14:誰だ
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時間となった。
フクロウは門に背をもたせかけている勝又の近くに舞い降りた。
「いよいよだな、勝又」
勝又は腕を組みながら屋敷を見上げる。
「ああ…。屋敷を片づけたら、“アクロの心臓”が眠る湖に出発だ」
ドゴッ!!!
今まで過ごしてきた屋敷を能力で破壊される。
森尾は屋敷の上空からカマイタチを飛ばし、庭にいる華音は手を銃の形にして能力を発動させて爆破していき、屋敷の裏にいる広瀬も能力を発動させて屋敷の壁に穴を空け、屋敷内のトイレにいる由良は用を済ませながらシャボン玉で周りの壁を破壊した。
屋敷の裏にいるレンも、思い出の場所を惜しみながら、地面から引きずり出した電線から電気を戴く。屋敷の中で照明灯が次々と弾ける音が聞こえた。
そして、屋敷はあっという間に瓦礫と化した。
「あいつ、まだこもってんのか…」
レンはトイレに籠りっぱなしの由良に呆れていた。
由良が屋敷から出てくるまで待機しようかと思っていた矢先、再び胸の内がざわめくのを感じる。
(心配しすぎだ…。森尾も、華音も、いつも通りだったじゃねえか…。何を……)
朝食後、荷物をまとめ終えてそれぞれの担当に分かれての解散だ。
気になったのは、勝又がひとりひとり呼び出して指示を出したことだった。
レンへの指示は、“アクロの心臓”回収を邪魔をする者を排除することだ。
ほとんどが同じ指示を受けているのだろう。
単独行動は指示されていないので、できるだけ複数で動こうと思ってこうして由良を待っているのだが。
(大かあのヤロウ)
無難に森尾や華音についていけばよかった、と後悔する。
イライラしながら瓦礫と化した屋敷の壁に背をもたせかけ、小さく地団太を踏んだ。
(恵は大丈夫かな…。今、外に出してもらってるわけだし…」
屋敷の取り壊しに巻き込まれないように安全な場所にいるとはいえ、恵のことも気がかりではあった。
(いっそこのまま、“心臓”回収に紛れて逃がしてしまうって手もあるけどな…)
我ながらいい手を考えた、と両手を合わせた時だ。
「!!」
不意に、視線を感じた。
そちらに振り向く前に、目の前の鬱蒼とした茂みから、細長い何かが飛んできて足下付近の地面を跳ねる。
1本の釘だ。
「!! ……釘…!」
瞬時に頭に浮かんだのは、銀夜の顔だ。
銀夜が投げつけた釘のせいで、兄の水樹を失っている。
身構えたレンはすぐに辺りを警戒した。
室銀夜が“アクロの心臓”回収に関わってくるのは、どこか予期していたことだった。
耳を澄ませると、ガサガサと茂みを走り抜ける音が逃げるように離れていく。
「待て…!!」
レンは、逃がすものか、と追いかける。
たとえ罠だとしても。
数分後、屋敷から出てきた眠そうな顔の由良は、レンの姿を探すが影もなかった。
「あいつ、待ってるかと思ってたのに……」
「早く出て来い」と急かされてはいた。
多少遅れても待ってくれていると思っていたのだが。
「?」
そこで由良は先程までレンが立っていた場所に、キラリと鈍く光る釘を見つけて拾い上げる。
「クギ……?」
壊した屋敷のものだろうかと考えたが、新品のように錆も汚れもなかった。
ふと、悪い予感を覚える。
「まさか、先走ってねーだろうな……」
ありえる、とため息をつき、目指す場所は同じなので目的地である湖に向かって未だに眠い体引きずるように歩き出した。
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