41:好きなのか?
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鍵は貰ったものの、南に連れ去られた時にかけ忘れていた。
差し込まずとも、ドアノブを回せば、簡単に開けることができた。
本当に泥棒に侵入されたらどうするつもりだったのか。
改めて、レンは我が家に帰宅する。後ろには由良も一緒だ。
由良としてはレンの家を訪れるのは2回目だった。
玄関で靴を脱ぎ、廊下を渡る。
管理費はすべて南が払っていたらしい。だから引き払われることもなかったのだ。
高校の神隠し事件のこともあり、警察も来たらしいが、整理整頓、掃除も行き届いてその形跡すらなかった。
家族と過ごした思い出が脳裏をよぎり、本当は森尾と華音も連れて来るつもりだったのに、と少し胸の内が重くなる。
それから、リビングにあった写真立てを手に、笑みを浮かべた。
「……ただいま」
呟いて写真立てを置いたあと、浴室、両親の部屋、水樹の部屋と順番に見て回った。
もう一度リビングに戻ってベランダの窓を開ける。
オレンジ色の住宅街とビルが見え、窓から涼しい風が入り込んでくる。
景色は少し変わっていた。
あったはずの家がなくなってたり、なかったはずのビルがあったり。
そして、最後に入ったのが、レンの部屋だ。
血の付いた学生服がなくなっていた。南が片付けたか処分してくれたのだろう。その時何を考えていたのか、質問もされなかった。
何気なく、ベッドに腰掛けてみる。ホコリも積もってなかった。
「無地の下着ばっかだな」
「漁るな!!」
振り返ると、由良が勝手に部屋のクローゼットを開けてタンスを漁っていた。
由良を羽交い絞めにしてタンスから引き離したが、右手に紙のようなものを持っている。
タンスの引き出しの奥から見つけたようだ。
開いてみると、高校の時のテスト用紙だった。
「英語28点!?」
由良が腹を抱えて笑う。
レンは黙ってベッドの下からゴキブリ用の殺虫剤を取り出し、由良に噴きかけた。
「死ぬ―――」
ぎゃあああ、と悶える由良。
あったものなくなったものを探っている内に時間は流れ、外の景色が随分と薄暗くなってきた。
レンと由良は、レンの部屋のベッドに背をもたせかけて並んで座っている。
由良は呑気に「腹減ってきたよなー」と呟いた。
「……本当は、帰る時は4人一緒がよかったんだけどな…」
レンはそう呟いて、寂しげに笑みを浮かべる。
森尾と華音があんなことにならなかったら、今頃、レンと由良と森尾と華音の4人でこの家で暮らしてたかもしれないのに。
「……………」
由良が黙ったことで、今更言っても仕方ないだろうと呆れられたのだと思ったレンは話題を変える。
「それにしても、絶対ホコリまみれだと思ってたのに…。南さんに感謝しないとな」
「強烈だったなー、あの女。……おまえが、オレとミナミを会わせたくなった理由って…そういうことだよな?」
思惑が由良に勘付かれたと思ったレンは「う」と唸り、口を尖らせながら白状した。
「……そうだよ。あの人、2年前から全然変わってなかった…。相変わらず美人だし、スタイル良すぎだし…、女らしいし…」
好きになったらどうしようかと…、と口にしようとしたところで「なんの話?」と予想外のリアクションが返ってくる。
「……へ?」
間の抜けた声に伴い、由良に振り向いた。
由良も同じように頭に「?」を浮かべてレンに振り向く。本当になんのことだかわかっていない顔だ。
「てっきりオレ、あの凄まじい潔癖で会わせたくねえのかと…。素っ裸にされて風呂場に連れ込まれた挙句、身が削れるくらい磨かれて泡だらけにされたし…」
そこでレンは己の失態に気付き、言葉を失う。
思わず由良から視線を逸らし、自身の口を押さえた。やらかしを自覚したことによって呼んでもないのに顔に熱が集まる。
(しまった。そういうことにしとけばよかった!)
そのリアクションでピンときたのか、由良は口元に意地悪な笑みを浮かべる。
「……オレがミナミに惚れるかもって心配したのか? あー、そういえば公園で、年上は好きか、って質問されたっけ…」
「ち、ちち…違…っ」
(いらんことに気付きやがって!)
否定したところで墓穴を掘っている気がした。
じりじりと横にずれて由良から離れようとしたが、由良も同じ方向にじりじりと追いかけてくる。
抵抗して「来んな」と左足を軽く突き出したが、右手で左足首をつかまれた挙句に引っ張られて仰向けに倒された。そのまま由良の右肩につかまれた足を掛けられたことで、ワンピースの裾が捲れる。
「ちょ…っ!」
「足癖悪ィな」
左膝に、由良の頬がすり寄せられた。その際、唇が微かに触れたことでレンは委縮する。
(あ…、これ…、やばい…)
甘ったるい雰囲気が漂ってきた。由良とは何度かこの空気になるが、未だに慣れることはない。
そわそわとするレンに構わず、由良はさらに身を乗り出して至近距離で詰めてきた。ギギ、とベッドが軋む。
レンは目を逸らすことができない。自身の心臓が打つ早鐘が耳元で聞こえるようだ。
同じ石鹸の匂いがする。互いの吐息も近い。
「…レンも全然負けてねーよ」
「な…、なにが…?」
戸惑うレンに対し、くつくつと笑う由良の視線が、レンの顔と体の輪郭をなぞる。
由良の右手が、不意に左の太ももを撫でた。
変な声が出そうになるのを我慢するが、いつまで持ち堪えられるだろうか。妙に楽し気な由良に、こっちの気も知らないで、と少し腹立たしくなる。
機嫌を取るように、由良の唇が首筋に触れたことで、いよいよ限界が近づいた。
「由…っ」
抵抗はやめて、このまま身を委ねよう、と力を抜いて目を瞑った時だ。
「夕食の材料買ってきたわよ―――!!」
部屋のドアが勢いよく開けられ、買い物袋を両手に持った南が突入してきた。
レンと由良はそちらに顔を向けたままフリーズする。
「あら、お邪魔だった?」
空気を読んで「ごはんの支度するから気にしないで続けて」と言って、南はリビングにあるキッチンへと向かった。
「ちゃんとお風呂にも入りなさいよー」と母親のようなセリフがあとから聞こえる。
「……ってことだけど、続ける?」とあざとく小首を傾げる由良に対し、「できるかぁ―――!!」と両脚で由良の首を挟んで締め上げるレンだった。
.To be continued