夢だけど夢じゃない
はじめにお名前変換してください
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
着替えた時は気づかなかったが、私の部屋にはトイレとバスルームもついていた。それも子供用ビニールプールみたいな広さのジャグジーバスが。毎日がラグジュアリーか。
キッチン的なものはないため食事は広い食堂で取るらしい。果てしなく長いテーブルの端と端に私とハタ坊が座り、その周りにずらりとスーツ旗軍団が待機している。
昨日はあのあと、ハタ坊が用意したでっかいケーキを2人で食べて、2人でテレビゲームをしてたら夜になったのでお風呂に入って寝てしまった。ニートやばい。なにもしてない。
今朝(と言っても10時頃)イケおじ旗マンが起こしに来て、今はこの食堂で朝食?ブランチ?を採っているところ。長過ぎるテーブルの短辺同士に座っているため、ハタ坊が小指の爪くらいに見える。遠い。
ハタ坊は秘書みたいな人にあーんしてもらったり口を拭いてもらってるぽいが、私のところにはコック的な人がスープ皿をがしゃん!と寄越したり、置いてあるパンを勝手に食え!という感じで扱いの差を感じる。旗の人たちに好かれてない感じがひしひしと伝わる…私なんでここにいるんですかね?
「名前」
「はい!」
突然手元から名前を呼ばれて、びっくりして背筋を伸ばす。
キョロキョロしていると、たくさん並べられたカラトリーの横に立っている旗が「名前」とまた喋った。なんだこれ、スピーカーになってるのか?
ハタ坊の声で喋る旗をまじまじと見ながら、遠くのハタ坊に目をやると、同じ旗をマイクのように口元に当てている彼が見えた。なるほど、席が遠すぎるからこれで会話をするのか。近くに座ればいいのでは。
「名前、今日はなにして遊ぶジョ?」
「うーん、何しようか?」
「…Mr.フラッグ、本日はアメリカへ出張の日ですのでMs.名前とは遊べません」
隣に立っている秘書的な人の声が旗から聞こえる。出張とかあるのか!そうだったジョ、としょんぼりするハタ坊が見える。
「Mr.フラッグのお帰りは4日後です」
4日もいないの!?アメリカ出張だと思えば短いのかもしれないが、4日もこんなアウェーなところに1人にしないでほしい。そもそもこれは夢なのだから帰ってくる前に目が覚めてしまうかもしれない。
ハラハラしだした私に気付いてか、ハタ坊は明るい声で「名前、お散歩に行っても良いジョ」と外出許可をくれた。友達を作るチャンスだと。
たしかに、こんなビルに1人残されて旗の人たちに睨まれるよりは、外に出てむつごを探した方が良い。そうか!むつごに会えるのか!
俄然楽しみになった私は、出掛けるというハタ坊を笑顔でお見送りして、自身もビルから外へ出た。
とても良いお天気だ。秋晴れだ。
私は私物をまるで持っていないらしく、昨日ハタ坊に渡されたやばい防犯ブザーと、出掛ける前に「これを吹けば迎えの車が参ります」とヨボヨボの執事に渡された縁日に良くあるピロピロ紙が伸びる笛だけを持って出掛けることとなった。無一文である。本当にただのお散歩だ。
地図もないため、迷わないよう背後にそびえるフラッグコーポレーションビルが見えなくなる前に引き返してこようと誓い、一歩を踏み出す。
涼しい風が頰をかすめ、陽射しはポカポカと暖かい。こんな良い天気の日にお仕事なんてハタ坊可哀想。夢の中とはいえニート満喫できてる私は超ラッキー。
フラッグコーポレーションは赤塚町の中でも都心部にそびえているようで、その周りはオフィスビルや駅ビル、ショッピングモールなどで栄えていた。
こんな煌びやかなところにむつごはいないだろうな。
駅前の大きな地図を見ながら目処を立てる。
あ、川がある。この川ってアニメによく出てくる川じゃない?じゃあこの近くの住宅街をうろついてればエンカウント出来るのでは。川へ行く途中に商店街もあるらしい。トト子ちゃんちがあるのでは!?一気にキャラ遭遇率が上がったことへ興奮し、土地勘が全くないがアニメで見覚えのある景色を探して私は歩き出した。
「…おなかすいたぁ…」
ぐるるる、とかなしい音を立てるお腹をさすりながら、私は公園の遊具へ腰掛けていた。
意気揚々と歩いていたが、地図で見た商店街にも川にもたどり着けず、ひたすら住宅街を彷徨い、この寂れた誰もいない公園にたどり着いたのだ。
無一文なので途中で食べ物を買うことも出来ず、たびたび確認していたはずの背後のフラッグコーポレーションビルは気付いた時には見えなくなっており、どちらが帰り道かもわからず、誰1人としてキャラクターにも会えず、疲れ切った私は滑り台的な遊具にただ座り込んでいた。何時間歩いたんだろう。おなかすいた。かなしい。ハタ坊が不在の今、あの人たちに頼るのは嫌だけど仕方ないか…車を呼ぶためにピロピロ笛を吹こうとしてポケットに手を入れる。ん?違うポケットも探る。んん?ガサゴソと身体中を探って、サァっと青ざめる。ない。落とした!?あれがなければどうやって助けを呼べば良いのか。そもそもあんなピロピロ笛でどこにいても車を呼べるのか疑問だが、あれがなければ更に呼ぶことなどできない。警察に聞こうか…交番どこだかわかんないけど…
日が暮れてきて辺りが暗くなり始め、いよいよ焦り出す。どうしようどうしよう。ぐるるるる。お腹は鳴るし途方にくれるし悲しくて涙が出てきた。なんで夢でこんな目に合わなきゃなんないんだ。いいから早くむつごに会わせろ。
泣くまい、とスンと鼻をすすったところでふわりと良い香りが鼻腔をくすぐった。お出汁の匂いだ。スンスンと匂いを嗅ぎながら、匂いの出どころを探す。遊具から立ち上がり、よろよろと公園の端まで歩いていくと、車止めの柵の向こう側が大きく凹んでいることに気付いた。この公園、高台だったのか。小さな崖のようになっているその先を柵に捕まって見下ろす。
か、川がある…!!!!そしてその真横の道に見たことのある小さな屋台が、赤提灯を吊るしてぼんやりとやわらかく光っていた。
もつれる足に絡まりながら下へ降り、その屋台へ近づいていく。お出汁の良い匂いがする。
よろよろと近づいてきた私に気付いたのか、屋台の中の店主が顔を上げた。
「へい、らっしゃい!」
「ち…」
危ない、ようやく見知った顔に会えた喜びで初対面の人の名前を呼んでしまうところだった。ストーカーか。怪しすぎるだろ。
言葉に詰まって立ち止まった私を不審に思った店主が何か言う前に元気よく私のお腹が鳴いた。
キッチン的なものはないため食事は広い食堂で取るらしい。果てしなく長いテーブルの端と端に私とハタ坊が座り、その周りにずらりとスーツ旗軍団が待機している。
昨日はあのあと、ハタ坊が用意したでっかいケーキを2人で食べて、2人でテレビゲームをしてたら夜になったのでお風呂に入って寝てしまった。ニートやばい。なにもしてない。
今朝(と言っても10時頃)イケおじ旗マンが起こしに来て、今はこの食堂で朝食?ブランチ?を採っているところ。長過ぎるテーブルの短辺同士に座っているため、ハタ坊が小指の爪くらいに見える。遠い。
ハタ坊は秘書みたいな人にあーんしてもらったり口を拭いてもらってるぽいが、私のところにはコック的な人がスープ皿をがしゃん!と寄越したり、置いてあるパンを勝手に食え!という感じで扱いの差を感じる。旗の人たちに好かれてない感じがひしひしと伝わる…私なんでここにいるんですかね?
「名前」
「はい!」
突然手元から名前を呼ばれて、びっくりして背筋を伸ばす。
キョロキョロしていると、たくさん並べられたカラトリーの横に立っている旗が「名前」とまた喋った。なんだこれ、スピーカーになってるのか?
ハタ坊の声で喋る旗をまじまじと見ながら、遠くのハタ坊に目をやると、同じ旗をマイクのように口元に当てている彼が見えた。なるほど、席が遠すぎるからこれで会話をするのか。近くに座ればいいのでは。
「名前、今日はなにして遊ぶジョ?」
「うーん、何しようか?」
「…Mr.フラッグ、本日はアメリカへ出張の日ですのでMs.名前とは遊べません」
隣に立っている秘書的な人の声が旗から聞こえる。出張とかあるのか!そうだったジョ、としょんぼりするハタ坊が見える。
「Mr.フラッグのお帰りは4日後です」
4日もいないの!?アメリカ出張だと思えば短いのかもしれないが、4日もこんなアウェーなところに1人にしないでほしい。そもそもこれは夢なのだから帰ってくる前に目が覚めてしまうかもしれない。
ハラハラしだした私に気付いてか、ハタ坊は明るい声で「名前、お散歩に行っても良いジョ」と外出許可をくれた。友達を作るチャンスだと。
たしかに、こんなビルに1人残されて旗の人たちに睨まれるよりは、外に出てむつごを探した方が良い。そうか!むつごに会えるのか!
俄然楽しみになった私は、出掛けるというハタ坊を笑顔でお見送りして、自身もビルから外へ出た。
とても良いお天気だ。秋晴れだ。
私は私物をまるで持っていないらしく、昨日ハタ坊に渡されたやばい防犯ブザーと、出掛ける前に「これを吹けば迎えの車が参ります」とヨボヨボの執事に渡された縁日に良くあるピロピロ紙が伸びる笛だけを持って出掛けることとなった。無一文である。本当にただのお散歩だ。
地図もないため、迷わないよう背後にそびえるフラッグコーポレーションビルが見えなくなる前に引き返してこようと誓い、一歩を踏み出す。
涼しい風が頰をかすめ、陽射しはポカポカと暖かい。こんな良い天気の日にお仕事なんてハタ坊可哀想。夢の中とはいえニート満喫できてる私は超ラッキー。
フラッグコーポレーションは赤塚町の中でも都心部にそびえているようで、その周りはオフィスビルや駅ビル、ショッピングモールなどで栄えていた。
こんな煌びやかなところにむつごはいないだろうな。
駅前の大きな地図を見ながら目処を立てる。
あ、川がある。この川ってアニメによく出てくる川じゃない?じゃあこの近くの住宅街をうろついてればエンカウント出来るのでは。川へ行く途中に商店街もあるらしい。トト子ちゃんちがあるのでは!?一気にキャラ遭遇率が上がったことへ興奮し、土地勘が全くないがアニメで見覚えのある景色を探して私は歩き出した。
「…おなかすいたぁ…」
ぐるるる、とかなしい音を立てるお腹をさすりながら、私は公園の遊具へ腰掛けていた。
意気揚々と歩いていたが、地図で見た商店街にも川にもたどり着けず、ひたすら住宅街を彷徨い、この寂れた誰もいない公園にたどり着いたのだ。
無一文なので途中で食べ物を買うことも出来ず、たびたび確認していたはずの背後のフラッグコーポレーションビルは気付いた時には見えなくなっており、どちらが帰り道かもわからず、誰1人としてキャラクターにも会えず、疲れ切った私は滑り台的な遊具にただ座り込んでいた。何時間歩いたんだろう。おなかすいた。かなしい。ハタ坊が不在の今、あの人たちに頼るのは嫌だけど仕方ないか…車を呼ぶためにピロピロ笛を吹こうとしてポケットに手を入れる。ん?違うポケットも探る。んん?ガサゴソと身体中を探って、サァっと青ざめる。ない。落とした!?あれがなければどうやって助けを呼べば良いのか。そもそもあんなピロピロ笛でどこにいても車を呼べるのか疑問だが、あれがなければ更に呼ぶことなどできない。警察に聞こうか…交番どこだかわかんないけど…
日が暮れてきて辺りが暗くなり始め、いよいよ焦り出す。どうしようどうしよう。ぐるるるる。お腹は鳴るし途方にくれるし悲しくて涙が出てきた。なんで夢でこんな目に合わなきゃなんないんだ。いいから早くむつごに会わせろ。
泣くまい、とスンと鼻をすすったところでふわりと良い香りが鼻腔をくすぐった。お出汁の匂いだ。スンスンと匂いを嗅ぎながら、匂いの出どころを探す。遊具から立ち上がり、よろよろと公園の端まで歩いていくと、車止めの柵の向こう側が大きく凹んでいることに気付いた。この公園、高台だったのか。小さな崖のようになっているその先を柵に捕まって見下ろす。
か、川がある…!!!!そしてその真横の道に見たことのある小さな屋台が、赤提灯を吊るしてぼんやりとやわらかく光っていた。
もつれる足に絡まりながら下へ降り、その屋台へ近づいていく。お出汁の良い匂いがする。
よろよろと近づいてきた私に気付いたのか、屋台の中の店主が顔を上げた。
「へい、らっしゃい!」
「ち…」
危ない、ようやく見知った顔に会えた喜びで初対面の人の名前を呼んでしまうところだった。ストーカーか。怪しすぎるだろ。
言葉に詰まって立ち止まった私を不審に思った店主が何か言う前に元気よく私のお腹が鳴いた。