17:一緒に…
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森を包む白い霧はいつの間にか晴れ、空は日が傾き始めていた。
レンは由良達を捜すため、湖の周りを闇雲に走る。
「由良…、森尾…」
銃で撃ち抜かれ、いまだに出血する腹の傷口を右手で押さえながら、険しい顔で辺りを見回した。
敵でも味方でもいい。誰かいてほしい、と願いながら。
「!!」
その時、地面にうつ伏せで倒れている岡田を発見した。
「岡田!」
急いで駆け寄り、呼びかける。
「おい、起きろ! なにがあった!?」
片膝をついて岡田の背中を叩いても、岡田の体はぴくりとも動かない。呼吸もしていなかった。
(……死ん…でる?)
冷水を頭から被ったように、一気に体中の血の気が引く感覚に襲われる。
「……あの球体か…!」
思い当たるのは、広瀬が“アクロの心臓”を取り込んだことで放たれた、黒い球体だ。
レンははっとした表情で岡田の能力を思い出す。
(まさか…、自分の能力で……?)
「……冗談じゃ…ねーぞ…」
『もう遅い』
そう言った銀夜の言葉が脳裏をよぎった。
悪い予感が喉に詰まったように、呼吸が落ち着かない。
それでもこの場に留まるわけにもいかず、立ち上がって周囲に呼びかけた。
「由良! 森尾! 聞こえねーのか!? 返事しろ!」
だが、静寂が返ってくるだけだった。焦りはさらに募り、弾かれたように走り出す。
塞がりかけていた足の傷が走ったことでわずかに開き、流血した。
危うくつんのめったところで、目の端に映ったモノに思わずビクッと体を震わせ、立ち止まる。
「!?」
安らかな顔で石化した男がいた。
麻生だ。
同じ勝又一派の仲間ではあるが、レンと麻生はこれが初対面だった。
レンはおそるおそる近付き、指を彷徨わせる。
触れただけでも崩れてしまいそうで、手を引っ込めたレンは逸る気持ちのままに再び走り出す。
未だに流血している左手を握りしめ、必死に右手と交互に振った。
(生存者は!? 森尾は!? 由良は!?)
茂みに入ってしばらくがむしゃらに突き進み、少し開けた場所に飛び出す。
「……も…、森……」
瞬間、その光景にレンは我が目を疑った。
仰向けに倒れ、血に塗れた森尾を見つけてしまったからだ。
「森尾!!」
すぐに森尾に駆け寄ってその傍らに膝をつき、その体を揺すりながら必死に呼びかける。
「森尾…! 目を覚ませ…!」
だが、森尾は反応を見せない。
(ウソだ…! 森尾まで……!)
自らカマイタチで切り裂いた森尾の肩から胸にかけて出来た裂傷は、明らかに命に届くほどだ。今でも温かい血が流れ続けていた。
目に涙を浮かべるレンの背中に、容赦のない重い絶望が圧し掛かる。
「森……」
「………ぅ……」
「!!」
森尾が微かに呻いた。
(生きてる!)
希望の光を見出したレンは涙を手の甲で拭い、急いで自身の長袖の上着を脱いでタンクトップだけの姿になると、脱いだ上着を森尾の傷口に押し当てた。
だが、止血を試みても上着はすぐに血の色に染まっていく。
(出血が酷い…! 傷も深くて抱き上げたら森尾の体が千切れそうだ…!)
「死なせない…!」
湧き上がる強い想いに応えるように、レンの身体から小さな火花が散った。
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