夢だけど夢じゃない
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どうなってる。
どういう状況!?
転びそうな名前を咄嗟に抱きとめて、腰を抱いていることに驚いて手を離してしまったら結局転んでしまった名前に無意識に手を差し出して、つまりこの手を取られたら手を繋いで歩くということに思い当たって慌てて手を引いて、残念がられて苦肉の策で手首を握っていたら突然ポケットに突っ込まれて…
全くこのレディはどれだけオレを翻弄すれば気がすむのか?
気付いていなかっただけで相当な小悪魔なのでは?
一つのポケットに繋いだ手を突っ込むなんてまるでカップルのそれじゃないか…ドギマギして細い手首を握りなおしたらやんわり振りほどかれて挙動不審になる。痛かった!?嫌だった!?緊張で手汗ビッショリだから!?嫌われた!?
振りほどかれた手をそっとポケットから出されてこの世の終わりみたいな絶望感に苛まれていると、そのままオレの手をオレの上着のポケットにしまい、そうすることで出来た肘と脇腹の間の隙間にスルリとふわふわの腕が入ってきて、えっ…!?!?
いとも自然に腕を組まれて愕然とする。
小悪魔確定…!!!!!!
手を繋いでいるよりも密着するしむ、むむむむ胸当たっ…コートがふわふわでわかりづらいがこれは確実に当たっ……!?!?!?!?
あまりの事態に鼻息が荒くなる。
多分顔も真っ赤だろうし、フルマラソン後みたいに心臓が全身脈打っている。この鼓動、名前に聞こえているのでは…!?汗もビッショリで服が張り付いて気持ち悪いが全神経がくっついている腕に集中しているので気にならない。
オレの顔のすぐ下にある可愛い頭頂部では大きなリボンがご機嫌に揺れ、なんかいい匂いもする…シャンプーの香りか?めっちゃいい匂い…思わず深呼吸してしまう。
「ふふ、本物………」
「ん?なんだ?」
「!?!?えっ声に出てた!?」
「出てた」
「え、えと、カラ松くんの香水が…」
「香水?キツかったか?」
「ううん!!!完璧!!!!本物!!!マジでこの匂いなんだって感動してたとこ!!!!!!」
「???そうか…?」
よくわからんが完璧なら良いか…
普段名前と会う時はつけていなかったが、今日は気合いを入れてカラ松ガールズ達との逢瀬用の香水を振りかけていたのだ。
普段との違いに気付いてくれたことに嬉しく思いつつ、今日の趣旨をようやく思い出す。
そうだった、ちゃんと想いを伝えるために呼んだんだった。
ハニー呼びをスルーされてビビっていたが、十四松情報によれば名前もオレを好きらしいし、少なくともこの状況、嫌われてはいないだろう。
ちょうど二人きりだし今がチャンスでは…!
改めて想いを伝えようと大きく息を吸って、
「名前、」
「おやぁ?松野さんちの、今日はえらい可愛い子連れてどうした?」
オッサンの声に遮られた。
そちらを剣呑と見やれば、油屋のおっちゃんがニヤニヤした顔でこちらを見ていた。いつの間にか目的地に着いていたらしい。
不躾な遠慮のない視線が彼女を上から下まで値踏みするのがわかって苛立ったオレは隠すように名前の前に立って空のポリタンクを押し付ける。
「灯油。いつもの。」
「ハイハイまいど」
トクトクとタンクを満たしている間に重たい沈黙が満ち、いつの間にか名前の腕は俺の腕から抜かれてしまっていた。
「ほらよ、1700円」
「はい…ぴったり」
「まいど〜、それにしてもあの松野さんちの子が女の子連れてくるたぁ〜しかもこーんなべっぴんの!良いのかい、あんた!こんな奴で落ち着いちまって」
「えっ…」
「は?どういう意味だ」
「いやだっておまえらまだ働いてねんだろ?良い加減お袋さん楽させてやんなって。…あと100円足りねえな」
全部100円玉と10円玉で払った小銭を数えていたおっちゃんが細い目を更に細くして言う。
えっ…有り金全部なんだけど!
一応ポケットをもう一度探るオレの焦りように察したらしい名前が100円玉をおっちゃんに手渡した。
「悪いね嬢ちゃん…おい、彼女にこんなことさせんな恥ずかしい」
ぐうの音も出ず歯噛みしてると横から控えめに「あの、彼女じゃないので大丈夫です」という笑い声が追撃してくる。
声も出せずにそちらを見れば真っ直ぐな目がこちらを見上げており「親友だもん、困った時はお互い様だよね?アッたかが100円で偉そうなこと言ってごめん!」と謝られてトドメを刺された。
親友………いやオレが散々言っていたからだと解ってはいるがこんなに重たい攻撃力を持った言葉だとは………やんわりとお前なんかの彼女に間違われて迷惑だって言われてないかコレ…!?
しかもそのたかが100円が払えなかった男………
ポリタンクを受け取り、トボトボと歩く。
もう名前の腕は密着していない。程よい距離感を保ったまま隣を歩く彼女にこんな状況で告れるメンタルは持ち合わせていない。
好きだ、付き合ってくれ、たったそれだけ言えば良いだけなのに。
不甲斐ない。
すっかりショボくれているオレに気を使っているのかたわいない話題を振ってくる名前の優しさが更に居た堪れない。
「……カラ松くん、持つの変わろうか?重たいよね?」
「いや、こんな重たいもの持たせるわけにいかない」
「そう…?役立たずでごめんね…?」
「何を言ってるんだ、名前はいるだけで」
大いに役に立ってる、いてくれるだけで良いんだ、そう続けようとしたところで軽快な電子音が響いた。
「あっちょっとごめん」
そう言ってスマホを取り出した彼女は画面を確認して、あートド松くんからだ!遅いから心配してくれたみたい!とこちらに画面を見せてきた。絵文字で飾られた文章と可愛らしいスタンプが表示されている。
大丈夫、買ったから、もう帰るとこ、と口に出しながら返信を打っている彼女を見下ろしながら腹の奥が煮え滾るのを感じる。
は?トド松から?トド松?なんで?いつ連絡先交換したんだ?そうやっていつもメッセージのやり取りしてたのか?オレに内緒で?いつから?いつも?オレとはしてないくせに???いやオレはスマホを持ってないから出来ないんだが…いやそれにしたって?連絡先交換したなんて聞いてないぞ?オレは家から電話することしか出来ないがトド松とはいつでもどこでも連絡が取れるということか?だからデートしたりしてたわけか?オレに秘密で?オレの名前と?は?いつから???
返信し終わったらしくスマホを仕舞った名前が黙り込んでいるオレを覗き込んで「寒がってるから早く帰ろう!」と言ってくる。
ようやくそちらを見下ろしたオレは自分でも驚くような地を這うような低音を絞り出していた。
「名前、付き合ってくれ」
どういう状況!?
転びそうな名前を咄嗟に抱きとめて、腰を抱いていることに驚いて手を離してしまったら結局転んでしまった名前に無意識に手を差し出して、つまりこの手を取られたら手を繋いで歩くということに思い当たって慌てて手を引いて、残念がられて苦肉の策で手首を握っていたら突然ポケットに突っ込まれて…
全くこのレディはどれだけオレを翻弄すれば気がすむのか?
気付いていなかっただけで相当な小悪魔なのでは?
一つのポケットに繋いだ手を突っ込むなんてまるでカップルのそれじゃないか…ドギマギして細い手首を握りなおしたらやんわり振りほどかれて挙動不審になる。痛かった!?嫌だった!?緊張で手汗ビッショリだから!?嫌われた!?
振りほどかれた手をそっとポケットから出されてこの世の終わりみたいな絶望感に苛まれていると、そのままオレの手をオレの上着のポケットにしまい、そうすることで出来た肘と脇腹の間の隙間にスルリとふわふわの腕が入ってきて、えっ…!?!?
いとも自然に腕を組まれて愕然とする。
小悪魔確定…!!!!!!
手を繋いでいるよりも密着するしむ、むむむむ胸当たっ…コートがふわふわでわかりづらいがこれは確実に当たっ……!?!?!?!?
あまりの事態に鼻息が荒くなる。
多分顔も真っ赤だろうし、フルマラソン後みたいに心臓が全身脈打っている。この鼓動、名前に聞こえているのでは…!?汗もビッショリで服が張り付いて気持ち悪いが全神経がくっついている腕に集中しているので気にならない。
オレの顔のすぐ下にある可愛い頭頂部では大きなリボンがご機嫌に揺れ、なんかいい匂いもする…シャンプーの香りか?めっちゃいい匂い…思わず深呼吸してしまう。
「ふふ、本物………」
「ん?なんだ?」
「!?!?えっ声に出てた!?」
「出てた」
「え、えと、カラ松くんの香水が…」
「香水?キツかったか?」
「ううん!!!完璧!!!!本物!!!マジでこの匂いなんだって感動してたとこ!!!!!!」
「???そうか…?」
よくわからんが完璧なら良いか…
普段名前と会う時はつけていなかったが、今日は気合いを入れてカラ松ガールズ達との逢瀬用の香水を振りかけていたのだ。
普段との違いに気付いてくれたことに嬉しく思いつつ、今日の趣旨をようやく思い出す。
そうだった、ちゃんと想いを伝えるために呼んだんだった。
ハニー呼びをスルーされてビビっていたが、十四松情報によれば名前もオレを好きらしいし、少なくともこの状況、嫌われてはいないだろう。
ちょうど二人きりだし今がチャンスでは…!
改めて想いを伝えようと大きく息を吸って、
「名前、」
「おやぁ?松野さんちの、今日はえらい可愛い子連れてどうした?」
オッサンの声に遮られた。
そちらを剣呑と見やれば、油屋のおっちゃんがニヤニヤした顔でこちらを見ていた。いつの間にか目的地に着いていたらしい。
不躾な遠慮のない視線が彼女を上から下まで値踏みするのがわかって苛立ったオレは隠すように名前の前に立って空のポリタンクを押し付ける。
「灯油。いつもの。」
「ハイハイまいど」
トクトクとタンクを満たしている間に重たい沈黙が満ち、いつの間にか名前の腕は俺の腕から抜かれてしまっていた。
「ほらよ、1700円」
「はい…ぴったり」
「まいど〜、それにしてもあの松野さんちの子が女の子連れてくるたぁ〜しかもこーんなべっぴんの!良いのかい、あんた!こんな奴で落ち着いちまって」
「えっ…」
「は?どういう意味だ」
「いやだっておまえらまだ働いてねんだろ?良い加減お袋さん楽させてやんなって。…あと100円足りねえな」
全部100円玉と10円玉で払った小銭を数えていたおっちゃんが細い目を更に細くして言う。
えっ…有り金全部なんだけど!
一応ポケットをもう一度探るオレの焦りように察したらしい名前が100円玉をおっちゃんに手渡した。
「悪いね嬢ちゃん…おい、彼女にこんなことさせんな恥ずかしい」
ぐうの音も出ず歯噛みしてると横から控えめに「あの、彼女じゃないので大丈夫です」という笑い声が追撃してくる。
声も出せずにそちらを見れば真っ直ぐな目がこちらを見上げており「親友だもん、困った時はお互い様だよね?アッたかが100円で偉そうなこと言ってごめん!」と謝られてトドメを刺された。
親友………いやオレが散々言っていたからだと解ってはいるがこんなに重たい攻撃力を持った言葉だとは………やんわりとお前なんかの彼女に間違われて迷惑だって言われてないかコレ…!?
しかもそのたかが100円が払えなかった男………
ポリタンクを受け取り、トボトボと歩く。
もう名前の腕は密着していない。程よい距離感を保ったまま隣を歩く彼女にこんな状況で告れるメンタルは持ち合わせていない。
好きだ、付き合ってくれ、たったそれだけ言えば良いだけなのに。
不甲斐ない。
すっかりショボくれているオレに気を使っているのかたわいない話題を振ってくる名前の優しさが更に居た堪れない。
「……カラ松くん、持つの変わろうか?重たいよね?」
「いや、こんな重たいもの持たせるわけにいかない」
「そう…?役立たずでごめんね…?」
「何を言ってるんだ、名前はいるだけで」
大いに役に立ってる、いてくれるだけで良いんだ、そう続けようとしたところで軽快な電子音が響いた。
「あっちょっとごめん」
そう言ってスマホを取り出した彼女は画面を確認して、あートド松くんからだ!遅いから心配してくれたみたい!とこちらに画面を見せてきた。絵文字で飾られた文章と可愛らしいスタンプが表示されている。
大丈夫、買ったから、もう帰るとこ、と口に出しながら返信を打っている彼女を見下ろしながら腹の奥が煮え滾るのを感じる。
は?トド松から?トド松?なんで?いつ連絡先交換したんだ?そうやっていつもメッセージのやり取りしてたのか?オレに内緒で?いつから?いつも?オレとはしてないくせに???いやオレはスマホを持ってないから出来ないんだが…いやそれにしたって?連絡先交換したなんて聞いてないぞ?オレは家から電話することしか出来ないがトド松とはいつでもどこでも連絡が取れるということか?だからデートしたりしてたわけか?オレに秘密で?オレの名前と?は?いつから???
返信し終わったらしくスマホを仕舞った名前が黙り込んでいるオレを覗き込んで「寒がってるから早く帰ろう!」と言ってくる。
ようやくそちらを見下ろしたオレは自分でも驚くような地を這うような低音を絞り出していた。
「名前、付き合ってくれ」