夢だけど夢じゃない
はじめにお名前変換してください
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ブロロロロと低く静かなエンジン音がする。
黒塗り高級車は前から見た時は気づかなかったけど、アホかというほど長いリムジンだった。
お布団みたいな長さのソファがびろーんと鎮座する後部座席にそわそわしながら座っている。運転しているイケメンフラッグくんが遠い。どこに連れてかれるんだろう。咄嗟にひっ摑んだおかげでカラ松ぬいもちゃんと連れてこれてよかった。不安になりつつカラ松ぬいの両手を握りしめて外を眺める。アニメで見たちょっと淡めのカラフルで歪んだ街並みが流れていく。街並みに透けてガラスに映る自分と目が合う。自分というか美少女と。いや〜夢補正というかトリップ補正というか厚かましいというか。まだ見慣れぬ可愛すぎる自分の顔をまじまじと眺める。目がくりっくりだ。十四松の彼女ちゃんみたいな素朴な顔でもにゃーちゃんみたいなクールな顔でもない。例えるならトト子ちゃんみたいなかわいい顔立ちだ。あ、でも少し幼いかもしれない。チビ美ほどではないけれど。本当の自分は女子松さんをもっとモブ顔にしたようなブスじゃないけど美人でもない顔なのでこの点については夢万歳である。夢だよね???そこはもう気にしないでおこう。
ふわふわの茶髪を撫でてみる。あ、見た目はふわふわだけど髪質はサラサラだ。羨ましい。自分だけど。ポニーテールにくっついてる白いでっかいリボンは真ん中の結び目の丸くなっているところが真っ赤で、ようやくこれは日の丸柄だと気付いた。旗は刺さってなかったけど旗の代用品(?)が頭に付いてるということはやはりフラッグコーポレーションの一員なのだろうか。この世界での自分の設定がイマイチわかってないから不安である。まあなんとかなるよね…?
色々考えている間に目的地に着いたらしく車が急ブレーキで止まったためソファの上ででんぐり返ししてしまった。いてて…この野郎、運転荒いな!
ガチャリと外からドアを開けられ、ひっくり返った私を見つけたイケメンが顔を歪める。いや、貴方のせいですからね。
「お急ぎください、Mr.フラッグがお待ちかねです」
Mr.フラッグってハタ坊だよね。
そう思いながら長い車から降りると目の前にアホみたいに高いビルがそびえ立っていた。二次元ってすごい。雲突き抜けてる。スカイ○リーもビックリ。
そう思いながら入り口に入るとピカピカの床の上にずらりと旗が刺さったスーツ軍団がいた。こわ!
メガネをかけたバリキャリっぽい女の人がこちらですと引率してくれる。
彼女のピンヒールがカツカツと音を鳴らす後ろを音もなくついていく私。なぜなら靴履いてないから。ストッキングで歩くには冷たすぎるよこの床。
冷たさに震え、若干爪先立ちになりながら歩き、エレベーターに乗せられあっという間に最上階へ。耳がキューンとした。これ嫌い。
唾を飲み込み耳抜きをしながら一歩外へ出たらかわいらしいサイズの男の子がぱあっと笑顔を見せて走り寄ってきた。
「名前!待ってたジョ!」
やはりハタ坊と知り合いらしい。
隣に立つバリキャリに「私普段彼をなんて呼んでますかね?」て小声で聞いてみたけど、は?みたいな目線を寄越されて終わりだった。旗の人たち私に厳しくない?同僚じゃないの?同僚だから厳しいの?
「名前?なんでスーツなんか着てるジョ?」
「えっ…あ、これは…仕事で…」
「…名前働いてるジョ?どこで?何の仕事?聞いてないジョ」
急に怖い顔で低い声音で詰め寄ってきた彼にビビりながら、この言い方から私は社員じゃないらしいと悟る。
あー設定最初から教えといて!?
「あー、ハタ坊さん…じゃなくて、くん…?でもないのか、ハタ坊!働いてないよ!」
彼の顔色を伺いながら普段の呼び方を探る。敬称ありだと怪訝な顔をされたのでどうやら呼び捨てする仲らしい。
働いてるとまずいみたいなので咄嗟にニート宣言をしてしまったが、正解らしくやっと彼に笑顔が戻った。
「名前は働かなくて良いんだジョ。そんな服もすぐ着替えるジョ。ハタ坊とずーっと遊んで暮らすんだジョ!」
えっ、なにそれ。
私もしかしてハタ坊の彼女か奥さんかなんか??なにその設定。
焦っていると振り向いたハタ坊が「友達だからいくらでも好きに使って良いんだジョ」と笑った。よかった、ダーリンとか口走る前に教えてくれて。友達なのか。しかも金を好きに使って良いんだ。なにそれ最高。でも申し訳なくてそんなことできない。
「さ、着替えてきてハタ坊とおやつを食べるジョ」
「き、着替えはどこかなー?」
「?部屋に決まってるジョ」
「…部屋までついてきてくれたら嬉しいな〜1人だと寂しいでしょ?」
うまいこと丸め込んで部屋まで案内してもらう。大きなドアにはかわいらしい文字で「名前の部屋」と書いてあった。私の部屋があるんかい。もしかしてここに住んでるんだろうか。ついてきてくれてありがとう、着替えてすぐ行くね、とドアの前で別れて中に入ると広々とした部屋が広がっていた。すげー!スイートルームか!?
カラオケみたいなでっかいテレビも部屋が広いから小さく見える。おっきなソファがあって、床もふかふかのラグが敷いてある。部屋の中にさらに観音開きのドアがあって、クローゼットかな?と開けたらまたしても広々とした部屋があり真ん中に馬鹿でかい天蓋付きベッドが鎮座していた。マジですか。これなにサイズ?キング?クイーン??
ベッドサイドの小さなキャビネットに写真立てが飾られており、仲よさそうなハタ坊と美少女の写真が入っていた。あ、この美少女、私か。見慣れないなぁ。美少女はハタ坊と色違いの青いサロペットを着ていて、髪型はポニーテールだ。なるほど髪型は固定なんだな。理解。普段このサロペットならスーツ着てる今はたしかにおかしいね。壁についている扉を今度こそクローゼットだろうと開けてみると確かにクローゼットだったけれど、7畳くらいありそうなウォークインクローゼットだった。マジかよ。
しかも、ずらっとかかっている洋服のほとんどがサロペットだった。制服かなにかか?彼のとお揃いかと思ったが、ズボン部分が短い。これはショートパンツだな。ミニスカタイプもある。総じて短いのはハタ坊の趣味だろうか。この世界での私が何歳なのかは不明だが生足で履くのは憚られたためタイツかニーハイを履くことにしよう。まだそんなに寒くないからニーハイかな。普通の靴下がよかったけどニーハイしか見つけられなかった。この世界どうなってんだ。この歳でニーハイ履くのは抵抗があったけど、二次元だし今は美少女だから許してくれ。
サロペットはデザインは同じだが各色揃っていて、というか他意を感じるけど赤青緑紫黄色ピンクの順に並んでハンガーにかかっていた。違いがわかんないんだけど各色なぜか6着ずつかかっている。毎日同じデザインを着れるようにかな?青に手をかけてしばらく悩んだけれど、ここは初日(?)だしハタ坊とお揃いの緑を着よう。写真の中では青を着てたし、気分で違う色着るのはありだよね、きっと。
やっと部屋を出て先ほどのハタ坊がいた広間へ戻ると時間が随分経っていたのか、ソファに潰れたハムスターみたいな状態のハタ坊が転がっていた。待ちくたびれて伸びてしまったらしい。
慌てて駆け寄り謝るとうつろな目をしたハタ坊が上から下まで私を眺めてニコリ!と笑顔になった。
「今日はお揃いだジョ」
「え?うん」
「名前、いつも青ばっか着るから…お揃いだと嬉しいジョ!仲良しだジョ!」
…いつも青ばっか着てるのか。
その意味をなんとなく理解し、この世界の私も推しが同じなんだなあ、とこっそり笑う。
もしかしてカラ松くんと仲良かったりするのかな。
ニヤニヤしているとハタ坊に「ところで名前」と袖を引かれる。
「ん?なぁにハタ坊」
「あれはなんだジョ?」
指差す先を見ると、イケメンフラッグくんが十字架を持っていて、十字架の先にはカラ松ぬいが磔になっていた。
「えっっっ!?!どゆこと!!?ベッドに置いてきたはず!!??」
「名前、あれはなんだジョ?」
「えっ!?…あれは…私のぬいぐるみです…」
「誰かに似てるジョ」
「そ、そうかな…ははは」
この世界に実在している人物のぬいぐるみを所持しているヤバさに気づいて咄嗟にしらを切る。
「名前、むつごと知り合いになったんだジョ?」
「えっ…えっと」
「あれはむつごに似てるジョ」
「そ、そうかな…」
「むつごは友達、名前は友達、みんな友達…」
ぶつくさ言ってるハタ坊が怖くて動けない。この世界の私、彼の中でなんの立ち位置なの!?なんでぬいぐるみが磔にされてんの!?私まだむつごと知り合いじゃないの!?
「Ms.名前はまだこの街に来てから1年しか経ってないですしその間このビルから一歩も出てないのですからMr.フラッグ以外のご友人が存在するはずがないですよ」
説明台詞ありがとうイケメンフラッグくん。すごく聞き捨てならなかったけど。なに?私この街に来てからずっと軟禁されてんの???それならなんでさっき外にいたの?
「名前がおやつを買いに行きたいというから初めてのおつかいに出したんだジョ…そしたらおやつの代わりにあれを持って帰ってきたんだジョ…」
恨めしそうに唸るハタ坊。説明台詞ありがとう。
頭をフル回転させて言い訳を考える。
「えっと…初めてのおつかいだったからお店がわからなくておやつを買えなかったの、ごめんね?あれはね、道で拾ったの!落ちてるの可哀想だったから拾ったんだけどダメだった…?誰だか知らないけど、ハタ坊のお友達に似てるなら、部屋に飾っておいたらダメかな?お友達と仲良しなんだよね?」
うん、我ながらよくできました。
からぬい取り上げられませんように…!あれは宝物なの…!
無表情でどこ見てるかわからない視線が怖くなって、駄目元でハタ坊の前にしゃがみこみ両手を合わせて小首を傾げる。普段はともかく今のこのかわいい見た目なら効果あるだろ!あってくれ!ね、お願い♡と出せるだけの猫撫で声で甘えてみせると視線をふいと晒した彼が手をパッと上げてなにかハンドサインをした。それを見てイケメンフラッグくんは磔になった十字架を持ったままどこかへ行ってしまった。
「えっ…」
「名前の部屋に戻しに行ったジョ」
「あ、よ、良かった…ありがとう…」
「…名前、友達が欲しいジョ?」
「えっ?」
「ハタ坊以外の友達…欲しいのか聞いてるんだジョ」
「えっと…うーん…ハタ坊も好きだけど、友達は多い方が嬉しいかなぁ…ハタ坊もお友達たくさん欲しいんじゃない?」
アニメで友達を欲しがっていた彼を思い出し、言ってみる。
考え込む素振りを見せた彼が顔を上げ、うんうんと頷きながら言った。
「わかったジョ。これからは好きに外に出て良いジョ。友達たくさん作ると良いジョ」
「えっいいの!?ありがとうハタ坊!」
思わずぎゅっと抱きつくと動揺したように彼が揺れた。あれ、まずかったかな。小さいからかわいいなと思ってたけど一応成人男性なのだろうし軽率に抱きつくといけなかっただろうか。
ハタ坊の手が空中を彷徨い、意を決したように私の服の裾を握った。
「…でもハタ坊とも仲良くしてくれないと嫌だジョ」
「もちろん!一番はハタ坊だよ!(居候させてもらってるぽいし)」
「!!…そ、それなら良いジョ…」
照れたように赤くなったハタ坊はポケットから何かを取り出して、名前にくれた。
「?これはなに?」
「外は危険がいっぱいだジョ…身の危険を感じたらここを引っ張るんだジョ」
「ああ、防犯ブザー的な?」
「ここを引っ張ると半径2km以内の人間が死滅するジョ」
「こっっっわ!?!?過保護過ぎるな!?」
思わず本音を叫んでしまったけれど、彼は満足そうに笑いながらそれを私のポケットにしまった。
ほんと、彼と私の関係、なんなの…
黒塗り高級車は前から見た時は気づかなかったけど、アホかというほど長いリムジンだった。
お布団みたいな長さのソファがびろーんと鎮座する後部座席にそわそわしながら座っている。運転しているイケメンフラッグくんが遠い。どこに連れてかれるんだろう。咄嗟にひっ摑んだおかげでカラ松ぬいもちゃんと連れてこれてよかった。不安になりつつカラ松ぬいの両手を握りしめて外を眺める。アニメで見たちょっと淡めのカラフルで歪んだ街並みが流れていく。街並みに透けてガラスに映る自分と目が合う。自分というか美少女と。いや〜夢補正というかトリップ補正というか厚かましいというか。まだ見慣れぬ可愛すぎる自分の顔をまじまじと眺める。目がくりっくりだ。十四松の彼女ちゃんみたいな素朴な顔でもにゃーちゃんみたいなクールな顔でもない。例えるならトト子ちゃんみたいなかわいい顔立ちだ。あ、でも少し幼いかもしれない。チビ美ほどではないけれど。本当の自分は女子松さんをもっとモブ顔にしたようなブスじゃないけど美人でもない顔なのでこの点については夢万歳である。夢だよね???そこはもう気にしないでおこう。
ふわふわの茶髪を撫でてみる。あ、見た目はふわふわだけど髪質はサラサラだ。羨ましい。自分だけど。ポニーテールにくっついてる白いでっかいリボンは真ん中の結び目の丸くなっているところが真っ赤で、ようやくこれは日の丸柄だと気付いた。旗は刺さってなかったけど旗の代用品(?)が頭に付いてるということはやはりフラッグコーポレーションの一員なのだろうか。この世界での自分の設定がイマイチわかってないから不安である。まあなんとかなるよね…?
色々考えている間に目的地に着いたらしく車が急ブレーキで止まったためソファの上ででんぐり返ししてしまった。いてて…この野郎、運転荒いな!
ガチャリと外からドアを開けられ、ひっくり返った私を見つけたイケメンが顔を歪める。いや、貴方のせいですからね。
「お急ぎください、Mr.フラッグがお待ちかねです」
Mr.フラッグってハタ坊だよね。
そう思いながら長い車から降りると目の前にアホみたいに高いビルがそびえ立っていた。二次元ってすごい。雲突き抜けてる。スカイ○リーもビックリ。
そう思いながら入り口に入るとピカピカの床の上にずらりと旗が刺さったスーツ軍団がいた。こわ!
メガネをかけたバリキャリっぽい女の人がこちらですと引率してくれる。
彼女のピンヒールがカツカツと音を鳴らす後ろを音もなくついていく私。なぜなら靴履いてないから。ストッキングで歩くには冷たすぎるよこの床。
冷たさに震え、若干爪先立ちになりながら歩き、エレベーターに乗せられあっという間に最上階へ。耳がキューンとした。これ嫌い。
唾を飲み込み耳抜きをしながら一歩外へ出たらかわいらしいサイズの男の子がぱあっと笑顔を見せて走り寄ってきた。
「名前!待ってたジョ!」
やはりハタ坊と知り合いらしい。
隣に立つバリキャリに「私普段彼をなんて呼んでますかね?」て小声で聞いてみたけど、は?みたいな目線を寄越されて終わりだった。旗の人たち私に厳しくない?同僚じゃないの?同僚だから厳しいの?
「名前?なんでスーツなんか着てるジョ?」
「えっ…あ、これは…仕事で…」
「…名前働いてるジョ?どこで?何の仕事?聞いてないジョ」
急に怖い顔で低い声音で詰め寄ってきた彼にビビりながら、この言い方から私は社員じゃないらしいと悟る。
あー設定最初から教えといて!?
「あー、ハタ坊さん…じゃなくて、くん…?でもないのか、ハタ坊!働いてないよ!」
彼の顔色を伺いながら普段の呼び方を探る。敬称ありだと怪訝な顔をされたのでどうやら呼び捨てする仲らしい。
働いてるとまずいみたいなので咄嗟にニート宣言をしてしまったが、正解らしくやっと彼に笑顔が戻った。
「名前は働かなくて良いんだジョ。そんな服もすぐ着替えるジョ。ハタ坊とずーっと遊んで暮らすんだジョ!」
えっ、なにそれ。
私もしかしてハタ坊の彼女か奥さんかなんか??なにその設定。
焦っていると振り向いたハタ坊が「友達だからいくらでも好きに使って良いんだジョ」と笑った。よかった、ダーリンとか口走る前に教えてくれて。友達なのか。しかも金を好きに使って良いんだ。なにそれ最高。でも申し訳なくてそんなことできない。
「さ、着替えてきてハタ坊とおやつを食べるジョ」
「き、着替えはどこかなー?」
「?部屋に決まってるジョ」
「…部屋までついてきてくれたら嬉しいな〜1人だと寂しいでしょ?」
うまいこと丸め込んで部屋まで案内してもらう。大きなドアにはかわいらしい文字で「名前の部屋」と書いてあった。私の部屋があるんかい。もしかしてここに住んでるんだろうか。ついてきてくれてありがとう、着替えてすぐ行くね、とドアの前で別れて中に入ると広々とした部屋が広がっていた。すげー!スイートルームか!?
カラオケみたいなでっかいテレビも部屋が広いから小さく見える。おっきなソファがあって、床もふかふかのラグが敷いてある。部屋の中にさらに観音開きのドアがあって、クローゼットかな?と開けたらまたしても広々とした部屋があり真ん中に馬鹿でかい天蓋付きベッドが鎮座していた。マジですか。これなにサイズ?キング?クイーン??
ベッドサイドの小さなキャビネットに写真立てが飾られており、仲よさそうなハタ坊と美少女の写真が入っていた。あ、この美少女、私か。見慣れないなぁ。美少女はハタ坊と色違いの青いサロペットを着ていて、髪型はポニーテールだ。なるほど髪型は固定なんだな。理解。普段このサロペットならスーツ着てる今はたしかにおかしいね。壁についている扉を今度こそクローゼットだろうと開けてみると確かにクローゼットだったけれど、7畳くらいありそうなウォークインクローゼットだった。マジかよ。
しかも、ずらっとかかっている洋服のほとんどがサロペットだった。制服かなにかか?彼のとお揃いかと思ったが、ズボン部分が短い。これはショートパンツだな。ミニスカタイプもある。総じて短いのはハタ坊の趣味だろうか。この世界での私が何歳なのかは不明だが生足で履くのは憚られたためタイツかニーハイを履くことにしよう。まだそんなに寒くないからニーハイかな。普通の靴下がよかったけどニーハイしか見つけられなかった。この世界どうなってんだ。この歳でニーハイ履くのは抵抗があったけど、二次元だし今は美少女だから許してくれ。
サロペットはデザインは同じだが各色揃っていて、というか他意を感じるけど赤青緑紫黄色ピンクの順に並んでハンガーにかかっていた。違いがわかんないんだけど各色なぜか6着ずつかかっている。毎日同じデザインを着れるようにかな?青に手をかけてしばらく悩んだけれど、ここは初日(?)だしハタ坊とお揃いの緑を着よう。写真の中では青を着てたし、気分で違う色着るのはありだよね、きっと。
やっと部屋を出て先ほどのハタ坊がいた広間へ戻ると時間が随分経っていたのか、ソファに潰れたハムスターみたいな状態のハタ坊が転がっていた。待ちくたびれて伸びてしまったらしい。
慌てて駆け寄り謝るとうつろな目をしたハタ坊が上から下まで私を眺めてニコリ!と笑顔になった。
「今日はお揃いだジョ」
「え?うん」
「名前、いつも青ばっか着るから…お揃いだと嬉しいジョ!仲良しだジョ!」
…いつも青ばっか着てるのか。
その意味をなんとなく理解し、この世界の私も推しが同じなんだなあ、とこっそり笑う。
もしかしてカラ松くんと仲良かったりするのかな。
ニヤニヤしているとハタ坊に「ところで名前」と袖を引かれる。
「ん?なぁにハタ坊」
「あれはなんだジョ?」
指差す先を見ると、イケメンフラッグくんが十字架を持っていて、十字架の先にはカラ松ぬいが磔になっていた。
「えっっっ!?!どゆこと!!?ベッドに置いてきたはず!!??」
「名前、あれはなんだジョ?」
「えっ!?…あれは…私のぬいぐるみです…」
「誰かに似てるジョ」
「そ、そうかな…ははは」
この世界に実在している人物のぬいぐるみを所持しているヤバさに気づいて咄嗟にしらを切る。
「名前、むつごと知り合いになったんだジョ?」
「えっ…えっと」
「あれはむつごに似てるジョ」
「そ、そうかな…」
「むつごは友達、名前は友達、みんな友達…」
ぶつくさ言ってるハタ坊が怖くて動けない。この世界の私、彼の中でなんの立ち位置なの!?なんでぬいぐるみが磔にされてんの!?私まだむつごと知り合いじゃないの!?
「Ms.名前はまだこの街に来てから1年しか経ってないですしその間このビルから一歩も出てないのですからMr.フラッグ以外のご友人が存在するはずがないですよ」
説明台詞ありがとうイケメンフラッグくん。すごく聞き捨てならなかったけど。なに?私この街に来てからずっと軟禁されてんの???それならなんでさっき外にいたの?
「名前がおやつを買いに行きたいというから初めてのおつかいに出したんだジョ…そしたらおやつの代わりにあれを持って帰ってきたんだジョ…」
恨めしそうに唸るハタ坊。説明台詞ありがとう。
頭をフル回転させて言い訳を考える。
「えっと…初めてのおつかいだったからお店がわからなくておやつを買えなかったの、ごめんね?あれはね、道で拾ったの!落ちてるの可哀想だったから拾ったんだけどダメだった…?誰だか知らないけど、ハタ坊のお友達に似てるなら、部屋に飾っておいたらダメかな?お友達と仲良しなんだよね?」
うん、我ながらよくできました。
からぬい取り上げられませんように…!あれは宝物なの…!
無表情でどこ見てるかわからない視線が怖くなって、駄目元でハタ坊の前にしゃがみこみ両手を合わせて小首を傾げる。普段はともかく今のこのかわいい見た目なら効果あるだろ!あってくれ!ね、お願い♡と出せるだけの猫撫で声で甘えてみせると視線をふいと晒した彼が手をパッと上げてなにかハンドサインをした。それを見てイケメンフラッグくんは磔になった十字架を持ったままどこかへ行ってしまった。
「えっ…」
「名前の部屋に戻しに行ったジョ」
「あ、よ、良かった…ありがとう…」
「…名前、友達が欲しいジョ?」
「えっ?」
「ハタ坊以外の友達…欲しいのか聞いてるんだジョ」
「えっと…うーん…ハタ坊も好きだけど、友達は多い方が嬉しいかなぁ…ハタ坊もお友達たくさん欲しいんじゃない?」
アニメで友達を欲しがっていた彼を思い出し、言ってみる。
考え込む素振りを見せた彼が顔を上げ、うんうんと頷きながら言った。
「わかったジョ。これからは好きに外に出て良いジョ。友達たくさん作ると良いジョ」
「えっいいの!?ありがとうハタ坊!」
思わずぎゅっと抱きつくと動揺したように彼が揺れた。あれ、まずかったかな。小さいからかわいいなと思ってたけど一応成人男性なのだろうし軽率に抱きつくといけなかっただろうか。
ハタ坊の手が空中を彷徨い、意を決したように私の服の裾を握った。
「…でもハタ坊とも仲良くしてくれないと嫌だジョ」
「もちろん!一番はハタ坊だよ!(居候させてもらってるぽいし)」
「!!…そ、それなら良いジョ…」
照れたように赤くなったハタ坊はポケットから何かを取り出して、名前にくれた。
「?これはなに?」
「外は危険がいっぱいだジョ…身の危険を感じたらここを引っ張るんだジョ」
「ああ、防犯ブザー的な?」
「ここを引っ張ると半径2km以内の人間が死滅するジョ」
「こっっっわ!?!?過保護過ぎるな!?」
思わず本音を叫んでしまったけれど、彼は満足そうに笑いながらそれを私のポケットにしまった。
ほんと、彼と私の関係、なんなの…