短編:飛び入り転校生
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カーテンがしめきられた広い部屋のなか、グツグツと煮えたぎる釜の前で不気味な笑みを浮かべた、黒いローブを着た由紀恵がいた。
ユ「ふふ。もうすぐよ。もうすぐで…」
レン「いや、なにしてんスか」
ユ「あら」
いつの間にか部屋に入ってきたレンに気付き、由紀恵は顔を向ける。
レンは扉の前から釜へと近付いた。
レン「理科室は黒魔術するところじゃないですよ。しかも、今、朝だし」
珍しく早めに学校に来たレンは、理科室から漂ってくる異様な臭いに気付いたのだ。
ユ「黒魔術じゃないわ。惚れ薬を調合してたのv」
レン「惚れ……」
ガラッ!
D4・華・奈・恵「ホレグスリ!!?」
華音と恵は廊下側の扉、奈美とD4は窓から現れた。
レン「うわ、集まってきた!」
現れた4人は由紀恵の周りに集まり、興味津々に尋ねる。
恵「惚れ薬って、あの惚れ薬ですよね!?」
華「そんなの作れるの!?」
D4「確か、あれって……」
奈「最初に見た人を好きになるっていう…」
そこで由紀恵は釜に使用していたおたまを奈美の顔の前に突きつけた。
5人はビクッとし、動きを止める。
ユ「私が作るのは…、ちゃんと、渡した本人を好きになってくれる薬よ! 相手が口にすれば、どんな場所にいても一直線にあなたの胸に飛び込んできてくれる!!」
5人の好奇心が上昇し、由紀恵の手伝いをすることにした。
全員、ローブを纏い、釜の中に材料を入れたり、混ぜたりする。
恵「なんでローブ?」
ユ「服に付くと落ちないからよ」
レン「スゲぇ臭い…」
犬なら、鼻が曲がるほどの臭さだ。
傍から見れば、とある魔法学校を思い出させる光景である。
授業が始まる前に、なんとか元が出来上がった。
ユ「授業に行く前にみんな、髪の毛を1本ずつ渡して」
そう言って、小さなハサミを取り出し、5人は言われたとおり、それぞれ1本ずつ、由紀恵の持っている小瓶に入れる。
ユ「昼休み前に完成するから、その間、誰にあげるのかよく考えてね」
手伝う前から、5人の頭にはその人物が浮かび上がっていた。
*****
そして、昼休みに再び理科室に行き、可愛らしいピンクのアルミで包まれたビー玉状のものを手渡された。
そのまま廊下を出た5人は、一度、アルミを取って中身を確認した。
子供が好きそうな小さなチョコレートだ。
レン「…見た目、普通のチョコレートだな。自分の髪の毛が使われてるって思うと異物混入感が拭えねえ…」
恵「本当に効くのかな」
華「別の効果が出たら困るもんね」
奈「誰かひとり代表になって試してみれば……」
ということで、その場でジャンケンした結果。
D4「私ですか…」
自分が出したチョキを睨みつける。
華「どうやって渡す気?」
D4「……机の上に…」
レン「その手はダメだ。勝手に人の菓子食べる奴がいるから」
言わずとも、由良のことである。
仕方なく、玄関付近にある教員用のロッカーの中に入れることにした。
無難と言っては無難な手だ。
曲がり角に身をひそめ、もうすぐ戻ってくるマクファーソンを待つ。
その間、D4はそわそわとしていた。
すると、出入口から不審者が入ってきた。
岡田だ。
顔をしかめ、恨めしそうな目をしている。
岡「生徒も生徒で、教師も教師だ。色目ばっか使いやがって…」
などと、ブツブツ言いながらマクファーソンのロッカーに近付いた。
D4がロッカーに入れるのを見ていたのだろう。
そして、なんの躊躇いもなくロッカーを開け、D4が入れたチョコレートを取り出した。
岡「こんなもの―――!! リア充は死ィ―――ッ!!」
D4「!!」
捨てるならまだマシであったが、岡田は大口を開けて食べてしまったのだ。
D4が飛び出す前に、レンと華音が押さえつけ、様子を見る。
岡田はしばらく棒立ちになり、突如、こちらに振り返った。
首を180度回したような錯覚に襲われ、仰天する5人。
岡「D4たんラヴぅぅぅぅぅぅぅ!!」
D4「~~~~~~!!」←言葉にならない
岡田はミサイルの如くD4に突進する。
D4は真っ青な顔になり、すぐに4人を置いて出入口から逃走した。
パンッ パンッ
少しして、遠くで銃声が聞こえた。
光景を見ていた4人の顔も真っ青になる。
レン「目標一直線かよ…」
効果がテキメンすぎて逆に恐ろしくなった。
玄関付近の1階の廊下の真ん中で、4人は円になり、手に持っている惚れ薬を見せ合った。
レン「やめようぜ。もとから、こういうやり方はよくないし…」
奈「ああ。これで相手の気をひいても、虚しくなるだけだ」
恵「さっきの見て、ちょっと怖くなっちゃったし…」
華音はなにか言おうと口を開いたが、諦めたように目を逸らし、3人の意見に頷く。
その時、
由「あ―――!!」
廊下の向こうから、由良が小さな袋を手に走ってきた。
由「おまえら、オレのお菓子勝手に取ったな!?」
そう言いながら、4人の手から惚れ薬を取り上げ、持っていた小さな袋の中に入れる。
レン・奈・恵・華「あ!!」
レンは咄嗟に手を伸ばし、由良の持っていた小さな袋を払い落した。
小さな袋から中身が廊下に散らばる。
見ると、全て、4人が持っていたのと同じ包みだったのだ。
だから由良は、レン達が勝手に自分のお菓子を取ったのだと勘違いしたのである。
レン達は急いで拾い上げるが、どれが惚れ薬なのか見当がつかない。
華「ちょ…、どうするの、これ!」
由「なにすんだよ、レン」
レン「バカッ、あたし達が持ってたのは…、その……」
惚れ薬だなんて口が裂けても言えない。
由良はすべて拾い上げたあと、レンを見つめ、首を傾げた。
由「? …しょーがねえな」
小さな袋から12粒取り出し、4人のてのひらにそれぞれ3粒ずつのせる。
由「オレだってケチじゃねえんだ。言えばやるよ」
由良はそれだけ言ったあと、小さな袋を持って職員室へと帰って戻って行った。
レンは「あ」と言って手を伸ばしたが、かける言葉が見つからない。
恵「どうしよう…」
レン「この12粒が全部当たりの可能性は少ないな」
小さな袋には“チョコレート50粒入り”と書かれていたのを思い出す。
*****
実験室に行き、ホーナーがいないことを確認したあと、窓から侵入し、4匹のマウスが入った籠を棚の上からおろした。
隙間から12粒のチョコレートを入れ、食べさせる。
鼠「チュー」
結果、恵に向かって突進するマウスが1匹だけ。
レン「恵は当たりのようだな。あたしがあげたやつだけど」
奈「じゃあ、残りは私達3人か…」
レン「あいつが食べる前に奪えればいいけど…」
そんなことをして由良がキレるのは目に見えている。
やんわりと言って、くれるのかどうなのかも怪しいところだ。
などと4人で考えていると、華音の肩にスライム状のものがのった。
論「おねえちゃん」
華「キャ――――!!」
レン・恵・奈「!?」
悲鳴を上げながら暴れる華音。
論をどかそうとするが、水に手を突っ込むのと同じように、引きはがすことができない。
華「いやー! 取ってー!」
レン「由良の奴、論に分けたな」
ほしがってる子供にやったのは感心ものだが、あげたものが華音の惚れ薬である。
おかしくなった論の様子に気付いてくれればいいのだが、あまり期待はできない。
ふと掛け時計を見上げた恵は、「あ」と声を上げた。
恵「もうすぐで授業始まっちゃう」
次の授業は体育である。
3人でサボるわけにもいかない。
レン「……しょうがない。あたし今日サボるから、奈美と恵は授業に出ろ」
体育の間、単独行動で解決策を導くことを決めた。
*****
その頃、由良は小さな袋に入ったチョコレートの量が少なくなってきていることを心配していた。
由「さっきのガキに5粒もやるんじゃなかったな」
そう呟きながら、袋の中のチョコレートを3粒食べる。
だが、当たりではなかった。
森「あ、また新しいお菓子買ってきたな」
由良が自分の席に着くと、隣の席に座っていた森尾が、由良の持っている袋を見て言った。
森「そうやってハムスターみたいに溜めていたら、古い方から腐ってくぞ」
由良の机の上や引き出しの中は、ほとんどお菓子で占められている。
最近では、森尾の机にまで侵食しつつあった。
さすがに黙っていられない森尾である。
由良の机に積まれたお菓子の中には、去年のものまで混ざっていた。
由「そう言われてもなぁ。全部食べきれねえし…」
森「……よし…、それなら…」
そこで森尾が提案を出した。
*****
レン「え!? 由良…先生いないんですか!?」
伶「ああ。森尾先生と一緒に机のお菓子持ってどっか行ったぞ。つーか、おまえ、授業は?」
レンは由良達とすれ違いになったことを知らずに来たのだ。
問題のお菓子まで持っていかれては対処のしようがない。
すぐに職員室を飛び出し、学校中を捜し回りに行った。
レン「あいつらなにする気だ」
嫌な予感を覚える。
今日の体育は女子はテニス、男子はサッカーだった。
冬が近いため気温も低く、授業が終わったあと、体は温まりつつあったが、再び体が冷えていくのを感じた。
太「ふ~。さび~」
葵「手の感覚ない~」
奈(北条はうまくいっただろうか…)
女子と男子が集まり、純が来てそのまま解散と思われたが、純は両手にヤカンと人数分の紙コップを持ってこちらにやってきた。
純「あったかいもの……持ってきた……」
勇「先生気が利く~♪」
さっそく順番に配られる。
葵「いい匂い♪」
お茶にしては甘い匂いだ。
奈美は配られたカップの中身を見て、硬直した。
奈「…先生…、これって…」
純「ホット…チョコレート…」
奈「チョコ……」
奈美がそう呟いた時には、みんな嬉しそうにそれを飲んでいた。
まだ口につけていない人だけでも止めようとしたとき、急に肩をつかまれた。
奈「!?」
はっと振り返ると、間近に太輔の真剣な顔が迫る。
太「ナミ! オレ…っ、その…、今まで気付かないフリしてたけど…、ナミのことが…!」
奈(えええええ!!?)
*****
その頃、レンは職員室に戻ろうと中庭を通ってる途中だった。
学校中探しても、由良と森尾が見つからなかった。
運悪く、すれ違いになったのかもしれない、と感じたからである。
授業終了のチャイムが鳴り、完全に焦っている様子だ。
森「レン」
駆け足で走っていると、急に目の前に森尾が現れ、立ち止まった。
レン「森尾…先生?」
森尾は真剣な面持ちで言う。
森「生徒と教師の関係だが、それを乗り越えてオレと付き合ってくれないか?」
レン「は!?」
どう答えていいのやらとうろたえていると、背後から人の気配に気付いて振り返った。
麻「身の程をわきまえなさい」
レン「麻生先生!?」
麻「私と彼女は、結ばれる運命なのです。これは神がお決めになったこと」
伶「あんたは結婚式の牧師役だろ。レン、タバコ吸う男は嫌いか?」
レン「伶先生まで…」
次から次へと教師が中庭に登場する。
マ「その女は使える。オレの部下になれ」
D2「そんなこと言って抜けがけはいけないなぁ、隊長」
ホ「彼女にはボクの実験体と助手を兼ねてもらうの―――!」
レン「嗚呼、軍チームまで…!」
目眩を覚えたとき、背後に大きな影が迫った。
ミ「I LOVE YOU―――!!」
レン「わあ!?」
ミケーレが豪快に腕を広げて抱きしめようとする。
その時、誰かに腕をつかまれて横に引っ張られ、逃れることができた。
腕を引っ張った人物は由良だった。
由「おまえらわかってねえなぁ。こいつはオレ用」
レン「!?」
一瞬で赤面し、硬直する。
由「オレのためにオカシを奢り、オレのために手伝い、オレのために脱げ!!」
レン「おまえ…っ」
随分と勝手に言ってくれるものだ。
由「嫌なんて言わせねえよ?」
レン「…っ」
ニヤニヤとした顔が間近に迫ってきたとき、
奈「北条!!」
中庭の入口から奈美に声をかけられ、慌てて目の前の口を左手で塞いでそちらに振り返った。
奈美がこちらに走ってくるので、「どうした!?」と声をかけようとしたが、奈美の背後を見て大体どういう状況なのかがつかめた。
太「待てよ、ナミ! 大事な話してんだろ!」
勇「犬輔に奈美姉ちゃんをくれてやるもんか!」
葵「奈美姉~!♪」
恵「奈美さーん!」
生徒が全員、奈美を追いかけている。
レンは奈美と並んで走りだした。
後ろから、生徒と教師が追いかけてくる。
レン「どうなってああなったんだ!?」
奈「ホットチョコレートだ! 体育の終わりに配られて…」
森尾の手によって食べきれないチョコレートを全部溶かし、ホットチョコレートにして生徒と教師に配られたのである。
生徒用のヤカンには奈美の惚れ薬、教師用のヤカンにはレンの惚れ薬が入れられてしまったのだろう。
レン(調理室を先に見に行くべきだった…!)
後悔しても手遅れである。
奈「由紀恵さんを捜そう! 私達の手には負えない!」
レン「そうだ、早くしないと…!」
ふと振り返ると、いつの間にか争奪戦が始まっていた。
能力がぶつかり合い、学校が崩壊に追い込まれる。
レン・奈「由紀恵さ―――ん!!」
*****
ユ「あら?」
理科室で紅茶を飲みながら惚れ薬の調合法を読み直していた由紀恵は、とあることに気付いた。
手を頬に当て、困った顔をする。
ユ「この惚れ薬…、半日しかもたないのね。あのコ達に言った方がいいのかしら…」
薬の効果が切れるのが先か、学校が崩壊するのが先かの瀬戸際だった。
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