夢だけど夢じゃない
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「…え、」
力の抜けた手からするりと名前の手首が抜き取られる。オレはへなへなとその場に膝をついた。愕然と名前を見上げる。からまつくん、はなして?なぜだ?一松くん離してと言い間違えたのか?そんな淡い期待を粉々に砕くように名前は一松の腕の中から動かず、オレの手形がくっきりついた手首を一松がそっと撫でても嫌がる素振りを一切見せず、はらはらと涙をこぼしていた。
「…名前」
「…あは、ごめんね、ちょっと痛かったから」
「名前ちゃん、そんな奴に謝ることないよ」
取り繕うように笑顔を貼り付けた名前に胸がずきんと痛む。オレの方を見向きもせずに優しい声をかける一松に腹の底がずくり、と痛む。おまえも離れろ。その言葉はカラカラになって口からうまく出ていかず熱い短い息がハッと吐き出されただけだった。
「…えーと…私と一松くんは疲れちゃったから先に帰ろうかなって…ごめんね、急に席を立ったからびっくりしたよね、カラ松くんはどうぞ最後まで楽しんで…」
「どこ行く」
「え?だから帰…」
「次はオレと話す番だっただろ!!!!それなのにどこへ行くんだ!!!!!!」
突然大声を出したオレにビクッと肩を揺らす名前。困惑に染まった顔を直視できないまま、薔薇の花を突きつけた。先ほどまで他の女性たちに手向けていた一本の薔薇ではなく、12本の赤い薔薇。
はっと息をのむ音が聞こえた。
「名前はオレのことを好きだって聞いて…両思いだ、特別だって思って…でもあまりに普通に接してくるからもしかして脈がないのかとか…」
「ちょ、ちょっと待って」
「知らない男の車に乗ったり合コン行ったり…オレのこと試していたのか?名前が好きなのはオレのはずだろう?それともデマだったのか?今日だってオレに連れ去ってほしくてこんなところに来たんじゃないのか?なんであと一歩でオレがその手を取れたのに一松の手を取ったんだ?本当は一松のこと、」
「…ッ、一松くんはただの友達だよ!!!!…大切な…」
「じゃあなんで…ッ」
「……カラ松くんも大切で”特別な親友”だよね?そう言ったじゃん」
「た、たしかに言ったが、でも」
「何度も何度も…期待するたび、勘違いだって言い聞かせるみたいに何度も何度も…!だから特別ならいっかって、もう期待するのやめよう、諦めよう、特別でいられるなら親友でいようって、そう思って…なのになんでそんなこと急に言うの?どうしたの?なんなの?また私の勘違いなの?諦めきれなくていいように解釈しちゃってるのかな、馬鹿だな私…あまりに普通に接してくるのはそっちじゃん、特別だなんだ言って全然特別になんて思ってないくせに」
「名前、」
「だいたい、カラ松くん私の手をとったことなんてないじゃない。いつも手首だよ、さっきみたいに…本当は私の手なんて触りたくないんじゃないの?あ、だから握手会にも来なかったんだ?理解理解…チビ太君やあつしくん、一松くんは手を取ってくれるけど、カラ松くんは触るのも嫌か、あー、手なんて握ってるとこカラ松ガールズに見られたら困るもんね?勘違いされちゃうんもんね」
「ちが、握手会は単に金欠で行けなくて…ってなんであいつらが出てくるんだ?まさか、」
「その薔薇だって、さっきまでいろんな人に渡してたやつまとめてくれようとしてるだけなんでしょ?12本だって別に意味ないんでしょ?」
「あるに決まってる!!!!!!ダズンローズ!!!!!!!花言葉は『オレと付き合ってくださ「知ってる!!!!!!!!オタクは花言葉に詳しいの!!!!!!!……なんで、どうして急に…ぐすっ…だって、脈ないはず、”特別な親友”のはず…」
化粧が落ちるくらいぼろぼろに泣いて、見たこともないくらい取り乱す名前を抱きしめたい衝動に駆られる。すでに抱きしめている男がいるので叶わないのだが…おい、いい加減離れろ。
うれしいことも聞き捨てならないことも一気に口走るから心臓が早まったり止まったり忙しい。なんだか責められているが、これってやっぱり、名前はオレのこと…?
「…な、に…笑ってんの…」
「いや、名前はオレのこと本当に好きなんだなって」
「……ッッ」
「なぁ、全然急なんかじゃない、オレは名前のことずっと…」
「ぴゅろ~~~~~~~~」
「えっ」
突然響き渡った間抜けな音。名前の口からぴろぴろ笛の吹き戻し部分が飛び出していた。
あっけにとられている間にエレベーターから十数人の黒スーツ男が降りてきてあっという間に名前を取り囲むと、全員ぎちぎちにエレベーターに乗り込んだ。名前の姿は頭に旗の生えた男たちに隠れて見えないまま、エレベーターの扉が閉まり、オレと一松だけが広いポーチに呆然と取り残された。
力の抜けた手からするりと名前の手首が抜き取られる。オレはへなへなとその場に膝をついた。愕然と名前を見上げる。からまつくん、はなして?なぜだ?一松くん離してと言い間違えたのか?そんな淡い期待を粉々に砕くように名前は一松の腕の中から動かず、オレの手形がくっきりついた手首を一松がそっと撫でても嫌がる素振りを一切見せず、はらはらと涙をこぼしていた。
「…名前」
「…あは、ごめんね、ちょっと痛かったから」
「名前ちゃん、そんな奴に謝ることないよ」
取り繕うように笑顔を貼り付けた名前に胸がずきんと痛む。オレの方を見向きもせずに優しい声をかける一松に腹の底がずくり、と痛む。おまえも離れろ。その言葉はカラカラになって口からうまく出ていかず熱い短い息がハッと吐き出されただけだった。
「…えーと…私と一松くんは疲れちゃったから先に帰ろうかなって…ごめんね、急に席を立ったからびっくりしたよね、カラ松くんはどうぞ最後まで楽しんで…」
「どこ行く」
「え?だから帰…」
「次はオレと話す番だっただろ!!!!それなのにどこへ行くんだ!!!!!!」
突然大声を出したオレにビクッと肩を揺らす名前。困惑に染まった顔を直視できないまま、薔薇の花を突きつけた。先ほどまで他の女性たちに手向けていた一本の薔薇ではなく、12本の赤い薔薇。
はっと息をのむ音が聞こえた。
「名前はオレのことを好きだって聞いて…両思いだ、特別だって思って…でもあまりに普通に接してくるからもしかして脈がないのかとか…」
「ちょ、ちょっと待って」
「知らない男の車に乗ったり合コン行ったり…オレのこと試していたのか?名前が好きなのはオレのはずだろう?それともデマだったのか?今日だってオレに連れ去ってほしくてこんなところに来たんじゃないのか?なんであと一歩でオレがその手を取れたのに一松の手を取ったんだ?本当は一松のこと、」
「…ッ、一松くんはただの友達だよ!!!!…大切な…」
「じゃあなんで…ッ」
「……カラ松くんも大切で”特別な親友”だよね?そう言ったじゃん」
「た、たしかに言ったが、でも」
「何度も何度も…期待するたび、勘違いだって言い聞かせるみたいに何度も何度も…!だから特別ならいっかって、もう期待するのやめよう、諦めよう、特別でいられるなら親友でいようって、そう思って…なのになんでそんなこと急に言うの?どうしたの?なんなの?また私の勘違いなの?諦めきれなくていいように解釈しちゃってるのかな、馬鹿だな私…あまりに普通に接してくるのはそっちじゃん、特別だなんだ言って全然特別になんて思ってないくせに」
「名前、」
「だいたい、カラ松くん私の手をとったことなんてないじゃない。いつも手首だよ、さっきみたいに…本当は私の手なんて触りたくないんじゃないの?あ、だから握手会にも来なかったんだ?理解理解…チビ太君やあつしくん、一松くんは手を取ってくれるけど、カラ松くんは触るのも嫌か、あー、手なんて握ってるとこカラ松ガールズに見られたら困るもんね?勘違いされちゃうんもんね」
「ちが、握手会は単に金欠で行けなくて…ってなんであいつらが出てくるんだ?まさか、」
「その薔薇だって、さっきまでいろんな人に渡してたやつまとめてくれようとしてるだけなんでしょ?12本だって別に意味ないんでしょ?」
「あるに決まってる!!!!!!ダズンローズ!!!!!!!花言葉は『オレと付き合ってくださ「知ってる!!!!!!!!オタクは花言葉に詳しいの!!!!!!!……なんで、どうして急に…ぐすっ…だって、脈ないはず、”特別な親友”のはず…」
化粧が落ちるくらいぼろぼろに泣いて、見たこともないくらい取り乱す名前を抱きしめたい衝動に駆られる。すでに抱きしめている男がいるので叶わないのだが…おい、いい加減離れろ。
うれしいことも聞き捨てならないことも一気に口走るから心臓が早まったり止まったり忙しい。なんだか責められているが、これってやっぱり、名前はオレのこと…?
「…な、に…笑ってんの…」
「いや、名前はオレのこと本当に好きなんだなって」
「……ッッ」
「なぁ、全然急なんかじゃない、オレは名前のことずっと…」
「ぴゅろ~~~~~~~~」
「えっ」
突然響き渡った間抜けな音。名前の口からぴろぴろ笛の吹き戻し部分が飛び出していた。
あっけにとられている間にエレベーターから十数人の黒スーツ男が降りてきてあっという間に名前を取り囲むと、全員ぎちぎちにエレベーターに乗り込んだ。名前の姿は頭に旗の生えた男たちに隠れて見えないまま、エレベーターの扉が閉まり、オレと一松だけが広いポーチに呆然と取り残された。