夢だけど夢じゃない
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すごく動揺して動かない私を気にせず、ああだかわぁだか言ったカラ松はしゃがんでかけらを拾い出し、その体勢のまま顔だけあげて「全く名前は本当におっちょこちょいだな」と笑った。それを見てあっ…と頭のてっぺんからつま先まで駆け巡るように熱が引いていき、すごく冷静になった。違う。これはブラザー好きだなぁとか唐揚げ好きだなぁと同じやつだ。向けられ慣れない好意を受け止めて喜んだだけのやつだ。"特別な親友"に新たな理由を付け加えてしまっただけのやつだ。
一瞬で舞い上がった心は一瞬で無に返って、私も黙ってしゃがみ黙々とかけらを拾い出した。バカみたい。勘違いしてバカみたい。カラ松くんはそういうんじゃないのに。そうは見てくれないのに。いい加減期待するのやめなよ。諦めたんでしょ、いい加減にしろ。自己嫌悪で乱雑にかけらを拾っていたらスポンジだと思って掴んだ指先に痛みが走った。スポンジとクリームに隠れてわからなかったが皿の破片も入っていたらしい。痛…ッと小さく漏らして引いた手を見れば白いクリームのついた指先にぷっくりと赤い血が滲んだ。はは、最悪な紅白だ。全然めでたくない。
手を洗おうと立ち上がろうとするより早く、手首が掴まれカラ松の顔の前に持っていかれる。驚いて何も出来ず動かされた自分の手を目で追えば、手越しに眉を潜めたカラ松の顔が見えて、そのまま指はカラ松の口に含まれた。
…………えっ?
我に返った頃には、ちゅっという音と共に口から指は出されて、じくじくとした痛みとこちらを見たカラ松の目に囚われて身動きが取れなくなっていた。…………えっ?
「…全く、おっちょこちょいもいい加減にしないと心配だぞ」
再び指に顔を寄せ、ぺろりと舐めながら困ったように言うカラ松に、全身がブワッと沸騰したように熱くなり、叫び出しそうになったと同時に洗面所のドアが勢いよく開いて「大丈夫!?なんかすごい音したけど!?!?」とわらわら人が覗き込んできた気配を背中で感じ、手を振り払ってバッ!!!!と立ち上がった私は「ちょっとトイレ!!!!」と言って真横にあった扉の中に飛び込みバタン!と扉を閉めてガチャリ!と鍵をかけた。
外から「名前!?そっちは風呂だぞ!?」とか「うわっ派手にやったね〜〜ケーキまみれじゃん」とか聞こえたけど全身が心臓になったみたいに脈打つ私は耳の中までドクドクいっていてそれどころじゃないし、ずるずると座り込んで頭を浴槽のふちにもたれかけるので精一杯だった。顔どころか耳も首も全身真っ赤だろう。
震える指を見ながらさっきの光景がフラッシュバックしガンガンと頭を浴槽に打ち付けた。
なん…なんでそういう!!!!
こういう!!!!!!!!!
こういうこと!!!!
するの!!!!!!!!
あまりに恋愛射程外だからとか兄弟と同じ扱いだからとか正しい理由はわかっているけど、こんなの、こんなの、ずるい。ずるい!!!!好きになるなという方が無理!!!!!!!!
頭の中で何度も何度も指を口に含むシーンや舐めながらこちらを見上げたシーンを思い出してしまい、外にみんながいるのも忘れて声にならない悲鳴をあげながら浴槽に頭だけ突っ込むと床に座り込んだまま片手でシャワーの蛇口をひねった。
頭だけ冷水シャワーを浴びてだいぶ冷静になった私はビチョビチョになったリボンを外して浴室に干し、ポニーテールを軽く絞って風呂を出た。
洗面所にはもうみんなはいなくて、代わりに掃除道具を背負った旗の人が3人、一斉にこちらを見た。飛び散ったケーキは粗方片付いており、モップがけをする2人は興味なさげにすぐ目をそらしたけど洗面ボウルにでかいパイプみたいなホースを突っ込んでズゴゴゴと音をさせている人には思いっきり睨まれた。あっやっぱり詰まりました?すみません…
居た堪れずタオルで簡単に髪を拭いて適当にお団子にしてすぐ洗面所を出てリビングに戻れば、みんなケーキを食べ終わっている頃だった。
頭が濡れている私にギョッとした視線が集まったので汚れちゃったのでと適当に嘘をついた。
ソファの端に座れば反対端から半分食べられたケーキ皿がテーブルを滑ってきた。カラ松が約束通り半分を寄越したのだ。受け取ろうとテーブルに手を伸ばすとその皿はさっと押し戻されて代わりに新しいケーキが一つ乗った皿が目の前に置かれた。驚いて見上げれば皿を置いた旗の人は紅茶を淹れて興味なさげに目も合わせず私の前に紅茶も置いた。ガチャンと。
「名前の分はちゃんとあるから食べかけを食べることないジョ」
笑顔のハタ坊がそう言って、半分残ったケーキ皿をカラ松に持たせた。カラ松は何か言いたげだったけど黙って続きを口に含んだので私も目の前の新しいケーキにフォークを入れた。
ハタ坊ははしゃいでいたけれどすっかり萎縮したむつごたちは静かなもので、私とカラ松がケーキを食べ終わると自然とお開きの流れになった。
立ち上がって帰り支度を始めたむつごたちを見ていたらトド松があっ!とわざとらしく声をあげた。
「ねぇ、せっかく集まったし記念に写真撮らない?いくよー?ハイチーズ!はい、オッケー☆写真送りたいから連絡先交換してもらってもいいかな?」
ベラベラと流暢に喋りながら呆気にとられるみんなを置いてけぼりにしたまま全員を画角に入れて自撮りし名前に近寄ってスマホを振りながら笑いかけたトド松は、いち早く我に返ったハタ坊が己のスマホを振って「はい、交換したジョ!写真待ってるジョ!」とあえなく蹴散らされた。
エレベーターホールまでお見送りに出た名前とハタ坊に、エレベーターに乗ったむつごたちはそれぞれ何か言いたげな顔をしたまま「お邪魔しました…」とだけ告げ、エレベーターの扉は静かに閉まったのだった。
一瞬で舞い上がった心は一瞬で無に返って、私も黙ってしゃがみ黙々とかけらを拾い出した。バカみたい。勘違いしてバカみたい。カラ松くんはそういうんじゃないのに。そうは見てくれないのに。いい加減期待するのやめなよ。諦めたんでしょ、いい加減にしろ。自己嫌悪で乱雑にかけらを拾っていたらスポンジだと思って掴んだ指先に痛みが走った。スポンジとクリームに隠れてわからなかったが皿の破片も入っていたらしい。痛…ッと小さく漏らして引いた手を見れば白いクリームのついた指先にぷっくりと赤い血が滲んだ。はは、最悪な紅白だ。全然めでたくない。
手を洗おうと立ち上がろうとするより早く、手首が掴まれカラ松の顔の前に持っていかれる。驚いて何も出来ず動かされた自分の手を目で追えば、手越しに眉を潜めたカラ松の顔が見えて、そのまま指はカラ松の口に含まれた。
…………えっ?
我に返った頃には、ちゅっという音と共に口から指は出されて、じくじくとした痛みとこちらを見たカラ松の目に囚われて身動きが取れなくなっていた。…………えっ?
「…全く、おっちょこちょいもいい加減にしないと心配だぞ」
再び指に顔を寄せ、ぺろりと舐めながら困ったように言うカラ松に、全身がブワッと沸騰したように熱くなり、叫び出しそうになったと同時に洗面所のドアが勢いよく開いて「大丈夫!?なんかすごい音したけど!?!?」とわらわら人が覗き込んできた気配を背中で感じ、手を振り払ってバッ!!!!と立ち上がった私は「ちょっとトイレ!!!!」と言って真横にあった扉の中に飛び込みバタン!と扉を閉めてガチャリ!と鍵をかけた。
外から「名前!?そっちは風呂だぞ!?」とか「うわっ派手にやったね〜〜ケーキまみれじゃん」とか聞こえたけど全身が心臓になったみたいに脈打つ私は耳の中までドクドクいっていてそれどころじゃないし、ずるずると座り込んで頭を浴槽のふちにもたれかけるので精一杯だった。顔どころか耳も首も全身真っ赤だろう。
震える指を見ながらさっきの光景がフラッシュバックしガンガンと頭を浴槽に打ち付けた。
なん…なんでそういう!!!!
こういう!!!!!!!!!
こういうこと!!!!
するの!!!!!!!!
あまりに恋愛射程外だからとか兄弟と同じ扱いだからとか正しい理由はわかっているけど、こんなの、こんなの、ずるい。ずるい!!!!好きになるなという方が無理!!!!!!!!
頭の中で何度も何度も指を口に含むシーンや舐めながらこちらを見上げたシーンを思い出してしまい、外にみんながいるのも忘れて声にならない悲鳴をあげながら浴槽に頭だけ突っ込むと床に座り込んだまま片手でシャワーの蛇口をひねった。
頭だけ冷水シャワーを浴びてだいぶ冷静になった私はビチョビチョになったリボンを外して浴室に干し、ポニーテールを軽く絞って風呂を出た。
洗面所にはもうみんなはいなくて、代わりに掃除道具を背負った旗の人が3人、一斉にこちらを見た。飛び散ったケーキは粗方片付いており、モップがけをする2人は興味なさげにすぐ目をそらしたけど洗面ボウルにでかいパイプみたいなホースを突っ込んでズゴゴゴと音をさせている人には思いっきり睨まれた。あっやっぱり詰まりました?すみません…
居た堪れずタオルで簡単に髪を拭いて適当にお団子にしてすぐ洗面所を出てリビングに戻れば、みんなケーキを食べ終わっている頃だった。
頭が濡れている私にギョッとした視線が集まったので汚れちゃったのでと適当に嘘をついた。
ソファの端に座れば反対端から半分食べられたケーキ皿がテーブルを滑ってきた。カラ松が約束通り半分を寄越したのだ。受け取ろうとテーブルに手を伸ばすとその皿はさっと押し戻されて代わりに新しいケーキが一つ乗った皿が目の前に置かれた。驚いて見上げれば皿を置いた旗の人は紅茶を淹れて興味なさげに目も合わせず私の前に紅茶も置いた。ガチャンと。
「名前の分はちゃんとあるから食べかけを食べることないジョ」
笑顔のハタ坊がそう言って、半分残ったケーキ皿をカラ松に持たせた。カラ松は何か言いたげだったけど黙って続きを口に含んだので私も目の前の新しいケーキにフォークを入れた。
ハタ坊ははしゃいでいたけれどすっかり萎縮したむつごたちは静かなもので、私とカラ松がケーキを食べ終わると自然とお開きの流れになった。
立ち上がって帰り支度を始めたむつごたちを見ていたらトド松があっ!とわざとらしく声をあげた。
「ねぇ、せっかく集まったし記念に写真撮らない?いくよー?ハイチーズ!はい、オッケー☆写真送りたいから連絡先交換してもらってもいいかな?」
ベラベラと流暢に喋りながら呆気にとられるみんなを置いてけぼりにしたまま全員を画角に入れて自撮りし名前に近寄ってスマホを振りながら笑いかけたトド松は、いち早く我に返ったハタ坊が己のスマホを振って「はい、交換したジョ!写真待ってるジョ!」とあえなく蹴散らされた。
エレベーターホールまでお見送りに出た名前とハタ坊に、エレベーターに乗ったむつごたちはそれぞれ何か言いたげな顔をしたまま「お邪魔しました…」とだけ告げ、エレベーターの扉は静かに閉まったのだった。