短編:番犬は咎人と語る
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・由良
死刑執行は3ヶ月後となった。
オレは目にアイマスクを当てられ、どこかも知らない監獄へと移送された。
手足の枷と首輪を付けられたまま、5人の看守につれられ、収容される檻へと向かう。
オレの他にもうひとり、別の新人死刑囚の男がいた。
頑丈そうな体で、無愛想なその顔面は傷だらけだ。
オレと違い、手枷だけだった。
オレより人は殺してないってことだな。
そこにたどりつくまでの廊下は長かった。
まるで迷路のようで、一目で通路は覚えられそうにない。
他の看守たちとも何度かすれ違う。
錆びた扉が開かれ、左右の檻には他の死刑囚達が入れられていた。
部屋は先程通ってきた真っ白な廊下と違い、暗く、淀んだ空気が漂っている。
よく見ると、死刑囚達のほどんどが顔や腕に痣や傷の痕があった。
血の匂いまでする。
床を見ると、血痕が付着していた。
死刑囚達は一斉に、扉から入ってきたオレに注目する。
噂は届いているようだ。
「あいつが大量殺人犯の由良か」
「オレだってあんな厳重に連れてこられたことねえよ」
「54人も殺したらしいぜ」
「おいおい、オレの向かいだけは勘弁してくれよ」
「なんてツラしてんだ」
檻の中は一気にざわついた。
一緒にいる新人死刑囚のツラの方がおっかねえと思う。
「3ヶ月、よろしくなぁ」
オレが言葉を発し、死刑囚達のほとんどがビクッと体を震わせた。
同じ人殺しとは思ってくれてないらしい。
仲良くはできないようだ。
「さっさと歩け」
「だったら足枷外せよ」
歩きにくいには仕方のないことだ。
罪を犯しただけでこんな扱いをされるのだから、思わずため息を漏らす。
同じ人としては理不尽なことじゃないのか。
少しでも遅れれば、首の鎖を引っ張られ、苦しい思いをする。
犬の散歩でもあるまいし。
オレと一緒にいた新人死刑囚は右側の檻に入れられ、オレは一番奥のひとり用の檻に入れられた。
向かい合って話す奴もいない。
死ぬまで人との関わりを持つ資格はないってことか。
檻の中にあるのは、錆びついたトイレと寝心地悪そうなベッドだけ。
天井を隅々と見たが、監視カメラらしきものはない。
噂で聞いた通り、他の監獄とどこか違うらしい。
5人分の足音が離れていく。
オレは枷を付けたまま放置されてしまった。
「はずしてから行けっての」
首の鎖の先は、壁の中心にくくりつけられている。
これじゃ、本当に犬扱いだ。
ジャラジャラという音が耳につく。
ウロウロしててもやることがないので、仕方なく、寝ることにした。
ベッドに仰向けに寝転がり、目を閉じる。
―――今から3ヶ月か…。
こんな色気のねえ場所で3ヶ月って考えただけで気が遠くなる。
だからといって早まれば、死が近づくだけ。
これが死刑囚に与えられる罰なのだろうか。
この名前を与えられた時点で、罰とか関係なく死んだことになるのかもしれない。
しばらくして、扉が開く音が聞こえ、右目だけ開いた。
「鬼看守だ」
「しっ。静かにしろ」
死刑囚達が騒ぎ出す。
「鬼看守?」
もう片方の目も開け、上半身を起こした。
扉が閉められて鍵がかけられ、カツン、カツン、と足音が近づいてくる。
薄暗い部屋でその姿を確認した。
黒のブーツ、左手には警棒、看守の服装、顔は…、
「女?」
それも、えらく整った顔立ちで、年は明らかにオレより年下っぽい。
だが、目つきが鋭く、まったく隙がない。
「なんだ、ただの女じゃねえか」
嘲笑って言葉を発したのは、あの新人死刑囚だった。
あいつ、喋れたのか。
新人死刑囚は鉄格子につかまり、挑発的にその女に声をかけた。
「おい、姉ちゃん! オレの相手をしてくれよ!」
女は怖がる素振りを見せず、新人死刑囚に顔を向ける。
新人死刑囚は興奮気味にさらに挑発した。
「ここを開けろ!!」
「檻の番号は…、023か」
女はゆっくりとそいつの檻に近付き、ポケットから鍵を取り出した。
そいつの檻の鍵だ。
それを鍵穴に差し込み、檻の鍵を開けた。
女は一歩離れ、新人死刑囚が出てくるのを待つ。
オレと違い、そいつは手枷だけだ。
扉から飛び出し、女に躍りかかる。
「ついでに人質になってもらおうか!!」
新人死刑囚は女をつかまえようと両手を伸ばした。
女は右斜めに飛び退き、持っていた警棒を振り上げる。
ボキッ!!
「ぎゃあああ!!」
警棒は新人死刑囚の右手の指に直撃し、指の骨を折った。
新人死刑囚が悲鳴を上げている隙にジャンプし、
ゴッ!
その顔面に膝蹴りを食らわせる。
「ぐう!?」
鼻の骨も折れただろう。
新人死刑囚がうずくまり、女はつま先で新人死刑囚のアゴを蹴り上げた。
「があ!」
新人死刑囚は仰向けに倒れる。
女は警棒を振り上げ、新人死刑囚に近付いた。
「ひ…、ひいい!」
新人死刑囚は恐怖に歪んで顔面を右手で押さえ、床を這いながら自分の檻へと戻る。
女は扉を乱暴に閉め、鍵をかけた。
今のは躾だったのだろう。
女はこちらに振り返り、ゆっくりとやってくる。
歩きながら、口を動かした。
「あたしがここの看守を務める、北条レンだ。ここはそんじょそこらの監獄とは違う。テメーら極悪人共が処刑されるまで、ぬくぬくと充実した監獄生活が送れると思うな。こっちはおまえらを人間扱いする気は毛頭ない」
「よろしくな、レン」
オレは気さくに声をかけた。
死刑囚達がざわつく。
だがそれも、レンが警棒で鉄格子を叩いただけで収まった。
「…おまえが050番か…」
「由良だ」
番号で呼ばれるのは好きじゃない。
レンはこちらに近付き、檻の鍵を開けて中に入ってきた。
こっちは首輪のせいで出られねえしな。
オレはベッドに座ったままだ。
「写真で見た通りの極悪人面だな」
「そんな悪いツラしてるか?」
ちょっとショックだ。
「忠告しておく。死刑になるまでは死ねないと思え。ここの連中にとっては、半殺しなんざ日常茶飯事だ。喧嘩厳禁、私語も厳禁」
「学校みたいだな」
ガッ!
避ける前に警棒で右側頭部を撲られた。
痛みと目眩に襲われ、頭から血が伝う。
「一緒にするな。これが教師のすることじゃないだろ?」
嘲笑の笑みを浮かべ、レンはオレの檻から出て鍵を閉めた。
オレは頭痛に負け、ベッドに横になる。
「これから3ヶ月、四六時中見張っててやる」
「ま、ムサい野郎よりはマシか…」
頭を擦りながら起き上がった。
檻の前に立つレンがこちらに振り返り、オレは軽く睨まれる。
そういや、私語は厳禁だったな。
そういう貼り紙が壁とかに貼ってあったら、笑ってしまいそうだ。
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死刑執行は3ヶ月後となった。
オレは目にアイマスクを当てられ、どこかも知らない監獄へと移送された。
手足の枷と首輪を付けられたまま、5人の看守につれられ、収容される檻へと向かう。
オレの他にもうひとり、別の新人死刑囚の男がいた。
頑丈そうな体で、無愛想なその顔面は傷だらけだ。
オレと違い、手枷だけだった。
オレより人は殺してないってことだな。
そこにたどりつくまでの廊下は長かった。
まるで迷路のようで、一目で通路は覚えられそうにない。
他の看守たちとも何度かすれ違う。
錆びた扉が開かれ、左右の檻には他の死刑囚達が入れられていた。
部屋は先程通ってきた真っ白な廊下と違い、暗く、淀んだ空気が漂っている。
よく見ると、死刑囚達のほどんどが顔や腕に痣や傷の痕があった。
血の匂いまでする。
床を見ると、血痕が付着していた。
死刑囚達は一斉に、扉から入ってきたオレに注目する。
噂は届いているようだ。
「あいつが大量殺人犯の由良か」
「オレだってあんな厳重に連れてこられたことねえよ」
「54人も殺したらしいぜ」
「おいおい、オレの向かいだけは勘弁してくれよ」
「なんてツラしてんだ」
檻の中は一気にざわついた。
一緒にいる新人死刑囚のツラの方がおっかねえと思う。
「3ヶ月、よろしくなぁ」
オレが言葉を発し、死刑囚達のほとんどがビクッと体を震わせた。
同じ人殺しとは思ってくれてないらしい。
仲良くはできないようだ。
「さっさと歩け」
「だったら足枷外せよ」
歩きにくいには仕方のないことだ。
罪を犯しただけでこんな扱いをされるのだから、思わずため息を漏らす。
同じ人としては理不尽なことじゃないのか。
少しでも遅れれば、首の鎖を引っ張られ、苦しい思いをする。
犬の散歩でもあるまいし。
オレと一緒にいた新人死刑囚は右側の檻に入れられ、オレは一番奥のひとり用の檻に入れられた。
向かい合って話す奴もいない。
死ぬまで人との関わりを持つ資格はないってことか。
檻の中にあるのは、錆びついたトイレと寝心地悪そうなベッドだけ。
天井を隅々と見たが、監視カメラらしきものはない。
噂で聞いた通り、他の監獄とどこか違うらしい。
5人分の足音が離れていく。
オレは枷を付けたまま放置されてしまった。
「はずしてから行けっての」
首の鎖の先は、壁の中心にくくりつけられている。
これじゃ、本当に犬扱いだ。
ジャラジャラという音が耳につく。
ウロウロしててもやることがないので、仕方なく、寝ることにした。
ベッドに仰向けに寝転がり、目を閉じる。
―――今から3ヶ月か…。
こんな色気のねえ場所で3ヶ月って考えただけで気が遠くなる。
だからといって早まれば、死が近づくだけ。
これが死刑囚に与えられる罰なのだろうか。
この名前を与えられた時点で、罰とか関係なく死んだことになるのかもしれない。
しばらくして、扉が開く音が聞こえ、右目だけ開いた。
「鬼看守だ」
「しっ。静かにしろ」
死刑囚達が騒ぎ出す。
「鬼看守?」
もう片方の目も開け、上半身を起こした。
扉が閉められて鍵がかけられ、カツン、カツン、と足音が近づいてくる。
薄暗い部屋でその姿を確認した。
黒のブーツ、左手には警棒、看守の服装、顔は…、
「女?」
それも、えらく整った顔立ちで、年は明らかにオレより年下っぽい。
だが、目つきが鋭く、まったく隙がない。
「なんだ、ただの女じゃねえか」
嘲笑って言葉を発したのは、あの新人死刑囚だった。
あいつ、喋れたのか。
新人死刑囚は鉄格子につかまり、挑発的にその女に声をかけた。
「おい、姉ちゃん! オレの相手をしてくれよ!」
女は怖がる素振りを見せず、新人死刑囚に顔を向ける。
新人死刑囚は興奮気味にさらに挑発した。
「ここを開けろ!!」
「檻の番号は…、023か」
女はゆっくりとそいつの檻に近付き、ポケットから鍵を取り出した。
そいつの檻の鍵だ。
それを鍵穴に差し込み、檻の鍵を開けた。
女は一歩離れ、新人死刑囚が出てくるのを待つ。
オレと違い、そいつは手枷だけだ。
扉から飛び出し、女に躍りかかる。
「ついでに人質になってもらおうか!!」
新人死刑囚は女をつかまえようと両手を伸ばした。
女は右斜めに飛び退き、持っていた警棒を振り上げる。
ボキッ!!
「ぎゃあああ!!」
警棒は新人死刑囚の右手の指に直撃し、指の骨を折った。
新人死刑囚が悲鳴を上げている隙にジャンプし、
ゴッ!
その顔面に膝蹴りを食らわせる。
「ぐう!?」
鼻の骨も折れただろう。
新人死刑囚がうずくまり、女はつま先で新人死刑囚のアゴを蹴り上げた。
「があ!」
新人死刑囚は仰向けに倒れる。
女は警棒を振り上げ、新人死刑囚に近付いた。
「ひ…、ひいい!」
新人死刑囚は恐怖に歪んで顔面を右手で押さえ、床を這いながら自分の檻へと戻る。
女は扉を乱暴に閉め、鍵をかけた。
今のは躾だったのだろう。
女はこちらに振り返り、ゆっくりとやってくる。
歩きながら、口を動かした。
「あたしがここの看守を務める、北条レンだ。ここはそんじょそこらの監獄とは違う。テメーら極悪人共が処刑されるまで、ぬくぬくと充実した監獄生活が送れると思うな。こっちはおまえらを人間扱いする気は毛頭ない」
「よろしくな、レン」
オレは気さくに声をかけた。
死刑囚達がざわつく。
だがそれも、レンが警棒で鉄格子を叩いただけで収まった。
「…おまえが050番か…」
「由良だ」
番号で呼ばれるのは好きじゃない。
レンはこちらに近付き、檻の鍵を開けて中に入ってきた。
こっちは首輪のせいで出られねえしな。
オレはベッドに座ったままだ。
「写真で見た通りの極悪人面だな」
「そんな悪いツラしてるか?」
ちょっとショックだ。
「忠告しておく。死刑になるまでは死ねないと思え。ここの連中にとっては、半殺しなんざ日常茶飯事だ。喧嘩厳禁、私語も厳禁」
「学校みたいだな」
ガッ!
避ける前に警棒で右側頭部を撲られた。
痛みと目眩に襲われ、頭から血が伝う。
「一緒にするな。これが教師のすることじゃないだろ?」
嘲笑の笑みを浮かべ、レンはオレの檻から出て鍵を閉めた。
オレは頭痛に負け、ベッドに横になる。
「これから3ヶ月、四六時中見張っててやる」
「ま、ムサい野郎よりはマシか…」
頭を擦りながら起き上がった。
檻の前に立つレンがこちらに振り返り、オレは軽く睨まれる。
そういや、私語は厳禁だったな。
そういう貼り紙が壁とかに貼ってあったら、笑ってしまいそうだ。
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