リクエスト:愚痴もほどほどに
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ファミレスをあとにした2人は、人気のない公園沿いの歩道を歩いていた。
由良は満面の笑みで腹を擦る。
たくさん食べたわりに、それほど膨らんでいなかった。
「食った~♪」
「満足そうでなにより……」
太輔は眉間に皺を寄せながら、釜口のサイフを開けて中身を確認する。
小銭の小さな音が鳴った。
ため息が自然と出て、流し目で隣の由良を見つめる。
(レンは四六時中、こいつの相手してんのか。スゲーな)
扱いも大変なのに、と感心した。
次に、由良はとんでもないことを言い出す。
「このまま、タイスケん家に転がりこもっかなー♪」
(食費の危機!!)
太輔はすぐに危険を察知し、由良より先に歩き、振り返って手を振った。
「じゃ…、じゃあ、オレ、帰るな。ちゃんと自分の家に真っ直ぐ帰るんだぞー」
愛想笑いを向け、その場からすぐに離脱しようと前を向いて走り出す。
「とうっ」
ビターン!!
両足首に飛びつかれ、その場に倒れた。
地面に顔面をぶつけ、両手で押さえて痛みに悶える。
「~~~~っ!! なんだ!?」
上半身を起こして右手で鼻を押さえながら、足首にしがみついている由良を睨みつけた。
由良は顔を上げて頬を膨らませ、睨み返す。
「オレひとり、この寒空の下にほっぽって帰るのか!? 冷てえ奴!」
先程まで遠慮なくパフェを食べていたくせに、よくそんなことが言えるものだ。
呆れずにはいられない太輔。
つくづく、いつも相手をしているレンを尊敬してしまう。
「だから、帰ればいいだろ!」
それほど帰りたくないのだろうか。
「なあ~、このままバイバイはねえだろ、オトモダチ」
(ウッゼ―――)
「オトモダチ」とは都合がいい言葉だ。
早く帰ってほしいので、一応、望みはなにか聞いてみる。
「おまえはどうしてほしいんだ。オレは早く帰りてえんだよ」
「このまま帰ったら、テメーの近所で犯罪犯して「こいつも共犯です」って言ってやる。絶対言ってやる。言いふらしてやる」
悪魔化。
「性格悪いぞ、テメ―――!!」
勇太がサタン1号なら、由良はサタン2号である。
このまま殴って逃走を図ってやろうか、と考えたと時だ。
「!」
由良の目から、光るものが流れた。
一気に焦りを覚える。
「お…、おい、泣くことねえだろ…」
「ん? 泣いてねえよ?」
途端に、冷たいものが頭のてっぺんにポツリと落ちてきた。
真上を見上げると、それがポツポツと顔に当たる。
由良も真上を見上げて呟いた。
「雨だ…」
由良が泣いてるように見えたのも、この雫が目に当たったからだ。
「クソッ、降ってきた」
降る前に早く帰るはずだったのに、由良に付き合ったせいでだいぶ遅れてしまった。
冷たい雨が体温を徐々に奪っていく。
由良は太輔を解放し、立ち上がった。
「じゃ、あったかいとこ行くか」
「あったかいとこ?」
太輔は怪訝な顔で由良を見上げる。
由良はニヤリと笑みを浮かべた。
「上は大水、下は大火事」
「地球!」
「よし、それでこそバカ(太輔)!☆」
現在、太輔と由良は銭湯の脱衣所にいた。
「風呂って言えよ」
2人分の銭湯代を出すハメになってしまった太輔。
サイフから小銭の音が聞こえない。
「おー、誰もいねー」
由良は脱衣所と大浴場を見回して呑気に言った。
これほど人間を振り回す人間も、そうはいないだろう。
「おまえなぁ、もう少し遠慮ってものをだな…」
太輔が説教しようとした途端、由良はさっそくツナギを脱いだ。
「うぼあ!!?」
「ん?」
いきなり由良の全裸が太輔のに映る。
「タオルくらい巻け!!」
躊躇いながら太輔はズボンを下着ごとおろす。
由良はじっと太輔の下半身を見つめた。
「……ほ―――ん…」
「「ほ―――ん…」ってなんだ!?」
「気にすんな、まだ成長する」
「ホントか!?」
ちょっと期待する太輔。
そのあと、太輔だけタオルを腰に巻き、大浴場に入った。
温かい湯気に包まれる。
「おい、タオル取れよ。女々しい」
由良は太輔の腰とタオルの間に人差し指を引っ掛けた。
太輔は、取られまいか、とタオルをつかむ。
由良は諦めの悪い太輔をほっといて、さっさと湯船に浸かり、太輔は湯船に近付き、桶を手に取った。
「最初にかけ湯をしてからだなぁ…」
その時、由良はニヤリと笑みを浮かべ、太輔の右足首を引っ張った。
ザブンッ、と大きな水しぶきがあがる。
「ぎゃははは」
沈んだ太輔を指さして笑う由良。
太輔はゆっくりと湯から顔を出し、右手で湯を掬って由良の顔にかけた。
「……………」
仕返しに、由良は指を組んで水鉄砲を太輔の顔面に食らわせる。
次に太輔は、桶で湯を掬い、由良の頭からかけた。
「おりゃー!」
「がぼっ」
太輔の頭を押さえつけ、沈めようとする。
太輔は立ち上がろうと必死に抵抗した。
「きゃはは…」
背後の壁越しから、女性達が笑い合う声が聞こえた。
2人は動きを止め、壁越しに耳を澄ます。
「女湯は、わりと多いな…」
壁越しから扉の開け閉めの音が聞こえた。
新しい客が入ってきたのだろう。
途端に、先程まで騒いでいた女達の笑い声が止んだ。
今度はヒソヒソ声に変わる。
「あのコ達キレー」
「モデルみたーい」
「胸おっきー」
「スタイルよすぎー」
太輔は余計に落ち着かなくなった。
顔を赤くして、顔半分を湯につけ、ボコボコと泡を立てる。
「!」
ふと背後の壁に振り返ると、由良がよじ登ろうとしていた。
仰天し、由良の足首をつかんで小声で言う。
「なにしてんだよ!」
由良も小声で言い返した。
「モデルスタイルを拝みにちょっと…」
「「ちょっと」じゃねえ!」
「気になんねえのか、発情犬」
「……………」
気にならない、と言えばウソになる。
「すぐに引っ込むからさ~。おまえも見ろって」
「わっ、おい!」
由良は太輔の右肩をつかんでジャンプし、壁の上に手をかけた。
太輔は由良の手から離れ、同じく壁の上に手をかける。
「モデルはどこだー?」
湯気でうまく見えない。
太輔は指をさした。
「あのコ達じゃ…」
スタイルのいい2人分のシルエットを見つける。
「よく見えねえな…」
由良は目を細め、身をもう少し乗り出した。
湯船に近付くシルエット。
ふと、こちらを見上げた。
「「あ」」
太輔と由良が声を揃える。
「「!!」」
奈美とレンだ。
「ヤベッ」
「あ、待てよ!」
由良と太輔は逃走を図った。
しかし、レンと奈美からは逃げられない。
出入口に先回りされる前に飛び出そうとしたが、
ドカア!!
「おお!?」
「キャ―――!!」
壁を破って突入してきた。
「キャアアアア!」
他の客は悲鳴を上げたあと、大浴場から出て行った。
「こんの覗き魔が―――」
「不埒者…」
レンはコブシを鳴らし、奈美は氷の爪を構える。
太輔は焦りながら首を横に振った。
「ち…、ちが…、こいつが勝手に…!」
「なんだよ、オレのせいかよ!?」
「ムリヤリオレも巻き込もうとしただろ!」
由良と太輔が言い争いになろうとしたとき、ふとレンと奈美が静かになったことに気付いた。
見ると、2人は顔を赤くしながら、下をガン見している。
太輔は視線を追い、自分の下を見た。
タオルがはずれていたのだ。
先程、慌てて出入口に向かったとき、落としてしまったのである。
「あ…、いや…」
なにか言葉をかけようとしたとき、
ゴッ!!
バシャアン!!
男湯の湯船には、2体の死体が浮いていたとか。
.