンなるほど…松野おそ松の沼さをしみじみ実感した。
そうこうしているうちにレースが始まり、初めて見る馬の疾走感に大興奮して叫んでいるうちにあれよあれよと進んでいき…1つ当て2つ当て…
残り1レース、私の買ったWIN5の4レースは既に当たっている…ちなみにここまでおそ松は全敗…まさか、まさかね、さすがにそんなに上手くはいかないでしょ。
「………名前ちゃん最後のレース、予想なんだっけ?」
「マツノボーイ…」
固唾を飲んでトラックを見つめる。
いやいやそんなまさか。
レース開始と共に横のおそ松がいっけえマツノボーイ!!と叫ぶがこっちは喉がカラカラで声が出ない。まさかまさかまさか。
最終コーナー、曲がってストレート…マツノボーイはどんどん追い上げるが3位…やっぱりね、そんな上手くはいかないよね、そう思っていた矢先、先頭を走る馬が稲光を上げながら消えた。
「………は?」
<おお〜っと先頭イヤミジュニア!スピードの出すぎで時を超えてしまいましたーーッ!!何があるかわからないのが競馬!1着はケンタウイング!!!!>
どうやら速すぎてバックをトゥザ・フューチャーしたらしい。なんだそれ。
どちらにせよ1着ではなかったからダメだった。まあそんなもんだよね。リーチだったおかげでだいぶ楽しめたし。そう思って帰ろうとしているとまたしても場内に実況が響き渡る。
<おや…?お待ちください、先ほどのレース、どうやら審議が入る模様…1着のケンタウイングがケンタウロスだったため失格、繰り上がりで優勝はマツノボーイ!!!>
「「……え?」」
…また、金持ちになってしまった。
一階に降りてきた途端、腹を抱えてゲラゲラと笑い出した長男をなんとも言えない気持ちで見やる。
半纏を返しコートを貰うため松野家に訪れた私は玄関先でおそ松兄さんと鉢合わせ、カラ松なら多分上にいるよーとの言葉に2階まで着いて行ったのだ。
まさか今日が一松事変の日だとは思わずめちゃくちゃ焦ったが、長男になんとかバレずファインプレーを出来たと思っていたのに。
「あいつらまじウケる!俺が気付かない訳なくない!?」
あひゃひゃと心底可笑しそうに笑って涙を拭っている松野おそ松に、そりゃあそうだよなぁと感心やら納得やら気付いていてあの茶番…可哀想な弟たち…と思ったり、複雑な心境で二階を見上げてしまう。
まぁ一松くんのメンタルは護られたはずだし良かったか…
「でも名前ちゃんも気付いてたよね?」
「えっ」
「いやいやいや、あの挙動不審っぷり、気付いてたでしょ」
「気付いてたってなにが…」
「またまたぁ〜名前ちゃんってすごいよねぇ、俺らと出会ってちょっとしか経ってないのに全員見分けついてるっしょ?」
「…色で覚えてるから…」
「全員同じ服着ててもわかるでしょ」
「どうかなあ〜あはは」
「まーわかってたと思うけどさっきの一松だからね、カラ松がガチで俺に告ってきたわけじゃないから嫉妬とかしないで?」
そういえばそんなくだりもあったな。
全然気にしてなかったのでキョトンとしているとおそ松もキョトンとした顔になった。
「………???嫉妬とかはしてないです…?」
「あ…そお…?ならいーんだけど…なーんも気にしてない?」
「…?はい」
「そお…」
それはそれで可哀想だな…と呟いてるおそ松に首をかしげる。誰が可哀想なの…?
「ま、いーや!ほら行こ!」
「えっ!?どこへ!?」
「ええっ!?競馬代くれるんじゃなかったの!?」
「あっ!?そうでした…どうぞ」
万札を渡そうとすると、その手ごと握られて驚いて顔を上げる。
「名前ちゃんも一緒に行こ」
満面の笑みの松野おそ松に勝てるわけがなかった。
「…競馬場って初めて来ました…」
「まじで?」
コートを貰えなかったし半纏も返してしまった薄着の私は行きにおそ松が着せてくれた彼の上着を羽織っていた。おかげでおそ松が薄着だが彼はいーっていーって軍資金くれるお礼!と笑って終わりにした。
ちなみに松野家までは旗の人に車を出して貰ったから上着がなくても大丈夫だったのだ。(それを言ったら「金持ちはやっぱ違うな〜」と羨ましがられた)
「ほら!名前ちゃんも馬券買お!」
「何をどうしたら良いのやらさっぱり」
「あんね、馬券ってのは10種類あって〜単勝、複勝、応援馬券、枠連、馬連、馬単、ワイド、3連複、3連単、WIN5…」
「!!うぃんふぁいぶ!(カラ松くんがドラマティックてアニメで言ってたやつ!)」
「!さっすがお目が高いね〜!WIN5は五連続で1着当てたら最高6億円な超スリリングなやつだよ!それにする!?」
「うん!」
「じゃあスマホ出して」
「えっ」
「WIN5はネット投票限定なんだよね」
「あ…じゃあダメだ、今スマホ持ってなくて…」
「ええ〜〜!?なんで!?」
「コートのポケットに入れっぱなしで…」
「えーーーやっぱり無理やりにでもコートどこだってカラ松に問い質せば良かった〜!!そっかー…じゃあ仕方ないな、はい」
そう言って手渡されたスマホに驚く。
「おそ松くんてスマホ持ってたの!?」
「んーん、トド松の」
「!?」
「こーゆーこともあろうかと競馬行く時は借りるの」
絶対無断で借りている。
人のスマホを勝手に使うのは抵抗がありまごまごしていると横から慣れた手つきでスマホを操作され、1着どれだと思う?などと聞かれ答える間にあれよあれよとおそ松に馬券を買われてしまった。しかもおそ松にあげた3万ではなく別途自腹で。
「絶対当たんないよこれ…」
馬がよく見える席へ案内され、呆然とトラックを見る。
まあ100円だから外れても良いんだけど、どうせならもっとハードルが低いの買ってビギナーズラックでちょっとだけ当たるとかの方が楽しいやつじゃん。しかも私をここに置いてきぼりにしておそ松はどこかへ行ってしまったのだ!おじさんだらけの寒空の下、そわそわきょろきょろ落ち着かない。意外と女の人もいるけれどあまりにアウェイで縮こまっていると間延びした声が隣に戻って来た。
「はぁ〜お待たせ〜〜」
「おそ松くん!一体どこ行っ」
「はい」
満面の笑みで差し出されたビールのコップと煮込みに目を丸くする。ほかほかと湯気を立てる煮込みのいい匂いが鼻腔をくすぐる。
思わぬ気遣いに驚いていると、へへっと鼻の下を擦った長男はいただきますと手を合わせて自分の分の割り箸を割った。
「競馬場の煮込みまじで美味いから!」
「えー…ありがとう…いただきます…」
「いえーい!競馬デビューおめでと〜かんぱーい」
「か、かんぱーい」
ビールのコップをぶつけてクッと煽り、ぷはー!と心底幸せそうにするおそ松につられてビールを飲む。久しぶりに飲んだ気がする。美味しい。煮込みもふぅふぅ息を吹きかけ一口。じわっと広がる味噌の味にくたっとしたモツが美味い。大根も人参もしみてこんにゃくの歯応えも良い。美味しい。
思わずにこにこして横を見れば、優しく笑ったおそ松とばっちり目があった。
「……なぁんかわかったわ」
「え?」
「いやあ…名前ちゃん可愛いね」
「え!?」
「あはは」
いつものデレデレ鼻の下を伸ばした感じでもなく自然にしみじみ言われて顔が熱くなる。
上着といい馬券の買い方指南といいビールと煮込みの差し入れといい、思わぬ頼り甲斐に驚いたのは失礼だろうか。
鼻をスンと鳴らしてまじまじおそ松を見れば、寒いと勘違いしたらしいおそ松が自身の巻いていたマフラーを外して私の首に回すとそのまま巻いてくれた。ますます薄着になったおそ松に慌てるもいーよいーよ女の子が身体冷やしちゃダメでしょと笑われて絶句する。松野おそ松、こんなに出来る奴だったの?
「ん?どした〜?あ!もしかして好きになっちゃったぁ?」
「…はぁーすげえ…好きな人はすんごい好きなんだろうなって思いました」
「えっなにそれ褒めてる?複雑ぅ〜」
ぷーっと頰を膨らます様すらあざとい。ハァンなるほど…松野おそ松の沼さをしみじみ実感した。
そうこうしているうちにレースが始まり、初めて見る馬の疾走感に大興奮して叫んでいるうちにあれよあれよと進んでいき…1つ当て2つ当て…
残り1レース、私の買ったWIN5の4レースは既に当たっている…ちなみにここまでおそ松は全敗…まさか、まさかね、さすがにそんなに上手くはいかないでしょ。
「………名前ちゃん最後のレース、予想なんだっけ?」
「マツノボーイ…」
固唾を飲んでトラックを見つめる。
いやいやそんなまさか。
レース開始と共に横のおそ松がいっけえマツノボーイ!!と叫ぶがこっちは喉がカラカラで声が出ない。まさかまさかまさか。
最終コーナー、曲がってストレート…マツノボーイはどんどん追い上げるが3位…やっぱりね、そんな上手くはいかないよね、そう思っていた矢先、先頭を走る馬が稲光を上げながら消えた。
「………は?」
<おお〜っと先頭イヤミジュニア!スピードの出すぎで時を超えてしまいましたーーッ!!何があるかわからないのが競馬!1着はケンタウイング!!!!>
どうやら速すぎてバックをトゥザ・フューチャーしたらしい。なんだそれ。
どちらにせよ1着ではなかったからダメだった。まあそんなもんだよね。リーチだったおかげでだいぶ楽しめたし。そう思って帰ろうとしているとまたしても場内に実況が響き渡る。
<おや…?お待ちください、先ほどのレース、どうやら審議が入る模様…1着のケンタウイングがケンタウロスだったため失格、繰り上がりで優勝はマツノボーイ!!!>
「「……え?」」
…また、金持ちになってしまった。