夢だけど夢じゃない
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その後のことは全然覚えていない。
MCの後にもう1曲あったのだけれど、トト子ちゃんばかりが喋って私は多分ろくに相槌も打ててないだろう。
曲もちゃんと歌って踊れていたか定かではない。なにも覚えていない。とりあえず兜を目深にかぶって顔が見えないようにしたまま体が覚えていたとおりの動きだけして逃げるように引っ込んだと思われる。目の前の美少女がご立腹なので。
「名前ちゃん」
名前を呼ばれるだけでこんなにも恐ろしい思いをしたことがない。
腰に手を当てて仁王立ちする彼女が何か発する前に前屈かというほど勢いよく深々と頭を下げた。
「ごめんなさい!!!」
「トト子の引き立て役だからあんまり出しゃばられても困るけどただ隣に突っ立っていられるのも困るのよね!!」
「ごめんなさい!!」
「あまりに棒立ちで何もしないから逆にトト子より目立ってたじゃない!!なんなの!?そういう作戦!?」
「違います!あの、緊張してうまく動けなかったというか」
「…まあ、初めてだもんね、トト子やさしいから今回は許してあげるけど、次やったら許さないから!」
「つ、次があるの!?」
「はあ~~~???今日デビューしたばっかりなんだから当たり前でしょ!?」
「今日大失敗したからもう企画倒れしたものかと…」
「ステージは散々だったザンスけど物販は名前グッズの売れ行きも好評だったからノープロブレムザンス!次回から写真もポスターも増やしてさらに稼ぐから頑張ってチョーよ」
「えっ私のグッズ売れたの!?」
客席には15人もいなかった(内6人はむつご)から、多分買ってくれたのは彼らだ。なにそれ申し訳ない。人生初のブロマイドが彼らの手に渡ったかと思うと無理すぎる。破って捨ててほしい。家に着く前に勝手に燃えますように。
実はステージが終わってすぐにこの楽屋にむつごが押し入ってきそうだったのだけど、扉を開けた瞬間にトト子ちゃんの雷が私に落ちたところだったので巻き添えになる気配を察知したのか誰も入ってくることはないまま、そっとドアは閉められたのだった。英断です。
トト子ちゃんの怒りも収まったようだし、着替えて早く帰ろう…
いそいそと私服に着替えて汗かいたけどシャワーは帰ってからでいいか…としょんぼり扉に向かって、ドアを開けると同じ顔がいっせいにこちらを向いて思わずヒッと固まった。
楽屋口の前でむつごがたむろして出待ちしていたのだ!
まだ帰ってなかったのかよ!暇か!暇だな!ニートだもんな!!!
「あ、あのさ…!」
「と、トト子ちゃーん!!!面会です!!!!」
むつごのうちの誰か(焦りすぎて判別できない)が私の顔を見て話しかけてきたけどバタン!とドアを閉めて勢い良く室内に叫ぶ。
ファンの人が話したいみたいだよ!トト子ちゃん人気者だね!などと持ち上げれば上機嫌のトト子ちゃんがえ~誰~???もーしょーがないなあ~などと言いながらドアを少しだけ開いた。
「ほんとーは出待ちとか禁止なんですけどぉ~ってなーんだ、ニートたちかあ~」
「あっトト子ちゃん!お疲れ様!今日も超絶かわいかったよ!!」
「当たり前のこと言わないでよ~まーありがとっ」
「でさ、その、ユニットの子いる?ちょっと話したくて」
「は???トト子がせっかく出てやったのに他の子と話したいってどういうこと?」
「あっ違うんだよ、もちろんトト子ちゃんともたくさん話したいけど新しい子に挨拶したいなって」
「MCで全然喋ってなかったし…」
「びっくりしたんだけどさ~俺らあの子と知り合いで!だからちょーっとだけ話がしたいっていうか!」
「あとブロマイドにサインがほしくて」
「あっチョロ松兄さんのばか!!」
次々と下手に出ながらドアをこじ開けて中に入ろうとしてくるむつごにう~~んと納得いかないまでも流されかけていたトト子は最後のチョロ松の言葉にぴくっとこめかみを引きつらせた。
「…トト子のサインは欲しがらないくせにあの子のサインは欲しいの?」
「えっ?やだなあ!違うよ、もちろんトト子ちゃんのサインも…」
「トト子はおまけだっていうの?」
「ええ!?!?まさかまさか!!!」
「ちょっと落ち着いてトト子ちゃん!」
「ちょっとそこに座りなさい」
「「「「「はい」」」」」
目先の欲に取り付かれた三男の失言により、女神の怒りを買ったむつごは寒空の下アスファルトに正座させられ、外に出たトト子の怒りの背中はぱたり、と閉まったドアで見えなくなった。
ひとまず助かったけど、あのドアのすぐ外でお説教が始まってしまったのでお先でーすとかいって出てくわけにはいかない。
でもここにいればいつむつごが入ってくるかもわからないし、とにかく早く帰りたい。
どうしよう…と部屋に目を走らせて、ステージ裏へと続くドアが目に入る。
そうだ!楽屋口がだめならステージから客席に降りて、客用の出入り口から出してもらえばいいんだ!
もう客席には誰もいないだろうし、楽屋口とライブハウスの出入り口は建物の逆側だからトト子ちゃんにもむつごにもバレずに帰れるはず!
メモ帳に「ごめんね、先に帰ります」と置き書きをしてトト子ちゃんの荷物の上に置くと、私はそっとステージ裏の廊下へ続くドアを開けた。
「はあ~成功…」
そっとライブハウスの出入り口から抜け出した私は扉を閉めながらため息まじりにそう呟いた。
思ったとおり、ステージにも客席にも片付けと掃除をしているライブハウスのスタッフさんが2人くらいいただけで誰にも会わずに出ることができた。と思ったのだけれど。
「なにが成功なんだ?」
そう声をかけられ、同時に逃がさないとばかりに手首を熱い手に握られて声にならない悲鳴を上げる。
ぎょっとして振り向くと、扉のすぐ横に松野カラ松が立っており、しっかりと私の手首を握っていた。
MCの後にもう1曲あったのだけれど、トト子ちゃんばかりが喋って私は多分ろくに相槌も打ててないだろう。
曲もちゃんと歌って踊れていたか定かではない。なにも覚えていない。とりあえず兜を目深にかぶって顔が見えないようにしたまま体が覚えていたとおりの動きだけして逃げるように引っ込んだと思われる。目の前の美少女がご立腹なので。
「名前ちゃん」
名前を呼ばれるだけでこんなにも恐ろしい思いをしたことがない。
腰に手を当てて仁王立ちする彼女が何か発する前に前屈かというほど勢いよく深々と頭を下げた。
「ごめんなさい!!!」
「トト子の引き立て役だからあんまり出しゃばられても困るけどただ隣に突っ立っていられるのも困るのよね!!」
「ごめんなさい!!」
「あまりに棒立ちで何もしないから逆にトト子より目立ってたじゃない!!なんなの!?そういう作戦!?」
「違います!あの、緊張してうまく動けなかったというか」
「…まあ、初めてだもんね、トト子やさしいから今回は許してあげるけど、次やったら許さないから!」
「つ、次があるの!?」
「はあ~~~???今日デビューしたばっかりなんだから当たり前でしょ!?」
「今日大失敗したからもう企画倒れしたものかと…」
「ステージは散々だったザンスけど物販は名前グッズの売れ行きも好評だったからノープロブレムザンス!次回から写真もポスターも増やしてさらに稼ぐから頑張ってチョーよ」
「えっ私のグッズ売れたの!?」
客席には15人もいなかった(内6人はむつご)から、多分買ってくれたのは彼らだ。なにそれ申し訳ない。人生初のブロマイドが彼らの手に渡ったかと思うと無理すぎる。破って捨ててほしい。家に着く前に勝手に燃えますように。
実はステージが終わってすぐにこの楽屋にむつごが押し入ってきそうだったのだけど、扉を開けた瞬間にトト子ちゃんの雷が私に落ちたところだったので巻き添えになる気配を察知したのか誰も入ってくることはないまま、そっとドアは閉められたのだった。英断です。
トト子ちゃんの怒りも収まったようだし、着替えて早く帰ろう…
いそいそと私服に着替えて汗かいたけどシャワーは帰ってからでいいか…としょんぼり扉に向かって、ドアを開けると同じ顔がいっせいにこちらを向いて思わずヒッと固まった。
楽屋口の前でむつごがたむろして出待ちしていたのだ!
まだ帰ってなかったのかよ!暇か!暇だな!ニートだもんな!!!
「あ、あのさ…!」
「と、トト子ちゃーん!!!面会です!!!!」
むつごのうちの誰か(焦りすぎて判別できない)が私の顔を見て話しかけてきたけどバタン!とドアを閉めて勢い良く室内に叫ぶ。
ファンの人が話したいみたいだよ!トト子ちゃん人気者だね!などと持ち上げれば上機嫌のトト子ちゃんがえ~誰~???もーしょーがないなあ~などと言いながらドアを少しだけ開いた。
「ほんとーは出待ちとか禁止なんですけどぉ~ってなーんだ、ニートたちかあ~」
「あっトト子ちゃん!お疲れ様!今日も超絶かわいかったよ!!」
「当たり前のこと言わないでよ~まーありがとっ」
「でさ、その、ユニットの子いる?ちょっと話したくて」
「は???トト子がせっかく出てやったのに他の子と話したいってどういうこと?」
「あっ違うんだよ、もちろんトト子ちゃんともたくさん話したいけど新しい子に挨拶したいなって」
「MCで全然喋ってなかったし…」
「びっくりしたんだけどさ~俺らあの子と知り合いで!だからちょーっとだけ話がしたいっていうか!」
「あとブロマイドにサインがほしくて」
「あっチョロ松兄さんのばか!!」
次々と下手に出ながらドアをこじ開けて中に入ろうとしてくるむつごにう~~んと納得いかないまでも流されかけていたトト子は最後のチョロ松の言葉にぴくっとこめかみを引きつらせた。
「…トト子のサインは欲しがらないくせにあの子のサインは欲しいの?」
「えっ?やだなあ!違うよ、もちろんトト子ちゃんのサインも…」
「トト子はおまけだっていうの?」
「ええ!?!?まさかまさか!!!」
「ちょっと落ち着いてトト子ちゃん!」
「ちょっとそこに座りなさい」
「「「「「はい」」」」」
目先の欲に取り付かれた三男の失言により、女神の怒りを買ったむつごは寒空の下アスファルトに正座させられ、外に出たトト子の怒りの背中はぱたり、と閉まったドアで見えなくなった。
ひとまず助かったけど、あのドアのすぐ外でお説教が始まってしまったのでお先でーすとかいって出てくわけにはいかない。
でもここにいればいつむつごが入ってくるかもわからないし、とにかく早く帰りたい。
どうしよう…と部屋に目を走らせて、ステージ裏へと続くドアが目に入る。
そうだ!楽屋口がだめならステージから客席に降りて、客用の出入り口から出してもらえばいいんだ!
もう客席には誰もいないだろうし、楽屋口とライブハウスの出入り口は建物の逆側だからトト子ちゃんにもむつごにもバレずに帰れるはず!
メモ帳に「ごめんね、先に帰ります」と置き書きをしてトト子ちゃんの荷物の上に置くと、私はそっとステージ裏の廊下へ続くドアを開けた。
「はあ~成功…」
そっとライブハウスの出入り口から抜け出した私は扉を閉めながらため息まじりにそう呟いた。
思ったとおり、ステージにも客席にも片付けと掃除をしているライブハウスのスタッフさんが2人くらいいただけで誰にも会わずに出ることができた。と思ったのだけれど。
「なにが成功なんだ?」
そう声をかけられ、同時に逃がさないとばかりに手首を熱い手に握られて声にならない悲鳴を上げる。
ぎょっとして振り向くと、扉のすぐ横に松野カラ松が立っており、しっかりと私の手首を握っていた。