夢だけど夢じゃない
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梨が食べたい。
目が覚めた私に彼はそう言った。
起きたら何故か私がベッドに寝かされており、ベッドサイドに座る彼から丸い果物を受け取った。
「これ、どうしたの」
「梨が食べたくてな、倒れたお前を寝かせた後外に出てみた…ここはどこなんだ?すごく広いな…なんか食べ物のたくさんある部屋を見つけたから梨だけ持って戻ってきた」
それ泥棒では。
喉まで出かかったが、ご丁寧に果物ナイフとお皿も添えられて、早く剥いてくれとキラキラした目で見られて言えなかった。梨はいつでも美味しいけど、今の彼にとってこれがどんなに特別か知っているから。
しょり、しょり、と輪を描いて剥けていく皮をベッドサイドにへばりついて子供のようにじ…っと眺めるそのまあるい頭を見下ろす。カラ松くん、生きてる。ここにいる。
「はいどうぞ」
「ありがとう!」
言うやいなや美味しそうに頬張ってじゅるると果汁をそそる。バクバクと何個か頬張っているうちにじわり…と涙を浮かべてポロポロと泣き出した。
それがあまりに痛々しくて、見ていられなくて、思わず伸ばした手で頭を撫でる。涙と鼻水で濡れた顔がこちらに向けられる。
「好きなだけいたらいいよ、ここに」
私の家ではないけど。
こんな状態の彼を帰したくない。
その後の展開だって知ってるから仲直りして何事もなかったように過ごすんだって知ってる。知ってるけど帰りたくないという彼を帰したくない。むつごは好きだけど、正直あの回は次の日会社休みたくなるくらいには病んだ。社畜なのでちゃんと行きましたけど。
「本当に…?」
「うん、私の家ではないから許可取った方が良いけど」
「家族の人にか?」
「家族ではないんだけど…」
じゃあ誰なんだ?と首を傾げた彼を見ていたらバァン!!!!と荒々しく扉が開いた。あのドア静かに開かないのか?
パッとそっちを見ると禍々しいオーラを纏ったハタ坊が自分の身長よりでかい旗を引きずって部屋に入ってきたところだった。アニメで見るより実物目の当たりにした方がえっぐい太さの鉄棒…!!こっわ…!!!!
座ったまま二人して仰け反って絶句していると、ギラ!と鋭い目つきのハタ坊がこっちを向いた。
「ムツゴ…見ツケタ…トモダチダジョ…」
地を這うようなゆっくりした低音で唸りながら目にも留まらぬ速さでハタ坊が突っ込んでくる。慌てて避けると、ベッドの上の梨の皿があったところ、つまり私とカラ松くんの間だったところにぶっとい鉄棒が刺さっていた。ひええ…!その真横に私の脚があるんですけど!
チッ…と舌打ちをして旗を抜き、肩に担いで、避けた衝撃で地面に尻餅をついているカラ松を見下ろすハタ坊。
青ざめてダラダラと冷や汗をかき固まっているカラ松に、旗を振りかざすハタ坊。
「ハタ坊待って!!!!病みあがりだから!!!!」
我ながらよくわからない理由を口走ってしまったがハタ坊を止めることには成功した。そのポーズのままギッとこちらを睨みつけるハタ坊に「他のむつごと違ってカラ松くんは友達のまま、ここで働くとは言ってないしさ!」とまくし立てる。外で何が起きてたか見てないけど、アニメの記憶通りならその流れがあったはず。ずっとここにいたはずの私が何故知っているのかまでは頭が回らない様子のハタ坊が少し表情を元に戻しながら焦点の合わない目でこちらを見た。うっ何考えてるかわからない。しばらくじっとしたまま時間が過ぎ…永遠にも感じられ始めた頃、掲げた巨大な針を今度は私に向けられてギャーッと後ずさる。けどベッドに腰掛けてたのですぐ壁だ!万事休す!
「ままままま待って待って、見て!私はもうあるから!ほら!リボン!ハタ坊の旗と同じだよ!お揃い!仲良し!かわいいな〜!ハタ坊とお揃い嬉しいな〜!」
喜んでくれそうな言葉を慌てて並べる。いささかわざとらしすぎる口調になってしまったがハタ坊の視線をリボンに集めることには成功した。両手で頭頂部の大きなリボンを引っ張ってアピールしながら必死で笑顔をつくる。顔の怪我治ってないから痛い。けどあんなの刺されたら死ぬ。ギャグでも死ぬ。ハタ坊のことを小さい子どもだと思っている節があるがこの時も思い切り幼児の機嫌をとる方法で宥めすかしていた。
「(多分恐らく)ハタ坊がプレゼントしてくれたこのリボン大切なんだ〜〜ハタ坊とお揃いだし〜〜かわいいし〜〜ハタ坊とお揃いだし〜〜仲良しの証だし〜〜何よりお揃いだし〜〜大切な友達だもんね〜?私たち〜?そんな怖い旗なくても仲良しだよね〜〜?私にはそんな物騒なものよりこっちのリボンの方が似合うと思うなァ〜〜?どう?かわいいでしょ?ハタ坊も好きだよね?仲良しだもんね?友達だもんね?」
支離滅裂だが必死にまくし立ててなんとか正気に戻そうとする。リボンを両手で引っ張ったまま笑顔で左右に揺れる私はさぞかし滑稽だろう。
でも必死の説得の甲斐あって、どれが響いたのかわからないが頰を赤く染めて照れたハタ坊が視線を逸らしながら頭を撫でてくれた。「大好きダジョ」とかいうのも聞こえた。とりあえず旗を下ろしてくれたことにホッと胸を撫で下ろし、地べたにひっくり返っているカラ松のことを思い出す。彼のケツは守られた。このタイミングで言うのはリスキーだが、先程とは打って変わってデレデレし出したハタ坊に出来る限りの猫撫で声で話しかける。
「それでねハタ坊、だーいすきなお友達からのお願いなんだけど、カラ松くん、怪我が治るまでここにいちゃダメかな?」
デレデレニコニコしていた顔が一瞬で般若になった。あちゃー。
また物騒な巨大旗に手をかけないようヒヤヒヤしながら続ける。
「も、もちろん別のお部屋でね!あっ!ハタ坊のお部屋とかどう?お友達がお泊まりに来たみたいで楽しいんじゃない!?わーいわーい!」
無理やり楽しい雰囲気を演出する。
少しぼんやりしだした彼に、これは考えている時の顔だな、少しわかってきたぞと思いつつ、そういえば今日はハタ坊の誕生日だった、まだお祝いを言ってないと思い出す。
このタイミングで言うのはおかしいけど、今言わないとタイミング逃す気がする。
「ハタ坊、お誕生日おめでとう」
突然のお祝いに驚いたのか口をパカッと開けてこちらを見つめるハタ坊。
それを聞いて地べたに座っていたカラ松もきょとんとした顔で
「ハタ坊、誕生日だったのか。ハッピーバースデー、フレ〜ンズ?」
と言った。そんな素の顔でもそのワード出るんだ。
突然友達2人に純粋にお祝いされて困惑したのか、ぽぽぽと音を立てて赤くなってしまったハタ坊はその場にぺたりと座り込んでしまった。もう旗を刺される心配はなさそう。
前屈みになってベッドの上に座ってるハタ坊の頭に手を伸ばす。よしよしと撫でて「もしまだあったら一緒にケーキ食べてお祝いしたいな」と言うとパッと明るい顔になったハタ坊があるジョ!と笑った。
3人仲良くケーキを囲み、ろうそくを消すハタ坊に歌を歌って、ケーキ食べて、ご馳走食べて、カードゲームとかして遊んで、たくさん笑って、2人が楽しそうで良かったなぁと思いながらぐっすり眠りについた。
目が覚めた私に彼はそう言った。
起きたら何故か私がベッドに寝かされており、ベッドサイドに座る彼から丸い果物を受け取った。
「これ、どうしたの」
「梨が食べたくてな、倒れたお前を寝かせた後外に出てみた…ここはどこなんだ?すごく広いな…なんか食べ物のたくさんある部屋を見つけたから梨だけ持って戻ってきた」
それ泥棒では。
喉まで出かかったが、ご丁寧に果物ナイフとお皿も添えられて、早く剥いてくれとキラキラした目で見られて言えなかった。梨はいつでも美味しいけど、今の彼にとってこれがどんなに特別か知っているから。
しょり、しょり、と輪を描いて剥けていく皮をベッドサイドにへばりついて子供のようにじ…っと眺めるそのまあるい頭を見下ろす。カラ松くん、生きてる。ここにいる。
「はいどうぞ」
「ありがとう!」
言うやいなや美味しそうに頬張ってじゅるると果汁をそそる。バクバクと何個か頬張っているうちにじわり…と涙を浮かべてポロポロと泣き出した。
それがあまりに痛々しくて、見ていられなくて、思わず伸ばした手で頭を撫でる。涙と鼻水で濡れた顔がこちらに向けられる。
「好きなだけいたらいいよ、ここに」
私の家ではないけど。
こんな状態の彼を帰したくない。
その後の展開だって知ってるから仲直りして何事もなかったように過ごすんだって知ってる。知ってるけど帰りたくないという彼を帰したくない。むつごは好きだけど、正直あの回は次の日会社休みたくなるくらいには病んだ。社畜なのでちゃんと行きましたけど。
「本当に…?」
「うん、私の家ではないから許可取った方が良いけど」
「家族の人にか?」
「家族ではないんだけど…」
じゃあ誰なんだ?と首を傾げた彼を見ていたらバァン!!!!と荒々しく扉が開いた。あのドア静かに開かないのか?
パッとそっちを見ると禍々しいオーラを纏ったハタ坊が自分の身長よりでかい旗を引きずって部屋に入ってきたところだった。アニメで見るより実物目の当たりにした方がえっぐい太さの鉄棒…!!こっわ…!!!!
座ったまま二人して仰け反って絶句していると、ギラ!と鋭い目つきのハタ坊がこっちを向いた。
「ムツゴ…見ツケタ…トモダチダジョ…」
地を這うようなゆっくりした低音で唸りながら目にも留まらぬ速さでハタ坊が突っ込んでくる。慌てて避けると、ベッドの上の梨の皿があったところ、つまり私とカラ松くんの間だったところにぶっとい鉄棒が刺さっていた。ひええ…!その真横に私の脚があるんですけど!
チッ…と舌打ちをして旗を抜き、肩に担いで、避けた衝撃で地面に尻餅をついているカラ松を見下ろすハタ坊。
青ざめてダラダラと冷や汗をかき固まっているカラ松に、旗を振りかざすハタ坊。
「ハタ坊待って!!!!病みあがりだから!!!!」
我ながらよくわからない理由を口走ってしまったがハタ坊を止めることには成功した。そのポーズのままギッとこちらを睨みつけるハタ坊に「他のむつごと違ってカラ松くんは友達のまま、ここで働くとは言ってないしさ!」とまくし立てる。外で何が起きてたか見てないけど、アニメの記憶通りならその流れがあったはず。ずっとここにいたはずの私が何故知っているのかまでは頭が回らない様子のハタ坊が少し表情を元に戻しながら焦点の合わない目でこちらを見た。うっ何考えてるかわからない。しばらくじっとしたまま時間が過ぎ…永遠にも感じられ始めた頃、掲げた巨大な針を今度は私に向けられてギャーッと後ずさる。けどベッドに腰掛けてたのですぐ壁だ!万事休す!
「ままままま待って待って、見て!私はもうあるから!ほら!リボン!ハタ坊の旗と同じだよ!お揃い!仲良し!かわいいな〜!ハタ坊とお揃い嬉しいな〜!」
喜んでくれそうな言葉を慌てて並べる。いささかわざとらしすぎる口調になってしまったがハタ坊の視線をリボンに集めることには成功した。両手で頭頂部の大きなリボンを引っ張ってアピールしながら必死で笑顔をつくる。顔の怪我治ってないから痛い。けどあんなの刺されたら死ぬ。ギャグでも死ぬ。ハタ坊のことを小さい子どもだと思っている節があるがこの時も思い切り幼児の機嫌をとる方法で宥めすかしていた。
「(多分恐らく)ハタ坊がプレゼントしてくれたこのリボン大切なんだ〜〜ハタ坊とお揃いだし〜〜かわいいし〜〜ハタ坊とお揃いだし〜〜仲良しの証だし〜〜何よりお揃いだし〜〜大切な友達だもんね〜?私たち〜?そんな怖い旗なくても仲良しだよね〜〜?私にはそんな物騒なものよりこっちのリボンの方が似合うと思うなァ〜〜?どう?かわいいでしょ?ハタ坊も好きだよね?仲良しだもんね?友達だもんね?」
支離滅裂だが必死にまくし立ててなんとか正気に戻そうとする。リボンを両手で引っ張ったまま笑顔で左右に揺れる私はさぞかし滑稽だろう。
でも必死の説得の甲斐あって、どれが響いたのかわからないが頰を赤く染めて照れたハタ坊が視線を逸らしながら頭を撫でてくれた。「大好きダジョ」とかいうのも聞こえた。とりあえず旗を下ろしてくれたことにホッと胸を撫で下ろし、地べたにひっくり返っているカラ松のことを思い出す。彼のケツは守られた。このタイミングで言うのはリスキーだが、先程とは打って変わってデレデレし出したハタ坊に出来る限りの猫撫で声で話しかける。
「それでねハタ坊、だーいすきなお友達からのお願いなんだけど、カラ松くん、怪我が治るまでここにいちゃダメかな?」
デレデレニコニコしていた顔が一瞬で般若になった。あちゃー。
また物騒な巨大旗に手をかけないようヒヤヒヤしながら続ける。
「も、もちろん別のお部屋でね!あっ!ハタ坊のお部屋とかどう?お友達がお泊まりに来たみたいで楽しいんじゃない!?わーいわーい!」
無理やり楽しい雰囲気を演出する。
少しぼんやりしだした彼に、これは考えている時の顔だな、少しわかってきたぞと思いつつ、そういえば今日はハタ坊の誕生日だった、まだお祝いを言ってないと思い出す。
このタイミングで言うのはおかしいけど、今言わないとタイミング逃す気がする。
「ハタ坊、お誕生日おめでとう」
突然のお祝いに驚いたのか口をパカッと開けてこちらを見つめるハタ坊。
それを聞いて地べたに座っていたカラ松もきょとんとした顔で
「ハタ坊、誕生日だったのか。ハッピーバースデー、フレ〜ンズ?」
と言った。そんな素の顔でもそのワード出るんだ。
突然友達2人に純粋にお祝いされて困惑したのか、ぽぽぽと音を立てて赤くなってしまったハタ坊はその場にぺたりと座り込んでしまった。もう旗を刺される心配はなさそう。
前屈みになってベッドの上に座ってるハタ坊の頭に手を伸ばす。よしよしと撫でて「もしまだあったら一緒にケーキ食べてお祝いしたいな」と言うとパッと明るい顔になったハタ坊があるジョ!と笑った。
3人仲良くケーキを囲み、ろうそくを消すハタ坊に歌を歌って、ケーキ食べて、ご馳走食べて、カードゲームとかして遊んで、たくさん笑って、2人が楽しそうで良かったなぁと思いながらぐっすり眠りについた。