夢だけど夢じゃない
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汗で濡れた髪が冷たい夜風に吹かれて身震いする。
手首を掴まれ、遠慮のない男の歩幅で歩かされているせいでいつもよりだいぶ早足でつんのめりそうになりながらなんとか歩いていた。
目の前の黒い革ジャンの背中は何も語らず、ただただ手首を引っ張って歩く。
ライブハウスの出入り口で捕まった私は、ろくに会話もなくそのまま歩き出したカラ松に半ば引きずられるように引っ張られて行き先もわからず歩かされていた。
お、怒っている?なぜ???なんで楽屋口で正座させられているはずのカラ松がここに?手首が痛い。早足すぎる。どこに連れて行かれるんだろう?寒くなってきた、シャワー浴びれば良かった。
ぐるぐる考え事をしながら引っ張られるがまま歩いていると急にカラ松が立ち止まったので危うく背中にぶつかるところだった。
ウイーンという機械音と共に大きなガラス戸が自動で開く。
自動ドアをくぐり急に明るくなったそこを目を細めながら確認すれば、フラッグコーポレーションのロビーだった。
営業時間外なので受付嬢はいないが、代わりに立っていた警備員が私を一目見てお帰りなさいませと敬礼した。
それに会釈を返す間も無くまた手首を引っ張られてエレベーターホールへ行くと▲ボタンをカラ松の骨張った指が押す。すぐに目の前の扉が開き、エレベーターに乗り込むと慣れた手つきで居住区域の階を押す。耳がキーンとなる速さであっという間に高層階へ到着。これまた慣れた足取りで迷わずまっすぐ「名前の部屋」と書かれたドアまで行くとその重厚な扉を無言で押し開いた。
中へ入り、ソファの上へ私を投げるように手を離し、ソファに崩れ落ちるように座った私を無言で見ながらカラ松は無言で対面のソファへ腰を下ろした。
「…」
「…」
沈黙が痛い。
ど、どうしよう…と目線を彷徨わせていると向かいからはぁ、と大きなため息が漏れてビクッとそちらを上目遣いで伺う。
ジトっとした半目でこちらを見ていたカラ松とばっちり目があってしまった。
「あ、の、」
「…俺が何を言いたいかわかるか?」
「エッわかりません」
低い声で問われ、反射で即答してしまう。
やれやれ、と頭を振って目を伏せたカラ松にドキドキと嫌な感じで胸をざわめかせながら「お、怒ってるの…?」と聞けば「そう見えるのか?」と不機嫌な眼差しで彼は言った。
「み、見える…」
「…そうか。なら俺は怒っているんだろうな」
な、なにそれ。
あまりの意味不明さに混乱しながらも暖房のよく効いた(この建物内は常に空調が整っているのだ)部屋で冷や汗ビッショリなのが気持ち悪く、相手を刺激しないよう最低限の小さな動きでモフモフのファーコートを脱ぎソファの端に置いた。
それを見たカラ松も革ジャンを脱ぎ…トト子LOVEと書かれた黒いTシャツ姿になった。中そのままだったんだ…
「え、えと…カラ松くんなんであそこにいたの?」
「ブラザー達が楽屋口で出待ちをすると言っていたがトト子ちゃんが先に出てきたら捕まるからな。イヤミが表の出入り口から出てったのを見たから名前もこっちから帰るかと思った。ビンゴォ〜」
淡々とそう告げられビンゴォ〜もいつもの腹立つ言い方ではなく棒読みでジェスチャーも何もなかったため恐ろしさに背筋が震える。
何を怒っているんだろう。
「トト子ちゃんとお話しなくて良かったの?」
「勿論話したかったがそれより先に名前と話したかった」
「な、なんで」
「…なぁ、俺たち、唯一無二の親友だよなァ?」
有無を言わせない強い圧を感じ、頷かざるを得ない。そんな私を見たカラ松はまたハァ〜〜と深くため息をついて足を組み、背もたれに深々と背中を沈めた。
「お前が親友に隠し事をするような奴だとは思わなかった」
「………えっ?」
不機嫌を顔に貼り付けたカラ松に怯えていたらとんでもない言葉が耳に飛び込んできた!
脳が処理落ちして間抜け面で見つめ返していたら眉間に深くしわを寄せたカラ松が「アイドルになるなんて聞いていない」と呟いた。
「え、えっと…?」
「名前は俺と同じ誇り高きニートだと思っていたのに」
「…一応収入はあるんですけど…(パパ活みたいなもんだけど)」
「トト子ちゃんと知り合いだなんて聞いていない」
「あ、ごめん、言ってなくて…」
「ブラザー達と知り合いだとも聞いていない」
「え、あ、それは…」
「一体いつ出会ったんだ?」
「えっ、えっと割とバラバラに…」
「…見分けが付かなくて他の奴らも俺か十四松かおそ松だと思っていたとか?」
「あ、いや、そういうわけでは…」
「家にも来たことがあったらしいな?」
「あっ、うん…(半ば無理やり)連れてってもらって…」
「俺の知らないところでこそこそ会っていたのか」
「別にこそこそしてたつもりは…聞かれなかったから言わなかっただけで」
「じゃあこれからは言ってくれ」
「えっなんで?」
思わず驚いて聞いてしまえばカラ松も心底驚いた顔をしていた。
「なんでって…親友だからだが?」
「えっ…親友ってそんななんでも報告するもの?」
カラ松くん親友いたことないの?という言葉は喉まで出かかって音になることはなかったが顔にはバッチリ出てしまったらしい、みるみるうちにカラ松の顔が歪んで、しまったと思った。
「…か、カラ松くんの大切な兄弟達と知らないうちに出会っていた事が嫌だったなら謝る!」
何か言われる前に早口でそうまくし立てれば、不機嫌そうだった顔がキョトンとシンプルな顔立ちになった。
背もたれに預けていた背中を起こし、顎に手をやってふむ、と考え込むとなるほどな…と何か納得したようでこちらを見た。もうその顔は怒っていなかった。
「…その通りかもしれない。名前が隠し事をしていたことに裏切られた気持ちだったが、俺から自慢のブラザー達を紹介出来なかったのが嫌だったのかもしれないな。すぐに紹介しなかった俺が悪い。すまなかった」
「え、あ、いや」
「でもトト子ちゃんとアイドルやるのは教えてくれても良かったんじゃないか」
突然謝られて驚いてあたふたしていれば間髪入れずまた苦言を呈された。
「サプライズだったから」と適当な嘘をつけば、全く、本当にびっくりしたぞ、とまたジト目で見られた。
「俺より先にステージデビューするなんて…とんだ裏切りじゃないか?」
「ご、ごめん…?」
「まぁ、終演後の特別物販のブロマイドが可愛かったから許すが」
「カラ松くんも買ったの!?」
てっきりアイドルオタクのチョロ松や少し仲良くしてくれていた数字松あたりがお布施のつもりで1枚くらい買ってくれたかも…と思っていたがまさかカラ松も買ったとは!
懐から出て来た自身の写真を取り返そうと前のめりに手を伸ばせば、ふい、と手を挙げられ届かなくなってしまう。
「か、返して」
「何故。俺が金を出して買ったんだから俺のものだろう。そうだ、じゃあ俺のと交換にしよう」
そう言うとまた懐から写真を取り出して手渡してきた。
見れば、キラキラの服に身を包んでバラを咥えたカラ松が写っていた。自費印刷のブロマイドさ、と自慢げに言われる。え、持ち歩いてんの?わー!公式(?)書き下ろし新規絵ゲット!!わーい!!!じゃなくて。
ブロマイドは有難く受け取るが(壁に飾ろう)、私のブロマイドはなんとかして破棄させたい。だいたい私の写真を持っててどうするというんだ。
「? 名前の記念すべきファーストブロマイドを親友である俺が持たなくて誰が持つと言うんだ?」
疑問が口に出ていたらしく、心底不思議そうな顔をしてそう回答され、こちらが不思議な顔をしてしまった。
えっ?親友ってそういう???さっきから、私とカラ松くんの親友の定義が食い違っている気がする。あれ?この世界の親友はそうなの?私がおかしいの???
とにかく、大切そうに懐に仕舞われてしまったブロマイドは返してもらえそうにないので自然発火して消滅してくれることを祈りながら、もう怒っていないらしいカラ松を見て安堵の溜息をついた。
「突然腕掴まれて引っ張られるからどこに連れて行かれるのかと思ったよ…」
「すまない、誰にも邪魔されず話したかったんだ」
ここしか思い付かなくて、早く行きたかったからと言いながら、長いこと強く掴まれていたせいでうっすらカラ松の手の跡がついてしまった赤い手首に気づき、本当に申し訳なさそうに眉を下げるとそっと手首を撫でた。
突然触られて大袈裟にびくつけば、すまない、痛むのか?と子犬のような目で見上げられ、痛いわけじゃないとだけなんとか返す。
目が合っているのに耐えきれず、ふいと逸らしたのとクシャミをしたのは同時だった。
「うわ、びっくりした」
「ご、ごめん!かからなかった!?」
「いや、大丈夫だ。寒いのか?」
「あー終わった後シャワー浴びずに出てきちゃったからちょっと」
汗で濡れた服が身体に張り付いて冷やしてしまったことにようやく気付いてそう言えば、早く風呂に入れ!風邪を引いたらどうする!と怒られた。いや、カラ松くんと話してたせいですけど…
俺はもう帰るから、今日のライブ良かったぞ、そう笑ってくれたカラ松に照れながら笑顔を返せば、ドアを開けながらとんでもない爆弾を投げつけられた。
「そうだ、明日ブラザー達に改めて名前を紹介することにしたから、また来るな」
「…え!?は!?」
「午前中は起きられないから…昼過ぎに連絡くれ、そしたら皆でここに来るから」
「えっ…ちょ、なんで」
「じゃあな、グッナイ、バディ」
言うだけ言ってぱたん、とドアを閉めて行ってしまった。
慌ててドアを開けるも廊下にもうカラ松の姿はなかった。帰んの早くない!?紹介するなら私が松野家に行けば良くない!?なんでここに集合するの!?言いたいことはたくさんあったが2度目のクシャミが出たので本当に風邪を引いたらまずい、と、とりあえず風呂に入ることにした。
手首を掴まれ、遠慮のない男の歩幅で歩かされているせいでいつもよりだいぶ早足でつんのめりそうになりながらなんとか歩いていた。
目の前の黒い革ジャンの背中は何も語らず、ただただ手首を引っ張って歩く。
ライブハウスの出入り口で捕まった私は、ろくに会話もなくそのまま歩き出したカラ松に半ば引きずられるように引っ張られて行き先もわからず歩かされていた。
お、怒っている?なぜ???なんで楽屋口で正座させられているはずのカラ松がここに?手首が痛い。早足すぎる。どこに連れて行かれるんだろう?寒くなってきた、シャワー浴びれば良かった。
ぐるぐる考え事をしながら引っ張られるがまま歩いていると急にカラ松が立ち止まったので危うく背中にぶつかるところだった。
ウイーンという機械音と共に大きなガラス戸が自動で開く。
自動ドアをくぐり急に明るくなったそこを目を細めながら確認すれば、フラッグコーポレーションのロビーだった。
営業時間外なので受付嬢はいないが、代わりに立っていた警備員が私を一目見てお帰りなさいませと敬礼した。
それに会釈を返す間も無くまた手首を引っ張られてエレベーターホールへ行くと▲ボタンをカラ松の骨張った指が押す。すぐに目の前の扉が開き、エレベーターに乗り込むと慣れた手つきで居住区域の階を押す。耳がキーンとなる速さであっという間に高層階へ到着。これまた慣れた足取りで迷わずまっすぐ「名前の部屋」と書かれたドアまで行くとその重厚な扉を無言で押し開いた。
中へ入り、ソファの上へ私を投げるように手を離し、ソファに崩れ落ちるように座った私を無言で見ながらカラ松は無言で対面のソファへ腰を下ろした。
「…」
「…」
沈黙が痛い。
ど、どうしよう…と目線を彷徨わせていると向かいからはぁ、と大きなため息が漏れてビクッとそちらを上目遣いで伺う。
ジトっとした半目でこちらを見ていたカラ松とばっちり目があってしまった。
「あ、の、」
「…俺が何を言いたいかわかるか?」
「エッわかりません」
低い声で問われ、反射で即答してしまう。
やれやれ、と頭を振って目を伏せたカラ松にドキドキと嫌な感じで胸をざわめかせながら「お、怒ってるの…?」と聞けば「そう見えるのか?」と不機嫌な眼差しで彼は言った。
「み、見える…」
「…そうか。なら俺は怒っているんだろうな」
な、なにそれ。
あまりの意味不明さに混乱しながらも暖房のよく効いた(この建物内は常に空調が整っているのだ)部屋で冷や汗ビッショリなのが気持ち悪く、相手を刺激しないよう最低限の小さな動きでモフモフのファーコートを脱ぎソファの端に置いた。
それを見たカラ松も革ジャンを脱ぎ…トト子LOVEと書かれた黒いTシャツ姿になった。中そのままだったんだ…
「え、えと…カラ松くんなんであそこにいたの?」
「ブラザー達が楽屋口で出待ちをすると言っていたがトト子ちゃんが先に出てきたら捕まるからな。イヤミが表の出入り口から出てったのを見たから名前もこっちから帰るかと思った。ビンゴォ〜」
淡々とそう告げられビンゴォ〜もいつもの腹立つ言い方ではなく棒読みでジェスチャーも何もなかったため恐ろしさに背筋が震える。
何を怒っているんだろう。
「トト子ちゃんとお話しなくて良かったの?」
「勿論話したかったがそれより先に名前と話したかった」
「な、なんで」
「…なぁ、俺たち、唯一無二の親友だよなァ?」
有無を言わせない強い圧を感じ、頷かざるを得ない。そんな私を見たカラ松はまたハァ〜〜と深くため息をついて足を組み、背もたれに深々と背中を沈めた。
「お前が親友に隠し事をするような奴だとは思わなかった」
「………えっ?」
不機嫌を顔に貼り付けたカラ松に怯えていたらとんでもない言葉が耳に飛び込んできた!
脳が処理落ちして間抜け面で見つめ返していたら眉間に深くしわを寄せたカラ松が「アイドルになるなんて聞いていない」と呟いた。
「え、えっと…?」
「名前は俺と同じ誇り高きニートだと思っていたのに」
「…一応収入はあるんですけど…(パパ活みたいなもんだけど)」
「トト子ちゃんと知り合いだなんて聞いていない」
「あ、ごめん、言ってなくて…」
「ブラザー達と知り合いだとも聞いていない」
「え、あ、それは…」
「一体いつ出会ったんだ?」
「えっ、えっと割とバラバラに…」
「…見分けが付かなくて他の奴らも俺か十四松かおそ松だと思っていたとか?」
「あ、いや、そういうわけでは…」
「家にも来たことがあったらしいな?」
「あっ、うん…(半ば無理やり)連れてってもらって…」
「俺の知らないところでこそこそ会っていたのか」
「別にこそこそしてたつもりは…聞かれなかったから言わなかっただけで」
「じゃあこれからは言ってくれ」
「えっなんで?」
思わず驚いて聞いてしまえばカラ松も心底驚いた顔をしていた。
「なんでって…親友だからだが?」
「えっ…親友ってそんななんでも報告するもの?」
カラ松くん親友いたことないの?という言葉は喉まで出かかって音になることはなかったが顔にはバッチリ出てしまったらしい、みるみるうちにカラ松の顔が歪んで、しまったと思った。
「…か、カラ松くんの大切な兄弟達と知らないうちに出会っていた事が嫌だったなら謝る!」
何か言われる前に早口でそうまくし立てれば、不機嫌そうだった顔がキョトンとシンプルな顔立ちになった。
背もたれに預けていた背中を起こし、顎に手をやってふむ、と考え込むとなるほどな…と何か納得したようでこちらを見た。もうその顔は怒っていなかった。
「…その通りかもしれない。名前が隠し事をしていたことに裏切られた気持ちだったが、俺から自慢のブラザー達を紹介出来なかったのが嫌だったのかもしれないな。すぐに紹介しなかった俺が悪い。すまなかった」
「え、あ、いや」
「でもトト子ちゃんとアイドルやるのは教えてくれても良かったんじゃないか」
突然謝られて驚いてあたふたしていれば間髪入れずまた苦言を呈された。
「サプライズだったから」と適当な嘘をつけば、全く、本当にびっくりしたぞ、とまたジト目で見られた。
「俺より先にステージデビューするなんて…とんだ裏切りじゃないか?」
「ご、ごめん…?」
「まぁ、終演後の特別物販のブロマイドが可愛かったから許すが」
「カラ松くんも買ったの!?」
てっきりアイドルオタクのチョロ松や少し仲良くしてくれていた数字松あたりがお布施のつもりで1枚くらい買ってくれたかも…と思っていたがまさかカラ松も買ったとは!
懐から出て来た自身の写真を取り返そうと前のめりに手を伸ばせば、ふい、と手を挙げられ届かなくなってしまう。
「か、返して」
「何故。俺が金を出して買ったんだから俺のものだろう。そうだ、じゃあ俺のと交換にしよう」
そう言うとまた懐から写真を取り出して手渡してきた。
見れば、キラキラの服に身を包んでバラを咥えたカラ松が写っていた。自費印刷のブロマイドさ、と自慢げに言われる。え、持ち歩いてんの?わー!公式(?)書き下ろし新規絵ゲット!!わーい!!!じゃなくて。
ブロマイドは有難く受け取るが(壁に飾ろう)、私のブロマイドはなんとかして破棄させたい。だいたい私の写真を持っててどうするというんだ。
「? 名前の記念すべきファーストブロマイドを親友である俺が持たなくて誰が持つと言うんだ?」
疑問が口に出ていたらしく、心底不思議そうな顔をしてそう回答され、こちらが不思議な顔をしてしまった。
えっ?親友ってそういう???さっきから、私とカラ松くんの親友の定義が食い違っている気がする。あれ?この世界の親友はそうなの?私がおかしいの???
とにかく、大切そうに懐に仕舞われてしまったブロマイドは返してもらえそうにないので自然発火して消滅してくれることを祈りながら、もう怒っていないらしいカラ松を見て安堵の溜息をついた。
「突然腕掴まれて引っ張られるからどこに連れて行かれるのかと思ったよ…」
「すまない、誰にも邪魔されず話したかったんだ」
ここしか思い付かなくて、早く行きたかったからと言いながら、長いこと強く掴まれていたせいでうっすらカラ松の手の跡がついてしまった赤い手首に気づき、本当に申し訳なさそうに眉を下げるとそっと手首を撫でた。
突然触られて大袈裟にびくつけば、すまない、痛むのか?と子犬のような目で見上げられ、痛いわけじゃないとだけなんとか返す。
目が合っているのに耐えきれず、ふいと逸らしたのとクシャミをしたのは同時だった。
「うわ、びっくりした」
「ご、ごめん!かからなかった!?」
「いや、大丈夫だ。寒いのか?」
「あー終わった後シャワー浴びずに出てきちゃったからちょっと」
汗で濡れた服が身体に張り付いて冷やしてしまったことにようやく気付いてそう言えば、早く風呂に入れ!風邪を引いたらどうする!と怒られた。いや、カラ松くんと話してたせいですけど…
俺はもう帰るから、今日のライブ良かったぞ、そう笑ってくれたカラ松に照れながら笑顔を返せば、ドアを開けながらとんでもない爆弾を投げつけられた。
「そうだ、明日ブラザー達に改めて名前を紹介することにしたから、また来るな」
「…え!?は!?」
「午前中は起きられないから…昼過ぎに連絡くれ、そしたら皆でここに来るから」
「えっ…ちょ、なんで」
「じゃあな、グッナイ、バディ」
言うだけ言ってぱたん、とドアを閉めて行ってしまった。
慌ててドアを開けるも廊下にもうカラ松の姿はなかった。帰んの早くない!?紹介するなら私が松野家に行けば良くない!?なんでここに集合するの!?言いたいことはたくさんあったが2度目のクシャミが出たので本当に風邪を引いたらまずい、と、とりあえず風呂に入ることにした。