19:もし、生きてるなら…
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
世話になった女の住居を去った由良は、左袖を揺らしながら雑踏の中を歩いていた。
当面は“アクロの心臓”捜しに集中するつもりだ。
ふと、レンが大事にしていた星形の缶バッジをポケットから取り出す。
結局、預かったまま返せず仕舞いで、8ヶ月以上の月日が流れてしまった。
自身が“心臓”の死の誘惑で死にかけたことと、世間を再び騒がせた自殺騒動を知ったことで、ほとんどの能力者が命を絶ったのだと思っている。
死体を目にしたわけではないが、レンが生きているという確証はどこにもない。
北海道の時と同じく、“アクロの心臓”の波動のせいで、他の“仲間”の位置も把握できないのだ。
(預かりっぱなしだが…、どうしたもんか…。オレのもんでもないしな…)
コイントスのように弾いて弄んだことで、「絶対壊すなよ」と睨む最後に会った時のレンの顔を思い出す。
(もしあいつが生きてたとして…。コレを消しちまってたら、怒って描かせてもらえなくなるかもな…。……そいつは困る)
左腕を失ったことで、もう絵が描けなくなると怖くなり、結果的に“心臓”の死への欲求に打ち勝ったのだ。
似たような理由で、レンも生き残っていないだろうか。可能性はゼロではない。
「もし、生きてるなら…、あのバカどこにいんだよ…」
歩道を歩きながら空を仰ぐ。憎らしいくらい快晴だ。
そこへ一瞬、赤の大型バイクとすれ違う。
赤の大型バイクは、車道の信号が黄色に切り替わっても、逸るように速度を落とすことなく突っ走った。
由良は思わず足を止めて振り返るが、もうバイクは走り去ったあとだ。なぜ思わず足を止めたのか、由良自身わからない。
だが、先程より、少し気分が軽くなった気がした。
「♪~」
自然と出た鼻歌は、いつかの屋敷で、片方のイヤホンを借りて二人で聴き合った、あの曲だった。
. and then,16 months later…