チョコレートパフェの縁(ネフなる)
「紹介したい人がいるの」
そう言って久しぶりに連絡してきたなるちゃんはとても明るい声だった。
中学を卒業してからは進路が別になってしまい、あの頃みたいに気軽に会えなくなっちゃったけど、私がセーラー戦士として目覚めるよりずっと前からの親友で、普通の生活を感じさせてくれる唯一無二の友達。
私がセーラー戦士をしているからかよく戦いにも巻き込まれて狙われたり、私の正体に気付きそうになった事もあったけど察してくれて何も言わず見守ってくれていていつも申し訳ない気持ちにはなっていた。
そんな中で出会ってしまったネフライトに本気で恋して辛い想いもさせてしまって、何も出来なかった不甲斐なさにあの時もっと早く助けに来ていればと自分に腹が立って責めたりした。
そのなるちゃんが紹介したい人がいるから久しぶりに会いたいと言ってきた。誰だろう?
お互いに高校がある為、平日の午後の放課後にカフェで待ち合わせる事になった。
待ち合わせ当日、いつもの日課で成績が悪く居残りをさせられてしまい少し遅れて入るともう席にはなるちゃんが座って待っていた。会わせたい人はどんな人だろうと隣を見るけど、いるはずの人がいない。あれ?透明人間?…ってそんなわけないよね?笑
特殊な人間だけど、流石に私と言っても透明人間を見る能力なんて持ってないよ?レイちゃんなら分かんないけど、余裕で人がいるとか霊能力で言ってきそうで怖い。
「なるちゃん、お待たせ。遅れちゃってごめんね!」
「もう慣れてるから良いわよ!何年うさぎの親友やってると思ってんのよ?」
ウッ…ですよね?流石は私の古くからの大親友。何で遅れたかもちゃんと分かってくれてそうね。
「うさぎの事だからまたどうせ居残りでしょ?」
「アハハハハハハー、バレてたか?流石、なるちゃん」
「高校入ってもうさぎはうさぎね!相変わらずでホッとした」
「いやぁ、面目ない」
「十番高校の制服似合ってるじゃん!」
久しぶりに会ったとは思えない程、毎日会っていたみたいに昔と変わらず他愛もない話で盛り上がり、あっという間に会っていない間の距離を縮める。
「そう言えばなるちゃん、合わせたい人がいるって言ってたけど…?」
どこにもいないからキョロキョロしながら本題の質問をする。
「そうなの。もうすぐ来ると思うんだけど、うさぎ驚くわよぉ~」
「私が知ってる人?」
「まぁね、来たら分かるわよ」
さっぱり見当もつかず無い頭を悩ませていると来たのか、なるちゃんはこっちだと手をひらひらさせて待ち人を呼び寄せた。
なるちゃんの横に慣れたように座ろうとした人を見て座っているのに腰を抜かしそうな程驚いてしまい、更にはさっき頼んで飲んでいた紅茶を盛大に吹きこぼしてしまう。
「うさぎ、紹介するね!三条院正人さんことネフライト様です」
「ネフライトだ、久しぶりだな。よろしくな」
「話してた親友の月野うさぎです」
「月野うさぎです、どうぞ宜しく…ってええぇぇええええ~!死んだはずじゃ…ってかどういう事?付き合ってんの?」
「まぁそう言う事になるのかな?」
そう言う事になるって…?何がどうなってんの?分からないこと満載なんだけど。
ネフライトと話すなるちゃんの顔はとても幸せそうで、ネフライトの方もなるちゃんを見る顔がとても穏やかで、傍から見ても、誰がどう見ても恋人同士だった。
なるちゃんが幸せなら私は何も言うことは無いし、あの時とは違ってダークキングダムは私が銀水晶の力を解放して滅ぼしたから組織も残ってないし、ネフライトが悪巧みをしたり悪の道へ反れたりしないとは思うけど…
それになるちゃんは私が普通でいられる唯一無二の存在なのに、正体がバレてるネフライトと付き合ってるなんて、なるちゃんまで半分こっち側に来ちゃったら平穏な私の普通の人としての生活が…もう無いじゃないのよぉ~号泣
しかもなるちゃんって海野とあんなにラブラブバカップルだったのに、どぉしたんだろ?
色々考えているとネフライトがチョコレートパフェを頼んだのか食べ始めていた。しかもすっごい勢いで食べてる…。私が言えたことじゃないけど、そんなに急いで食べなくてもパフェは逃げないって…。
あっという間に食べ終わったかと思うと、まさかのオカワリ!?嘘でしょ?またすっごい勢いで食べてるし…。しっかし、ガタイのいいネフライトがチョコレートパフェを食べてる様子はギャップあり過ぎて笑えるなぁ。
2杯目を食べ終わった所で、またチョコレートパフェが運ばれて来て、またネフライトは夢中で食べている。
チョコレートパフェはなるちゃんと食べる約束をしていて大切な思い出の品だと理解はしているけど、どれだけ食べるの?ガタイが良いからこそいっぱい食べないと栄養が補えないってことは無いわよね?
私が言えたことじゃないけど、チョコレートパフェ何杯食べる気なんだろう…?食べ終わると次のが運ばれて来て食べての繰り返しで、まるでわんこそば!
無言で食べ続けてて若干怖い。
でも食べてる様子を見てるなるちゃんはとてもいい笑顔をしている。本当にネフライトの事が好きなんだなぁ。なるちゃんが幸せなら私は何も言うことは無いし、応援したいと思う。
でも疑問は解決しておきたいから、夢中で食べてるネフライトを他所になるちゃんに気になっていたことを小声で質問する事にした。
「なるちゃん、海野とはどうなったの?別れちゃったの?」
「段々すれ違っちゃってね?その溝を埋められなかったんだ。そんな時にネフライト様が会いに来てくれてね、2ヶ月くらい前から付き合ってるんだ。色々びっくりさせちゃったよね?」
「本当だよぉ~びっくりしちゃって腰抜かすかと思っちゃったよ」
「ごめんね、うさぎ。応援してくれる?」
「なるちゃんが幸せなら私は何も言うことは無いよ。なるちゃんは今幸せ?」
「うん、すっごい幸せだよ」
なんの迷いも無く即答したなるちゃんはとても幸せそうな顔をしている。なるちゃんが幸せなら私も嬉しいよ。