夢だけど夢じゃない
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ここ数日で結構冷え込んできた。
街の飾り付けがキラキラしたものになっているのを横目で見ながら冬の訪れを感じていた。一向に夢から覚めない私はかれこれひと月近くこの世界にいた。本当に実松さんのように死んだのでは…と考えたこともあったが、起きたらきっと数時間しか経ってない夢だろうと考え直してこの夢を楽しむ方へ頭を切り替えた。
もう見慣れた町並みを散策していると物凄い綺麗な人とすれ違って思わず目で追って振り向いてしまった。背が高くてすらりとしていてナイスバディで…サラサラの金髪が視界を横切っていった。はぁ〜〜アニメすげえ。目の保養。そんなことを考えて後ろ姿を目で追っていたら背後から「回り出したぜ恋の歯車ァア!!!!」と聞き慣れた声がしたので振り向くと案の定彼がいた。ビリビリに破れた服とともに。寒いよ。
ということは、今のはイヤミか。デカパンの薬すごいなぁ。本物のイヤミに会う前にイヤヨとエンカウントしてしまった。
「何してるのカラ松くん」
「ん?ああ名前か」
ビリビリに破れた服でポーズを決めて仁王立ちしているカラ松に話しかける。この一カ月でトド松チョロ松以外のむつごとはまだ会っていないのだけれど、カラ松とはちょこちょこ会っていた。というか私が例の橋へ通っていたため会えていた。連絡手段がないし松野家の場所もまだわからないのでこの橋で待ち伏せる他なかった。けれど彼は3日に一度は現れるのでそこそこの頻度で会えていた。大好きな人と会えて話せるのは楽しかったのだけど、薄っすら気づいてしまったことがある。彼は私を女だと思っていない。
「今の人知り合い?綺麗な人だったね」
「フッ…見られていたか…俺のミューズを」
「石鹸?」
キラキラと後光を背負いながら決めポーズで話しているカラ松くんを楽しそうだなぁと思いつつ、この後の顛末を教えてあげるべきか迷う。教えちゃうと展開変わっちゃうよね…それはまずいかなぁ。
悶々と考えながらしゃがみこみ、破れた服の破片を拾ってあげる。拾い終わって渡そうと立ち上がってみるとカラ松は元通りちゃんと衣服を着ていた。えっ!?なにそれ!?どういうメカニズム!?じゃあこの布切れなに!?!?
私がギャグ世界のお約束(?)に動揺しているとさてと、と格好付けながらカラ松が言った。
「あっ、ど、どこかへ行くの?」
「ああ…突如舞い降りた俺の天使[エンジェル]の為に懐を温める必要があってな…フッ…モテる男は辛いぜ…」
「えっ?彼女の為に働くってこと?」
後々働くことは知ってたけどこんな序盤から働いてたの!?と驚いて聞くとフッ…とサングラスをずらして目線を寄越してきた。悔しい格好良い好き。「名前も来るか?」と聞かれ思わず頷いてしまった。
ジャラジャラジャラジャラ
「ってパチンコやないかーい」
小声で虚しく突っ込むも周りの騒音でかき消され誰も聞く者はいない。
就活といえど「一緒に来るか?」なんてデートのお誘いみたい!とちょっとドキドキしてついてきてしまったがデートどころか就活ですらなくカラ松が真っ直ぐ来たのは商店街の大きなパチンコ屋だった。ですよね。彼らの金増やす手段なんてこれですよね。知ってた。
現実世界でパチンコ屋に入ったことのない私は隣で慣れた手つきで操作する青い男の見よう見まねでジャラジャラやっているがルールも操作も全くわからない。何がどうなると良いのかも全くわからない。
隣の男はあまり勝てていないのか、だんだん険しい顔になり組んだ足で貧乏ゆすりまで始める始末。隣に女がいる自覚があったら絶対やらないやつじゃん。めっちゃ格好良いけど。何その機嫌の悪い顔…好き…。
珍しい姿に興奮して見つめていると機嫌が底辺になったのか、ポケットからタバコを取り出し慣れた手つきで咥えてそのまま火を付け、フゥと無遠慮に煙を吐き出した。なんの意識もされていないその煙は私の方へ全部漂ってきて、全身で浴びてしまった私はゲホゴホと咳き込んだ。
「! すまない、苦手だったか?」
「ゲホゴホ…んっ…ちょっと…もろに吸った」
「悪かった…水飲んでくるか?」
「大丈夫…」
背中をさすりながら片手で火を付けたばかりのタバコを灰皿に押し付ける。優しい。けど女相手だったらこんな簡単に背中を触らないだろうし水も飲んでくるか?じゃなくて取って来てくれるんだろうなぁ。夢を見過ぎかもしれないけどこいつはきっとそういう男だと、何年も見てきたから自信がある。だいたい女相手の自覚があったらデートだなんだと騒いで絶対こんなとこへ連れてこない。
自分が女だと思われていないこと、他の女とのデート資金を稼ぐ場に連れて来られたこと、いや自分でついてきたんだけど、なんかもう色々と惨めになってじわりと涙が滲んだ。画面の中に入れても片想いなんだなぁ。夢のはずなのに。世知辛い。
突然泣き出した私にギョッとしたカラ松が絶句してしまったので愛想笑いを返しながら煙が目に沁みただけだよ、とうそぶく。せめて嫌われたくない。
「あっれ〜〜カラ松じゃーん。なに?お前も稼ぎに来たの?」
「おそ松」
カラ松の座っている側の通路からひょっこり顔を覗かせた赤い服の男。うわーおそ松兄さんだ…めちゃくちゃ彼らしい所で遭遇してしまった。
にやにやとだらしなく笑いながら聞いてよチビ美ちゃんがさぁ〜〜と話しかけながら近づいてきた彼は、次男の隣に座る女の背に次男の手が添えられていることに気づき、はたと立ち止まってまじまじと私を見てきた。
「え、誰、この子もレンタル彼女?」
「え、いや、こいつは」
「どーもー初めましてぇ松野おそ松でーす、君もめちゃくちゃ可愛いねぇ〜〜」
ずずいと無遠慮に近づいてきて握手してくる満面の笑みのおそ松に思わず及び腰になる。しかも握手している手になにか感じる、紙?あっお札??私のことレンタル彼女だと思ってるから?有料握手だと思ってる?
混乱しつつもさらりと言われた可愛いねという言葉に時間差で赤くなる。今の自分の容姿が可愛いのは知っていたけど男の人に面と向かって言われるのはいつまでも慣れない。でもでもやっぱりこの姿可愛いよねそうよね。
デレッデレで手を握ったまま可愛い可愛いと話しかけてくるおそ松に赤面して上手く対応出来ないでいるとその手を誰かが振り解き、私の手は急に自由になった。
「痛っ!?なぁ〜にすんだよぉカラ松ぅ〜お兄ちゃんちゃんと金払ってるし」
「こいつはレンタル彼女じゃない。俺の大事な友達だ。おかしなことをするな」
私との間に盾になるように立ちはだかったカラ松にキュンとする。守ってくれた、大事なって言われた、とときめくもすぐに友達と言われたことにも気づく。うん、知ってた。知ってたよ。友達。大事な友達。良かったじゃん。嫌われてないし大事だと思われてる。あんなに会いたいと思ってた大好きな人と友達になれたんだよ、すごいじゃん。ハッピーハッピー!
自分に言い聞かせるも心はついてこなくて、ああ私カラ松くんのこと好き好き何年も言ってたし、付き合いたいとか結婚したいとか散々言ってたし、こっちに来てからもワンチャンあるかなってそわそわしたりチビ太くんの言うこと間に受けてドキドキしたりすっかりその気だったけど、結局はここは夢の中で松野カラ松は実在しないアニメキャラで。そんなことわかってたしそれを踏まえての好き!付き合いたい!だって自分では思ってたけど、こんなに心臓が止まりそうなほど辛いなんてもうガチじゃん。キャラとして好きなんじゃなくて本当の本気でガチ恋だったんだ、はは、ウケる、アイタタタ〜。
笑えてきて口角を上げようとするも目がじんじんと熱くなってきて、またしても泣いてしまっては困らせてしまう!と慌てて立ち上がった。
「名前?どうかしたのか?」
「あっもしもしハタ坊?わかった!はーい!了解です!ごめん急用が出来たからまたね!」
顔を覗き込まれる前に鳴ってもいないスマホを耳に押し当て、架空の電話に出ると1人で話しながらじわじわ後ずさりして2人から離れ、最後の方は一方的に叫びながら走ってその場を離れた。名前を呼ばれた気もするけど周りのパチンコがうるさくてわからない。我慢出来ずに出てしまった涙のせいで振り返ることも出来ずに私はパチンコ屋から飛び出した。
街の飾り付けがキラキラしたものになっているのを横目で見ながら冬の訪れを感じていた。一向に夢から覚めない私はかれこれひと月近くこの世界にいた。本当に実松さんのように死んだのでは…と考えたこともあったが、起きたらきっと数時間しか経ってない夢だろうと考え直してこの夢を楽しむ方へ頭を切り替えた。
もう見慣れた町並みを散策していると物凄い綺麗な人とすれ違って思わず目で追って振り向いてしまった。背が高くてすらりとしていてナイスバディで…サラサラの金髪が視界を横切っていった。はぁ〜〜アニメすげえ。目の保養。そんなことを考えて後ろ姿を目で追っていたら背後から「回り出したぜ恋の歯車ァア!!!!」と聞き慣れた声がしたので振り向くと案の定彼がいた。ビリビリに破れた服とともに。寒いよ。
ということは、今のはイヤミか。デカパンの薬すごいなぁ。本物のイヤミに会う前にイヤヨとエンカウントしてしまった。
「何してるのカラ松くん」
「ん?ああ名前か」
ビリビリに破れた服でポーズを決めて仁王立ちしているカラ松に話しかける。この一カ月でトド松チョロ松以外のむつごとはまだ会っていないのだけれど、カラ松とはちょこちょこ会っていた。というか私が例の橋へ通っていたため会えていた。連絡手段がないし松野家の場所もまだわからないのでこの橋で待ち伏せる他なかった。けれど彼は3日に一度は現れるのでそこそこの頻度で会えていた。大好きな人と会えて話せるのは楽しかったのだけど、薄っすら気づいてしまったことがある。彼は私を女だと思っていない。
「今の人知り合い?綺麗な人だったね」
「フッ…見られていたか…俺のミューズを」
「石鹸?」
キラキラと後光を背負いながら決めポーズで話しているカラ松くんを楽しそうだなぁと思いつつ、この後の顛末を教えてあげるべきか迷う。教えちゃうと展開変わっちゃうよね…それはまずいかなぁ。
悶々と考えながらしゃがみこみ、破れた服の破片を拾ってあげる。拾い終わって渡そうと立ち上がってみるとカラ松は元通りちゃんと衣服を着ていた。えっ!?なにそれ!?どういうメカニズム!?じゃあこの布切れなに!?!?
私がギャグ世界のお約束(?)に動揺しているとさてと、と格好付けながらカラ松が言った。
「あっ、ど、どこかへ行くの?」
「ああ…突如舞い降りた俺の天使[エンジェル]の為に懐を温める必要があってな…フッ…モテる男は辛いぜ…」
「えっ?彼女の為に働くってこと?」
後々働くことは知ってたけどこんな序盤から働いてたの!?と驚いて聞くとフッ…とサングラスをずらして目線を寄越してきた。悔しい格好良い好き。「名前も来るか?」と聞かれ思わず頷いてしまった。
ジャラジャラジャラジャラ
「ってパチンコやないかーい」
小声で虚しく突っ込むも周りの騒音でかき消され誰も聞く者はいない。
就活といえど「一緒に来るか?」なんてデートのお誘いみたい!とちょっとドキドキしてついてきてしまったがデートどころか就活ですらなくカラ松が真っ直ぐ来たのは商店街の大きなパチンコ屋だった。ですよね。彼らの金増やす手段なんてこれですよね。知ってた。
現実世界でパチンコ屋に入ったことのない私は隣で慣れた手つきで操作する青い男の見よう見まねでジャラジャラやっているがルールも操作も全くわからない。何がどうなると良いのかも全くわからない。
隣の男はあまり勝てていないのか、だんだん険しい顔になり組んだ足で貧乏ゆすりまで始める始末。隣に女がいる自覚があったら絶対やらないやつじゃん。めっちゃ格好良いけど。何その機嫌の悪い顔…好き…。
珍しい姿に興奮して見つめていると機嫌が底辺になったのか、ポケットからタバコを取り出し慣れた手つきで咥えてそのまま火を付け、フゥと無遠慮に煙を吐き出した。なんの意識もされていないその煙は私の方へ全部漂ってきて、全身で浴びてしまった私はゲホゴホと咳き込んだ。
「! すまない、苦手だったか?」
「ゲホゴホ…んっ…ちょっと…もろに吸った」
「悪かった…水飲んでくるか?」
「大丈夫…」
背中をさすりながら片手で火を付けたばかりのタバコを灰皿に押し付ける。優しい。けど女相手だったらこんな簡単に背中を触らないだろうし水も飲んでくるか?じゃなくて取って来てくれるんだろうなぁ。夢を見過ぎかもしれないけどこいつはきっとそういう男だと、何年も見てきたから自信がある。だいたい女相手の自覚があったらデートだなんだと騒いで絶対こんなとこへ連れてこない。
自分が女だと思われていないこと、他の女とのデート資金を稼ぐ場に連れて来られたこと、いや自分でついてきたんだけど、なんかもう色々と惨めになってじわりと涙が滲んだ。画面の中に入れても片想いなんだなぁ。夢のはずなのに。世知辛い。
突然泣き出した私にギョッとしたカラ松が絶句してしまったので愛想笑いを返しながら煙が目に沁みただけだよ、とうそぶく。せめて嫌われたくない。
「あっれ〜〜カラ松じゃーん。なに?お前も稼ぎに来たの?」
「おそ松」
カラ松の座っている側の通路からひょっこり顔を覗かせた赤い服の男。うわーおそ松兄さんだ…めちゃくちゃ彼らしい所で遭遇してしまった。
にやにやとだらしなく笑いながら聞いてよチビ美ちゃんがさぁ〜〜と話しかけながら近づいてきた彼は、次男の隣に座る女の背に次男の手が添えられていることに気づき、はたと立ち止まってまじまじと私を見てきた。
「え、誰、この子もレンタル彼女?」
「え、いや、こいつは」
「どーもー初めましてぇ松野おそ松でーす、君もめちゃくちゃ可愛いねぇ〜〜」
ずずいと無遠慮に近づいてきて握手してくる満面の笑みのおそ松に思わず及び腰になる。しかも握手している手になにか感じる、紙?あっお札??私のことレンタル彼女だと思ってるから?有料握手だと思ってる?
混乱しつつもさらりと言われた可愛いねという言葉に時間差で赤くなる。今の自分の容姿が可愛いのは知っていたけど男の人に面と向かって言われるのはいつまでも慣れない。でもでもやっぱりこの姿可愛いよねそうよね。
デレッデレで手を握ったまま可愛い可愛いと話しかけてくるおそ松に赤面して上手く対応出来ないでいるとその手を誰かが振り解き、私の手は急に自由になった。
「痛っ!?なぁ〜にすんだよぉカラ松ぅ〜お兄ちゃんちゃんと金払ってるし」
「こいつはレンタル彼女じゃない。俺の大事な友達だ。おかしなことをするな」
私との間に盾になるように立ちはだかったカラ松にキュンとする。守ってくれた、大事なって言われた、とときめくもすぐに友達と言われたことにも気づく。うん、知ってた。知ってたよ。友達。大事な友達。良かったじゃん。嫌われてないし大事だと思われてる。あんなに会いたいと思ってた大好きな人と友達になれたんだよ、すごいじゃん。ハッピーハッピー!
自分に言い聞かせるも心はついてこなくて、ああ私カラ松くんのこと好き好き何年も言ってたし、付き合いたいとか結婚したいとか散々言ってたし、こっちに来てからもワンチャンあるかなってそわそわしたりチビ太くんの言うこと間に受けてドキドキしたりすっかりその気だったけど、結局はここは夢の中で松野カラ松は実在しないアニメキャラで。そんなことわかってたしそれを踏まえての好き!付き合いたい!だって自分では思ってたけど、こんなに心臓が止まりそうなほど辛いなんてもうガチじゃん。キャラとして好きなんじゃなくて本当の本気でガチ恋だったんだ、はは、ウケる、アイタタタ〜。
笑えてきて口角を上げようとするも目がじんじんと熱くなってきて、またしても泣いてしまっては困らせてしまう!と慌てて立ち上がった。
「名前?どうかしたのか?」
「あっもしもしハタ坊?わかった!はーい!了解です!ごめん急用が出来たからまたね!」
顔を覗き込まれる前に鳴ってもいないスマホを耳に押し当て、架空の電話に出ると1人で話しながらじわじわ後ずさりして2人から離れ、最後の方は一方的に叫びながら走ってその場を離れた。名前を呼ばれた気もするけど周りのパチンコがうるさくてわからない。我慢出来ずに出てしまった涙のせいで振り返ることも出来ずに私はパチンコ屋から飛び出した。