14:誰だ
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『この、親殺し』
銀夜の鋭い言葉は、胸を抉られるようだった。
「違う…。あたしは……」
自身の寝言にはっとしたレンは、木の枝に引っかかった状態で目を覚ます。
現実に引き戻され、自分の状況を思い出して深くため息をついた。
もう少しで銀夜を仕留められると思ったところで横入りに車のドアで弾かれたあと、崖から落下して森の大きな木の太い枝に胴体が引っかかったのだ。その際、少しだけ気を失っていた。
地面に激突は免れた様子だ。
体勢を変えて真下を見ると、3階くらいの高さだ。
「ぅくっ…」
刺さりっぱなしの釘を引き抜いて捨てたあと、太い枝の上に立つ。
立ち上がった瞬間、胸部から痛みが走った。
「っ!」
(肋骨にヒビ入ったか…、チクショウ…)
車のドアが衝突した時か、木の枝に落下した時か。
気付けば全身傷まみれだ。
能力者の回復力は驚異的だが、ハデに動き回ることは難しいだろう。
パシンッ
「!」
不意に、肌を刺すような“アクロの心臓”の波動を感じ取った。
同時に、背筋が凍りつく感覚に襲われる。
(……なんだ? この感覚…。憤りとか、不安とか、焦りとかが煽られるような……)
まるで禁断症状だ。そわそわと落ち着かない。
冷静を保とうと意識はするものの、由良、森尾、華音はどうしているのだろう、と考えただけでじわりと肌に冷や汗が浮いた。
迫る焦燥感に従うように木から飛び降りて地面に着地したあと、痛む胸部を抱えながら湖に向かって息せき切らしながら走る。
「はぁ、はぁ、はぁ」
(由良達を連れ戻さないと…! 取り返しのつかないことになる…!)
どこも戦いの最中なのは百も承知だが、勝又に対する疑念が色濃くなった今は与えられた役割に徹している場合ではない。
「!」
その時、茂みから誰かがこちらに向かって近付いてくる音が聞こえた。
立ち止まり、相手は銀夜だろうかと身構えるレン。
(さすがに早えな…)
心の中で舌打ちしたあと、電流を左腕に纏わせる。
茂みの音がだんだんこちらに近付いてきた。
レンは息を潜め、茂みの向こうを睨みつける。
人影が目の前に出現した瞬間、相手に攻撃はさせず制圧するつもりだ。
目と鼻の先まで気配が近づいたと同時に、レンはコブシを振り上げた。
「喰らえ…」
「レン!」
知った声に名前を呼ばれ、フリーズする。
「よう」
「なっ…、由良…?」
現れたのは、ツナギや頭に木の葉をつけた由良だ。
今朝会ったばかりだというのに、数年ぶりの再会のような懐かしさを覚えた。
.To be continued