夢だけど夢じゃない
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本当に最悪だ。
松野トド松は絶望を顔全体に浮かべて全身の色素を薄くして人魂まで周りに浮かべて同じような顔をした兄弟達とふかふかのソファーに沈んでいた。
話は前日の夜に戻る。
トト子ちゃんのライブで発表された新ユニットのメンバーがスタバァのあの子だったのに驚き、運命の再会と心弾んだのも束の間、その子のことをクソ兄貴どもが全員知っていて、しかも自分は知らなかった名前をクソ兄貴(しかも3人も!!!)が知っていたという信じがたい事実にボコボコに打ちのめされた。天国から地獄へ瞬間ツアーである。しかも名前を知るほどの仲だったのが前科(彼女持ち)のある十四松兄さんはともかく、よりにもよってあのクソ痛厨二病兄さんと女子耐性むつごワーストワンの闇松兄さん!!!天変地異!!!神なんて1ミクロンも信じちゃいないけれど、もしいるのなら血反吐吐くまでブン殴って何故そうなったのか問いただしたい。
ライブが終わった後に、出遅れたとはいえ諦めは出来ないので彼女と正式に自己紹介を交わすべく楽屋口へと猛ダッシュ。我先にと扉を開けるも、トト子ちゃんの大雷が落ちた瞬間だったので刺激しないようそっと閉めた。今じゃない。長年彼女の幼馴染をやっているボク達は触らぬ女神に祟りなしを身を以て痛い程(本当に痛いほど)知りすぎていたので怒鳴り声が止むまでおとなしく楽屋口の外でたむろして待っていた。
そろそろおとなしくなって少し経ったし、とドアを開けようかと思えば、向こうからドアが開いて、待ち焦がれたあの子が顔を出した!!!向こうから来てくれたことに興奮しながら声をかけるも即座に扉は閉ざされ次に開いた時は我らがアイドル、トト子ちゃんが笑顔をのぞかせてくれたわけだけど(あ〜〜トト子ちゃん今日もかわいい〜♡)、クソバカシコシコ松が口を滑らせたおかげで硬く冷たいアスファルトの上で小一時間正座のお説教を食らった上に終わった後には楽屋の中はもぬけの殻だったわけで。ほんっとあり得ないよね!?アイドルバカもいい加減にしろよ!?!?あそこでトト子ちゃんにあんなこと言う!?バッカじゃないの!?脳味噌空っぽか!カラ松兄さんじゃないんだから!!全く、頭ん中脳味噌じゃなくてちんこ生えてんじゃないの!?気持ち悪いのは勝手だけどボクの足を引っ張るのだけはやめてほしいよね!
そんなわけでガッカリゲッソリして帰って来て早々、布団を敷いて倒れ込んだボク達は説教中頭空っぽクソ松兄さんがいなかったことにも、帰って来たら既に家にカラ松兄さんがいたことにも気付かず、いつの間にか部屋で一緒に寝る支度をしていたことを誰も気にしないまま嫌な思い出を早く忘れようと我先に夢の世界へと旅立った。
翌朝、といっても昼過ぎだけど、なんか遠くで電話の鳴る音で目が覚めたボクはこんな早くに迷惑だなあと思いつつももぞもぞと起き上がった。兄弟のうち何人かはもう起きているらしく布団はところどころ人がいなかった。
目をこすりながら階段を降りれば、奥から出て来た母さんと出くわす。
「あぁ、おはよう母さん」
「やっと起きたのトド松、さっさとごはん食べちゃってちょうだい」
「ん〜」
「ああ、あと名前ちゃんから電話があってね、家に来てほしいんですって」
「ん〜………………はっ???」
さらりと言われた言葉を寝惚け頭で反芻していたが電流が走ったように急に目が覚めた。
「誰がどこに来てほしいだって!?!?」
通り過ぎた母さんに走り寄って両肩を掴んで目を血走らせながら聞けば、昨日ようやく知った愛しい女の子の名前が繰り返し発せられた。
家に???ボクを??????
たちまち脳内花畑になってしまったボクは天にも昇る気分であれこれ邪な想像を繰り返しては、そんな、展開早いよ、意外と積極的なの!?とブツブツ言いながら他の兄弟に知られないようこっそり最大限にめかし込んで、聞いた住所の地へ向かったのだった。
そして、冒頭に戻る。
名前ちゃんの家(部屋?)がハタ坊ん家の中にあったことは衝撃すぎるけどまぁ置いといて。
デジャブ。
すごいデジャブ。
初めてトト子ちゃんの家へ呼ばれた時と同じ過ちを奇しくも兄弟全員で犯してしまった。
ボクがドキドキしすぎて吐きそうになりながら頭に旗の刺さった人に案内されてこの部屋の扉を潜った時、死んだ魚の眼をした兄弟が既に何人か部屋の中にいたのだ。
トト子ちゃんに呼ばれて期待に胸を膨らませたあの日と全員同じ服装で。学んでなさすぎる。一松兄さんは本当、その格好はなんなの?その服どこに隠してんの?髪型どうした???
あの日と違ったのは、既に部屋にチョロ松兄さんがいたことだ。髪をビシッとオールバックでキメて何故か眼鏡をかけスーツを着込んで出来るサラリーマン風を装っていた。ダンボールで出来たスマホとノートPCを操作して。なにそれギャグ…?こっわ……
部屋にいないのは後はもうカラ松兄さんだけだ。
今日に限ってバラバラに起きたせいで兄弟全員呼ばれていたのに松代が起きた順に一人ずつ伝えたため、誰もが自分だけが呼ばれたと信じ込んでしまったのだ。あーあ、バカみたい。恥ずかしい。だいたいなんであの子ボクらの家電知ってんの…?
あとはイッタイバスローブ姿に飲めもしないワイングラスを揺らしたクソ松兄さんが現れるのを待つだけ…と誰もが思った頃、重厚な扉が開いて次男が姿を現した。それは想定通りだったけれど、その姿が思いもよらないものでボクらは思わずふにゃふにゃにだらけていた姿勢を正してあんぐりと釘付けになった。
バスローブでもなく、いつものクソダサファッションでもなく、揃いで母さんが買ったいつもの青いジャージに青いマフラーを巻いただけのいつも通りの適当な格好だったのだ!!
えっ!?どういうこと!?
女の子の部屋に呼ばれたんだよ!?!?いもしないカラ松ガールとやらに会いに行く時ですら革ジャンキメてくのに、そんな、ちょっとコンビニみたいな格好で!!!!どうしちゃったの!?!?パーフェクトファッションとやらは!?!?全部洗濯中!?!?!?!?
混乱しているのはボクだけじゃないらしく5人全員同じような顔をしてパクパクと口を動かしていたら、部屋をぐるっと見回したカラ松は「あれ?名前いないのか?」と言いながらドアを閉めた。
「呼ばれたから来たのにな?」
「…ここで待つよう言われたけど…」
不思議そうに首を傾げた次男に、絞り出すようにチョロ松兄さんが答えるも、顔にはそんなことよりお前その服どうしちゃったのと書いてある。
しかし空気をまるで読めないこの青い兄はそんなことにはつゆほど気づかず、スタスタと部屋の奥のクローゼットの扉を「名前〜?」と言いながら勝手に開けた。
ちょっ!?何してんの!?!?女の子の部屋を勝手に物色する気!?!?抜け駆けは許さん!!!!
そう驚いて振り向いたボクらは、全員がクローゼットだと思っていた観音開きの扉の奥にまたしても広々と部屋が広がっていたことに白目を剥いた。えっこの部屋広ッ!!!!奥がベッドだけの部屋なの!?!?何その天蓋付きの超でかいベッド!?!?ハリーポッター!?!?ホグワーツなの!?!?名前ちゃん何者!?!?
動揺して怯えるボクらを微塵も気にせずベッドルームにズカズカ入って行った次男はその奥の部屋(まだ部屋があるの!?)にも名前を呼びながら入っていき、トイレでもないらしいなとかなんとか言いながらボクらのいる部屋まで戻ってきた。な、何やってんのこのサイコパス…?部屋の間取り熟知してんの?怖ッ…
そこまで考えて、何か引っかかり、思考が停止する。
部屋の間取り?熟知?してんの??
自分で考えただけなのに、その言葉が呪いのように頭の中をエコーする。
周りを見れば同じような表情で顔を強張らせた兄弟たちと目があった。全員が嫌な推測にたどり着いてしまった。もしかして、こいつ、ここに来たことが…?
「…なぁカラ松、」
長男が言いづらそうに乾いた唇を舐め、掠れた声を発した瞬間、重厚なドアが開いて可愛らしいくりくりの大きな目がボクらを捉えた。
「あっ!ごめんなさい、みんなもう揃ってる…!お待たせしちゃいましたよね、すみませんハタ坊に呼ばれていて…」
ぺこぺこ会釈するせいで揺れる紅白のリボンを呆然と見つめる絶句したボクらを気まずげに眺めた彼女は、ベッドルームの扉の前に立っていた青い男に助けを求めるようにカラ松くん、と小さく呼びかけた。
我らが次男は笑顔で大きく頷くと彼女の横に移動する。その並び立つ姿が様になっていて、ボクらは死にそうな思いをしながらまさかの発言が飛び出さないように下唇から血が滲むくらい噛み締めて祈りながら、次男の口が開くのを穴のあくほど凝視した。
「紹介しよう、親友の名前だ」
「許さんクソ松抜け駆けは…エッ親友???」
彼女だ、と紹介されるとばかり思っていたボクらは殺す勢いで全員飛びかかっていたものだから途中で違う単語が聞こえたのに気づいたものの、もう遅く、全員でカラ松にのしかかって殴っていた。え、ごめん、エッ?なに???どういうこと??????
とりあえずボコボコにする勢いを殺しきれず各自何か違うということに気づいているもののとりあえず手足は動かしてタコ殴りにし続けていたので、呆気にとられた彼女が我に返って絶叫するまで松野家次男は同じ顔をした兄弟たちにひたすらボコられ続けたのだった。
松野トド松は絶望を顔全体に浮かべて全身の色素を薄くして人魂まで周りに浮かべて同じような顔をした兄弟達とふかふかのソファーに沈んでいた。
話は前日の夜に戻る。
トト子ちゃんのライブで発表された新ユニットのメンバーがスタバァのあの子だったのに驚き、運命の再会と心弾んだのも束の間、その子のことをクソ兄貴どもが全員知っていて、しかも自分は知らなかった名前をクソ兄貴(しかも3人も!!!)が知っていたという信じがたい事実にボコボコに打ちのめされた。天国から地獄へ瞬間ツアーである。しかも名前を知るほどの仲だったのが前科(彼女持ち)のある十四松兄さんはともかく、よりにもよってあのクソ痛厨二病兄さんと女子耐性むつごワーストワンの闇松兄さん!!!天変地異!!!神なんて1ミクロンも信じちゃいないけれど、もしいるのなら血反吐吐くまでブン殴って何故そうなったのか問いただしたい。
ライブが終わった後に、出遅れたとはいえ諦めは出来ないので彼女と正式に自己紹介を交わすべく楽屋口へと猛ダッシュ。我先にと扉を開けるも、トト子ちゃんの大雷が落ちた瞬間だったので刺激しないようそっと閉めた。今じゃない。長年彼女の幼馴染をやっているボク達は触らぬ女神に祟りなしを身を以て痛い程(本当に痛いほど)知りすぎていたので怒鳴り声が止むまでおとなしく楽屋口の外でたむろして待っていた。
そろそろおとなしくなって少し経ったし、とドアを開けようかと思えば、向こうからドアが開いて、待ち焦がれたあの子が顔を出した!!!向こうから来てくれたことに興奮しながら声をかけるも即座に扉は閉ざされ次に開いた時は我らがアイドル、トト子ちゃんが笑顔をのぞかせてくれたわけだけど(あ〜〜トト子ちゃん今日もかわいい〜♡)、クソバカシコシコ松が口を滑らせたおかげで硬く冷たいアスファルトの上で小一時間正座のお説教を食らった上に終わった後には楽屋の中はもぬけの殻だったわけで。ほんっとあり得ないよね!?アイドルバカもいい加減にしろよ!?!?あそこでトト子ちゃんにあんなこと言う!?バッカじゃないの!?脳味噌空っぽか!カラ松兄さんじゃないんだから!!全く、頭ん中脳味噌じゃなくてちんこ生えてんじゃないの!?気持ち悪いのは勝手だけどボクの足を引っ張るのだけはやめてほしいよね!
そんなわけでガッカリゲッソリして帰って来て早々、布団を敷いて倒れ込んだボク達は説教中頭空っぽクソ松兄さんがいなかったことにも、帰って来たら既に家にカラ松兄さんがいたことにも気付かず、いつの間にか部屋で一緒に寝る支度をしていたことを誰も気にしないまま嫌な思い出を早く忘れようと我先に夢の世界へと旅立った。
翌朝、といっても昼過ぎだけど、なんか遠くで電話の鳴る音で目が覚めたボクはこんな早くに迷惑だなあと思いつつももぞもぞと起き上がった。兄弟のうち何人かはもう起きているらしく布団はところどころ人がいなかった。
目をこすりながら階段を降りれば、奥から出て来た母さんと出くわす。
「あぁ、おはよう母さん」
「やっと起きたのトド松、さっさとごはん食べちゃってちょうだい」
「ん〜」
「ああ、あと名前ちゃんから電話があってね、家に来てほしいんですって」
「ん〜………………はっ???」
さらりと言われた言葉を寝惚け頭で反芻していたが電流が走ったように急に目が覚めた。
「誰がどこに来てほしいだって!?!?」
通り過ぎた母さんに走り寄って両肩を掴んで目を血走らせながら聞けば、昨日ようやく知った愛しい女の子の名前が繰り返し発せられた。
家に???ボクを??????
たちまち脳内花畑になってしまったボクは天にも昇る気分であれこれ邪な想像を繰り返しては、そんな、展開早いよ、意外と積極的なの!?とブツブツ言いながら他の兄弟に知られないようこっそり最大限にめかし込んで、聞いた住所の地へ向かったのだった。
そして、冒頭に戻る。
名前ちゃんの家(部屋?)がハタ坊ん家の中にあったことは衝撃すぎるけどまぁ置いといて。
デジャブ。
すごいデジャブ。
初めてトト子ちゃんの家へ呼ばれた時と同じ過ちを奇しくも兄弟全員で犯してしまった。
ボクがドキドキしすぎて吐きそうになりながら頭に旗の刺さった人に案内されてこの部屋の扉を潜った時、死んだ魚の眼をした兄弟が既に何人か部屋の中にいたのだ。
トト子ちゃんに呼ばれて期待に胸を膨らませたあの日と全員同じ服装で。学んでなさすぎる。一松兄さんは本当、その格好はなんなの?その服どこに隠してんの?髪型どうした???
あの日と違ったのは、既に部屋にチョロ松兄さんがいたことだ。髪をビシッとオールバックでキメて何故か眼鏡をかけスーツを着込んで出来るサラリーマン風を装っていた。ダンボールで出来たスマホとノートPCを操作して。なにそれギャグ…?こっわ……
部屋にいないのは後はもうカラ松兄さんだけだ。
今日に限ってバラバラに起きたせいで兄弟全員呼ばれていたのに松代が起きた順に一人ずつ伝えたため、誰もが自分だけが呼ばれたと信じ込んでしまったのだ。あーあ、バカみたい。恥ずかしい。だいたいなんであの子ボクらの家電知ってんの…?
あとはイッタイバスローブ姿に飲めもしないワイングラスを揺らしたクソ松兄さんが現れるのを待つだけ…と誰もが思った頃、重厚な扉が開いて次男が姿を現した。それは想定通りだったけれど、その姿が思いもよらないものでボクらは思わずふにゃふにゃにだらけていた姿勢を正してあんぐりと釘付けになった。
バスローブでもなく、いつものクソダサファッションでもなく、揃いで母さんが買ったいつもの青いジャージに青いマフラーを巻いただけのいつも通りの適当な格好だったのだ!!
えっ!?どういうこと!?
女の子の部屋に呼ばれたんだよ!?!?いもしないカラ松ガールとやらに会いに行く時ですら革ジャンキメてくのに、そんな、ちょっとコンビニみたいな格好で!!!!どうしちゃったの!?!?パーフェクトファッションとやらは!?!?全部洗濯中!?!?!?!?
混乱しているのはボクだけじゃないらしく5人全員同じような顔をしてパクパクと口を動かしていたら、部屋をぐるっと見回したカラ松は「あれ?名前いないのか?」と言いながらドアを閉めた。
「呼ばれたから来たのにな?」
「…ここで待つよう言われたけど…」
不思議そうに首を傾げた次男に、絞り出すようにチョロ松兄さんが答えるも、顔にはそんなことよりお前その服どうしちゃったのと書いてある。
しかし空気をまるで読めないこの青い兄はそんなことにはつゆほど気づかず、スタスタと部屋の奥のクローゼットの扉を「名前〜?」と言いながら勝手に開けた。
ちょっ!?何してんの!?!?女の子の部屋を勝手に物色する気!?!?抜け駆けは許さん!!!!
そう驚いて振り向いたボクらは、全員がクローゼットだと思っていた観音開きの扉の奥にまたしても広々と部屋が広がっていたことに白目を剥いた。えっこの部屋広ッ!!!!奥がベッドだけの部屋なの!?!?何その天蓋付きの超でかいベッド!?!?ハリーポッター!?!?ホグワーツなの!?!?名前ちゃん何者!?!?
動揺して怯えるボクらを微塵も気にせずベッドルームにズカズカ入って行った次男はその奥の部屋(まだ部屋があるの!?)にも名前を呼びながら入っていき、トイレでもないらしいなとかなんとか言いながらボクらのいる部屋まで戻ってきた。な、何やってんのこのサイコパス…?部屋の間取り熟知してんの?怖ッ…
そこまで考えて、何か引っかかり、思考が停止する。
部屋の間取り?熟知?してんの??
自分で考えただけなのに、その言葉が呪いのように頭の中をエコーする。
周りを見れば同じような表情で顔を強張らせた兄弟たちと目があった。全員が嫌な推測にたどり着いてしまった。もしかして、こいつ、ここに来たことが…?
「…なぁカラ松、」
長男が言いづらそうに乾いた唇を舐め、掠れた声を発した瞬間、重厚なドアが開いて可愛らしいくりくりの大きな目がボクらを捉えた。
「あっ!ごめんなさい、みんなもう揃ってる…!お待たせしちゃいましたよね、すみませんハタ坊に呼ばれていて…」
ぺこぺこ会釈するせいで揺れる紅白のリボンを呆然と見つめる絶句したボクらを気まずげに眺めた彼女は、ベッドルームの扉の前に立っていた青い男に助けを求めるようにカラ松くん、と小さく呼びかけた。
我らが次男は笑顔で大きく頷くと彼女の横に移動する。その並び立つ姿が様になっていて、ボクらは死にそうな思いをしながらまさかの発言が飛び出さないように下唇から血が滲むくらい噛み締めて祈りながら、次男の口が開くのを穴のあくほど凝視した。
「紹介しよう、親友の名前だ」
「許さんクソ松抜け駆けは…エッ親友???」
彼女だ、と紹介されるとばかり思っていたボクらは殺す勢いで全員飛びかかっていたものだから途中で違う単語が聞こえたのに気づいたものの、もう遅く、全員でカラ松にのしかかって殴っていた。え、ごめん、エッ?なに???どういうこと??????
とりあえずボコボコにする勢いを殺しきれず各自何か違うということに気づいているもののとりあえず手足は動かしてタコ殴りにし続けていたので、呆気にとられた彼女が我に返って絶叫するまで松野家次男は同じ顔をした兄弟たちにひたすらボコられ続けたのだった。