16:やっと……
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レンを纏う空気が和らぐ。
まさか、と変化にいち早く気付いた銀夜は、込み上げる焦りに冷や汗を浮かべる。予期せぬ事態が発生していた。
(バカな…! カケラを持たない能力者だぞ…!)
水樹は、ふぅ、と小さく息を漏らす。
「よかった……。もう…、おまえは……ひとりじゃないんだな……」
胸を撫で下ろし、寂しげに微笑んで目を閉じた。
その隙を銀夜は逃がさない。
(厄介になったな…。ここで殺すか!)
自身の周りに散らばった釘を浮かばせ、一斉に、釘の先端がレンの方へ向くよう角度を変える。
瞬間、レンの身体からパチッと小さく火花が漏電して弾けたかと思えば、レンの目が開かれ、不敵に笑う。
「お兄さん、交た―――い!」
「!?」
口から出た声は、女だが、レンではない。まるでテレビのチャンネルを切り替えたように変貌する。
レンの傍に落ちていた釘を拾い、銀夜に向かって投げつけた。
「ひゃっは―――!」
レンの体を借りた華音が真っすぐに手をかざす。
ドォン!
投げつけた釘を含め、音波が届く範囲の釘はすべて爆破された。
「ぐ…っ! …!?」
爆風に伴い、爆破された釘の破片が銀夜の身体に突き刺さる。
痛みに呻く銀夜は、レンから目を離さず予想外の事態に対応しようとした。
(御館華音…!! 能力(ちから)まで使えるのか!?)
レンが指摘した通り、相性は最悪だった。
一度距離を取ろうと後ろへ飛ぶが、身を乗り出したレンの身体は飛んできたようにすぐ目の前まで迫っていた。
銀夜は残っている釘を操ろうとしたが、音波を飛ばされることを警戒して反応が遅れる。
すでにレンは左コブシを握っていた。
(こいつ…!!)
身体の持ち主レン本人だった。
生気に満ちた鋭い目は銀夜を捉え、電流を纏わせたコブシを構えて振り被る。
ゴガッ!!
「っ!!」
そのまま全体重をのせ、銀夜のアゴを力いっぱい殴りつけた。
打撃に伴い、銀夜の身体に強い電流が走り、痙攣する。
「か…ッ」
痺れたことで受け身を取ることができず、後ろから地面に倒れる銀夜。
背中と後頭部を打ち付け、一瞬、意識が飛んだ。
ぐらぐらと揺れる視界の端に、スニーカーが映る。
すぐ横には、“生”を選んで戻ってきたばかりのレンが立っていた。
「……終わりだ」
レンの中では、こちらに帰ってくるまで長旅だったのだろう、降ってきた声には疲れが目立つ。
形勢逆転を突き付けられ、銀夜は深く息を吐いた。
(ああ…、終わり…。終わったのか…。さっさと死ねば、なにも知らずに済んだのにな……)
足掻いて戻ってきたところで、“アクロの心臓”が復活した後のことが見えている銀夜には、満身創痍のレンの姿が哀れに映った。
.To be continued