25:返せ!
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伶は後部座席から前に乗り出し、運転の出来ない運転席にいる純の代わりに運転していた。
レン達を乗せた車は正面ゲートに向かう途中、2人の兵士に狙い撃ちにされそうになったが、勇太が窓から体を乗り出して手をかざし、その兵士達を隔離してその場を逃れる。
そして、ようやく正面ゲートが見えてきたと思えば、勇太が声を上げた。
「な…っ、正面ゲートが…!」
「クソッ。一難も二難も去ったとこだっつーのに…!」
伶が吐き捨てる。
正面ゲートには2台の軍用車両が置かれ、塞がれていた。周りには数人の兵士も配置されていた。
このまま力づくで突っ込んだとしても車が大破するだけだ。
しかし、停まれば、身動きが取れないレン達がいるところをあっという間に囲まれてしまう。
車から降りたところで、太輔、奈美、レンに自力で逃げる力は残されていない。
「どうすんの!? 太兄達、ケガして動けないんだよ!?」
葵は怒鳴るが、伶は焦った顔を見せて「わかってんだよ!」と怒鳴り返す。
そこで、後ろから「はぁ~」と場に不釣り合いな、大きなため息が聞こえた。
「体中痛たぁ~~い。サイアクゥ―――」
「「「「「!?」」」」」
その場にいるはずのメンバー以外の声に、勇太・純・伶・葵が驚いて声の元に振り返る。
不機嫌そうに顔をしかめて口を尖らせた、レンが身を起こして腹を擦っていた。
突然砕けた喋り方になったレンに、伶と勇太は何事かと戸惑う。
「レン…姉ちゃん…?」と勇太。
「なんだ急に…ギャルみたいな……」と伶。
構わず、レンは苛立ち交じりに前髪を掻き上げ、奈美を睨むように見下ろす。
「止めるにしても、もうちょっとやり方なかったワケ―――?」
視線が合った奈美はすぐに違和感に気付いた。
「北条…か?」
(この…声は……)
「ちょっとどいてくれるぅ―――?」
奈美から視線を外して振り返ったレンは、葵と場所を替わってもらい、後部座席の窓を開けて身を乗り出した。
「お、おい、なにする気だ!?」
「なにって…」
おそるおそる尋ねる伶に、ニィ…と不敵に笑うレン。
「ブッ飛ばすに決まってんじゃ――ん!」
左手をかざして人差し指を、行く手を塞いでいる軍用車両に向けた。
瞬間、奈美の目には、レンの姿が、弟の仇である華音に見えた。
「み、みんなつかまって!」
はっとした奈美は、思わず叫ぶ。
伶、葵、勇太は反射的にシートやドアをつかんだ。
ドォン!
同時に、正面ゲートの軍用車両が突然爆発した。
「【うっ!】」「【!?】」「【ぐあっ!】」
付近で銃を構えていた兵士たちは爆風を受け、地面に転がる。
「ひゃはっ!」
「!」
再び奈美と視線を合わせるレン。
いたずらっぽく笑いながら人差し指を自身の口元に当てる華音の姿に、奈美は大きく目を見開いた。
「うわっ!?」
前から爆風を受けたのはレン達が乗っている車も同じだ。
細かい破片や煙を浴びる。
宙へ吹き飛んだ軍用車両のドア部分が、重力に逆らえずこちらに向かって落下してきたのが、助手席に座る勇太の視界に入った。
「危な…っ!」
勇太が、衝突する前に空中で隔離しようと窓から身を乗り出した時だ。
後部座席側から、バチッ、と火花が散る音が聞こえた。
「え…」
すると、隔離する前に、落下してきたドアが突然真っ二つに切り裂かれ、車を避けるように地面に落ちる。
ドアを切り裂いたものは、勇太に見覚えがあるものだった。
(今のって…)
2年前にその身にも受けたことがある、風の刃(カマイタチ)だ。
「まったく…。久々だからって、やりすぎだ」
ぼそりと呟いた男の声に、勇太は振り返る。
先程の表情とは打って変わり、やれやれと苦労人の顔をしたレンがそこにいた。何かを放ったあとのように、右腕を振り上げた姿勢で窓から身を乗り出している。
こちらを凝視する勇太と目を合わせると、眉を顰め、不機嫌そうにフンと鼻を鳴らした。
おまえのためにやったわけじゃない、と言うように。
勇太にはその顔つきが、2年前に戦った、森尾に見えた。
車はそのまま、爆風を受けながらも突っ切り、基地を脱出する。
「抜けた!」
「やった!」
先に伶が声を上げ、葵も続けて喜ぶ。
運転席に座る純の顔は、気が気でなく真っ青である。
レンはスイッチが切れたように、奈美の傍に倒れた。
「北条…」
意識を完全に失っているレンに対し、奈美は内心で問いかける。
(おまえは…何者なんだ…?)
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