夢だけど夢じゃない
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街がキラキラしている。
もうすぐクリスマスだ。
凛と澄んだ染みる空気に引き締められながら、どの季節よりも美しく見えるイルミネーションを見て歩くのは結構好きだ。
街行く人が互いを暖め合うようにくっついて歩いているのも微笑ましい。
まだそんなに遅い時間ではないけれど、すっかり暗くなってしまった見慣れた道を寒さにせっつかれるように早足で歩く。あんまり遅いとまたハタ坊に怒られちゃう。
今日は、サンタ帽を被った色んな動物の形のかわいいマカロンをおやつにするためクリスマスフェアに向かったはずが、予想以上にお店が混んでいて何時間も並んだためすっかりおやつの時間を過ぎ、晩御飯の時間になってしまった。日が暮れる前に帰るつもりだったのに。せっかくゲットした箱を揺らさないよう気をつけながら足を早めていると、広場のベンチに不審な人影が見えて思わず歩みが緩やかになる。
黒い人影は大きな袋を持っていて、沈むようにベンチに座っていた。
確かに暗いけれど、一応街頭に照らされているはずの広場はその人影の周りだけどんよりと一層暗くて、一瞬おばけを見たかと思って心臓が縮んだ。釘付けになった目を凝らせば、それがおばけなんかじゃないってことはわかったのだけど。おばけどころか知ってる人だ。
その姿の彼がどういう状態か知ってる身としては声をかけない方が良いとわかっているけど、自然と足がそちらへ向いてしまって、俯いてベンチに縮こまっている彼の前まで歩いてきてしまった。
視界に私の脚が入ったのか、ゆっくりと顔をあげた彼は私と目が合うなりみるみる目を見開いて悲壮な表情になった。やばい。なんとか先手を打たなくちゃ。
「め、メリークリスマス」
「は?」
間違えたーーーー!!!!!!!
多分今の彼に一番言っちゃいけない言葉だ。やばい、下手くそ!ばか!言うことないならスルーして立ち去れば良かっただろ私のばか!
今まで見たことのないような(いや、画面の中では散々見てきたけどこっちで生で見るのは初めての)据わった目でこちらを見上げた。
「…ひとりなの?」
「えっ」
「ひとりなのって聞いてんだよアァ!?」
「ひとりです!!!!!!!」
「ふぅん…さみしいね」
おれもあんたも、とボソリとこぼしたまま何も言わなくなってしまった目の前の男にどうしたものか困り果てて、でもここまできてじゃあねと帰るわけにもいかず、隣のベンチに腰掛けた。
は?という感じに見てきた彼は「名前ちゃん、おれが誰だかわかってて座ったの?」と吐き捨てるように聞いてくるから「ブラックサンタさん」と返せば「へぇ…ブラックサンタって有名なの?」と聞き返された。
「いや、単に黒いサンタさんだからそう言ってみただけです…」
「ふぅん…ねぇ、何を思ってその黒いサンタさんの前にわざわざ立ったわけ」
バカにしてんの?哀れんでんの?ハッ生ゴミがきしょいコスプレしてて珍しく思った?などとベラベラと話し出してしまい、闇を背負いながらも今迄私に向けたことのない毒を向け出したので、普段の一松くんとブラックサンタは別人格なのかなと怯えながら長蛇の列の戦利品を開けて中身を1つ取り出した。
まだベラベラと悪口なのか嫌味なのか自虐なのかわからないことを並べている彼の顔の前にそれをずずいと突き出す。
「え、な、なに」
「あげます」
「なにこれ」
「にゃんこサンタさんのマカロン」
「にゃんこサンタさんのマカロン…」
「そうです。ブラックサンタさん、トナカイさんも連れてないみたいだからお供ににゃんこサンタさんをあげます」
先程買ったばかりのマカロンの箱から、サンタ帽を被った猫の形のマカロンを1つ、押し付ける。潰れないようにそうっと。
繊細なものだとわかったのか、両手を皿のように前に突き出したのでその上にマカロンをのせる。手のひらに乗せられた猫のマカロンをまじまじと見つめる目に生気が戻ってきた。
「これで寂しくありませんね」と言えばびっくりしたように勢いよくこちらを向いた。その顔はもうブラックサンタではなくよく知った松野一松の顔で、ホッとする。
「もしまだ寂しかったらもうひとつ仲間をあげましょうか」
「え、あ、いやいい、にゃんこサンタだけで…」
「そうですか?ブラックサンタさん、クリスマスはまだ先だけど今日もお仕事があるんですか?」
「い、いや別に…」
「そっか、じゃあ帰りましょう」
ここは寒いし、ほら立って、と促せば両手の手のひらにマカロンを大切に乗せたままのろのろと立ち上がった。
違うってわかってるけどわざと聞いちゃう。
「ブラックサンタさんは普通のサンタさんみたいにプレゼントを配るお仕事ですか?」
「えっ」
「大きな袋を持ってるので。プレゼント入ってるのかなって」
「いやこれは別に」
「サンタさん、私はもう大人だけど欲しいものがあるんです」
「えっ…なに…?」
「…お友達が欲しいなって」
半開きだった目が大きく見開かれて、その澄んだ瞳に私が映っているのが見えた。
「松野一松くんが、私のお友達になってくれたら良いなって」
「…!!!」
「クリスマスに叶えてくれたら嬉しいです、サンタさん」
そう言えば、彼はマカロンを持ち上げたままオロオロとしだした。僕はブラックサンタでそういうサンタではないとかカップルを燃やすのは出来るけどそういうのはちょっととかもごもご言う。
「サンタさん、ブラックサンタなの?」
「え、は?う、うん、そうだよ、アンタだってそう言って、」
「さっきまではそうだったけど、今は違うみたい」
は?と口を開けて困惑する松野一松は顔も首も耳まで見事に真っ赤で、どういう原理だか黒かったサンタ服まで一緒に染められたように赤くなっていた。ただのサンタコスのお兄さんだ。
「そのマカロンね、クリスマスまでしか保たないの。消費期限切れになる前に食べて欲しいんだけど、そうしたらまた寂しくなるかもしれないでしょ、だからにゃんこサンタさんを食べた後の代わりの仲間に私がなれたら良いな、そしたらサンタさんも寂しくないし私にもお友達ができてwin-win」
「ぅ、うぃんうぃん」
いきなりビジネス用語挟んだからかおどおどとおうむ返しされて、えっもしかして一般人言わない!?社畜だけ!?て焦ったけれど意味は通じたようなので、にっこり笑って背を向ける。多分彼はもう大丈夫。そう思ってそのまま帰路につく。
私なんかがおこがましいかもしれないけど、少しでも彼の寂しさを埋めれたら、仲良くなれたら良いなって、お友達になりたいなって、本気だけど、今更おかしなことを言ってしまったのではと顔が熱くなった私は、彼がそこまで気にしてませんようにすぐ忘れますようにマカロン喜んでくれてますように寒空の下1人で他人に胸を燻らせながら嫌な思いに沈みませんようにと多すぎる願い事をぐるぐる考えながら走って帰った。
走った時箱を振ってしまったせいで何個かマカロンが欠けてしまい、ハタ坊を悲しませてしまって心苦しくなることはまだ知らない。
もうすぐクリスマスだ。
凛と澄んだ染みる空気に引き締められながら、どの季節よりも美しく見えるイルミネーションを見て歩くのは結構好きだ。
街行く人が互いを暖め合うようにくっついて歩いているのも微笑ましい。
まだそんなに遅い時間ではないけれど、すっかり暗くなってしまった見慣れた道を寒さにせっつかれるように早足で歩く。あんまり遅いとまたハタ坊に怒られちゃう。
今日は、サンタ帽を被った色んな動物の形のかわいいマカロンをおやつにするためクリスマスフェアに向かったはずが、予想以上にお店が混んでいて何時間も並んだためすっかりおやつの時間を過ぎ、晩御飯の時間になってしまった。日が暮れる前に帰るつもりだったのに。せっかくゲットした箱を揺らさないよう気をつけながら足を早めていると、広場のベンチに不審な人影が見えて思わず歩みが緩やかになる。
黒い人影は大きな袋を持っていて、沈むようにベンチに座っていた。
確かに暗いけれど、一応街頭に照らされているはずの広場はその人影の周りだけどんよりと一層暗くて、一瞬おばけを見たかと思って心臓が縮んだ。釘付けになった目を凝らせば、それがおばけなんかじゃないってことはわかったのだけど。おばけどころか知ってる人だ。
その姿の彼がどういう状態か知ってる身としては声をかけない方が良いとわかっているけど、自然と足がそちらへ向いてしまって、俯いてベンチに縮こまっている彼の前まで歩いてきてしまった。
視界に私の脚が入ったのか、ゆっくりと顔をあげた彼は私と目が合うなりみるみる目を見開いて悲壮な表情になった。やばい。なんとか先手を打たなくちゃ。
「め、メリークリスマス」
「は?」
間違えたーーーー!!!!!!!
多分今の彼に一番言っちゃいけない言葉だ。やばい、下手くそ!ばか!言うことないならスルーして立ち去れば良かっただろ私のばか!
今まで見たことのないような(いや、画面の中では散々見てきたけどこっちで生で見るのは初めての)据わった目でこちらを見上げた。
「…ひとりなの?」
「えっ」
「ひとりなのって聞いてんだよアァ!?」
「ひとりです!!!!!!!」
「ふぅん…さみしいね」
おれもあんたも、とボソリとこぼしたまま何も言わなくなってしまった目の前の男にどうしたものか困り果てて、でもここまできてじゃあねと帰るわけにもいかず、隣のベンチに腰掛けた。
は?という感じに見てきた彼は「名前ちゃん、おれが誰だかわかってて座ったの?」と吐き捨てるように聞いてくるから「ブラックサンタさん」と返せば「へぇ…ブラックサンタって有名なの?」と聞き返された。
「いや、単に黒いサンタさんだからそう言ってみただけです…」
「ふぅん…ねぇ、何を思ってその黒いサンタさんの前にわざわざ立ったわけ」
バカにしてんの?哀れんでんの?ハッ生ゴミがきしょいコスプレしてて珍しく思った?などとベラベラと話し出してしまい、闇を背負いながらも今迄私に向けたことのない毒を向け出したので、普段の一松くんとブラックサンタは別人格なのかなと怯えながら長蛇の列の戦利品を開けて中身を1つ取り出した。
まだベラベラと悪口なのか嫌味なのか自虐なのかわからないことを並べている彼の顔の前にそれをずずいと突き出す。
「え、な、なに」
「あげます」
「なにこれ」
「にゃんこサンタさんのマカロン」
「にゃんこサンタさんのマカロン…」
「そうです。ブラックサンタさん、トナカイさんも連れてないみたいだからお供ににゃんこサンタさんをあげます」
先程買ったばかりのマカロンの箱から、サンタ帽を被った猫の形のマカロンを1つ、押し付ける。潰れないようにそうっと。
繊細なものだとわかったのか、両手を皿のように前に突き出したのでその上にマカロンをのせる。手のひらに乗せられた猫のマカロンをまじまじと見つめる目に生気が戻ってきた。
「これで寂しくありませんね」と言えばびっくりしたように勢いよくこちらを向いた。その顔はもうブラックサンタではなくよく知った松野一松の顔で、ホッとする。
「もしまだ寂しかったらもうひとつ仲間をあげましょうか」
「え、あ、いやいい、にゃんこサンタだけで…」
「そうですか?ブラックサンタさん、クリスマスはまだ先だけど今日もお仕事があるんですか?」
「い、いや別に…」
「そっか、じゃあ帰りましょう」
ここは寒いし、ほら立って、と促せば両手の手のひらにマカロンを大切に乗せたままのろのろと立ち上がった。
違うってわかってるけどわざと聞いちゃう。
「ブラックサンタさんは普通のサンタさんみたいにプレゼントを配るお仕事ですか?」
「えっ」
「大きな袋を持ってるので。プレゼント入ってるのかなって」
「いやこれは別に」
「サンタさん、私はもう大人だけど欲しいものがあるんです」
「えっ…なに…?」
「…お友達が欲しいなって」
半開きだった目が大きく見開かれて、その澄んだ瞳に私が映っているのが見えた。
「松野一松くんが、私のお友達になってくれたら良いなって」
「…!!!」
「クリスマスに叶えてくれたら嬉しいです、サンタさん」
そう言えば、彼はマカロンを持ち上げたままオロオロとしだした。僕はブラックサンタでそういうサンタではないとかカップルを燃やすのは出来るけどそういうのはちょっととかもごもご言う。
「サンタさん、ブラックサンタなの?」
「え、は?う、うん、そうだよ、アンタだってそう言って、」
「さっきまではそうだったけど、今は違うみたい」
は?と口を開けて困惑する松野一松は顔も首も耳まで見事に真っ赤で、どういう原理だか黒かったサンタ服まで一緒に染められたように赤くなっていた。ただのサンタコスのお兄さんだ。
「そのマカロンね、クリスマスまでしか保たないの。消費期限切れになる前に食べて欲しいんだけど、そうしたらまた寂しくなるかもしれないでしょ、だからにゃんこサンタさんを食べた後の代わりの仲間に私がなれたら良いな、そしたらサンタさんも寂しくないし私にもお友達ができてwin-win」
「ぅ、うぃんうぃん」
いきなりビジネス用語挟んだからかおどおどとおうむ返しされて、えっもしかして一般人言わない!?社畜だけ!?て焦ったけれど意味は通じたようなので、にっこり笑って背を向ける。多分彼はもう大丈夫。そう思ってそのまま帰路につく。
私なんかがおこがましいかもしれないけど、少しでも彼の寂しさを埋めれたら、仲良くなれたら良いなって、お友達になりたいなって、本気だけど、今更おかしなことを言ってしまったのではと顔が熱くなった私は、彼がそこまで気にしてませんようにすぐ忘れますようにマカロン喜んでくれてますように寒空の下1人で他人に胸を燻らせながら嫌な思いに沈みませんようにと多すぎる願い事をぐるぐる考えながら走って帰った。
走った時箱を振ってしまったせいで何個かマカロンが欠けてしまい、ハタ坊を悲しませてしまって心苦しくなることはまだ知らない。