夢だけど夢じゃない
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「遅い」
茶の間に一歩入るとそこは地獄だった。
外と変わらぬ底冷えする室温の中、あらゆる衣服でぐるぐる巻きにされた兄弟達がそこらに吊るされ、転がされ、泡を吹いて白目を剥いていた。
ぐるぐる巻きの衣服は触手のように連なってコタツの中に繋がっており、茶の間に入ったオレたちに向かって地を這うような低音で文句を言ったのはコタツだった。
正確にはもはや顔すら出さずコタツに立てこもっているであろう十四松だった。
巨大なタコのような蜘蛛のような状態のコタツからは生き物のように動く衣服の"腕"が出ており、オレからポリタンクを引ったくると器用にストーブへ注ぎ始めた。どうなってるんだ。
唖然と見ていると違う"腕"が伸びてきて名前の足を引っ掴んですごい勢いでコタツの中へ引きずり込もうとした。
「きゃあっ!?」
「名前っ!?」
もう下半身は全部コタツに飲み込まれてしまっている名前の腕を慌てて掴むもグイグイコタツに引きずり込まれる名前。中はどうなってるんだ。
名前の腕を掴んだままコタツ布団をめくれば、名前に両手両足で抱き着いてもふもふのコートに顔を埋めた十四松がいた。自身の両手両足でガッチリホールドしてる上に衣服で出来た"腕"も名前にぐるぐるに巻きついている異様な光景だった。
「あったかい」
コタツの主は幸せそうに呻いた。
それは良かった。
出来れば名前を離して欲しいが怖くて話しかけられない。
灯油が投入され再びストーブが部屋を暖めるまで名前の下半身と兄弟達は解放されることはなかった。
「………兄さん達が遅かったせいだからね」
「ごめんねトド松くん」
「名前ちゃんに怒ってるわけじゃないけどォ」
すっかり温まった部屋の中でコタツに入りながら頬杖をついて不貞腐れる末弟に謝るハニー。
全員解放されみんなで所狭しとコタツにギチギチに収まりながら残りの菓子を貪り食っていた。
十四松は名前のコートが気に入ったらしくもふもふの毛皮に包まって転がっている。
追い剥ぎにあった名前には寒くないようオレの半纏を着せた。
「名前ちゃんいないんじゃゲーム大会続けても意味ないしぃ、部屋は寒くなる一方だしぃ」
「唯一の暖房器具には十四松が立てこもってるし」
「一人だけあったかいはずなのにどんどん機嫌悪くなって服ダルマの怪物になるし」
「そして襲われるし」
「ごめんなさい…」
「「「「名前ちゃんに怒ってるわけじゃないよ」」」」
ぐりんと同じ顔が4つこちらを見据える。
一体全体どこで何してた、と言われなくてもわかる圧を感じながら黙って菓子を頬張る。
と、外から鐘の音と童謡が流れてきた。17時だ。
「あっ!?もうこんな時間!?私帰らないと!」
「ええ〜〜!?もう帰っちゃうの!」
「晩御飯食べていきなよ〜」
「居酒屋行くんでも良いよ!」
「ごめんなさい、今日は久しぶりにハタ坊と食べる約束なの、また誘ってください!」
引き留める兄弟達にぺこぺこ会釈しながら慌てて玄関へ向かう名前を全員で追いかける。
靴を履いてる名前の背後で押し合いへしあい引き留めるも履き終わって立ち上がった名前が振り返り笑顔で「今日は楽しかったです!また遊んでくださいね」なんて言うものだからすっかりのまれてうん…とかぜひ…とかしか呟けない。
もう暗いから送って行くよ、と口に出す前に「じゃあまた!」と元気よく言ってピシャリと扉は閉められた。
誰もいなくなった寒い玄関に数秒突っ立っていたオレらはぶるりと震え上がると寒さに負けて我先にと和室に戻る。
コタツに押し合いへしあい戻りながら長男が口を開いた。
「で?せっかく二人きりにしてやったんだから告白は出来たんだろうな?」
「そーそー!寒さに凍えながら待たされたんだからさぞかしお楽しみだったんでしょうね?クソッッッ」
両側から赤いのとピンクのに詰められて俯く。
「……かった」
「あ?」
「…言えなかった」
「ハァァアアア??????」
向かいからキレ散らかした叫び声がしてビクッとそっちを見れば、想像通りキレ散らかしたすごい形相の一松がガンガン拳をコタツに打ち付けていた。
「この一松様が?わざわざ?気を遣って?二人きりになれるように?取り計らってやったっつーのに?言えなかった?言えなかっただァアアアン!?!!?」
「いちまっちゃんどうどう」
コタツを壊しかねない勢いの四男を長男がたしなめる。
ハンッと鼻で笑ったチョロ松が「普段愛だの恋だのイタイこと言ってる割には実戦ダメダメなんてね」と何故か勝ち誇ったように言ってくるのでイラッとする。
「話がややこしくなるから童貞松兄さんはマウンティング自重して」
「お前らだって童貞松だろうが!?!!?」
「で、なんで言えなかったわけ」
出来レースのくせに、と吐き捨てる末弟にオレはきっと心底情け無い顔をしていただろう。
「……オレ、嫌われてるかもしれない」
「「「はあああああああ?????????」」」
下3人の弟達の声が綺麗にハモった。
「ハァァアアア???」
「はぁー?はぁー?なんっで?そう思うわけ?は?」
「だって、彼女に間違われて親友ですって訂正してたし」
「お!ま!え!が!散ッ々彼女にやってきたことだろォが!!!」
「てか待って、彼女に間違われたってなに、なにしてたらそうなんの、はぁ?しね」
「組んでた腕いつの間にか外れてるし」
「組んでた腕ぇええ!?!!!?ハァァアアア???」
「しね!!!!!!!!」
「腕まで組んどいて嫌われてるかもとか言ってんすか!?カラ松にーさんウケんね!!!」
「勘違いもいい加減にしろよクソ松、それでまた名前ちゃん泣かせたらタダじゃおかねえぞクソ松」
「また?名前泣いてたのか?」
「ウッ………いや、その…たとえだよたとえ」
言いたい放題詰め寄ってきていた兄弟にふと気になることをおうむ返せば途端に決まり悪そうに縮こまった。威勢の良かった一松はすっかり小さくなって十四松とトド松に小突かれている。
「まーカラ松の想いはその程度だったってことで」
「!?おそ松どういう意味だ」
「せぇっかく俺らがここまでお膳立てしてあげてもそんなんならもーこっちも手加減しないってこと。お前はお前で頑張って〜俺は俺で頑張っちゃうから」
「は…!?」
「おそ松兄さんにさーんせい!ボクも協力してあげるの今日までだから!もう知らない、ボクはボクで好きにやらせてもらいますからね」
「トド松…!?」
「じゃあ俺も!」
「えっチョロ松まで…!?」
「チョロ松兄さんはマジで頑張ってねwwww」
「はァ!?トド松どーゆー意味だよッ」
「今日全く話せてなかったじゃんwww挙げ句の果てに勝手に鼻血出してセルフ退場www」
「さすがにアレはおにーちゃんも恥ずかしかったわァ」
「うるっせーな!!!だってこの家に女の子来たんだぞ!?!!?緊張するだろーが」
「「かわいそうなシコ松(兄さん)」」
「お前らほんっといい加減にしろよ……お前らだってシコ松だろうが…」
「ところでさあ!!!」
「っんだよ十四松!?!」
「名前ちゃんこれ置いてっちゃったね!!!」
これ、と言われて十四松に10個の目玉が注目する。
ふわふわの毛皮に包まれた十四松が無邪気に首をかしげた。
「あっ!?!!?名前ちゃんのコート!!!!!!」
「えっ!?!!?外めっちゃ寒いよね!?!!?」
「あっオレの半纏着たまま帰ったんだ…!?」
「ええ〜〜!?!!?」
「おいクソ松追いかけろバカ!!!」
十四松からコートを剥ぎ取った一松がふわふわを投げてよこす。
もふっと受け取ったそれを掴んでオレは慌てて家を転がり出た。
茶の間に一歩入るとそこは地獄だった。
外と変わらぬ底冷えする室温の中、あらゆる衣服でぐるぐる巻きにされた兄弟達がそこらに吊るされ、転がされ、泡を吹いて白目を剥いていた。
ぐるぐる巻きの衣服は触手のように連なってコタツの中に繋がっており、茶の間に入ったオレたちに向かって地を這うような低音で文句を言ったのはコタツだった。
正確にはもはや顔すら出さずコタツに立てこもっているであろう十四松だった。
巨大なタコのような蜘蛛のような状態のコタツからは生き物のように動く衣服の"腕"が出ており、オレからポリタンクを引ったくると器用にストーブへ注ぎ始めた。どうなってるんだ。
唖然と見ていると違う"腕"が伸びてきて名前の足を引っ掴んですごい勢いでコタツの中へ引きずり込もうとした。
「きゃあっ!?」
「名前っ!?」
もう下半身は全部コタツに飲み込まれてしまっている名前の腕を慌てて掴むもグイグイコタツに引きずり込まれる名前。中はどうなってるんだ。
名前の腕を掴んだままコタツ布団をめくれば、名前に両手両足で抱き着いてもふもふのコートに顔を埋めた十四松がいた。自身の両手両足でガッチリホールドしてる上に衣服で出来た"腕"も名前にぐるぐるに巻きついている異様な光景だった。
「あったかい」
コタツの主は幸せそうに呻いた。
それは良かった。
出来れば名前を離して欲しいが怖くて話しかけられない。
灯油が投入され再びストーブが部屋を暖めるまで名前の下半身と兄弟達は解放されることはなかった。
「………兄さん達が遅かったせいだからね」
「ごめんねトド松くん」
「名前ちゃんに怒ってるわけじゃないけどォ」
すっかり温まった部屋の中でコタツに入りながら頬杖をついて不貞腐れる末弟に謝るハニー。
全員解放されみんなで所狭しとコタツにギチギチに収まりながら残りの菓子を貪り食っていた。
十四松は名前のコートが気に入ったらしくもふもふの毛皮に包まって転がっている。
追い剥ぎにあった名前には寒くないようオレの半纏を着せた。
「名前ちゃんいないんじゃゲーム大会続けても意味ないしぃ、部屋は寒くなる一方だしぃ」
「唯一の暖房器具には十四松が立てこもってるし」
「一人だけあったかいはずなのにどんどん機嫌悪くなって服ダルマの怪物になるし」
「そして襲われるし」
「ごめんなさい…」
「「「「名前ちゃんに怒ってるわけじゃないよ」」」」
ぐりんと同じ顔が4つこちらを見据える。
一体全体どこで何してた、と言われなくてもわかる圧を感じながら黙って菓子を頬張る。
と、外から鐘の音と童謡が流れてきた。17時だ。
「あっ!?もうこんな時間!?私帰らないと!」
「ええ〜〜!?もう帰っちゃうの!」
「晩御飯食べていきなよ〜」
「居酒屋行くんでも良いよ!」
「ごめんなさい、今日は久しぶりにハタ坊と食べる約束なの、また誘ってください!」
引き留める兄弟達にぺこぺこ会釈しながら慌てて玄関へ向かう名前を全員で追いかける。
靴を履いてる名前の背後で押し合いへしあい引き留めるも履き終わって立ち上がった名前が振り返り笑顔で「今日は楽しかったです!また遊んでくださいね」なんて言うものだからすっかりのまれてうん…とかぜひ…とかしか呟けない。
もう暗いから送って行くよ、と口に出す前に「じゃあまた!」と元気よく言ってピシャリと扉は閉められた。
誰もいなくなった寒い玄関に数秒突っ立っていたオレらはぶるりと震え上がると寒さに負けて我先にと和室に戻る。
コタツに押し合いへしあい戻りながら長男が口を開いた。
「で?せっかく二人きりにしてやったんだから告白は出来たんだろうな?」
「そーそー!寒さに凍えながら待たされたんだからさぞかしお楽しみだったんでしょうね?クソッッッ」
両側から赤いのとピンクのに詰められて俯く。
「……かった」
「あ?」
「…言えなかった」
「ハァァアアア??????」
向かいからキレ散らかした叫び声がしてビクッとそっちを見れば、想像通りキレ散らかしたすごい形相の一松がガンガン拳をコタツに打ち付けていた。
「この一松様が?わざわざ?気を遣って?二人きりになれるように?取り計らってやったっつーのに?言えなかった?言えなかっただァアアアン!?!!?」
「いちまっちゃんどうどう」
コタツを壊しかねない勢いの四男を長男がたしなめる。
ハンッと鼻で笑ったチョロ松が「普段愛だの恋だのイタイこと言ってる割には実戦ダメダメなんてね」と何故か勝ち誇ったように言ってくるのでイラッとする。
「話がややこしくなるから童貞松兄さんはマウンティング自重して」
「お前らだって童貞松だろうが!?!!?」
「で、なんで言えなかったわけ」
出来レースのくせに、と吐き捨てる末弟にオレはきっと心底情け無い顔をしていただろう。
「……オレ、嫌われてるかもしれない」
「「「はあああああああ?????????」」」
下3人の弟達の声が綺麗にハモった。
「ハァァアアア???」
「はぁー?はぁー?なんっで?そう思うわけ?は?」
「だって、彼女に間違われて親友ですって訂正してたし」
「お!ま!え!が!散ッ々彼女にやってきたことだろォが!!!」
「てか待って、彼女に間違われたってなに、なにしてたらそうなんの、はぁ?しね」
「組んでた腕いつの間にか外れてるし」
「組んでた腕ぇええ!?!!!?ハァァアアア???」
「しね!!!!!!!!」
「腕まで組んどいて嫌われてるかもとか言ってんすか!?カラ松にーさんウケんね!!!」
「勘違いもいい加減にしろよクソ松、それでまた名前ちゃん泣かせたらタダじゃおかねえぞクソ松」
「また?名前泣いてたのか?」
「ウッ………いや、その…たとえだよたとえ」
言いたい放題詰め寄ってきていた兄弟にふと気になることをおうむ返せば途端に決まり悪そうに縮こまった。威勢の良かった一松はすっかり小さくなって十四松とトド松に小突かれている。
「まーカラ松の想いはその程度だったってことで」
「!?おそ松どういう意味だ」
「せぇっかく俺らがここまでお膳立てしてあげてもそんなんならもーこっちも手加減しないってこと。お前はお前で頑張って〜俺は俺で頑張っちゃうから」
「は…!?」
「おそ松兄さんにさーんせい!ボクも協力してあげるの今日までだから!もう知らない、ボクはボクで好きにやらせてもらいますからね」
「トド松…!?」
「じゃあ俺も!」
「えっチョロ松まで…!?」
「チョロ松兄さんはマジで頑張ってねwwww」
「はァ!?トド松どーゆー意味だよッ」
「今日全く話せてなかったじゃんwww挙げ句の果てに勝手に鼻血出してセルフ退場www」
「さすがにアレはおにーちゃんも恥ずかしかったわァ」
「うるっせーな!!!だってこの家に女の子来たんだぞ!?!!?緊張するだろーが」
「「かわいそうなシコ松(兄さん)」」
「お前らほんっといい加減にしろよ……お前らだってシコ松だろうが…」
「ところでさあ!!!」
「っんだよ十四松!?!」
「名前ちゃんこれ置いてっちゃったね!!!」
これ、と言われて十四松に10個の目玉が注目する。
ふわふわの毛皮に包まれた十四松が無邪気に首をかしげた。
「あっ!?!!?名前ちゃんのコート!!!!!!」
「えっ!?!!?外めっちゃ寒いよね!?!!?」
「あっオレの半纏着たまま帰ったんだ…!?」
「ええ〜〜!?!!?」
「おいクソ松追いかけろバカ!!!」
十四松からコートを剥ぎ取った一松がふわふわを投げてよこす。
もふっと受け取ったそれを掴んでオレは慌てて家を転がり出た。