短編:番犬は咎人と語る
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・由良
自分の檻に戻った死刑囚達が怯えた目でレンを見ている。
「罰の時間だ」
レンは警棒を手に、自ら檻の中に入り、ひとりずつ相手をしてやった。
たった一撃、重い一撃を食らわせ、そいつらはすぐに眠った。
001番の死刑囚が目覚めないうちに、049番の死刑囚もてっとり早く眠らせる。
それまで、牢屋中には悲鳴が響き渡った。
まだ死刑台に立たされるわけでもないのに。
人間が一番恐れるものは、“死”ではなく、“苦痛”なのだろう。
049番の罰が終わった。
050番のオレのもとへと来る。
「眠れねえ…」
壁に背をもたせかけて座っていたオレは言った。
レンがオレの檻の中に入る。
「腕見せろ」
レンはポケットから小さな救急セットを取り出した。
中から消毒液と包帯を取り出す。
オレは消毒液を見て、顔をしかめた。
消毒は沁みるから嫌いだ。
「ほら」
左腕の袖を捲り、傷口を見てもらう。
差し出された左腕に、レンは消毒液をしみ込ませた布を当てる。
「痛てて!」
「我慢しろ」
このためにレンは他の死刑囚達を気絶させたのかもしれない。
見られれば、他の看守共に告げ口される可能性があるからだ。
立場上、そういうわけにはいかないのだろう。
オレのケガを手当てするために、そんな面倒なことをしなくてもよかったのに。
左腕に包帯を巻かれ、手当ては終了した。
「ははっ、ヒデーもんだな」
包帯の巻き方がヘタクソだ。
「うるさいな。自分でも滅多に巻かないからだ」
ふくれっ面ができるのか。
「!」
扉の向こうから足音が聞こえ、レンははっと顔を上げ、急いで檻から出て行った。
「気絶したフリしろ」
檻の前に立ち、オレに背を向けながら小声で言う。
オレは言われた通り、その場にうずくまるように倒れた。
腕の包帯を袖で隠すのを忘れない。
扉から他の看守が入ってきた。
「ハデにやったものだな」
声からして男だ。
「交代か?」
「いや、018番の死刑執行だ。迎えに来た」
看守の男はそう言って、018番の檻の鍵を開け、中に入った。
「起きろ。時間だ」
蹴り上げる音がし、「ぐっ」という呻き声が聞こえる。
「ひいっ、嫌だ! 嫌だあ!!」
手首を鎖で繋がれ、死刑囚が引きずり出された。
そいつは食堂のとき、最初にナイフでレンに襲いかかった奴だ。
自分の死刑が今日だと知って、脱獄しようとしたのだろう。
「た…、助け…」
ゴッ!
看守の男はそいつの顔面を警棒で撲り、黙らせる。
死刑囚は啜り泣きながら、看守の男と共に扉を出て行った。
018番の檻がカラになる。
また別の奴が入って018番と呼ばれるのだろう。
「……………」
レンがそのカラの檻を見つめていた。
オレは声をかける。
「最期にあんな姿は見せねえよ」
「……おまえは死にたいのか?」
背を向けながら尋ねられた。
「いや? 死にたくねえよ?」
「じゃあ、なんで抵抗しねえんだ。食堂の時だって、おまえが手を出さなかったら、他の死刑囚の奴らと一緒にここを……」
「出る時は、おまえとだ」
他の死刑囚と一緒に出て、なんになる。
「……………」
レンは少し黙ったあと、ふっと笑い、「そうか」とだけ言った。
*****
オレの死刑まで、あと1ヶ月。
そろそろレンの休憩の時間だ。
腕時計を確認したレンは「休憩してくる」と言って扉から出て行く。
それから間もなく、看守の男がやってくる、はずだった。
「!」
署長が入って来たのだ。
オレに笑みを向ける。
「やあ」
「…オレになにか用?」
オレの檻に入り、ベッドに腰かけ、壁に背をもたせかけて座っているオレと向き合うかたちにする。
「ここの看守はどうだい?」
「…鬼の如く厳しいし、番犬みたいに噛みついてくるし、これ以上の苦痛はねえってカンジ」
ウソをついた方が、オレやレンのためになりそうだ。
「そうか。…しかし…」
不意に左手首をつかまれ、袖を捲られた。
レンに巻かれた包帯が露わになる。
「鬼や番犬が、このようなことをするかねえ?」
「自分でやった。包帯は盗んだ。罪人らしい理由だろ」
ダメだ。
バレてる。
瞳の奥に憎しみが見え隠れしている。
「罪人の傷口を舐める犬は、いらないんだよ」
.
自分の檻に戻った死刑囚達が怯えた目でレンを見ている。
「罰の時間だ」
レンは警棒を手に、自ら檻の中に入り、ひとりずつ相手をしてやった。
たった一撃、重い一撃を食らわせ、そいつらはすぐに眠った。
001番の死刑囚が目覚めないうちに、049番の死刑囚もてっとり早く眠らせる。
それまで、牢屋中には悲鳴が響き渡った。
まだ死刑台に立たされるわけでもないのに。
人間が一番恐れるものは、“死”ではなく、“苦痛”なのだろう。
049番の罰が終わった。
050番のオレのもとへと来る。
「眠れねえ…」
壁に背をもたせかけて座っていたオレは言った。
レンがオレの檻の中に入る。
「腕見せろ」
レンはポケットから小さな救急セットを取り出した。
中から消毒液と包帯を取り出す。
オレは消毒液を見て、顔をしかめた。
消毒は沁みるから嫌いだ。
「ほら」
左腕の袖を捲り、傷口を見てもらう。
差し出された左腕に、レンは消毒液をしみ込ませた布を当てる。
「痛てて!」
「我慢しろ」
このためにレンは他の死刑囚達を気絶させたのかもしれない。
見られれば、他の看守共に告げ口される可能性があるからだ。
立場上、そういうわけにはいかないのだろう。
オレのケガを手当てするために、そんな面倒なことをしなくてもよかったのに。
左腕に包帯を巻かれ、手当ては終了した。
「ははっ、ヒデーもんだな」
包帯の巻き方がヘタクソだ。
「うるさいな。自分でも滅多に巻かないからだ」
ふくれっ面ができるのか。
「!」
扉の向こうから足音が聞こえ、レンははっと顔を上げ、急いで檻から出て行った。
「気絶したフリしろ」
檻の前に立ち、オレに背を向けながら小声で言う。
オレは言われた通り、その場にうずくまるように倒れた。
腕の包帯を袖で隠すのを忘れない。
扉から他の看守が入ってきた。
「ハデにやったものだな」
声からして男だ。
「交代か?」
「いや、018番の死刑執行だ。迎えに来た」
看守の男はそう言って、018番の檻の鍵を開け、中に入った。
「起きろ。時間だ」
蹴り上げる音がし、「ぐっ」という呻き声が聞こえる。
「ひいっ、嫌だ! 嫌だあ!!」
手首を鎖で繋がれ、死刑囚が引きずり出された。
そいつは食堂のとき、最初にナイフでレンに襲いかかった奴だ。
自分の死刑が今日だと知って、脱獄しようとしたのだろう。
「た…、助け…」
ゴッ!
看守の男はそいつの顔面を警棒で撲り、黙らせる。
死刑囚は啜り泣きながら、看守の男と共に扉を出て行った。
018番の檻がカラになる。
また別の奴が入って018番と呼ばれるのだろう。
「……………」
レンがそのカラの檻を見つめていた。
オレは声をかける。
「最期にあんな姿は見せねえよ」
「……おまえは死にたいのか?」
背を向けながら尋ねられた。
「いや? 死にたくねえよ?」
「じゃあ、なんで抵抗しねえんだ。食堂の時だって、おまえが手を出さなかったら、他の死刑囚の奴らと一緒にここを……」
「出る時は、おまえとだ」
他の死刑囚と一緒に出て、なんになる。
「……………」
レンは少し黙ったあと、ふっと笑い、「そうか」とだけ言った。
*****
オレの死刑まで、あと1ヶ月。
そろそろレンの休憩の時間だ。
腕時計を確認したレンは「休憩してくる」と言って扉から出て行く。
それから間もなく、看守の男がやってくる、はずだった。
「!」
署長が入って来たのだ。
オレに笑みを向ける。
「やあ」
「…オレになにか用?」
オレの檻に入り、ベッドに腰かけ、壁に背をもたせかけて座っているオレと向き合うかたちにする。
「ここの看守はどうだい?」
「…鬼の如く厳しいし、番犬みたいに噛みついてくるし、これ以上の苦痛はねえってカンジ」
ウソをついた方が、オレやレンのためになりそうだ。
「そうか。…しかし…」
不意に左手首をつかまれ、袖を捲られた。
レンに巻かれた包帯が露わになる。
「鬼や番犬が、このようなことをするかねえ?」
「自分でやった。包帯は盗んだ。罪人らしい理由だろ」
ダメだ。
バレてる。
瞳の奥に憎しみが見え隠れしている。
「罪人の傷口を舐める犬は、いらないんだよ」
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