夢だけど夢じゃない
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どうしようどうしようどうしよう
ちら、と後ろをこっそり振り返る。
愛虎の背に不安そうに跨る見知らぬ女の子。あちこち怪我して血が出ているし泥で汚れているけれどカワイイ。すごくカワイイ。トト子ちゃんと並ぶんじゃないか?ってくらいカワイイ。
あんなとこで怪我して動けないようだったから連れて来てしまったけれどよくよく考えたらこれ誘拐じゃないか?えっ嘘、おれ無意識のうちに美少女誘拐犯?ついに松野家から犯罪者が…?父さん母さんごめん。
そんなことをもんもんと考えながら冷や汗ダラダラかいて足早に帰ってきたのは我が家。慣れた手つきで引き戸を開けて玄関にサッと目を走らせる。よし、誰の靴もない、全員出掛けているな。念のためただいま…と声を掛けるが返事もない。よしよしよし。虎ごと玄関に入れるとピシャッと勢いよく扉を閉めて鍵もかけてしまった。
キョロキョロするのが憚られるのか、目線だけで辺りを忙しなく見回す女と目を合わすことも出来ず、足元だけを見てボソリと話しかける。
「…あがって」
「あ、いや、すごく汚れているので…」
「………」
「………」
「………」
「…あっ、あの、とりあえず虎さんからは降ります…」
虎さん!!!!!!!!
かわいいかよ!!!!!!!!!!!!
虎の背から降りようとして玄関に足をついた瞬間顔を歪めた彼女を見て、咄嗟に手を差し伸べたけど一瞬で引っ込める。危ねえ、おれ、どこ触る気だった?死ぬ気か?さっき山でもやりかけた、危ない、普段女の子と接する機会なんてそうそうないから無意識に手を差し伸べようとしてしまう。こいつは野郎じゃないんだ女の子だぞ、触れたら死ぬぞ、そんなやらしいところ触る気はないけどこんなかわいい女の子、どこに触れても死ぬ。死んでしまう。童貞ニートが触っていい生き物じゃない。
自分では触れないので虎の背に乗ったまま庭へ回るよう指示する。彼女を縁側に座らせて少し待つように言った。もう季節は冬に差し掛かり外では寒いと思うけど家にあがりたくないというのだから仕方ない。救急箱やタオルをバタバタ用意しながらせめてもと思い洗面器にお湯を汲んだ。
縁側に戻ると、山ではあんなに怯えていたのに乗っている間に慣れたのか、女が虎の顎を撫でているところだった。ゴロゴロと目を閉じて気持ち良さそうに喉を鳴らす愛虎。さっきオシオキとか言って人間を長距離運ばせてしまったからご褒美をあげようと思っていたけど、そんな美少女に撫でられる以上のご褒美ってある?羨ましい。…羨ましい?いやいやなに考えてんの、相手は虎、あんな美しくて素晴らしい生き物とゴミ底辺のおれ、比べるだけおこがましいでしょ。撫でられて当然。
「…手当てするから」
「えっ!?あ、おお…ありがとうございます…」
変な思想をぶった切るようにぶっきらぼうに声を掛ければ、おれが戻ったことに気づかなかったのか大層驚いた顔と声で女は礼を言った。こんな美少女にありがとうと言われるなんて…おれもう明日死ぬのかな。幸せ貯金が大金すぎてどんな戒めをやればとんとんになるのかわからない。
お湯を張った洗面器にタオルを浸して硬く絞る。はい、拭いて、と渡せば女は心底申し訳なさそうな、それでいてどこか嬉しそうな顔で受け取ると顔や腕についた泥を拭った。綺麗になれば汚れていた時より更にかわいい顔が覗く。うわやばい。ちんこ勃ちそう。脱糞しそうになりながらなんとか気を保ち、汚れたタオルを受け取って洗面器に浸し、洗い、硬く絞って渡す。何度か繰り返しているとすっかり汚れた冷水になってしまったので、続けていてと呟いてお湯を変えに一旦家の中に引っ込んだ。
美少女と一対一でのやり取りにマラソンの後みたいな早鐘を打つ心臓と尋常じゃない汗を拭いながら洗面器に綺麗なお湯を溜め直す。はー、あんなかわいい女の子、なんであんなところにいたんだろう。………いや、まじでなんで?冷静に考えるとおかしい。あんな誰も行かないような山の奥の森の中で虎の檻のそばに座り込んでいたなんて、一体何をしていたのか?檻は酷く壊れていたし、だいたいあの檻に閉じ込めたまま折檻していたイヤミとチビ太の様子を見に自分は戻ったのだ。そうしたら肝心の2人はいなくて檻は壊れてもぬけの殻、見知らぬ美少女に寄り添う虎…
かわいいかわいい女の子だと思っていたレンタル彼女の正体を思い出し、今縁側にいるあの女も実は…?と考えたところで悪寒が全身を襲い、身震いした。いやまさか。でももしかしたら。奴らの仲間だとするとあの美少女はダヨーンかデカパンか…どちらにしても地獄。
最悪な推理をしながら冷や汗をかきつつ縁側に戻れば、美少女の横にいる黄色がひとつ、増えていた。
「あ!一松にーさん!」
美少女、虎、十四松のくりくりした瞳が一気に6つ自分に向けられる。おまえ、いつから。どこから。さっきまでと違う冷や汗がドッと溢れ出る。
「一松にーさん、こちら名前ちゃん!名前ちゃん、こちら一松にーさん!」
「…お世話になってます…」
おれがいない間に自己紹介を済ませたらしく十四松が元気よく紹介してくれた。あっけに取られて立ち竦むおれを無視して庭へしゃがみこむと彼女の足を自分の膝に乗せ、くるくると包帯を巻いていく。あれっ、さっきまでビリビリに破れたニーハイソックスを履いていたのに…。泥が取れて綺麗になった、けれど擦り傷だらけの両脚は生足になっていた。泥を拭うために脱いだんだな、と冷静に分析する自分と、美少女の生足をそんな…!と十四松のコミュ力におののく自分が脳内で騒がしい。絶句したまま突っ立っていると十四松が元気よく彼女に話しかけた。
「さっきの続きだけどなんでこんな傷だらけなんすか!?!?」
「あ、えっと、」
「なんで一松にーさんと2人きりでうちにいるんすか!?!?」
2つ目の質問はぐりんと首ごとこっちを向いて、光のない焦点の合っていない目なのにまっすぐこちらを射抜きながら発せられた。こんな美少女と2人でなんの抜け駆けか?という無言の圧に全身が震え上がる。
「あ、あの、私ハタ坊のところでお世話になっていて、チビ太くんともお友達で、それでチビ太くんから助けてって連絡があったからハタ坊と行ったんだけど置いてかれちゃって…あそこに1人でいたら一松くんが来て手当てのためにここまで連れて来てくれたんです」
おれと十四松を交互に見ながら早口で名前ちゃんが説明した。さらりと名前を呼ばれたことに心臓がばくばくいっているが、それとは別に彼女の説明がすとんと落ちて、あそこにいた理由をすんなり納得した。レンタル彼女の一味ではないことに安堵したが、よくよく見ればハタ坊とほぼお揃いの服装に、なんだハタ坊の女か…と落胆する。ハタ坊が女を侍らせているところは何度か目撃しているがこんなペアルックの女はいなかったので大層お気に入りなんだろう。本命の彼女かもしれない。
「…ふーん、そっか!大変だったね!」
ぐるぐるに巻いた包帯の上から痛いの痛いのとんでけ〜としたあとニコッと天使の笑顔を向ける十四松につられたように彼女もふわっと笑いかえす。神か!?!?女神か天使かなんだ!?!?!?!?!!!?!?あまりの眩しい光景におれが浄化されかけていると歩けないんだよね、と声がしたかと思うと十四松が名前ちゃんをおんぶして立っていた。
「一松にーさん!名前ちゃん送ってくんね!」
「え、あ、ああ…」
十四松に慌てて目線を移して生返事を返すとあり得ない物が視界に飛び込んできた。十四松、お、おまえ、それ、たたたタッティ…!!!
「あ゛はっ☆名前ちゃん脚すべすべだしおぶったらおっぱいが当たって…」
「おまえそれ以上喋るな…ぅオ熱っ…ッ!!!?!?」
頰を上気させながら無邪気に理由を説明する弟に慌てたおれは十四松の口を塞ごうと手を伸ばし、持っていた熱湯入り洗面器をひっくり返して全身で浴び火傷した。
い、戒めェ………
ちら、と後ろをこっそり振り返る。
愛虎の背に不安そうに跨る見知らぬ女の子。あちこち怪我して血が出ているし泥で汚れているけれどカワイイ。すごくカワイイ。トト子ちゃんと並ぶんじゃないか?ってくらいカワイイ。
あんなとこで怪我して動けないようだったから連れて来てしまったけれどよくよく考えたらこれ誘拐じゃないか?えっ嘘、おれ無意識のうちに美少女誘拐犯?ついに松野家から犯罪者が…?父さん母さんごめん。
そんなことをもんもんと考えながら冷や汗ダラダラかいて足早に帰ってきたのは我が家。慣れた手つきで引き戸を開けて玄関にサッと目を走らせる。よし、誰の靴もない、全員出掛けているな。念のためただいま…と声を掛けるが返事もない。よしよしよし。虎ごと玄関に入れるとピシャッと勢いよく扉を閉めて鍵もかけてしまった。
キョロキョロするのが憚られるのか、目線だけで辺りを忙しなく見回す女と目を合わすことも出来ず、足元だけを見てボソリと話しかける。
「…あがって」
「あ、いや、すごく汚れているので…」
「………」
「………」
「………」
「…あっ、あの、とりあえず虎さんからは降ります…」
虎さん!!!!!!!!
かわいいかよ!!!!!!!!!!!!
虎の背から降りようとして玄関に足をついた瞬間顔を歪めた彼女を見て、咄嗟に手を差し伸べたけど一瞬で引っ込める。危ねえ、おれ、どこ触る気だった?死ぬ気か?さっき山でもやりかけた、危ない、普段女の子と接する機会なんてそうそうないから無意識に手を差し伸べようとしてしまう。こいつは野郎じゃないんだ女の子だぞ、触れたら死ぬぞ、そんなやらしいところ触る気はないけどこんなかわいい女の子、どこに触れても死ぬ。死んでしまう。童貞ニートが触っていい生き物じゃない。
自分では触れないので虎の背に乗ったまま庭へ回るよう指示する。彼女を縁側に座らせて少し待つように言った。もう季節は冬に差し掛かり外では寒いと思うけど家にあがりたくないというのだから仕方ない。救急箱やタオルをバタバタ用意しながらせめてもと思い洗面器にお湯を汲んだ。
縁側に戻ると、山ではあんなに怯えていたのに乗っている間に慣れたのか、女が虎の顎を撫でているところだった。ゴロゴロと目を閉じて気持ち良さそうに喉を鳴らす愛虎。さっきオシオキとか言って人間を長距離運ばせてしまったからご褒美をあげようと思っていたけど、そんな美少女に撫でられる以上のご褒美ってある?羨ましい。…羨ましい?いやいやなに考えてんの、相手は虎、あんな美しくて素晴らしい生き物とゴミ底辺のおれ、比べるだけおこがましいでしょ。撫でられて当然。
「…手当てするから」
「えっ!?あ、おお…ありがとうございます…」
変な思想をぶった切るようにぶっきらぼうに声を掛ければ、おれが戻ったことに気づかなかったのか大層驚いた顔と声で女は礼を言った。こんな美少女にありがとうと言われるなんて…おれもう明日死ぬのかな。幸せ貯金が大金すぎてどんな戒めをやればとんとんになるのかわからない。
お湯を張った洗面器にタオルを浸して硬く絞る。はい、拭いて、と渡せば女は心底申し訳なさそうな、それでいてどこか嬉しそうな顔で受け取ると顔や腕についた泥を拭った。綺麗になれば汚れていた時より更にかわいい顔が覗く。うわやばい。ちんこ勃ちそう。脱糞しそうになりながらなんとか気を保ち、汚れたタオルを受け取って洗面器に浸し、洗い、硬く絞って渡す。何度か繰り返しているとすっかり汚れた冷水になってしまったので、続けていてと呟いてお湯を変えに一旦家の中に引っ込んだ。
美少女と一対一でのやり取りにマラソンの後みたいな早鐘を打つ心臓と尋常じゃない汗を拭いながら洗面器に綺麗なお湯を溜め直す。はー、あんなかわいい女の子、なんであんなところにいたんだろう。………いや、まじでなんで?冷静に考えるとおかしい。あんな誰も行かないような山の奥の森の中で虎の檻のそばに座り込んでいたなんて、一体何をしていたのか?檻は酷く壊れていたし、だいたいあの檻に閉じ込めたまま折檻していたイヤミとチビ太の様子を見に自分は戻ったのだ。そうしたら肝心の2人はいなくて檻は壊れてもぬけの殻、見知らぬ美少女に寄り添う虎…
かわいいかわいい女の子だと思っていたレンタル彼女の正体を思い出し、今縁側にいるあの女も実は…?と考えたところで悪寒が全身を襲い、身震いした。いやまさか。でももしかしたら。奴らの仲間だとするとあの美少女はダヨーンかデカパンか…どちらにしても地獄。
最悪な推理をしながら冷や汗をかきつつ縁側に戻れば、美少女の横にいる黄色がひとつ、増えていた。
「あ!一松にーさん!」
美少女、虎、十四松のくりくりした瞳が一気に6つ自分に向けられる。おまえ、いつから。どこから。さっきまでと違う冷や汗がドッと溢れ出る。
「一松にーさん、こちら名前ちゃん!名前ちゃん、こちら一松にーさん!」
「…お世話になってます…」
おれがいない間に自己紹介を済ませたらしく十四松が元気よく紹介してくれた。あっけに取られて立ち竦むおれを無視して庭へしゃがみこむと彼女の足を自分の膝に乗せ、くるくると包帯を巻いていく。あれっ、さっきまでビリビリに破れたニーハイソックスを履いていたのに…。泥が取れて綺麗になった、けれど擦り傷だらけの両脚は生足になっていた。泥を拭うために脱いだんだな、と冷静に分析する自分と、美少女の生足をそんな…!と十四松のコミュ力におののく自分が脳内で騒がしい。絶句したまま突っ立っていると十四松が元気よく彼女に話しかけた。
「さっきの続きだけどなんでこんな傷だらけなんすか!?!?」
「あ、えっと、」
「なんで一松にーさんと2人きりでうちにいるんすか!?!?」
2つ目の質問はぐりんと首ごとこっちを向いて、光のない焦点の合っていない目なのにまっすぐこちらを射抜きながら発せられた。こんな美少女と2人でなんの抜け駆けか?という無言の圧に全身が震え上がる。
「あ、あの、私ハタ坊のところでお世話になっていて、チビ太くんともお友達で、それでチビ太くんから助けてって連絡があったからハタ坊と行ったんだけど置いてかれちゃって…あそこに1人でいたら一松くんが来て手当てのためにここまで連れて来てくれたんです」
おれと十四松を交互に見ながら早口で名前ちゃんが説明した。さらりと名前を呼ばれたことに心臓がばくばくいっているが、それとは別に彼女の説明がすとんと落ちて、あそこにいた理由をすんなり納得した。レンタル彼女の一味ではないことに安堵したが、よくよく見ればハタ坊とほぼお揃いの服装に、なんだハタ坊の女か…と落胆する。ハタ坊が女を侍らせているところは何度か目撃しているがこんなペアルックの女はいなかったので大層お気に入りなんだろう。本命の彼女かもしれない。
「…ふーん、そっか!大変だったね!」
ぐるぐるに巻いた包帯の上から痛いの痛いのとんでけ〜としたあとニコッと天使の笑顔を向ける十四松につられたように彼女もふわっと笑いかえす。神か!?!?女神か天使かなんだ!?!?!?!?!!!?!?あまりの眩しい光景におれが浄化されかけていると歩けないんだよね、と声がしたかと思うと十四松が名前ちゃんをおんぶして立っていた。
「一松にーさん!名前ちゃん送ってくんね!」
「え、あ、ああ…」
十四松に慌てて目線を移して生返事を返すとあり得ない物が視界に飛び込んできた。十四松、お、おまえ、それ、たたたタッティ…!!!
「あ゛はっ☆名前ちゃん脚すべすべだしおぶったらおっぱいが当たって…」
「おまえそれ以上喋るな…ぅオ熱っ…ッ!!!?!?」
頰を上気させながら無邪気に理由を説明する弟に慌てたおれは十四松の口を塞ごうと手を伸ばし、持っていた熱湯入り洗面器をひっくり返して全身で浴び火傷した。
い、戒めェ………