リクエスト:不運の嵐をそよ風に
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・梅
森尾はそのあともいろいろな場所につれていってくれた。
オシャレなブティック、雰囲気のいい喫茶店、静かな本屋など。
その間、「家はどこなの」とは聞かれなかった。
このままずっと騙されていてほしい。
けれど、悪人になるのは私にとっては難しいことだった。
平気を装ってるけど、森尾はこうしてる間にも痛い目に遭っている。
犬に足を噛まれたり、水をかけられたり、横断歩道を渡ろうとしてダンプに轢かれかけたり、車がはねた空き缶が後頭部に直撃したり。
「大丈夫だよ」
痛がってはいるけど、そう言って、私に笑顔を向けてくれる。
そういう顔をされるのが一番辛い。
「死神」だと大声で叫んで、突き離してほしい。
もう自分じゃ、離れられなくなってる。
ガシャン、ガシャン!
「!!」
「…っ」
強風が吹いたと思ったら、上から植木鉢が次々と落ちてきた。
不意に体を引き寄せられ、守られる。
上を見上げると、マンションの5階から落ちてきたようだ。
強風のせいで、欄干に置いていた植木鉢が落ちてきたのだろう。
周りの通行人達が騒ぎ出す。
私の足下になにかが、ヒラリ、と舞い落ちた。
森尾の眼帯だ。
そう理解すると同時に、血も滴り落ちる。
はっと顔を上げると、森尾は右手で、眼帯で覆っていた部分を隠した。
手のひらとその部分からは血が流れている。
「当たったの!?」
「いや…、破片でこめかみを切っただけだ。梅は大丈夫?」
「私の心配はしないで!」
眼帯は紐が切れて使い物にならない。
「こっち! ほらっ、道開けて!」
集まった通行人に道を開けてもらい、森尾の手を引きながら元来た道を戻り、森尾が車を停めた駐車場へと駆け込んだ。
車の鍵を開けてもらい、運転席に乗せ、私はすぐに助手席に乗り込む。
「傷見せて」
「ひとりで手当てでき……」
「いいから!」
無理やり顔を隠す手をどかし、こめかみの傷口に手持ちの白いハンカチを当てた。
「…ありがとう」
微笑んだ森尾の火傷の痕を見て、私は燃え盛る家を思い出す。
「…っ、家なんて…ない…」
「梅?」
「燃えちゃったの。全部。母さん達を持っていってしまった…。…私のせいで…」
森尾の傷口にハンカチを当てたまま、うつむいた。
「え?」
「それからいろんなところに預けられたけど…、私と関わった周りの人達も次々と死んじゃった。私は不幸を呼ぶから…」
包帯が巻いてある右腕を見せ、言葉を続ける。
「私は死神だから、親戚に殺されかけて飛び出したの!」
「梅…」
いつの間にか、泣いてしまっていた。
慌てて右手の甲でそれを拭う。
「森尾は優しいね。だから、甘えちゃってた…。でも、森尾も味わったでしょ? 私と一緒にいれば、幸運が逃げるどころか不運に襲われる。そして最後は…」
その先の言葉を口にするのさえ怖い。
怖くなってしまった。
「もう大事な人が死ぬのは嫌。それなら、ひとりでいい…」
助手席のドアノブに手をかけ、引こうとしたとき、
「!!」
その手首を、身を乗り出した森尾につかまれた。
そのまま引き寄せられ、優しく抱き締められる。
「…っ、お願いだから…、優しくしないで…っ」
涙がとめどなく溢れてくる。
「ここから出たら、2度と会えなくなる」
車を出た私の先を知られてしまっていた。
「私と一緒にいたら、不幸になっちゃう…」
「不幸だなんて思わない。思ってない。梅がいない方が…、その…」
そのあとは恥ずかしそうに口を濁した。
私は涙を流しながら、笑みを浮かべる。
「会ってまだ2日だよ?」
「それだけ、出会った幸せが大きいってこと…」
私と同じだ。
私もそう言いたかった。
耳まで真っ赤にしているその顔がとても愛おしい。
これが目の前の彼に対する幸せかもしれない。
その顔の火傷の痕に優しくキスする。
驚かれたけど、答えるように左肩の火傷の痕にキスをおとされた。
車の窓の隙間から、隙間風が入ってきた。
森尾のように、私を包み込んでくれる。
そんな風だった。
.
森尾はそのあともいろいろな場所につれていってくれた。
オシャレなブティック、雰囲気のいい喫茶店、静かな本屋など。
その間、「家はどこなの」とは聞かれなかった。
このままずっと騙されていてほしい。
けれど、悪人になるのは私にとっては難しいことだった。
平気を装ってるけど、森尾はこうしてる間にも痛い目に遭っている。
犬に足を噛まれたり、水をかけられたり、横断歩道を渡ろうとしてダンプに轢かれかけたり、車がはねた空き缶が後頭部に直撃したり。
「大丈夫だよ」
痛がってはいるけど、そう言って、私に笑顔を向けてくれる。
そういう顔をされるのが一番辛い。
「死神」だと大声で叫んで、突き離してほしい。
もう自分じゃ、離れられなくなってる。
ガシャン、ガシャン!
「!!」
「…っ」
強風が吹いたと思ったら、上から植木鉢が次々と落ちてきた。
不意に体を引き寄せられ、守られる。
上を見上げると、マンションの5階から落ちてきたようだ。
強風のせいで、欄干に置いていた植木鉢が落ちてきたのだろう。
周りの通行人達が騒ぎ出す。
私の足下になにかが、ヒラリ、と舞い落ちた。
森尾の眼帯だ。
そう理解すると同時に、血も滴り落ちる。
はっと顔を上げると、森尾は右手で、眼帯で覆っていた部分を隠した。
手のひらとその部分からは血が流れている。
「当たったの!?」
「いや…、破片でこめかみを切っただけだ。梅は大丈夫?」
「私の心配はしないで!」
眼帯は紐が切れて使い物にならない。
「こっち! ほらっ、道開けて!」
集まった通行人に道を開けてもらい、森尾の手を引きながら元来た道を戻り、森尾が車を停めた駐車場へと駆け込んだ。
車の鍵を開けてもらい、運転席に乗せ、私はすぐに助手席に乗り込む。
「傷見せて」
「ひとりで手当てでき……」
「いいから!」
無理やり顔を隠す手をどかし、こめかみの傷口に手持ちの白いハンカチを当てた。
「…ありがとう」
微笑んだ森尾の火傷の痕を見て、私は燃え盛る家を思い出す。
「…っ、家なんて…ない…」
「梅?」
「燃えちゃったの。全部。母さん達を持っていってしまった…。…私のせいで…」
森尾の傷口にハンカチを当てたまま、うつむいた。
「え?」
「それからいろんなところに預けられたけど…、私と関わった周りの人達も次々と死んじゃった。私は不幸を呼ぶから…」
包帯が巻いてある右腕を見せ、言葉を続ける。
「私は死神だから、親戚に殺されかけて飛び出したの!」
「梅…」
いつの間にか、泣いてしまっていた。
慌てて右手の甲でそれを拭う。
「森尾は優しいね。だから、甘えちゃってた…。でも、森尾も味わったでしょ? 私と一緒にいれば、幸運が逃げるどころか不運に襲われる。そして最後は…」
その先の言葉を口にするのさえ怖い。
怖くなってしまった。
「もう大事な人が死ぬのは嫌。それなら、ひとりでいい…」
助手席のドアノブに手をかけ、引こうとしたとき、
「!!」
その手首を、身を乗り出した森尾につかまれた。
そのまま引き寄せられ、優しく抱き締められる。
「…っ、お願いだから…、優しくしないで…っ」
涙がとめどなく溢れてくる。
「ここから出たら、2度と会えなくなる」
車を出た私の先を知られてしまっていた。
「私と一緒にいたら、不幸になっちゃう…」
「不幸だなんて思わない。思ってない。梅がいない方が…、その…」
そのあとは恥ずかしそうに口を濁した。
私は涙を流しながら、笑みを浮かべる。
「会ってまだ2日だよ?」
「それだけ、出会った幸せが大きいってこと…」
私と同じだ。
私もそう言いたかった。
耳まで真っ赤にしているその顔がとても愛おしい。
これが目の前の彼に対する幸せかもしれない。
その顔の火傷の痕に優しくキスする。
驚かれたけど、答えるように左肩の火傷の痕にキスをおとされた。
車の窓の隙間から、隙間風が入ってきた。
森尾のように、私を包み込んでくれる。
そんな風だった。
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