14:誰だ
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「マジかよ…」
早朝、目を覚ましたレンは自分自身に呆れ果てていた。
「寝落ちできたんですけど…」
昨夜、あんなことがあったというのに。
由良に流れるように唇を奪われたあと、しばらく呆然としたのち、責められるべき当人は眠ってしまったのでどうすることもできず、静かに内心で激しく動揺しながらソファーに横になり、目をぐるぐるとさせるも、そのまま眠りについてしまったのだ。
何度かソファーから半身を起こすも、昨夜の出来事を思い出すたびに横になるを繰り返しているところだ。
(あ…。そっか…、あれは夢…)
起き上がり、自身のベッドの方へ振り向く。
由良の姿はなく、寝相が酷かったのか乱れたシーツと、床にはチョコレートジュースがシミとなって残されていた。
(あ゛ぁ―――ッ!! 夢じゃない―――ッ!!)
先に起きた由良は、ソファーで毛布も被らず眠っているレンを見つけ、自身が掛けられていた毛布を雑に掛けてから部屋を出たようだ。
チョコレートジュースの缶も、中身がまだ少量残っていたのか持ち去られていた。どうせなら床のシミごと持っていってほしかったと心底思うレン。
羞恥心のあまり頭から被った毛布にも、こぼれたジュースの痕跡がある。未だに甘ったるい匂いがした。
(どんな顔で由良に会えばいいんだ…)
どちらにしても朝食の時間に顔を合わせることになるのだ。
悶々と悩みながら、着替えを始める。変に遅れてしまっても気まずさが増すだけだ。
ついでに最後の荷物も持っていこう、と小さなダンボールを胸に抱え、ドアを開けようと手を伸ばした。
だが、ドアノブが逃げる。向こう側からタイミング良く開けられたからだ。
バランスを崩して前に倒れそうになったが、その前に訪ねてきた人物の胸に寄りかかる形になり、支えられる。
「なんだ、今出るとこだったのかよ」
上から聞こえた声にはっとした。
視線を上げると、眠そうな顔の由良と目が合う。
「朝食が出来たってモリヲが呼んでるぞ」
そう言いながら大きな欠伸をした。
レンの視線が無意識に、由良の八重歯を覗かせる唇に移った直後、感触まで事細かに思い出したレンは、反射的に後ろに大きく飛び、その位置にあったテーブルに気づかず思い切り背中からぶつかったのち、派手に後ろにひっくり返った。
ダンボールに入れたばかりのCDや日用品が床に散乱する。
「おいおいおい…」
慌ただしい光景を一部始終眺めていた由良が何事かと心配した。
「まだ酔いが残ってんのか? 朝っぱらから騒がしい奴だな…」
「誰のせいで…!!」
真っ赤な顔で歯を向いて声を荒げるレンに、由良は「オレのせい?」と傾げた首を掻く。
「……あたしより先に寝た割に眠そうだな」
「眠りが浅いんだよオレは…。徹夜繰り返してるうちにそうなった」
目元の隈がなかなか消えない原因を話してから、「くぁ…」ともう一度欠伸をした。
「で…、オレ何やらかしたわけ?」
「だ、だっておまえ…、昨日…」
途端に、視線を逸らしてもごもごと口籠るレン。
それに対し、由良は「…ああ」と思い出した顔をした。
「遅い時間まで飲んでたもんな。オレも部屋とベッド借りちまって世話になったみたいだし…。あー…なんか…、レンから少しだけジュース貰ったとこまでは覚えてるんだけどよ…」
「やっぱ、オレがベッド占領したのが良くなかったか? 大事な日なのによく眠れなかっただろ」と苦笑している由良に、レンは「まさか」と嫌な予感を覚える。
(このバカ肝心のキスのこと覚えていやがらねぇ!!!)
「別にオレは一緒のベッドで寝てもよかったんだけどよー。あ。なんもしねえって保証はねえよ?」
「キャー」とわざと恥ずかしそうな態度を取っておどける由良に、レンの羞恥と怒りのボルテージがマックスになる。
自分自身でも気付かない内に身体から電流が漏電していた。床に焦げ目がつく。
「……およ?」
コブシを握りしめて身体を震わせるレンの様子に、「やべ」と危機感を察知する由良。
「も、もしかしてオレ、覚えてねえだけでレンと××××や××××しちまったとか…」
「(それは)してねえよっっ!!!」
由良の下品な思い違いに限界を迎えた。
どうせ今日で屋敷は取り壊す予定なのだ。
レンは構わず、窓ガラスやドアをぶち破るほど放電したのだった。
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