夢だけど夢じゃない
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ここどこだろう。
早く帰りたい。
スマホも持たず乗船させられてしまったからカラ松くんに連絡も取れない。
あの屋台にいたということはもう約束の時間はとっくに過ぎて現れない私は愛想を尽かされたということだろう。
向こうからも見えていたかはわからないけど、私から見えたんだから見られたかもしれない。約束をすっぽかした上にこんなヤバイ格好の私を!!!
綺麗におめかしした見知らぬ女性陣にチヤホヤされているハタ坊からそっと離れ、階下へ降りて人のいない場所へたどり着いた私はどんちゃん騒ぎを背に甲板の柵へと両腕を乗せて突っ伏していた。そこへ不意に腕に冷たい物が当たって驚いて顔を上げる。
冷気を感じた二の腕には如何にもインスタ映えしそうな鮮やかな色の液体が入ったカクテルグラスが押し付けられており、それを持っている人物の顔を見て予想外すぎて再び驚いた。
不機嫌そうに口をへの字に曲げた橋本にゃーが立っていたのだ。
唖然と見つめるだけの私に苛立ったらしい彼女は無言で更に二の腕にカクテルを押し付けてくるため慌ててお礼を言って受け取る。
私が両手でカクテルを持ったのを確認した彼女は、もう片手で持っていた違う色のカクテルグラスをカチンとグラスにぶつけてきて「メリークリスマスイブ」と呟くと柵に寄りかかって暗い海を見ながらグイッとグラスを煽った。
男前な飲みっぷりと涼やかな色気のある横顔に見惚れていると、こちらを見ないまま橋本が口を開く。
「なんでこんな誰もいないとこにそんな顔しているわけ」
「えっ」
「…ミスターフラッグが探してこいって。地下とはいえアイドルの私があんなに言い寄ってんのにやっとこっち見たと思ったら他の女を名指しで呼んでこいだよ?やってらんねーわ」
再びグイッと酒を煽った彼女はひそめた眉をそのままにこちらを見た。
不躾に全身舐めるように見られ狼狽する。
「そんな可愛らしい顔してセクシーなバニーガールの格好なんてどんだけあざといのかと思ったらすぐいなくなるしさっき降ろしてとか叫んでたでしょ?なんなの?この船乗りたくってもなかなか乗れないのに。いろんなツテ使ってやっと乗れていろんな手使ってミスターフラッグの近く陣取れたってのにアンタのせいでパーよ」
隣キープして媚び売ってたら名前がいないジョ探して連れてこいって…名前って誰だよ!?ってなってたら頭に旗刺さった連中にさっきまでいた黒いバニーガールだって…知ってる人いるんならそっちが探しに行けば良くない!?まぁ流石に直々に頼まれちゃったら断れないし探すしかなかったんだけど…とグチグチ恨み言を吐かれ縮こまる。
この船そんな争奪戦だったなら私降りるから代わりに乗りたい人に乗って欲しい。
そんな思いが顔に出ていたのか不満に歪んでいた顔が呆れに変わり重々しい溜息を吐かれた。
「…私ミスターフラッグのパーティにお呼ばれするの3回目♡とかマウント取ってた女何人も見たけど名指しで指名されてんのアンタだけだったよ、てか他の女多分名前どころか顔すら覚えられてないわ。アンタ何者?」
「……ミスターフラッグの友人です」
「ハッww友人!?wwwオトモダチがそんなあざとい格好してんの?あっオトモダチってそーゆー?枕はしない主義だけどミスターフラッグレベルの大富豪相手なら話は別だわ、どうやったらなれんの?一晩で終わりじゃ意味ないんだよね、アンタみたいに名前覚えられて気に入られるレベルのオトモダチになりたいんだけど」
盛大に勘違いして下卑た笑みで見下ろしてくる彼女に絶句する。こんな"www"が目に見えるような嘲笑混じりの話し方されるのは初めてだ。
大人しそうな顔してそんなに床上手なの?なんて聞いてくる彼女に慌ててそんな関係ではないこと、この格好は彼の部下に勝手に着せられただけなこと、ハタ坊にそんな思いは抱いていないから代わって欲しい人がいるなら喜んで代わること、予定があるので船を降りたいことをベラベラ告げると元々不機嫌だった彼女の顔が可愛らしさのカケラもなくなるほど歪んで、喋りすぎた!と口をつぐむ。
「………つまり媚びてもいないのに無理やりそばに置かれるくらいのお気に入りってこと?ハーーーーーー本命いんならこんなクルーズ企画すんなよ…しかもそのオキニちゃんは外に男がいてクリスマスはこんなとこで油売ってる場合じゃないと」
予定があると言っただけで男と待ち合わせているなんて一言も言ってないのに言い当てられて思わず赤面するとうっわなにそのウブな反応!あざとっ!わざと!?もしかして天然!?ッカ〜〜天然物には勝てないわ〜〜〜〜なるほどこれが大富豪のオキニなわけね…としたり顔で深く頷かれてしまった。
「でもまあ諦めなよ。この船帰国するの年明けだし」
「えっ…!?年明け!?帰国ってなに!?」
「フィンランドまで船で行くんだよ、めっちゃ時間かかるに決まってるじゃん、クリスマス明日ってかあと数時間後だし絶対間に合わないけど」
「本気でフィンランドまで行くの…!?」
「そーだよ、乗る時パスポート見せて出国手続きしたじゃん」
「してないしてない!!てか私パスポート持ってない!!!」
持ってない…よな?
この世界で目覚める前からこの姿の人間がこの世にいたらしいことは部屋の写真や周りの発言で察していたからもしかしたら私のパスポートをハタ坊が持っていて勝手に出国している可能性もある。
まさかの事態に青ざめていると気の毒に思ったらしい彼女は「アンタが彼に私を紹介してくれるならアンタの下船を後押ししてあげてもいいけど」と言ってくれた。
「というわけで橋本にゃーちゃん。私の友達だよ、仲良くしてね」
「…名前の友達?」
「そう!橋本にゃーちゃん!言ってみて」
「…ハシモトニャーチャン」
「はぁ〜い♡橋本にゃーです♡よろしくにゃん♡♡♡」
アイドルスマイルを惜しげも無く浴びせるも焦点の合ってない彼の瞳がそれを見ているのか定かではない。
ハタ坊の元に戻った私は彼女を紹介した。名前だけでも覚えて欲しい。そして私は船から降りたい。
「にゃーちゃん、ハタ坊のお友達になりたいんだって」
「ぜひ♡仲良くして欲しいですにゃん♡」
にゃんにゃん媚びを売る橋本の方を見ないまま「友達増えて嬉しいジョ」と物凄い棒読みで言ったハタ坊にヒェっとなるも隣のアイドルは大喜びだからまぁいいか…いいのか…?
約束は果たしたのだから今度は私の願いを叶えて欲しい。
「でね、ハタ坊、私用事があって赤塚町に帰りたいの。申し訳ないけど降ろして貰えないかな?」
焦点の合っていなかったハタ坊の目がはっきりとこちらを向いた。
「帰る?」
「う、うん」
「用事?」
「うん、ごめんn」
「ハタ坊とクリスマス過ごすより大事な用事があるジョ?」
私の謝罪に被せるようにドスの効いた低音が凄む。顔も怖いし圧がすごい。なんか禍々しいオーラまで見える。
「え、えっと…」
「なんの用事だジョ?」
「あの、」
「なんの、用事だ、ジョ?」
こわい!!!!!!!!!
しどろもどろになりながら助けを求めて橋本を見るも、この状況を近くで見てビビったらしい彼女からは約束の「代わりににゃーと遊ぼうにゃん♡」という台詞は出てこなかった。
凄むハタ坊が怖くてぽろりと涙を零してしまったら途端にハタ坊の顔が焦燥にかられ、頭上に漫画みたいな汗の飛沫を飛ばしながらワタワタとその場をちょろちょろし出した。
「な、泣かないで欲しいジョ!わかったジョ、船から降りるといいジョ」
「えっほんと…いいの…?」
「でもここは海のど真ん中だから降りたらサメに喰われるジョ」
「えっ!?困る…!」
降りることばかり考えていてここからどうやって戻るか考えてなかった。
救命ボート一台くれたりしないだろうか、操縦できるかわからないけど…
詰んでしまったことにまた涙を零すと慌てたハタ坊が手を引っ張って上階へ連れられる。
そこには小型の飛行機があった。
押し込められるように乗せられ、隣の操縦席にハタ坊が収まる。
「これで無事に脱出できるジョ」
「ありがとうハタ坊…運転出来るの?」
「………」
「!?運転出来るの!?!?」
返事をしないで遠くを見つめたままエンジンをかけたハタ坊に青ざめて詰め寄る。
しかしそんな私を無視して操縦桿を握ったハタ坊は勢い良く回るプロペラを見ながら微笑んだ。
「フィンランドまで行くジョ!!」
「えっ!?結局!?!?待って!操縦出来るの!?!?待って!!!!」
降ろして!という私の叫びはけたたましいエンジン音に掻き消され、ブウウウウンという大きな音と共に飛行機は船から飛び上がった。
私の悲鳴が皆に聞こえることはなかったが、飛び立って小さくなる飛行機に「ミスターフラッグ乗ってないならこんな船乗ってる意味ないんだけど!!!!連れてくか降ろしてよ!!!!」という橋本にゃーのもっともな主張も聞こえることはなかった。
早く帰りたい。
スマホも持たず乗船させられてしまったからカラ松くんに連絡も取れない。
あの屋台にいたということはもう約束の時間はとっくに過ぎて現れない私は愛想を尽かされたということだろう。
向こうからも見えていたかはわからないけど、私から見えたんだから見られたかもしれない。約束をすっぽかした上にこんなヤバイ格好の私を!!!
綺麗におめかしした見知らぬ女性陣にチヤホヤされているハタ坊からそっと離れ、階下へ降りて人のいない場所へたどり着いた私はどんちゃん騒ぎを背に甲板の柵へと両腕を乗せて突っ伏していた。そこへ不意に腕に冷たい物が当たって驚いて顔を上げる。
冷気を感じた二の腕には如何にもインスタ映えしそうな鮮やかな色の液体が入ったカクテルグラスが押し付けられており、それを持っている人物の顔を見て予想外すぎて再び驚いた。
不機嫌そうに口をへの字に曲げた橋本にゃーが立っていたのだ。
唖然と見つめるだけの私に苛立ったらしい彼女は無言で更に二の腕にカクテルを押し付けてくるため慌ててお礼を言って受け取る。
私が両手でカクテルを持ったのを確認した彼女は、もう片手で持っていた違う色のカクテルグラスをカチンとグラスにぶつけてきて「メリークリスマスイブ」と呟くと柵に寄りかかって暗い海を見ながらグイッとグラスを煽った。
男前な飲みっぷりと涼やかな色気のある横顔に見惚れていると、こちらを見ないまま橋本が口を開く。
「なんでこんな誰もいないとこにそんな顔しているわけ」
「えっ」
「…ミスターフラッグが探してこいって。地下とはいえアイドルの私があんなに言い寄ってんのにやっとこっち見たと思ったら他の女を名指しで呼んでこいだよ?やってらんねーわ」
再びグイッと酒を煽った彼女はひそめた眉をそのままにこちらを見た。
不躾に全身舐めるように見られ狼狽する。
「そんな可愛らしい顔してセクシーなバニーガールの格好なんてどんだけあざといのかと思ったらすぐいなくなるしさっき降ろしてとか叫んでたでしょ?なんなの?この船乗りたくってもなかなか乗れないのに。いろんなツテ使ってやっと乗れていろんな手使ってミスターフラッグの近く陣取れたってのにアンタのせいでパーよ」
隣キープして媚び売ってたら名前がいないジョ探して連れてこいって…名前って誰だよ!?ってなってたら頭に旗刺さった連中にさっきまでいた黒いバニーガールだって…知ってる人いるんならそっちが探しに行けば良くない!?まぁ流石に直々に頼まれちゃったら断れないし探すしかなかったんだけど…とグチグチ恨み言を吐かれ縮こまる。
この船そんな争奪戦だったなら私降りるから代わりに乗りたい人に乗って欲しい。
そんな思いが顔に出ていたのか不満に歪んでいた顔が呆れに変わり重々しい溜息を吐かれた。
「…私ミスターフラッグのパーティにお呼ばれするの3回目♡とかマウント取ってた女何人も見たけど名指しで指名されてんのアンタだけだったよ、てか他の女多分名前どころか顔すら覚えられてないわ。アンタ何者?」
「……ミスターフラッグの友人です」
「ハッww友人!?wwwオトモダチがそんなあざとい格好してんの?あっオトモダチってそーゆー?枕はしない主義だけどミスターフラッグレベルの大富豪相手なら話は別だわ、どうやったらなれんの?一晩で終わりじゃ意味ないんだよね、アンタみたいに名前覚えられて気に入られるレベルのオトモダチになりたいんだけど」
盛大に勘違いして下卑た笑みで見下ろしてくる彼女に絶句する。こんな"www"が目に見えるような嘲笑混じりの話し方されるのは初めてだ。
大人しそうな顔してそんなに床上手なの?なんて聞いてくる彼女に慌ててそんな関係ではないこと、この格好は彼の部下に勝手に着せられただけなこと、ハタ坊にそんな思いは抱いていないから代わって欲しい人がいるなら喜んで代わること、予定があるので船を降りたいことをベラベラ告げると元々不機嫌だった彼女の顔が可愛らしさのカケラもなくなるほど歪んで、喋りすぎた!と口をつぐむ。
「………つまり媚びてもいないのに無理やりそばに置かれるくらいのお気に入りってこと?ハーーーーーー本命いんならこんなクルーズ企画すんなよ…しかもそのオキニちゃんは外に男がいてクリスマスはこんなとこで油売ってる場合じゃないと」
予定があると言っただけで男と待ち合わせているなんて一言も言ってないのに言い当てられて思わず赤面するとうっわなにそのウブな反応!あざとっ!わざと!?もしかして天然!?ッカ〜〜天然物には勝てないわ〜〜〜〜なるほどこれが大富豪のオキニなわけね…としたり顔で深く頷かれてしまった。
「でもまあ諦めなよ。この船帰国するの年明けだし」
「えっ…!?年明け!?帰国ってなに!?」
「フィンランドまで船で行くんだよ、めっちゃ時間かかるに決まってるじゃん、クリスマス明日ってかあと数時間後だし絶対間に合わないけど」
「本気でフィンランドまで行くの…!?」
「そーだよ、乗る時パスポート見せて出国手続きしたじゃん」
「してないしてない!!てか私パスポート持ってない!!!」
持ってない…よな?
この世界で目覚める前からこの姿の人間がこの世にいたらしいことは部屋の写真や周りの発言で察していたからもしかしたら私のパスポートをハタ坊が持っていて勝手に出国している可能性もある。
まさかの事態に青ざめていると気の毒に思ったらしい彼女は「アンタが彼に私を紹介してくれるならアンタの下船を後押ししてあげてもいいけど」と言ってくれた。
「というわけで橋本にゃーちゃん。私の友達だよ、仲良くしてね」
「…名前の友達?」
「そう!橋本にゃーちゃん!言ってみて」
「…ハシモトニャーチャン」
「はぁ〜い♡橋本にゃーです♡よろしくにゃん♡♡♡」
アイドルスマイルを惜しげも無く浴びせるも焦点の合ってない彼の瞳がそれを見ているのか定かではない。
ハタ坊の元に戻った私は彼女を紹介した。名前だけでも覚えて欲しい。そして私は船から降りたい。
「にゃーちゃん、ハタ坊のお友達になりたいんだって」
「ぜひ♡仲良くして欲しいですにゃん♡」
にゃんにゃん媚びを売る橋本の方を見ないまま「友達増えて嬉しいジョ」と物凄い棒読みで言ったハタ坊にヒェっとなるも隣のアイドルは大喜びだからまぁいいか…いいのか…?
約束は果たしたのだから今度は私の願いを叶えて欲しい。
「でね、ハタ坊、私用事があって赤塚町に帰りたいの。申し訳ないけど降ろして貰えないかな?」
焦点の合っていなかったハタ坊の目がはっきりとこちらを向いた。
「帰る?」
「う、うん」
「用事?」
「うん、ごめんn」
「ハタ坊とクリスマス過ごすより大事な用事があるジョ?」
私の謝罪に被せるようにドスの効いた低音が凄む。顔も怖いし圧がすごい。なんか禍々しいオーラまで見える。
「え、えっと…」
「なんの用事だジョ?」
「あの、」
「なんの、用事だ、ジョ?」
こわい!!!!!!!!!
しどろもどろになりながら助けを求めて橋本を見るも、この状況を近くで見てビビったらしい彼女からは約束の「代わりににゃーと遊ぼうにゃん♡」という台詞は出てこなかった。
凄むハタ坊が怖くてぽろりと涙を零してしまったら途端にハタ坊の顔が焦燥にかられ、頭上に漫画みたいな汗の飛沫を飛ばしながらワタワタとその場をちょろちょろし出した。
「な、泣かないで欲しいジョ!わかったジョ、船から降りるといいジョ」
「えっほんと…いいの…?」
「でもここは海のど真ん中だから降りたらサメに喰われるジョ」
「えっ!?困る…!」
降りることばかり考えていてここからどうやって戻るか考えてなかった。
救命ボート一台くれたりしないだろうか、操縦できるかわからないけど…
詰んでしまったことにまた涙を零すと慌てたハタ坊が手を引っ張って上階へ連れられる。
そこには小型の飛行機があった。
押し込められるように乗せられ、隣の操縦席にハタ坊が収まる。
「これで無事に脱出できるジョ」
「ありがとうハタ坊…運転出来るの?」
「………」
「!?運転出来るの!?!?」
返事をしないで遠くを見つめたままエンジンをかけたハタ坊に青ざめて詰め寄る。
しかしそんな私を無視して操縦桿を握ったハタ坊は勢い良く回るプロペラを見ながら微笑んだ。
「フィンランドまで行くジョ!!」
「えっ!?結局!?!?待って!操縦出来るの!?!?待って!!!!」
降ろして!という私の叫びはけたたましいエンジン音に掻き消され、ブウウウウンという大きな音と共に飛行機は船から飛び上がった。
私の悲鳴が皆に聞こえることはなかったが、飛び立って小さくなる飛行機に「ミスターフラッグ乗ってないならこんな船乗ってる意味ないんだけど!!!!連れてくか降ろしてよ!!!!」という橋本にゃーのもっともな主張も聞こえることはなかった。