ダーク・キングダムSSログ


「初恋はロマンティッククルーズで(ジェダテディ)」



クインベリル様直属の配下である私、テティスはいつもベリル様の玉座の近くで待機していた。何かあれば役に立てる様にと。
毎日ベリル様の傍にいると、四天王とも自然と顔見知りになる。
その中でもジェダイト様は、クインベリル様に忠実で、良く報連相をしていた。最初こそ顔がいいと言う上辺だけの印象でしか無かった。
しかし顔だけでは無く、エナジー集めという任務に熱心。誰よりも仕事好きで生き甲斐だと言うのが伝わって来た。
それを見ていて、いつしか私は恋に落ちていた。
彼の役に立ちたい。一緒に仕事がしたい。その想いはどんどん肥大して行った。

「でも、どうすればお傍に行けるのだろうか?」

近い距離にいるとは言え、四天王。選ばれしダークキングダムの洗練された騎士。
ベリル様付きの配下だとは言え、所詮は下っ端のペーペー。位が違いすぎる。手が届かない孤高の存在。

「ジェダイト様……」

先ずは認識してもらうことから始めようと思った。一雑魚妖魔では終わらない。終わらせない。終わらせたくない。
そんな折り、ジェダイト様がラジオのDJを始めたという情報が他の妖魔からもたらされた。認識して貰える第一歩だと考えた私は、早速番組宛に手紙を書いて送ってみた。

内容は“届かぬ想い、叶わぬ願い。何度言葉をかけようと、どんなに近くで囁こうと貴方は素知らぬ顔ばかり。見つめる私は今日も独り。このラブレターもきっと貴方は読まずに棄てるでしょう。だから私はこれを送るの――。”

ペンネームは、“帝T's”。地下に住んでいる設定。ジェダイト様を思って書いた恋文。晴れて彼に読まれた。心踊る気持ちだった。少しでも気づいて貰えたなら、嬉しい。

しかし、顔などを公表していなかったために、気にも止めて貰えず、次の日に城であった時には視界にも入らない始末。ーーー失敗に終わったことを悟った。
ジェダイト様のエナジー集めも難航しているようで、イライラした表情を隠しきれないでいる。癒しの存在になってあげたい。
彼を思う気持が日に日に大きくなっていく。そして、焦ってしまう。

「ジェダイト様、今度は神主とやらになって美人巫女とひとつ屋根の下で暮らしているらしいわよ」

焦りを感じていたある日、まさかの情報が飛び込んできた。仕事熱心で硬派で定評のあるジェダイト様が、何処の馬の骨とも分からぬ女と二人暮ししていると飛んでもない情報に、私は耳を疑った。

「ジェダイト様に限ってそんな……」

私はこんな情報には踊らされない!踊らされてたまるもんですか!
しかし焦りを感じた私は、どうしても気になり、その神社に偵察しに行く事にした。

「うそ……」

情報を元に噂の神社に来てみると、私はジェダイト様の変わり果てた姿に絶句してしまった。

「その少女が目当てなの……?」

失意のドン底に突き落とされた気分だった。けれど、神主姿のジェダイト様も様になっていてかっこいいと癒されたのも事実。
しかし、ここでのエナジー集めも失敗に終わったようで、次なるターゲットはまさかの夢ランド。そこではまさかのガードマン姿で客から容赦なくエナジーを奪っていた。
ジェダイト様は所謂コスプレの名人で、任務の為ならどんな姿にもなると知った。
そんなジェダイト様に釣り合うようにと私も地上で流行っている仕事や格好を研究する日々を過ごし、その時を今か今かと待っていた。
そしてとうとうその時がやって来た。

「ジェダイト様」
「テティスか?クインベリル様付きのお前が何の用だ?」

満を持してお声をかけると、顔と名前を覚えられていて嬉しかった。飛び上がる思いだった。

「ロマンティック・クルーズはいかがでしょう」

喜びを押し殺し、作戦を提案するが嫌な顔をされてしまう。めげずに説明を続けると、渋々ではあるものの乗ってくれる事になった。お優しい人だと又キュンとなる。

ーーーそして作戦決行日。

ジェダイト様は勿論の事、私も作戦者として一緒に乗る事に。彼と同じ服に身を包み。肩を並べて一緒に作戦を結構する。
正にこれこそ、ロマンティッククルーズ!
全ては“私の私による私の為のロマンティッククルーズ”大作戦。公私混同。
何ヶ月もかけてジェダイト様とどう接近しようかと考えていた私の粘り勝ち。

コスプレしたり、エナジー集めたりとジェダイト様の事を見てきたからこそサポート出来ること。幸せな時間。永遠にも感じられる時間。

でも分かっていた。この時間は長くは続かない事。ジェダイト様に女として見られていたいこと。仕事一筋だと言うことに。
だって、ずっと見てきたから。

ーーーそれでも。

セーラームーンに作戦がバレてしまい、必殺技で倒されてしまった。こうなる事は想定済み。これでいい。……これで。

だって、ジェダイト様と二人、ロマンティッククルーズで航海が出来たのだもの。後悔はないわ。それに、幸せな数日間だったから。

ありがとうございます。お慕いしておりました。愛してます。これからも、ずっと。




おわり

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