夢だけど夢じゃない
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季節はすっかり冬に差し掛かり、パーカーとサロペットでは寒くてやっていけないとハタ坊にもらしたらいつの間にやらクローゼットにタイツともこもこのファーコートが追加されていた。ありがたい。デニール高めの黒タイツに足を通す。網タイツもあったが無視させてもらった。
まだファーコートを着るほど寒くはないのだが、上着がこれしかないのでいつものコーデの上に羽織った。ふわふわの毛皮が気持ちいい。随分ボリュームがあるように見えたが実際着てみるととても軽い。これはお高いシロモノだぞ…
今日も今日とてトト子ちゃんに呼び出され次のライブの練習のため魚屋へ向かう。
慣れた足取りで河川敷を見下ろしながら川沿いの丘を歩いていると目の前から大きな犬を連れた紫色の人間が歩いてくるのに気づく。
この世界であの姿を見たのは初めてだけど、画面越しには見慣れまくったヨレヨレのトレーナーとジャージにサンダル姿のその男も私に気付いたようでハタと立ち止まり、口が「あ」の形に開いた。
「一松くんお久しぶり」
「あ、はい…どうも…」
「名前ちゃんお久しぶり!!!!」
「うわびっくりした十四松くんだったの…」
目の前の一向に視線の合わないボサボサ髪の男に挨拶するとその男の足元からも元気な挨拶が返ってきてビクつく。
大きな犬だと思っていたのは犬の着ぐるみを着た十四松だった。この姿も知ってるはずなのに気づかなかった…現実で見るとインパクトがすごいな。
「お散歩?」
「そう!!!!名前ちゃんも!?!?」
「私は商店街に用があって」
「そうなんだ!!!!名前ちゃんはなんの動物!?!?」
「えっ?あ、これ別に着ぐるみじゃないんだけど…」
私のもふもふコートを同類だと思ったのか、キラキラした瞳で聞いてくる十四松からの純粋な圧に耐えきれず、コートの裾をめくってタグを確認する。
100% dyed rabbit fur
…うん。これめっちゃ高いやつだ。
裏地も付いてない総毛皮でこのボリューム、やばいとは思ってたけどリアルファーなら尚更やばい。
「…うさぎだったよ」
「うさぎかぁーーー名前ちゃんにぴったりだね!ねっ一松にーさん!」
「えっ?あ、うん…ソウダネ…」
十四松の首輪に繋がってる紐をぎゅっと握りしめたまま忙しなく視線を彷徨わせる一松とは一向に視線が合わない。心なしか冷や汗をかいて青ざめている一松が心配になった私は一歩近づいた。途端にビクッと大袈裟に飛び跳ねた一松がこちらを見る。あ、やっと目が合った。
「一松くん大丈夫?もしかして具合悪い?」
「えっ!?いいいいいいや全然全然!?!?なんで!?ダイジョウブ!!!」
ブンブンとすごい勢いで首を振るので汗がこちらに飛んでくる。
思わず一歩後退ると、足元の十四松が「名前ちゃんがかわいいから一松にーさん照れちゃってるだけだよ!!!!」と元気よくニコニコと教えてくれた。
えっ…と思って一松の方を向けば、この世の終わりみたいな顔をした一松が穴のあくほど十四松を見つめていた。なんでおまえそんな本当のこと言っちゃうの?と顔に書いてある。あまりのわかりやすさに吹き出してしまった私を怯える目で見た一松は「すみませんねゴミで…気持ち悪いでしょ…」と闇を背負い始めてしまったので慌てて弁解する。
「全然!むしろ本当にそう思ってくれてたなら嬉しいし私も照れちゃうなって…へへ」
「!?!!?!?!!?」
今がスーパー可愛い容姿なのはわかってるけど、自分自身に可愛いと言われるのはやっぱり慣れないから素直に嬉しいし恥ずかしい。そう思って頰をかきながらはにかんだら、一松は奇声をあげながら頭を地面にのめり込ませてしまった。地下から「神か天使か!?逆に死ね!!いやおれが死ぬ!!!」と聞こえた気がした。
突然の出来事に驚いてオロオロしていると平然とした十四松が隣で頭を地面に突き刺している兄のことを一瞥もせず「そういや名前ちゃん、ぼくたちのことわかるんだね」と言った。
「??うん、会ったことあるからね…?」
「ぼくたち似てるからよく間違えられるんだけど名前ちゃん、すぐに一松にーさんのことわかったよね」
「…そういえば…初めて会った時はスーツ着てたのによく今日この格好でおれだってわかったね…十四松かもしれないのに…」
座り込んで無邪気に舌を垂らしながら見上げてくる犬の横で、地面から頭を抜いて土だらけの顔のままこれまた地べたに座り込んだ一松も不思議そうに見上げてくる。
二つのよく似た顔に見上げられて、しまった…と内心パニックに陥る。何年も見慣れたむつごを今更間違うわけがないのだけど、こっちでは一松は2度目まして、十四松だって会うの3回目だ。それで見分けられるのはきっとおかしいんだ。どう言い訳しよう…と口ごもっていると「もしかして匂い!?」と十四松が口走った。
「に、匂い???」
「そー!!名前ちゃんめっちゃいい匂いするから遠くからでもわかるよ!!!それみたいに一松にーさんとぼくの匂いがするのかなって!違う匂いだもんね!!」
「あ、ごめん、匂いはわかんないかな…」
遠くからでもわかるってどういうこと!?と動揺しながら答えると、じゃあなんで見分けられるの?と疑問に満ちた猫目になってしまった。ああしまった、のっとけば良かった。
「え、ええと、ごめんね、最初本当に犬だと思って、犬のお散歩してる=動物好き=一松くん、かなって…一松くん猫とか虎とか仲良しみたいだから…」
我ながら苦しい言い訳だ。
しかし目の前の二人はなるほど〜という顔になり、十四松からは「一松にーさんは猫派だよ!」と豆知識も頂いた。知ってます。
「じゃあさじゃあさ、どっちでしょう!?」
目の前で一松を引っ張り、その場でぐるぐると回り出した十四松はピタッと止まって、キラキラした瞳で見上げてくる。一緒にぐるぐるさせられた一松の目は回っている。
「えっと…犬が十四松くんでトレーナーの方が一松くん…」
「せーかい!!すごいね!!!!」
「いや、わかるよね流石に」
そんだけ違う格好してたらなんのシャッフルにもなってない。
お腹を見せて笑う十四松の腹をワシャワシャと撫でていたらスマホが鳴った。
「もしもし?えっ、あ、ご、ごめんすぐ行く!!」
耳元で甲高い声にめちゃくちゃ怒鳴られた私はトト子ちゃんを待たせていることを思い出し、電話口で尚も怒っている彼女に謝り倒しながら目線とジェスチャーで数字松に謝るとその場を走って去った。
まだファーコートを着るほど寒くはないのだが、上着がこれしかないのでいつものコーデの上に羽織った。ふわふわの毛皮が気持ちいい。随分ボリュームがあるように見えたが実際着てみるととても軽い。これはお高いシロモノだぞ…
今日も今日とてトト子ちゃんに呼び出され次のライブの練習のため魚屋へ向かう。
慣れた足取りで河川敷を見下ろしながら川沿いの丘を歩いていると目の前から大きな犬を連れた紫色の人間が歩いてくるのに気づく。
この世界であの姿を見たのは初めてだけど、画面越しには見慣れまくったヨレヨレのトレーナーとジャージにサンダル姿のその男も私に気付いたようでハタと立ち止まり、口が「あ」の形に開いた。
「一松くんお久しぶり」
「あ、はい…どうも…」
「名前ちゃんお久しぶり!!!!」
「うわびっくりした十四松くんだったの…」
目の前の一向に視線の合わないボサボサ髪の男に挨拶するとその男の足元からも元気な挨拶が返ってきてビクつく。
大きな犬だと思っていたのは犬の着ぐるみを着た十四松だった。この姿も知ってるはずなのに気づかなかった…現実で見るとインパクトがすごいな。
「お散歩?」
「そう!!!!名前ちゃんも!?!?」
「私は商店街に用があって」
「そうなんだ!!!!名前ちゃんはなんの動物!?!?」
「えっ?あ、これ別に着ぐるみじゃないんだけど…」
私のもふもふコートを同類だと思ったのか、キラキラした瞳で聞いてくる十四松からの純粋な圧に耐えきれず、コートの裾をめくってタグを確認する。
100% dyed rabbit fur
…うん。これめっちゃ高いやつだ。
裏地も付いてない総毛皮でこのボリューム、やばいとは思ってたけどリアルファーなら尚更やばい。
「…うさぎだったよ」
「うさぎかぁーーー名前ちゃんにぴったりだね!ねっ一松にーさん!」
「えっ?あ、うん…ソウダネ…」
十四松の首輪に繋がってる紐をぎゅっと握りしめたまま忙しなく視線を彷徨わせる一松とは一向に視線が合わない。心なしか冷や汗をかいて青ざめている一松が心配になった私は一歩近づいた。途端にビクッと大袈裟に飛び跳ねた一松がこちらを見る。あ、やっと目が合った。
「一松くん大丈夫?もしかして具合悪い?」
「えっ!?いいいいいいや全然全然!?!?なんで!?ダイジョウブ!!!」
ブンブンとすごい勢いで首を振るので汗がこちらに飛んでくる。
思わず一歩後退ると、足元の十四松が「名前ちゃんがかわいいから一松にーさん照れちゃってるだけだよ!!!!」と元気よくニコニコと教えてくれた。
えっ…と思って一松の方を向けば、この世の終わりみたいな顔をした一松が穴のあくほど十四松を見つめていた。なんでおまえそんな本当のこと言っちゃうの?と顔に書いてある。あまりのわかりやすさに吹き出してしまった私を怯える目で見た一松は「すみませんねゴミで…気持ち悪いでしょ…」と闇を背負い始めてしまったので慌てて弁解する。
「全然!むしろ本当にそう思ってくれてたなら嬉しいし私も照れちゃうなって…へへ」
「!?!!?!?!!?」
今がスーパー可愛い容姿なのはわかってるけど、自分自身に可愛いと言われるのはやっぱり慣れないから素直に嬉しいし恥ずかしい。そう思って頰をかきながらはにかんだら、一松は奇声をあげながら頭を地面にのめり込ませてしまった。地下から「神か天使か!?逆に死ね!!いやおれが死ぬ!!!」と聞こえた気がした。
突然の出来事に驚いてオロオロしていると平然とした十四松が隣で頭を地面に突き刺している兄のことを一瞥もせず「そういや名前ちゃん、ぼくたちのことわかるんだね」と言った。
「??うん、会ったことあるからね…?」
「ぼくたち似てるからよく間違えられるんだけど名前ちゃん、すぐに一松にーさんのことわかったよね」
「…そういえば…初めて会った時はスーツ着てたのによく今日この格好でおれだってわかったね…十四松かもしれないのに…」
座り込んで無邪気に舌を垂らしながら見上げてくる犬の横で、地面から頭を抜いて土だらけの顔のままこれまた地べたに座り込んだ一松も不思議そうに見上げてくる。
二つのよく似た顔に見上げられて、しまった…と内心パニックに陥る。何年も見慣れたむつごを今更間違うわけがないのだけど、こっちでは一松は2度目まして、十四松だって会うの3回目だ。それで見分けられるのはきっとおかしいんだ。どう言い訳しよう…と口ごもっていると「もしかして匂い!?」と十四松が口走った。
「に、匂い???」
「そー!!名前ちゃんめっちゃいい匂いするから遠くからでもわかるよ!!!それみたいに一松にーさんとぼくの匂いがするのかなって!違う匂いだもんね!!」
「あ、ごめん、匂いはわかんないかな…」
遠くからでもわかるってどういうこと!?と動揺しながら答えると、じゃあなんで見分けられるの?と疑問に満ちた猫目になってしまった。ああしまった、のっとけば良かった。
「え、ええと、ごめんね、最初本当に犬だと思って、犬のお散歩してる=動物好き=一松くん、かなって…一松くん猫とか虎とか仲良しみたいだから…」
我ながら苦しい言い訳だ。
しかし目の前の二人はなるほど〜という顔になり、十四松からは「一松にーさんは猫派だよ!」と豆知識も頂いた。知ってます。
「じゃあさじゃあさ、どっちでしょう!?」
目の前で一松を引っ張り、その場でぐるぐると回り出した十四松はピタッと止まって、キラキラした瞳で見上げてくる。一緒にぐるぐるさせられた一松の目は回っている。
「えっと…犬が十四松くんでトレーナーの方が一松くん…」
「せーかい!!すごいね!!!!」
「いや、わかるよね流石に」
そんだけ違う格好してたらなんのシャッフルにもなってない。
お腹を見せて笑う十四松の腹をワシャワシャと撫でていたらスマホが鳴った。
「もしもし?えっ、あ、ご、ごめんすぐ行く!!」
耳元で甲高い声にめちゃくちゃ怒鳴られた私はトト子ちゃんを待たせていることを思い出し、電話口で尚も怒っている彼女に謝り倒しながら目線とジェスチャーで数字松に謝るとその場を走って去った。